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再生医学の興隆と相まって,毛髪の分野の研究は盛んである.私がEditor-in-Chiefを務めるJournal of Dermatological Scienceにも多数の毛髪に関する論文が投稿されてくる.毛髪再生を見据えた優秀な論文もあるが,天然素材の育毛に関する論文も相変わらず多い.ナチュラルプロダクトを正当に評価するためには,少なくとも1つの成分が性格付けされており,その効果が研究されていることが必要である.これが不明瞭な論文は,申し訳ないのであるが,不採用としている.もっとも判断に困る例もあり,その場合は本誌の編集委員の一人でもある大山学先生にSection Editorとしての判断を仰いでいる.ナチュラルプロダクトから見つかった抗菌薬や免疫抑制薬は多く,一方では,天然素材を成分不詳という理由で軽視することはできないという気持ちも働く.
なぜこういう話をするかというと,その雑誌の性格を考慮しつつ論文の価値を判断することは必ずしも容易ではない,という例を挙げたいからである.本誌の場合,すでに知られた情報を1症例の供覧とともに紹介するタイプの論文が多い.読者の皮膚科的知識を呼び戻しブーストさせることは意味があると考えるが,あまりにもよく知られている内容であって価値が希薄な場合もある.また皮膚疾患を論ずるべきところが,背景となっている内科的疾患の論述が膨らんでしまい,皮膚疾患が霞んでしまう場合もある.こうした論文の価値はそうした偏重の程度で決まるのであろう.既知のことであっても読者の知識の整理に役立つ論文や,内科的知識が開陳されていても皮膚疾患の深い理解に役立つ論文は,本誌にとって掲載価値があろう.もし投稿者がこの問題に直面したら,許容程度から逸脱していないかどうか,読者の気持ちを慮って,内容を取捨選択することである.
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