臨床皮膚科 50巻8号 (1996年7月)

  • 文献概要を表示

患者 69歳,男性

初診 1991年8月1日

  • 文献概要を表示

 64歳,男性.菊栽培業.10年前より顔面,両手に掻痒を伴う浮腫性紅斑が生じた.菊の開花時期に増悪する.パッチテストは,菊の葉,茎,花弁および,葉のアルコール抽出液にて陽性.菊による接触皮膚炎(菊皮膚炎)と診断した.山形市内の菊栽培農家にアンケート調査を行ったところ,回答者59名中23名(39%)が菊によると考えられるアレルギー症状を有していた.その内訳は,皮膚炎のみを認める者6名(10%),皮膚炎とともに鼻汁,鼻閉,咳などの皮膚炎以外のアレルギー症状を有する者が9名(15%),皮膚炎以外のアレルギー症状のみの者が8名(14%)であった.これらの3群間で平均栽培年数に差はなく,皮膚炎とともに他のアレルギー症状を有する群で栽培面積がやや広かった.

  • 文献概要を表示

 1986年1月より1995年12月までの10年間に当診療所を受診したTrichophyton violaceumおよびT.glabrum感染症の14例について検討した.30歳代の1例を除くと10歳未満8例,50歳以上5例で小児例が全体の57%を占めた.小児例は男女比7:1と男性優位,一方成人例はすべて女性であった.病型別ではblack dot ringworm 4例,粃糠疹型7例,ケルスス禿瘡1例,体部白癬12例(重複例を含む),爪白癬1例であった.体部白癬の皮膚症状は淡紅色斑6例,炎症の強い環状紅斑9例で,顔面には小病巣が多発し,躯幹および下肢では顔面と比較しやや大きい病巣が単発する傾向がみられた.家族内発生例は2家系5例に認められた.Brush sampling法による菌の分離を9家系44人に試み,2家系3人(兄,姉,祖母)の無症候の頭髪より患者と同一の菌を分離した.

  • 文献概要を表示

 21歳,男.10歳頃よりアトピー性皮膚炎に罹患.約1年前よりステロイド外用を中止し,徐々に増悪.初診の3日前より突然に40℃の発熱および全身に小水疱,びらんが出現した.入院時乏尿,脱水症状がみられ,血清ミオグロビン高値,筋逸脱酵素の上昇,尿潜血強陽性および尿沈渣に色素円柱が認められた.以上よりコントロール不良のアトピー性皮膚炎患者に生じたカポジ水痘様発疹症に横紋筋融解症を併発し,ミオグロビンによる急性尿細管壊死が合併したと考えた.輸液療法およびアシクロビル,抗生剤投与により治癒した.

  • 文献概要を表示

 20歳,女性のピアス型イヤリングによる金皮膚炎の1例を報告した.臨床的に結節を形成し,病理組織学的にlymphocytoma cutisに一致すると考えられた.免疫組織学的検索にてHLA-DR陽性のT細胞に加え真皮深層においてB細胞の集塊状の浸潤を認め,塩化金酸のパッチテスト陽性反応は全摘後に陰性化した.ピアス型イヤリングによる金皮膚炎の特徴,特に組織像について若干の文献的な考察を加えた.

  • 文献概要を表示

 D—ペニシラミンのアレルギー機序による薬疹を報告した.40歳,女性.25歳時より慢性関節リウマチに罹患した.金製剤投与(計300mg)からD—ペニシラミン内服に変更後20日目(計4g)に全身に紅斑が出現した.発熱,肝機能障害も認められた.薬剤中止後,皮疹は速やかに消失した.リンパ球幼若化試験は陽性,皮膚貼布試験は成分濃度0.1%まで陽性であった.皮疹部のケラチノサイト膜表面にHLA-DR陽性所見を得た.他のSH薬剤であるカプトプリル,チオプロニン,金チオリンゴ酸ナトリウム,オーラノフィン,ブシラミンとの交差感作は認められなかった.

