臨床皮膚科 52巻6号 (1998年5月)

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患者 45歳,女性

初診 1995年4月3日

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 高解像度超音波診断装置(DermaScanC®,Bモード,20MHz)を用いて,汎発性強皮症患者5例および健常人6例の肘窩,前腕,手背の真皮におけるエコー強度を測定し比較検討した.強皮症患者の前腕,手背の皮膚硬化部は健常人の同部や患者の健常部である肘窩に比べて有意にエコー強度が低下しており,皮膚摘み上げ法による皮膚硬化度とも相関していた.したがって,高解像度超音波診断装置を用いて強皮症患者の皮膚硬化部真皮のエコー強度を検討することは,強皮症における皮膚硬化度を簡便かつ非侵襲的に,また詳細に評価できる有用な方法と考えられた.

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 急速に進行した間質性肺炎により死亡した62歳,女性の皮膚筋炎を報告するとともに,過去10年間に当科で入院治療を行った皮膚筋炎8例を集計した.間質性肺炎の合併は3例に,内臓悪性腫瘍の合併は1例に認められた.死亡例は間質性肺炎を伴った1例と内臓悪性腫瘍を合併した1例の計2例であった.皮膚症状,検査所見から皮膚筋炎の予後について検討した.自験8例において死亡例と生存例で推計学的に有意差が認められたものはクレアチン係数のみであった.また,皮膚潰瘍は2例に認められたが,1例は当該症例であり,1例は重篤な嚥下障害を伴い,皮膚筋炎において皮膚潰瘍は予後や重症度と相関する可能性が示唆された.

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 77歳,女性,宮崎県出身在住.初診の約1年前に右鼠径部リンパ節腫脹に気づいた.3か所の医療機関にて諸検査を受けるも確診に至らず当科を受診.初診時,両鼠径部の集塊状リンパ節腫脹と右鼠径部の皮膚瘻あり.全身に瘙痒性紅褐色小結節が多発.リンパ節からヒト型結核菌を培養同定.皮疹は病理組織学的に腺病性苔癬と診断した.リンパ節結核と腺病性苔癬のいずれに対しても抗結核療法が著効した.本邦の腺病性苔癬について文献的考察を行うとともに,当教室で経験したリンパ節結核についても併せて報告した.

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 21歳,女性.ミクロネシア,マーシャル諸島出身の留学生.1994年4月に来日.同年6月頃から結膜充血がみられ,12月頃より下肢に結節が出現.徐々に増数,拡大し,顔面,四肢にも紅褐色結節の多発を認めるようになった.下肢の痛覚低下はあるが末梢神経肥厚は認めなかった.皮膚スメアで抗酸菌を多数検出した.生検皮膚組織像では不完全なclear zoneを介して皮下脂肪織に至るまでリンパ球や泡沫状変化を伴ったマクロファージからなる肉芽腫像を認めた.抗酸菌染色でマクロファージの胞体内に多数の桿菌を認め,一部はグロービを形成していた.生検組織を用いたPCR法ではらい菌特異的DNAが証明された.DDS,リファンピシン,クロファジミンによる多剤併用療法(multidrug therapy)で結節は扁平化した.

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 37歳の男性.血糖コントロール不良な糖尿病がある.初診2週間前より左5趾に生じた潰瘍が発赤,腫脹し,3日前より急激に症状が悪化し,左4,5趾は壊死に陥り,足背に水庖が出現した.単純X線にて皮下ガス像がみられ,グラム染色の結果はグラム陰性桿菌と陽性連鎖球菌が認められた.細菌培養の結果,Morganella Morganii, Streptococcus intermedius, Peptococcusが検出され,嫌気性菌と好気性菌の混合感染であった.当日にデブリードマンとカルバペネム系抗生物質を投与し,10日目に切断は左4,5趾のみに留め,植皮術を施行した.本症の予後は悪く,下腿切断術を行う積極的な外科療法が一般的であるが,ガス産生能の証明による早期診断,グラム染色による適切な抗生物質の選択と早期デブリードマンにより下腿を切断せずに救命しうる可能性が高まるものと考えた.

