腎と骨代謝 32巻2号 (2019年4月)

特集 ホルモンによる骨代謝の制御

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骨は,生体の保持やミネラル代謝調節など,多様な機能を有する臓器である.これらの骨の機能は,骨が硬組織であることに加え,骨髄を内包すること,さらには骨に存在する多種類の細胞の機能連関が存在することにより可能となっている.各種ホルモンは,これらの細胞の生理的な機能調節に必須である.また,骨自身もホルモンを産生し他臓器の機能を制御することが明らかにされてきた.さらに,グルココルチコイドの骨代謝に対する生理的機能は必ずしも明らかではないものの,グルココルチコイド過剰は,骨代謝に重大な影響を与えうる.このように,内分泌系と骨代謝は多面的に連関している.

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成長ホルモン/インスリン様成長因子Ⅰ(GH/IGF-Ⅰ)は骨の成長だけではなく,生涯にわたって骨密度,骨質の維持,骨折予防に重要な働きをしている.GH/IGF-Ⅰは分泌低下だけではなく,過剰でも悪影響が生じる.分泌過少の成人GH 分泌不全症,過剰の先端巨大症を早期に診断評価し,合併症も含めた適切な治療が重要である.

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甲状腺ホルモンは,骨格系の成長,骨塩量の獲得,および骨リモデリングに関わる.活性型甲状腺ホルモン(T3)の骨格系に対する作用は,おもに甲状腺ホルモン受容体 α(TRα)を介する.甲状腺ホルモン作用不全は,小児期では骨成熟遅延を伴う成長障害をきたし,成人期では骨リモデリング障害と骨折リスクの上昇をもたらす.

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エストロゲンは,性別にかかわらず,骨の成長,成熟,老化に関与するホルモンである.思春期には骨の成長の加速,骨端線の閉鎖に関わっており,身長を決める因子となる.また,思春期から老年期に至るまで,エストロゲンは骨量や骨質の維持に関わっており,閉経後女性における骨量減少やエストロゲン補充による骨折リスク低下は,その効果を示している.骨保護効果のメカニズムは,細胞種特異的なエストロゲン受容体欠損マウスの解析などより,破骨細胞および骨芽細胞を標的とした作用が明らかにされている.また骨質に対する作用は,骨組織における酸化ストレスの低減が重要と考えられる.さらに,免疫系や消化管,中枢神経系を介する間接的なエストロゲンの骨代謝への影響も示唆されている.

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血清卵胞刺激ホルモン(FSH) 値は女性において閉経前から上昇し,その後長期にわたって高値を維持する.骨量の減少する時期は血清FSH 値の上昇する時期と一致するが,それは卵巣機能の低下によって説明しうると考えられてきた.しかし,2006 年にZaidi らの研究グループがFSH 受容体を欠損させたマウスでは骨量は低下しないと報告したことで,FSH は骨代謝の直接的な制御因子の一つであると捉えられるようになった.以降,FSH と骨代謝に関する基礎研究が進み,現時点では「FSH は破骨細胞に存在するFSH 受容体に結合し,MEK/Erk やAkt のリン酸化を介したnuclear factor kappa B(NFκB)の活性化によって骨吸収を促進する」というメカニズムが想定されている.

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男性ホルモンであるアンドロゲンはアンドロゲン受容体に作用して,標的遺伝子の発現によって生理活性を発揮する.同時にアンドロゲンであるテストステロンは,女性ホルモンである17β エストラジオールの前駆体でもあり,性ステロイド生合成機構からも,アンドロゲンの作用を理解することが必要である.ヒトおよびマウスにおけるこれまでの研究から,アンドロゲンの骨量維持作用は,直接的および間接的な作用の総和であることを理解する必要がある.

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副甲状腺ホルモン(PTH)は,腎におけるカルシウム(Ca)再吸収の促進,ビタミンD 活性化促進,骨からのCa 動員により血清Ca 濃度の上昇に寄与する.一方,PTH フラグメントの間歇投与により海綿骨形成作用も知られており,骨粗鬆症患者における治療薬として用いられている.

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ビタミンD は,骨の健康のために必須の栄養素で,その作用が不足すると,骨の石灰化不良を特徴とするくる病・骨軟化症が発症する.また,ビタミンD は血清カルシウムを維持するためにも必要で,その作用が不足すると,低カルシウム血症をきたす.ビタミンD は副甲状腺ホルモン(PTH)と協調的に作用する.ビタミンD は,リンを上昇させる作用も有するが,この作用は,PTH,線維芽細胞増殖因子23(FGF23)と拮抗する.食物として摂取されたビタミンD および皮膚で生合成されたビタミンDは,まず肝臓において25 位が水酸化されて25(OH)D となり,さらに,腎臓において1α 位が水酸化されて,活性型ビタミンD である1α,25(OH)2D となる.ほとんどのビタミンD の作用は,核内受容体ファミリーに属するビタミンD 受容体を介して発揮される.世界的にビタミンD 欠乏症および不足症の増加が認められ,その対策の必要性が提唱されている.