  • 文献概要を表示

 49歳,女性.約8年前より両足底の痛みを伴う紅斑が出現した.近医で通院加療を行ったが,同部に潰瘍を形成し,安静時および歩行時の疼痛も増強したため,当科に紹介され,入院した.入院時,両足底に黄色調の厚い鱗屑が付着し,一部亀裂を伴う角化性紅斑局面を認めた.口腔内には頬粘膜にレース状の乳白色線条がみられた.組織所見では角質増殖,顆粒層の肥厚,表皮突起の鋸歯状延長および真皮上層に帯状の単核細胞の浸潤を認め,組織学的に扁平苔癬と診断した.さらに,目や口の乾燥症状等の自覚症状がみられ,抗核抗体20倍,抗SS-A抗体陽性,口唇の生検等の精査の結果よりシェーグレン症候群の合併を認めた.本症例のように掌蹠および口腔内に限局する扁平苔癬は稀であり,その発症機序として自己免疫学的要因の関与も考えられ,興味深い症例として若干の文献的考察とともに報告する.

  • 文献概要を表示

 31歳,女性で結節性紅斑を合併した大動脈炎症候群の1例を報告した.大動脈炎症候群発症の約2年後より両下腿に自発痛,圧痛を伴う紅色皮疹が出没を繰り返していた.皮疹出現時に全身倦怠感,発熱,関節痛などの全身症状はみられていない.組織学的にseptal panniculitisと好中球の稠密な浸潤を認めた.ベーチェット病とは口腔アフタなどの他の皮膚粘膜所見を欠くこと,眼科的に異常のないことから否定した.結節性紅斑患者の診察にあたっては,基礎疾患として大動脈炎症候群の存在も念頭におく必要があると考えられた.

  • 文献概要を表示

 52歳,男.約10日前,前額部,左頬部,陰部に潰瘍が出現し,急速に増大してきたため当科を受診した.経過中,前額部の潰瘍は骨にまで到達し,右手第3指は急激に壊死に陥った.前額部,左頬部2ヵ所の病理組織学的所見は,表皮は欠損し,真皮全層にわたる好中球の稠密な浸潤が認められた.また,血清免疫電気泳動で,λ型IgGmonoclonal proteinが認められたが,尿中のBence Jones蛋白は陰性であった.入院の上精査したが,骨髄腫の所見は認められなかった.治療はプレドニゾロン1日60mgの内服で開始し,潰瘍は3ヵ月後には瘢痕治癒した.壊疽性膿皮症の誘因として慢性肝炎が考えられた.

  • 文献概要を表示

 55歳,女性.長期経過中,M蛋白血症が出現した強皮症患者を報告した.28歳より関節痛,浮腫性硬化が出現した.38歳時当科を初診し,近位端皮膚硬化,屈曲拘縮,舌小帯短縮を認め強皮症と診断された.D—ペニシラミン,ステロイド剤の投与にて,皮膚硬化は徐々に改善しつつあるが,発症より26年後,M蛋白が出現した.精査の結果,M蛋白はIgG—κ,サブクラスはIgG1であり,多発性骨髄腫などの悪性疾患を認めず,良性のM蛋白血症と診断した.ステロイドの増量に反応しM蛋白の減少を認めた.治療前後において患者培養末梢血単核球のインターロイキン−6(IL−6)産生能は増量前は正常人に比べて高値であったが,治療後は減少した.IL−6はB細胞の分化に関与するとされており,したがって,M蛋白の出現に関わっている可能性を示唆した.またscleromyxo—edemaとPOEMS症候群との鑑別,強皮症におけるIL−6の役割につき若干の文献的考察を加えた.

  • 文献概要を表示

 症例1:61歳,女性.約30年前より腋窩や肘窩などの間擦部位に紅斑や水疱が出現し,水疱は破れて糜爛となった.近医で天疱瘡と診断され,副腎皮質ホルモン剤の大量点滴を行い皮疹は改善したが,その後も夏季増悪と冬季軽快を繰り返した.症例2:32歳,男性(症例1の長男).約6年前より夏季に陰股部に紅斑や糜爛が出現し,皮疹は他の間擦部位にも拡大した.病理組織標本では両者とも表皮細胞の棘融解による表皮内裂隙形成を認めた.臨床および病理組織より家族性良性慢性天疱瘡と診断し,副腎皮質ホルモン剤外用と抗生剤の内服で治療した.症例1は体部白癬や単純疱疹の合併により皮疹の一時的増悪を認めたがコントロール可能であり,症例2は略治した.