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 症例は72歳,男性.全身の瘙痒を伴う丘疹および紅斑を主訴に受診した.シイタケ皮膚炎を疑い問診したところ,皮疹の出現の2日前にシイタケの摂取歴あり診断を確定した.シイタケアレルゲンによるプリックテストは24時間後,48時間後陽性であったが,原因物質と考えられているレンチナンのプリックテストは陰性であった.

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 症例は62歳,女性.クロラムフェニコール膣錠により外陰部にびらんを生じ,クロラムフェニコール含有軟膏を使用した同日より発熱と全身倦怠感を伴い全身に浮腫性紅斑が出現した.組織像では表皮の空胞化と真皮上層の強い浮腫を認め,リンパ球,好酸球の浸潤を認めた.パッチテストでクロラムフェニコール,硫酸フラジオマイシンが陽性を示した.クロラムフェニコールもしくはフラジオマイシンが吸収されて起こったsystemic contact dermatits(SCD)と診断し,プレドニゾロン30mgを投与.症状は速やかに改善した.自験例は外用剤によるSCDと考え,若干の文献的考察を加えた.

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 症例1:18歳,女性.長時間の試験勉強後,右第4指が腫脹し前腕まで拡大.病理組織学的に筋膜の著しい肥厚,好酸球浸潤を認め,好酸球性筋膜炎と診断.プレドニゾロン50mgの内服により,症状の劇的な改善が見られた.症例2:70歳,男性.特に誘因なく両前腕,両下腿に浮腫と硬化が出現,急速に病変が拡大した.病理組織所見では筋膜の軽度の肥厚と皮下組織から筋組織にかけて線維化と炎症細胞浸潤を認め,好酸球性筋膜炎と診断.プレドニゾロン40mg内服により四肢の浮腫,皮膚の硬化は改善した.症例1は右上肢に限局した好酸球性筋膜炎で皮下型限局性強皮症との鑑別が必要であった.症例2は70歳と好酸球性筋膜炎の発症年齢としては高齢であった.また,どちらの症例も抗ss-DNA抗体が陽性であった.

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 16歳,男性.アトピー性皮膚炎の合併あり.7歳の秋頃,左下腿の硬化性局面に気づく.翌年4月頃,心窩部左側にも同様疹が出現.8歳時に当科初診.斑状強皮症としてステロイド外用等にて加療.その後,年を経るにしたがって左下腿の皮膚硬化性局面が多発,拡大していった.徐々に左胸腹部,左下肢に皮疹が線状に配列するようになり,16歳時には定型的線状強皮症となった.罹患肢の萎縮,短縮あり.初診時の組織所見では,真皮全層にわたる膠原線維の膨化,増生がみられ,真皮浅層の血管,付属器周囲性に軽度の炎症細胞浸潤が認められた.年に1度抗核抗体,抗セントロメア抗体,抗ENA抗体,抗Scl−70抗体を測定したが,抗核抗体低倍陽性が経過中2回みられた他は明らかな免疫学的異常は認めなかった.

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 41歳女性,初産婦.妊娠33週時,左下腿に瘙痒を伴う紅斑,膿疱が出現し次第に全身に拡大した.初診時,腹部を中心に鶏卵大までの紅斑が多発融合し,一部は環状を呈していた.紅斑局面内には膿疱が集簇し,辺縁部では環状に配列していた.発熱などの全身症状は認めず,爪甲の変化もみられなかった.臨床検査所見ではとくに異常は認めなかった.病理組織所見では角層下膿疱およびKogojの海綿状膿疱が認められた.以上より軽症の疱疹状膿痂疹と診断した.治療はステロイド外用剤およびビタミンD3軟膏外用のみで寛解した.妊娠37週時に帝王切開にて女児を出産したが,出産前後での皮疹の増悪はみられなかった.

