腎と骨代謝 32巻1号 (2019年1月)

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透析患者の運動器疾患(整形外科疾患)は「腎不全による全身性代謝障害のうちの骨代謝障害による病変」と「透析で排出されないβ2 ミクログロブリンが運動器局所に沈着し生じる炎症性・増殖性・破壊性病変」の両者により引き起こされる.前者では副甲状腺機能亢進症の線維性骨炎,無形成骨による全身性脆弱骨,後者では局所の炎症性・肥厚性・破壊性病変による脊髄症,神経根症および関節障害が生じ,この両者が相まって進行する.重度のアミロイド関節症,破壊性脊椎関節症ではQOL が著しく障害されるために手術を要する場合が多い.透析導入が高齢となり,導入疾患として糖尿病,腎硬化症が増加している現在,全身状態が悪い患者も多いため周術期の全身管理,手術合併症に十分な注意を払い加療されるべきである.

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Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study(DOPPS)などの研究によって,わが国における透析患者の骨折発生率は世界中でもっとも低いことが示されている.その要因として,「CKD-MBD 診療ガイドライン」に基づいた骨・ミネラル代謝異常に対する管理,なかでも世界各国よりも低く設定した血清PTH 値の管理目標値が寄与している可能性がある.また,近年CKD に対する腎臓リハビリテーションも重要視されており,筋力低下予防を含めた総合的治療によって透析患者の骨折発生率を低下させることが期待できる.

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透析患者の骨量評価には,二重X 線吸収測定法(dual energy X-ray absorptiometry;DXA)を用いた骨密度測定が一般的であるが,透析患者で問題となる骨質の評価は困難である.近年,高解像度末梢骨用定量的CT(high resolution peripheralquantitative CT;HR-pQCT)や海綿骨スコア(trabecular bone score;TBS)の普及によって,非侵襲的な骨微細構造の評価が可能となり,その有用性が実証されつつある.これらの骨質評価ツールの臨床応用とともに,透析患者の骨形態解析や骨折リスク評価においても新たなエビデンスが創成され,透析患者の予後改善につながることを期待したい.

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骨の力学特性を直接評価することは骨折リスクの軽減策を考える際,重要な情報となる.骨の力学特性評価には圧縮や3 点破断などの破壊を伴う評価法が用いられてきたが,非破壊的に弾性特性を評価できる動的粘弾性測定(dynamic mechanicalanalysis;DMA)を用いると骨の力学特性だけでなく,質の変化も評価することができる.DNA による解析と評価には,粘弾性という性質への理解が必要であり,その実施にはいくつかの注意を要する.

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骨質は骨密度とともに骨強度を規定する因子である.骨密度は単位面積当りの骨量(g/cm2)として表されるが,骨質の定義は曖昧で明確に示されてはおらず,マイクロダメージ,多孔化,ミニモデリング,石灰化度,結晶化度,結晶成熟度,コラーゲン架橋結合,コラーゲン線維やハイドロキシアパタイトの配向性など複数の因子が議論され,体系化されていない.赤外分光法やラマン分光法は,1 回の計測で複数の骨質因子を再現性よく評価することができ,非侵襲性であることから,測定後に検体を他の分析法で評価することもできる.まさに骨質を体系化するのに有効な手法であると言える.

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アパタイト結晶は,骨基質を構成する主要な骨ミネラル成分であり,荷重支持にとって重要な役割を担う.アパタイト配向性は,アパタイト結晶を構成するイオン配列の「優先方向と度合」を表すベクトル量であり,骨基質の異方性を表現することから,骨ミネラルの存在量を示す骨密度とは本質的に異なる.配向性は,骨代謝と密接に関わる一方で,尿毒症においては,配向性は骨代謝とは異なる機序で変化する.本稿では,アパタイト配向性について解説するとともに,骨代謝と尿毒症のアパタイト配向性との関係性について,筆者らがこれまでに得た知見を紹介する.

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ナノインデンテーションによる骨の力学的測定は,骨試験片寸法や形状の制限が少なく,微小領域の測定ができるため,材料学的に不均質である骨の弾性率および硬さなどを求めるうえで有効な方法である.ここでは,筆者の研究グループがウシ皮質骨を対象にナノインデンテーションを用いて力学的特性評価を測定した例を紹介し,測定法の原理,試験片加工,測定結果および測定で留意すべき点などについて述べる.

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レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系(renin-angiotensin-aldosteronesystem;RAAS)は慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)により著しく活性化され,高血圧のほか,CKD に関連した種々の病態に関わる.RAAS は骨代謝異常にも関連し,CKD による骨材質特性の異常にも影響することが考えられる.臨床的にRAAS 阻害薬の使用は透析患者の骨折発症の減少に関連することも示唆されており,RAAS への介入は骨粗鬆症治療が十分行えないCKD,透析患者に有効な治療となりうる可能性がある.

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慢性腎臓病患者の骨脆弱性は広く知られており,その機序は多岐にわたる.なかでも,Ⅰ型コラーゲンの修飾性変化を介した骨材質特性の変化の結果生じる「骨脆弱性」は非常に興味深い.骨を形成するコラーゲンの架橋は「酵素依存性架橋」と「終末糖化産物架橋」に分けられるが,腎機能が低下すると,酵素依存性架橋の減少と終末糖化産物架橋の増加がみられる.原因として,尿毒症物質の蓄積,高ホモシステイン血症,ビタミンD 活性化障害,酸化ストレスの亢進などさまざまな因子が関与することが報告されている.本稿では腎機能低下によって生じるⅠ型コラーゲンの修飾ならびに骨材質特性の変化をコラーゲン架橋の変化を中心に概説する.

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2017 年度ASN Kidney Week(New Orleans)において,“Bone, victim orculprit?”という興味あるセッションがあった.この課題について再考してみたい.PTH 依存性の骨病変を生贄として捉えるならば,その元凶はPTH であり,calcitriol,その他の活性型ビタミンD アナログ,リン吸着薬,カルシミメティックス,PTX など,また骨吸収を抑制するdenosomub など多様な治療介入により,わが国の透析患者において重篤な,制御できない二次性副甲状腺機能亢進症による線維性骨炎(osteitis fibrosa)を目にすることはほとんどない.この観点からは“生贄を出さない”という治療戦略は成果を上げていると考えることができよう.

連載 Co-medical staffsのためのROD

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1.透析患者では…味覚障害がきわめて多い

味覚障害の検査は,以前には試験液の滴下法による味覚テストが行われた.近年ではこれが濾紙ディスク法に変わり,これは4 種の味質を5 段階濃度で含む濾紙を舌に貼り付けて判定するもので,それぞれの味質の識別能を評価できる.現在では電気味覚計も使用され,味質は問わないが識別能を定量的に測定できる.さらに舌乳頭をマイクロスコープで拡大観察し,乳頭の萎縮や癒合,舌溝の開大,血流の状態などを観察して,病態を推計する.20 年前に滴下法で検討した結果では,筆者の施設の透析患者で味覚障害を呈する頻度は12.2 %もあった.

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目次

投稿規定

編集後記

基本情報

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腎と骨代謝
32巻1号 (2019年1月)
電子版ISSN:2433-2496 印刷版ISSN:0914-5265 日本メディカルセンター

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