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線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor;FGF)23 は,生体のリン代謝調節に中心的な役割を果たす骨産生ホルモンである.リンはハイドロキシアパタイトの構成成分として,骨石灰化に必須のミネラルである.FGF23 の作用が過剰となると低リン血症を呈し,くる病・骨軟化症が惹起される.一方,FGF23 の作用が障害されると高リン血症を呈し,腫瘍状石灰沈着症が惹起される.また,慢性腎臓病(chronickidney disease;CKD)では,早期よりFGF23 が上昇し,CKD-MBD(CKD-mineraland bone disorder)の病態形成に関与する.以上のように,FGF23 を介したリン代謝制御は,正常な骨代謝調節に必須の機構である.FGF23 による低リン血症性くる病・骨軟化症に対して新規治療薬が登場するなど,FGF23 に関する研究・開発は進歩が著しい.

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骨代謝は骨形成と骨吸収のバランスにより維持されている.骨代謝の調節は古典的な内分泌系による調節であると考えられてきたが,最近の研究により,他の臓器によっても制御されていることが明らかとなってきた.脂肪細胞は従来から,エネルギー貯蔵臓器として考えられてきたが,レプチンの発見により,ホルモンを分泌する内分泌器官であると認識されている.さらに,レプチンが神経系を介して,骨代謝を制御することが示され,脂肪組織と骨との臓器連関が注目されている.

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サルコペニアと骨粗鬆症に共通するメカニズムとして,筋と骨の相互作用(筋・骨連関)の関与が注目されている.骨格筋から分泌される種々のマイオカインは,骨代謝に影響を及ぼすことが明らかになってきた.筋量を減少させる因子であるマイオスタチンは,破骨細胞形成促進や骨芽細胞分化抑制により骨量を減少させる.フォリスタチンはマイオスタチンの阻害因子であり,重力変化による筋量と骨量の調節に寄与することが示唆される.アイリシンは運動により骨格筋から分泌され骨量を増加させるマイオカインであり,卵巣摘出による閉経後骨粗鬆症マウスでは骨細胞性骨融解に寄与することが示唆された.オステオグリシンは骨代謝を負に調節するマイオカインであることが示唆されている.骨代謝に影響を及ぼすマイオカインの研究を通じて,骨粗鬆症とサルコペニアの治療薬開発に繫がることが期待される.

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内因性の生理活性ペプチドであるナトリウム利尿ペプチドファミリーのメンバーの一つ,C 型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)には,その生物活性を発来する特異的受容体であるB 型ナトリウム利尿ペプチド受容体(NPR-B)と,ナトリウム利尿ペプチドファミリー全般のクリアランスに働くC 型ナトリウム利尿ペプチド受容体(NPR-C)の二つの受容体が存在する.CNP はNPR-B を介して内軟骨性骨化により形成される骨の伸長を強力に促進するが,最近,NPR-C の特異的リガンドであるオステオクリンが,NPR-C に結合することによってCNP を増加させ,最終的に骨伸長を促進することが明らかになった.CNP/NPR-B 系の賦活化は骨伸長障害に対する治療戦略として期待されているが,オステオクリンやそのアナログによるNPR-C の修飾も,その活性を調節する新たな系として臨床展開が期待される.

巻頭言

骨粗鬆症治療の進歩 松本 俊夫
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今世紀に入ってからの骨粗鬆症治療薬の進歩には目覚ましいものがある.2001 年に強力なビスホスホネートであるアレンドロネートの連日製剤が認可され,翌年にはリセドロネートの連日製剤,2004 年には初めてのSERM(選択的エストロゲン受容体モジュレータ)製剤ラロキシフェンが認可された.そして2006 年と翌年にアレンドロネートとリセドロネートの週1 回製剤が相次いで認可され,骨折防止効果の明確なエビデンスを備えた骨粗鬆症治療薬が広く使用されることとなった.さらに2009 年には国内の臨床試験で初めて骨折防止効果を示した強力な国産ビスホスホネート製剤ミノドロン酸の連日製剤,2010 年新規SERM 製剤バゼドキシフェン,そして2011 年にはミノドロン酸の月1 回製剤と,骨折防止効果を証明した初めての活性型ビタミンD3 製剤エルデカルシトールが承認された.2010 年には骨形成促進効果を示す初めての薬剤としてテリパラチド連日皮下注製剤,2011 年には週1回皮下注製剤が承認され,骨粗鬆症治療薬の選択肢が一挙に拡大した.2013 年には骨粗鬆症治療薬として初めての生物製剤で強力な骨吸収抑制効果を示す抗RANKL 抗体デノスマブが登場し,ビスホスホネート製剤もイバンドロネートの月1 回静注製剤,2016 年には年1 回の静注で強力な骨吸収抑制効果を示すゾレドロン酸が承認されることとなった.

連載 Co-medical staffs のための ROD

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慢性腎臓病(CKD)での貧血には鉄欠乏を補正しつつエリスロポエチン製剤(rHuEPO)投与を行うが,一部では「rHuEPO 投与に抵抗する腎性貧血」が存在する.そのような例では,一つには亜鉛不足が想定され,実際に亜鉛を投与することで問題が解決する例が存在する.ヘモグロビン値の増加はもとより,erythropoietin responsivenessindex(ERI)も改善する.これは前回述べたごとく,亜鉛欠乏の症状の一つに貧血があることを考えればうなずけることであろう.

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目次

投稿規定

編集後記

基本情報

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腎と骨代謝
32巻2号 (2019年4月)
電子版ISSN:2433-2496 印刷版ISSN:0914-5265 日本メディカルセンター

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