INTESTINE 19巻6号 (2015年11月)

サイトメガロウイルス腸炎とClostridium difficile感染症

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サイトメガロウイルス(CMV)は宿主の免疫応答からの回避機構をもち,潜伏感染を特徴とする.CMVに対する宿主の免疫応答としてもっとも重要なのは,CD8陽性T細胞であるが,CD4陽性T細胞もその活性化に関与しているため,とくに細胞性免疫の低下によりCMVは再活性化する.CMV感染症としては,消化管も好発部位の一つであり,CMV腸炎ではびらん・潰瘍性病変を形成する.潰瘍形成の機序は,虚血性変化によるものと考えられている.

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自験CMV腸炎40例の臨床症状と内視鏡画像について検討した.臨床症状は基礎疾患や罹患部位により違いがみられた.基礎疾患をAIDS群,明らかな免疫不全なし群,薬剤による免疫不全群に分けると,この順に下痢が多く,血便が少なかった.罹患部位では,小腸型は血便や穿孔が多かったが,大腸型は血便と下痢がほぼ同数で穿孔は少なかった.直腸病変の有無は血便の有無とは関係がなかった.内視鏡像は類円形潰瘍がもっとも多いが,多彩な潰瘍がみられた.自験例では潰瘍がない腸炎型の症例は認めなかった.

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サイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV)腸炎は易感染性宿主の日和見感染として知られているが,基礎疾患のない健常者に発症した報告も散見される.治療にはガンシクロビル,バルガンシクロビル,ホスカルネット,抗CMV高力価γ-グロブリンが使用されるが,健常者に発症した場合は自然軽快により治療が不要なこともある.CMV腸炎による出血や穿孔などにより重篤な転機をたどることもあるため,とくに基礎疾患を有する高齢者などでは慎重な対応が必要である.

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サイトメガロウイルス(CMV)はヘルペスウイルス科に属する線状二本鎖DNAウイルスの一つである.通常,幼少期に初感染し,その後生涯にわたり潜伏感染する.ステロイドや免疫調節薬などによる治療を受けているIBD患者,とくにUC患者では,しばしばCMVの再活性化が認められる.UCに合併するCMV再活性化にはTNF-αをはじめとする炎症性サイトカインによる直接的な影響と,ステロイドや免疫調節薬などの治療薬剤による宿主の正常な免疫応答の抑制が関与するとされている.CMV感染の診断には病理組織学的検査,CMV antigenemia法,real-time PCR法などがおもに用いられているが,UCに合併するCMV感染(再活性化)とCMV腸炎を区別することは現実的に難しく,その病態については今後のさらなる検討が必要である.

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潰瘍性大腸炎においてサイトメガロウイルス(CMV)腸炎が合併し,治療抵抗性に関与している可能性が示唆されている.CMV感染とCMV腸炎とは異なる病態であるので,両者を明確に区別しないといけないが,潰瘍性大腸炎では腸管病変や腹部症状がすでにあるため,CMV腸炎を診断することが難しい.現時点では,CMV免疫組織染色と粘膜CMV-PCR法が,潰瘍性大腸炎に合併したCMV腸炎のもっとも特異度の高い検査法であるとされているが,まだエビデンスが少ない.CMVの再活性化には免疫抑制のみならず,炎症が関与しているため,潰瘍性大腸炎の炎症をコントロールすることが,CMVの再活性化を抑制することにもつながる可能性がある.そのため,まずは炎症のコントロールを目指すべきであり,抗CMV薬の治療適応は慎重に判断する必要があると考える.

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潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)患者にとってサイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV)はおもにステロイド使用後の難治性UCの増悪因子として注目されており,その内視鏡像は深掘れ潰瘍と広く知られ予後は悪いとされている.ゆえにUC患者において早期のCMV感染診断は予後改善につながる.CMV感染の診断法はさまざま存在するが,炎症部位における粘膜PCRはもっとも高感度であることが報告されている.高感度の粘膜PCRを使用してわれわれはUCのどの時期でCMV再活性化が起こっているかを検討した.また,CMV陽性のUCに対して,どのタイミングで積極的に抗ウイルス薬を使用すべきかを論じた.

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CMV腸炎の診断は組織中のCMV感染細胞を証明することが重要である.CMV感染細胞は潰瘍底肉芽組織の血管内皮細胞に多く存在するが,HE染色のみでは検出されにくいことも多く,その際には免疫組織化学染色やin situ hybridization法を追加する.しかし,これらの手技を用いてもCMV感染細胞が確認できないこともあり,的確な診断のためには血中CMV抗原の証明やPCR法を用いたDNAの検出など,複数の手法を用いて総合的に判断することが肝要である.