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 45歳,男性.2か月前より手背,足背に小水疱が出現し,徐々に体幹,四肢にも皮疹が拡大した.胸腹部を中心にほぼ全身に,爪甲大までの小水疱や浮腫性紅斑が多発していた.組織像にて表皮下水疱と真皮上層に好中球の浸潤がみられた.蛍光抗体直接法にて表皮基底膜部にIgAの線状沈着を認めた.1M食塩水剥離皮膚を用いた蛍光抗体間接法では,表皮側に反応するIgA抗基底膜抗体を認めた.プレドニゾロン80mgより内服を開始し漸減したところ,皮疹は約1週間で消退した.皮疹の増悪傾向が強く疼痛などの自覚症状が強い場合には,ステロイドを初期より比較的大量に投与し漸減していく方法も有効であり,試みるべき価値のある治療であると考えられた.

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 79歳,男性.平成6年5月直腸癌切除,人口肛門造設術施行.平成6年8月初旬より全身の皮疹出現.平成6年10月19日当科に紹介され初診.初診時,全身に小豆大から鶏卵大の紅斑,びらん局面が多発し,鱗屑,痂皮を付着していた.病理組織学的に顆粒層下の棘融解と水疱形成を認め,落葉状天疱瘡と診断した.プレドニゾロン40mg内服にて皮疹は消失した.ステロイドを漸減し,維持量7.5mgにて経過観察中.平成8年10月現在,皮疹の再燃はない.

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 両下肢の多発性Bowen病の一部から有棘細胞癌を発生し右鼠径リンパ節転移を伴った69歳の男性例を報告する.両足および左下腿に直径6mmから6cm大までの境界明瞭,角化性で茶褐色のBowen病を5個認めた.さらに易出血性で紅褐色の有棘細胞癌を1個右足背に認め,右浅鼠径リンパ節転移を伴っていた.外科的療法およびシスプラチン(CDDP)と5—フルオロウラシル(5—FU)による化学療法を行った.化学療法施行中,CDDPの副作用と考えられる洞性徐脈が認められた.

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 43歳,男性.10歳頃より日光裸露部に褐色斑が出現し,加齢とともに増加し色調も濃くなった.顔面,頸部,前腕などに,半米粒大から爪甲大までの黒褐色斑を多発して認めた.組織学的に,表皮基底層ではメラニン色素の増加とメラノサイトの増殖を認め,真皮上層ではメラノファージの増生がみられた.不定期DNA合成量,紫外線照射後のRNA合成の回復は正常だが,紫外線照射後のS期DNA合成の回復が低下していることから,色素性乾皮症バリアントの診断が確定した.色素性乾皮症などの光線過敏症を疑った場合,このような系統的診断法により早期に診断を確定し,日焼け止めクリームの外用などにより,皮膚悪性腫瘍の発症を予防することが重要であると考えられた.

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 妊娠に伴い胸部および下肢に茶褐色の色素線条が出現した妊婦例を報告する.症例は26歳,日本人女性で,初診時に第1子の妊娠9か月であった.皮疹は左右対称性で乳房上方を斜めに横切り上腕の前内側に至るものと,大腿内側部から後内側を通り両膝窩部内側から内踝にまで至る茶褐色の境界線条であった.皮疹は妊娠7か月時から皮膚表面のチリチリ感を伴って出現し,妊娠週数に伴い境界明瞭となった.妊娠および出産には異常を認めず満期正常分娩後,産後2か月目で皮疹は一部を除き不明瞭となってきている.

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 37歳男性,34歳女性の兄妹のNagashima型掌蹠角化症を報告した.いずれの症例も両側の手掌,足底にびまん性の潮紅が見られ,角質増殖を伴っていた.男性例では肘膝部にも認められた.病変は幼少時より出現し,7歳頃に進行が止まり,現在まで症状の増悪はない.組織学的にはorthohyperkeratosisを示していた.家族歴には血族結婚はなく,両親,親族などに同様の症状も見られていない.HLAのタイピングではCw7が一致し,遺伝形式は常染色体劣性遺伝と考えられた.以上のことよりNagashima型掌蹠角化症と診断した.本症は過去の報告ではMeleda型掌蹠角化症としての報告が多いが,新しい遺伝性角化症の分類では,「Nagashima型」としてその独立性が認められるようになっている.今回,Nagashima型掌蹠角化症として典型的な兄妹例を経験したので報告した.