  • 文献概要を表示

 51歳,女性の皮膚円柱腫の多発例を報告した.初診時,前頭部に表面平滑で光沢を有した腫瘤と,後頭部に2個の淡紅色の小結節を認めた.いずれも病理組織学的には,被膜を欠く真皮内の腫瘍で,大小2種の腫瘍細胞からなる腫瘍細胞巣がジグソーパズル様に密に配列しており,皮膚円柱腫と診断した.妹,亡父に同症がある.

  • 文献概要を表示

 6歳,女児.生下時より腰仙部に軟らかい腫瘤を認め,成長とともに増大してきた.腰仙部に手拳大の軟らかい腫瘤あり,一部皮膚陥凹を伴っていたが多毛および皮膚洞はなかった.腰仙椎MRI-CTにて第4腰椎から第1仙椎付近に高信号域があり,椎弓の欠損部を通して脊髄に連絡していた.潜在性二分脊椎を合併した腰仙部脂肪腫と診断し,当院脳神経外科で腰仙部脂肪腫の亜全摘術を施行され,術後神経症状の合併もなく,経過観察中にある.摘出した組織の病理診断は脂肪腫であった.今回,潜在性二分脊椎を伴う腰仙部脂肪腫の診断にMRI-CTが有用であったので報告する.

  • 文献概要を表示

 Spitz母斑の2症例を報告した.症例1は24歳,男性.右大腿部に生じた黒色丘疹で,大型の母斑細胞が表皮真皮境界部に増生するjunc—tional typeのSpitz母斑であった.症例2は11歳,女児.右膝内側に生じた約5mm大,紅色をおびたポリープ状病変で,真皮内に単核や多核の細胞が散在性に増生するやや特異な像を示しており,若年性黄色肉芽腫との鑑別が必要であった.免疫組織学的にNSE陽性,S−100陽性であり,intradermal typeのSpitz母斑と診断した.

  • 文献概要を表示

 二次的骨形成を伴う母斑いわゆるNanta骨性母斑の多発例を報告した.症例は47歳,女性.左頬部および左顎部の褐色調皮疹を主訴に来院した.病理組織学的には両者とも真皮内母斑で,頬部の皮疹では1ヵ所の骨組織とその内腔に骨髄脂肪織に相当する組織が,顎部の皮疹では4ヵ所の骨組織が認められた.骨組織の周囲には毛嚢が存在した.本症の発生機序につき若干の考察を加えた.

  • 文献概要を表示

 80歳女性に発生したeccrine porocarci—nomaを報告した.生検時標本ではporoma様の所見が見られずJadassohn現象を呈したBowen病と診断した.しかし全摘後の標本では良性のporoma様の所見,さらにそれと連続しeccrineporocarcinomaへと悪性化を生じている所見が明らかに認められた.Eccrine porocarcinomaは本例のように1つの腫瘍内においても多彩な組織像を呈する例があり,腫瘍全体における組織像の十分な検討が重要と思われる.

  • 文献概要を表示

 50歳,男性の膝蓋に生じたメルケル細胞癌の1例を報告した.右膝蓋に径4cm,表面淡紅色調,弾性硬の皮下結節を認めた.病理組織学的には真皮上層から皮下脂肪織にかけて密に浸潤,増殖する異型性の強い腫瘍細胞を認めた.所属リンパ節に転移を認めた.免疫組織学的検索で腫瘍細胞はneuron-specific-enolase陽性,サイトケラチン陽性であり,電顕的には腫瘍細胞の細胞質に有芯顆粒が認められた.治療としては広範囲切除,所属リンパ節郭清術の外科的療法に加えて,電子線による放射線療法,シスプラチン,エトポシドによる化学療法を併用した.1年10ヵ月経過した現在,局所再発および転移を認めていない.

  • 文献概要を表示

 3ヵ月,男児.生後1ヵ月頃より下腹部に正常皮膚色の小丘疹が出現し,体幹全体に拡がった.組織検索で,真皮上層に大型の組織球様の細胞浸潤を認めた.これら細胞は,CD 1a,S−100蛋白,CD 45—RO, HLA-DR陽性であり,Langerhanscell histiocytosisと診断した.全身検索にて,皮膚と蝶形骨以外に病変はみられず,現在無治療で経過観察中である.自験例を報告するとともに,本邦小児報告例について,予後予測因子の統計的観察を行った.