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Clostridium difficile(CD)感染症は代表的な院内感染症の一つであるが,感染者のすべてが下痢,腹痛などの症状を有するCD腸炎を生じるわけではない.その発症にはCD株の産生する毒素(toxin A,B)の存在が重要であり,最近欧米では第3の毒素(binary toxin)を産生する強毒株が問題となっている.CD腸炎では毒素量の寡多や宿主の免疫力の程度などにより軽症の下痢から偽膜性腸炎,生命に関わる重症の巨大結腸症に至るまで幅広い臨床像を呈する.CD腸炎の診断には便中毒素の証明が必要であるが毒素の検出感度が高くはないため,毒素と同時測定可能な便中GDH(glutamate dehydrogenase)抗原検査を併用した相補的診断が有用である.また,CD腸炎の重症度評価も含め,可能であれば内視鏡検査も行うことが望ましい.

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Clostridium difficile感染症の症状と内視鏡を中心とした画像診断について述べた.症状では下痢,腹痛,発熱がみられることが多いが,下痢がない場合がある.内視鏡所見として典型例ではさまざまな程度の偽膜がみられるが,偽膜がないことも少なくない.他の所見としてアフタ様病変が報告されているが,小白点がみられることも多く,まれに正常像が観察される.腸管洗浄液を用いた前処置によって偽膜が剥落し所見が修飾されている可能性がある.非典型例を誤診しないためには内視鏡像の多様性を理解したうえで本症を想起する必要がある.

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Clostridium difficile腸炎は主要な院内感染症の一つであるが,診断や重症例,再発例の治療は難渋することがあり,新たな治療法も開発されてきている.C.difficile腸炎への対応に重要なことは,いち早く疑い診断し,すみやかに適切な治療を開始することと院内感染対策である.治療法には,全身管理に加え,重症度別に適切な抗菌薬の選択や近年注目を集めている糞便微生物移植などがある.また,以前と比べて日本で使用できる抗菌薬も増え,現在国内外で臨床試験中の薬剤も数種類あり,今後の発展が見込まれる.

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炎症性腸疾患(IBD)患者に合併するClostridium difficile腸炎は,とくに入院患者において予後不良因子と考えられているが,一方で,その診断に関しては,臨床症状や内視鏡検査からの鑑別は困難であり,また,とくに本邦では,糞便の検査の感度も十分とはいえない.したがって,とくに入院症例においては,臨床的に疑わしい場合は,糞便の検査結果を待たずに,積極的に治療を行うことが勧められる.その際の治療薬としては,バンコマイシンが中心となる.糞便移植に関しては,IBD症例における有用性および安全性の評価が今後期待される.

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近年,広域スペクトル抗菌薬だけでなくPPIや免疫調節薬の頻用,高齢者増加,入院期間延長などによる,C.difficile感染の増加に加え,北米においては,従来のA,B型毒素に加え第三の毒素を産生するNAP1株C.difficile腸炎の蔓延が問題となっておりC.difficile腸炎の合併によるIBD悪化が危惧されている.しかしながら,ほとんどは後ろ向き研究で前向き研究のないことより,本当にC.difficile感染治癒後にIBDが悪化するかについての明確なコンセンサスは得られていない.今後,前向き多施設共同試験による検討が望まれる.

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症例は68歳,男性.大腸内視鏡検査にて横行結腸に径5mm大,やや発赤調の陥凹型病変を認めた.インジゴカルミン散布による色素観察では,境界明瞭で,陥凹内隆起を認めた.NBI拡大観察では,陥凹部のsurface patternは軽度不整であり,広島分類Type C1と診断した.クリスタルバイオレット染色による拡大観察では強い粘液の付着を認めたため,陥凹部の詳細なpit patternの観察は不可能であった.通常所見では粘膜下層浸潤の可能性も考えられたが,空気変形が良好であること,拡大所見より粘膜内病変と診断し,内視鏡的粘膜切除術を施行した.病理組織所見は低異型度腺腫であった.病変の粘膜筋板直上にリンパ濾胞を認め,これが陥凹内隆起の原因と考えられた.

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症例は70歳代,女性,全大腸内視鏡検査施行で盲腸に約20mmの病変を指摘された.肉眼形態は二段隆起と高い隆起部に段差を伴う陥凹を有するIIa+IIc病変であった.丈の低い隆起部は粘液付着が顕著であり,拡大観察では典型的な開II型pitを認めた.丈の高い隆起部辺縁は開II型様に類似するも管状様にもとれるpitであった.丈の高い隆起部中央の陥凹部周囲には管状様構造に歪さが目立つVI型pitを認め,陥凹内は一見無構造様だが角度によっては細かく密度の高い構造がわずかに感じられた.SSA/Pが基盤となり,cytological dysplasiaを経て,癌化した病変と考えられた.また陥凹部については病変の部位,成り立ちを加味し髄様癌の可能性を考えた.深達度は陥凹部でT1b(SM massive)の浸潤を疑ったが患者背景を考慮し,EMRを施行した.病理結果はCarcinoma in SSA/P,Cancer:well to poorly differentiated adenocarcinoma(por1,medullary carcinoma),T1b(2,500μm),ly0,v0であった.多彩な拡大内視鏡所見が組織分化度の相違までを反映したSSA/P癌化症例と考え,遺伝子解析結果も加え報告した.

基本情報

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INTESTINE
19巻6号 (2015年11月)
電子版ISSN:2433-250X 印刷版ISSN:1883-2342 日本メディカルセンター

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