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 72歳,男性.約12年前から両手背,足背に自覚症状のない角化性丘疹が多発し,病理組織学的に,不全角化を伴う著明な角質の増殖と顆粒層の減少,真皮の細胞浸潤を認め,hyperkeratosis lenticularis perstansと診断した.また,真皮内に壁の多層化した汗管がみられた.免疫組織学的には,ケラチン染色K1,K10で角質層は正常部と比べて染色性が低下しており,基底層を除く表皮は染色性に濃淡があった.汗管は陽性に染まった.本症の発症機序に関して確定したものはないが,汗管の異常が関与している可能性が考えられた.

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 67歳,女性.約半年前より背部に軽度瘙痒性の丘疹や結節,腫瘤が出現.生検組織では小型リンパ球が脂肪織にまで巣状に浸潤し,bottom-heavy patternを示した.B細胞から形質細胞までの成熟過程を示す腫瘍細胞で構成され,これらはIgG, kappa chainをmonoclonal的に強く産生していた.全身状態は良好で発熱,リンパ節腫脹もなかったが,Gaシンチグラムでは,すでに内臓器リンパ組織に集積が認められた.欧米で報告されているcutaneous immunocytomaに合致する症例と考え,その疾患概念の意義を検討した.

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 49歳,男性.右下腹部の小結節に6年前に気づいた.腫瘍は直径2cm,淡紅色で半球状に隆起し,表面平滑で弾性硬であった.組織学的に真皮上層から皮下脂肪織にかけて線維性結合織で囲まれた腫瘍塊を認め,大小の管腔構造と嚢腫形成がみられた.一部では内腔側への乳頭状の増殖を示し,断頭分泌もみられた.免疫組織学的に管腔の内面に接してEMA,CEAが陽性であり,S−100蛋白はほとんどの部分で陰性であった.Papillary eccrine adenomaとの鑑別が問題となったが,断頭分泌所見,S−100蛋白の染色態度から,tubular apocrine adenomaと診断した.

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 46歳,男性の臀部巨大表皮嚢腫の1例を経験した.臨床症状,経過より診断は比較的容易であった.MRI検査所見は,mass内部がT1,T2強調画像でcysticな構造をとり,定型的であった.大きさが18×6×6.5cmで重量が640gと本邦報告例では最大級のものであった.組織学的に悪性所見は認められなかった.

連載

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 123 FcεRIを有する細胞はどれか.

  ①好塩基球

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語源学の一例,アメリカの老人医療の現状について

 ここ何回かにわたって皆様に英語の語源について“Dictionary of English Etymology”より紹介して参りましたが,それがすっかり私の趣味の一つになってしまったようです.しかも今もってまだ知らない事がたくさんあるのには驚かされます.今同も新たな発見をしました.昔私が医学生だったころ,金欠病になり父に電話をした時にはいつも“impecunious”という単語を使いました.これは同じ“貧乏”という意味であってももっと難しい単語なので,私の父は結構それを喜んでいたのでしょう.すぐに送金してくれたものです.今日はその“pecunious”という単語がもともとラテン語の“cattle(家畜)”が由来であり,しかもそれ以前はサンスクリット語の“pac(閉じる)”であったというのを見つけ驚きました.つまり家畜が逃げ出したのでは貧乏になってしまいますよね.

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 超音波外科用吸引装置(CUSA)を2例の脂肪腫の摘出に使用し,良好な結果を得た.被膜を露出した後,CUSAにて内容を吸引し結合組織および被膜を含めて摘出した.その結果,結紮などの止血操作をせずに脂肪腫を除去することができた.そして,腫瘤の大きさに比べて創部の大きさを小さくすることができ,術後の修復も良好で美容的に有用であると考えた.

基本情報

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臨床皮膚科
52巻6号 (1998年5月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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