臨牀透析 41巻1号 (2025年1月発行)

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特集　透析患者の糖尿病治療

1．糖尿病透析患者における血糖管理の重要性と方法田原　稔久 , 和田　淳 41巻1号 , 2025年1月 , pp.7-11

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「血液透析患者の糖尿病治療ガイド 2012」が約11年ぶりに改訂される．グリコアルブミンが糖尿病透析患者における予後予測への有用性が示されたことで，透析導入後も良好な血糖管理が重要であると改めて示唆された．一方で，透析患者は年々高齢化の一途をたどり，透析に伴う低栄養を背景としたサルコペニア・フレイルなどの課題も注目される．近年，CGM（continuous glucose monitoring）や新規糖尿病治療薬も登場し，低血糖リスクに着目した質の高い血糖管理が期待されるなか，血糖管理だけでなく栄養管理も併せた総合的な治療が求められる．

2．透析患者の糖尿病治療ガイド―改訂のポイント阿部　雅紀 41巻1号 , 2025年1月 , pp.12-17

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糖尿病を合併した透析患者数の増加を背景に，日本透析医学会は2013年に「血液透析患者の糖尿病治療ガイド2012」を発刊した．これまで用いられてきたHbA1cは透析患者では血糖管理状況を正確に反映できないことが明らかとなり，世界に先駆けてグリコアルブミンを透析患者の血糖管理指標として採用したことも注目された．その発刊から現在まで約11年が経過した．この間，透析患者の高齢化が進行し，現在では透析患者の栄養障害やフレイル・サルコペニア対策などが注目されている．また，新しい治療薬やデバイスが登場し，血糖管理に関する成績もいくつか報告されてきた．本治療ガイドでは，腹膜透析患者の糖尿病管理なども新たに取り入れ，「透析患者の糖尿病治療ガイド2025」として作成が進んでいる．

3．透析患者における糖尿病の診断と血糖値の評価豊田　雅夫 41巻1号 , 2025年1月 , pp.18-24

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透析患者における糖尿病診断は，HbA1c値が赤血球寿命や腎性貧血などの影響で偽性低値を示すため，血糖値（空腹時血糖値，随時血糖値，75g経口糖負荷試験）を組み合わせて診断を行う必要がある．血糖コントロール指標としては，HbA1c値に比べ生命予後の予測にも優れるグリコアルブミン（GA）値が推奨される．さらに，詳細な血糖変動の把握には持続血糖測定（CGM）が有用であるが，診療報酬の要件などの課題が存在する．そのため透析前血糖値や透析終了時血糖値の測定が重要であり，とくに透析終了時血糖値90 mg/dL未満は透析起因性低血糖のハイリスクと判断される．透析患者では低血糖や高血糖のリスクに配慮した個別の対応が求められる．

4．透析患者における血糖管理（1）食事療法北島　幸枝 41巻1号 , 2025年1月 , pp.25-30

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透析患者の食事療法の目的は，良好な栄養状態を保ち，合併症の発症および重症化を防ぐことである．実際には，患者に適したエネルギー，たんぱく質，食塩，水分，カリウム，リンの摂取方法を指導するが，糖尿病透析患者では，大血管症や細小血管症の進展抑制を目的に血糖管理も行わなければならない．しかし，減塩を基本にエネルギーや栄養素の摂取バランスを考えると，透析患者と糖尿病透析患者の食事療法に大きな違いはない．透析患者の血糖管理においても，画一的な食事指導ではなく，患者の食生活に寄り添い，患者が実践できる個別の食事療法を提案することが最も重要である．

4．透析患者における血糖管理（2）運動療法三浦　平寛 41巻1号 , 2025年1月 , pp.31-36

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透析治療において糖尿病治療は重要であり，運動療法は糖尿病の基本的治療の一つである．糖尿病患者への運動療法として，有酸素運動とレジスタンス運動が推奨されており，運動時間や量，強度の増加とHbA1cの低下効果は相関する．糖尿病合併透析患者では，高齢化，サルコペニアやフレイルの合併，運動習慣や身体活動量の低下などから血糖降下効果以外にも運動療法の意義はきわめて大きい．透析患者でも有酸素運動とレジスタンス運動のどちらも長期間継続して行うことでインスリン感受性やインスリン抵抗性の改善から血糖降下効果が期待できる．ただし，運動誘発性低血糖に留意しながら実施することが求められる．

4．透析患者における血糖管理（3）経口糖尿病薬治療岡田　定規 41巻1号 , 2025年1月 , pp.37-42

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透析患者において禁忌とされる経口糖尿病薬が多い一方，DPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬など透析患者においても有用な経口糖尿病薬も存在する．これらの薬剤は単剤での低血糖リスクは低く，透析患者の血糖マネジメントにおいて有効性・安全性が報告されている．透析患者の高齢化を背景にインスリン治療を実施することが困難な患者も多く存在するため，糖尿病合併透析患者への経口糖尿病薬について適応と限界を理解しておくことが重要である．

4．透析患者における血糖管理（4）GLP-1受容体作動薬森岡　与明 41巻1号 , 2025年1月 , pp.43-49

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GLP-1受容体作動薬は，低血糖リスクや体重増加を伴わない血糖コントロール改善効果および心血管危険因子の改善効果を有し，2型糖尿病の治療薬として広く使用されている．近年の大規模臨床試験の成績は，心血管リスクの高い2型糖尿病患者におけるGLP-1受容体作動薬による心血管・腎アウトカムおよび生命予後の改善を示唆している．2型糖尿病を有する透析患者におけるGLP-1受容体作動薬の使用成績については報告が限られるが，血糖管理および体重・体液管理における有用性は期待できる一方で，嘔気・嘔吐など消化器系副作用のリスクも高く，とくに高齢者や非肥満者で過度な体重減少をきたさないよう，安全性に十分な注意を要する．

