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文献紹介 転移性悪性黒色腫患者末梢血中の変異抗原特異的リンパ球の同定
入來 景悟
1
1慶應義塾大学
pp.1083
発行日 2016年12月1日
Published Date 2016/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412204951
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近年,転移性悪性黒色腫において,腫瘍組織に浸潤するT細胞(tumor infiltrating lymphocyte:TIL)中に腫瘍特異的なCD8+T細胞が多いことが注目され,TILを培養・増殖させた後に患者に戻すTIL療法が行われている.これまでの報告で,実際にその有用性が示されており,加えて,TILの中でもPD-1+CD8+T細胞に特に腫瘍特異的なものが多いことがわかっている.今回の論文の趣旨は,転移性悪性黒色腫患者において,末梢血中のPD-1+CD8+T細胞にも変異抗原特異的T細胞が存在することを確認し,そのT細胞から変異抗原特異的TCR導入T細胞を作製したということである.
著者らは,まず患者の腫瘍組織から変異遺伝子を解析・同定し,この変異遺伝子をつなげたtandem minigene(TMG)を作製することで,効率的に変異抗原特異的T細胞の検索を行った.実際には,TMGもしくは個別の変異抗原遺伝子を導入した樹状細胞と共培養した際に,活性化するCD8+T細胞を変異抗原特異的T細胞として同定した.結果として,4患者検体中の3検体で末梢血CD8+T細胞中に変異抗原特異的T細胞が確認され,それらはPD-1+細胞中のみに存在した.さらに,著者らは,同定した変異抗原特異的T細胞に最も優位に発現するTCR遺伝子を用いてTCR導入T細胞を作製し,それらが変異抗原に反応することを確認した.
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