  • 文献概要を表示

 上背部に出現した皮膚原発のpre-Bあるいはpre-pre-B細胞リンパ腫の70歳,男性例を報告した.病理組織学的には,成人例に多いdiffuse, large typeの組織像を呈した.しかし,免疫組織学的にHLA-DR(+),CD 10(±),CD 19(+),CD 20(+++),sIg(−)であり,小児例に多い未分化のリンパ腫であった.最近10年間に本邦で報告された皮膚原発B細胞リンパ腫58症例のうち,pre-B以前の未熟なものは小児3例,成人2例である.小児例はすべて生存しているが,成人例の生存期間は発症から平均8ヵ月である.自験例ではインターフェロンα誘発剤の単独投与により腫瘤の縮小効果(縮小率97%)がみられ,この状態が6ヵ月続いた.しかし,投与中止1ヵ月後再び腫瘍の局所再発を認めたので放射線(60Co 200 Gy,12 MeV電子線25 Gy)照射した.治療後腫瘍が消失し,完全寛解の状態が1年以上続いている.

  • 文献概要を表示

 27歳,女性.熱発を伴う,左大腿全体にわたる疼痛,発赤,腫脹が出現.基礎疾患の存在を疑い入院.検査にて,白血球減少と低色素性大球性貧血を認めた.末梢血液塗抹標本にて芽球様細胞および赤芽球を認め,骨髄生検にて急性骨髄性白血病(M2)と診断された.化学療法にて寛解を得た.皮疹は急速に潰瘍化し,化学療法の中断期間を利用し,チールシュ植皮術を施行し,上皮化した.1992年9月30日,実兄より骨髄移植を受けるも14日目より急性GVHDの症状が出現し,ステロイドパルス療法およびシクロスポリン抵抗性で,肺炎,腎不全を併発し,1993年5月死亡した.

  • 文献概要を表示

 61歳女性の頭部に発生した悪性血管内皮細胞腫の1例を報告した.組織学的に真皮全層に未熟な管腔形成を伴う腫瘍細胞を認め,電顕にてWeibel-Palade顆粒を確認した.免疫組織学的には第VIII因子関連抗原は陰性,UEA−1レクチンは管腔と腫瘍細胞で陽性であった.IL−2局注療法では十分な効果を認めず,Lineac照射の併用により結節の消退をみた.再発病変に対するIL−2単独局注療法は効果を示した.

  • 文献概要を表示

適切な単語の選択,受動態・能動態の使用,アメリカの医療保険制度について

 Recoveryという単語は患者や医師,または身内にとっても大変希望のもてる単語です.しかし最近次のような文を読みました.“Following the recovery ofthe eczema…”残念ながらこの文は患者ではなく病気自体だけがよくなるという意味です.普通一般的によくなるのは疾患に罹った患者がよくなるのであって病気自体ではありません.したがって次のように訂正しました.“Following the patient's recovery fromthe eczema…”

Clinical Exercises・40—出題と解答 川島 眞
  • 文献概要を表示

 図1,図2とも表皮細胞内にみられたウイルスの電子顕微鏡像である.

  • 文献概要を表示

 毛細血管拡張性肉芽腫30例を炭酸ガスレーザーを用いて治療した.従来の治療法である液体窒素冷凍凝固術,電気凝固術,腫瘍切除術に比し簡便で,術後の疼痛,出血もほとんどなかった.術後2〜20ヵ月を経過しているが,再発は1例もみられていない.炭酸ガスレーザーは毛細血管拡張性肉芽腫に対して,極めて有用な治療法であることが確認された.

印象記

  • 文献概要を表示

 アジア皮膚科学会は日本の久木田淳教授,台湾の王鋳軍教授,香港のAvery Chen博士らを中心に設立され,1986年に第1回の学会を香港で行い,以後,第2回シンガポール,第3回香港と続き,今回は1996年1月13日〜15日,アジアの西端,アラブ首長国連邦ドバイ市において開催された.

 前回の香港から始まった,学会前日のDermatopathology work—shopは,今回も踏襲され,1月12日の午前中,学会場のDubaiChamber of Commerce Audito—riumで行われた.聞くところによると,数十人の受講者(25〜50US$の受講料)を前に,A.H.Mehregan教授(Wayne State大学)など数人の講師が教科書的な講義を行うというものであった.

基本情報

00214973.50.8.jpg
臨床皮膚科
50巻8号 (1996年7月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

文献閲覧数ランキング(
6月29日~7月5日
)