4．透析患者における血糖管理（5）インスリン治療田中　伸枝 41巻1号 , 2025年1月 , pp.50-57

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透析患者のうち糖尿病患者の占める割合は高く，使用可能な経口糖尿病薬が増えてきているものの，現場でインスリン療法を行う機会は少なくない．透析患者においては，インスリン・クリアランスの低下や尿毒症物質によるインスリン抵抗性の増大などにより，非透析患者とは糖代謝が異なるため，インスリン量の調整が必要となる．さらに，インスリン製剤には発現時間，作用時間が違うさまざまな種類があり，透析患者の血糖変動に合った薬剤を選択することが重要である．また，腎不全状態ではHbA1cが血糖の指標にならないこともあり，グリコアルブミンや血糖自己測定などの測定が必要となってくる．近年では持続血糖測定（CGM）などの測定器も普及してきており，ソフトウェアのアプリケーションなども併用したさまざまな血糖管理の方法がある．

5．合併症の予防と治療（1）糖尿病性網膜症喜多　美穂里 41巻1号 , 2025年1月 , pp.58-63

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糖尿病網膜症は，成人中途失明原因3位になったとはいえ，まだまだ無治療のまま放置されている症例もあり，受診の啓発が必要である．糖尿病網膜症に対する検査は，OCTをはじめとする無侵襲検査の開発によって進化した．また，治療に関しても，硝子体手術の小切開化，デジタル化，眼内内視鏡の併用などによって眼にやさしい手術が可能となった．これらは，透析患者にとっても好ましいことと考えられる．

5．合併症の予防と治療（2）糖尿病性神経症大石　真莉子 41巻1号 , 2025年1月 , pp.64-69

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糖尿病患者の約30％に症候性の末梢神経障害が合併するとされる．糖尿病性神経障害のなかでも糖尿病多発神経障害（DPN）が最多であり，DPNには，遠位対称性多発神経障害（DSPN）と，糖尿病性自律神経障害（DAN）が含まれる．DSPN，DANはいずれも進行期にはADL・QOLの低下につながるが，他の糖尿病の合併症に比較して臨床的に見逃されたり，積極的な治療介入がなされていない場合も多い．DSPNは下肢遠位部を中心に左右対称性の感覚障害を生じることが特徴であり，これらの神経障害の特徴をとらえ，適切に診断・治療介入を行うことが重要である．

5．合併症の予防と治療（3）心血管合併症藤﨑　毅一郎 , 中俣　悠亮 , 西田　明弘 , 沢田　雄一郎 , 岡村　のぞみ , 下河　舞子 41巻1号 , 2025年1月 , pp.70-75

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本稿では，糖尿病を有する透析患者における心血管合併症の予防と治療について概説した．日本透析医学会の統計により，現在の透析患者の主要死因は感染症と心不全であり，心血管疾患が引き続き高いリスク要因であることが示されている．糖尿病を有する透析患者は，とくに駆出率維持型心不全（HFpEF）や冠動脈石灰化，脳血管障害の発症リスクが非糖尿病合併透析患者に比べて高く，冠動脈病変も進行しやすい．心不全に対する治療では，透析患者へのエビデンスが限られるものの，β遮断薬などの使用が考慮されている．脳血管障害予防では，血圧や体液管理が重要であり，今後もより効果的な治療法が求められている．透析患者における合併症発症に留意するとともに，保存期腎不全期における糖尿病性腎症の進行抑制と心血管疾患管理が重要である．

5．合併症の予防と治療（4）糖尿病透析患者の足病変治療松井　瑞子 41巻1号 , 2025年1月 , pp.76-81

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糖尿病透析患者の足病変は容易に潰瘍化しやすく，難治性になりやすい．早期発見とチーム医療による，早急な治療介入が有益である．創傷治療に関しては2020年にconsensus documentが発表されたwound hygieneに基づいて創傷処置を行っている．Wound hygieneは非常に特別なことではないが，バイオフィルムをしっかり除去し，創が治癒しやすくするための環境づくりをし，それを比較的短期間にしっかりと繰り返して行うという点が非常に有益である．

5．合併症の予防と治療（5）フットケア矢野　晶子 41巻1号 , 2025年1月 , pp.82-87

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透析患者の原疾患で最も多いのは糖尿病性腎症である．また年々高齢化が進んでおり，長期透析患者も増加している．そのため動脈硬化病変を併発している患者は多く，2020年には四肢切断した患者は1万人を超えた．四肢切断した患者はADLが低下し，生活環境も大きく変化する．そのような状況にならないためには，患者自身のセルフケア，透析施設での観察やケアなど予防的フットケアが重要となる．

6．地域連携と多職種連携赤司　朋之 41巻1号 , 2025年1月 , pp.89-94

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糖尿病性腎症は，透析導入原因疾患の第1位である．糖尿病発症から腎症発症，さらに透析に至った場合，医療機関の間での連携内容は大きく変化してくる．腎症重症化予防の観点からは，早期から地域の医療機関と連携して，リスクの高い糖尿病性腎症患者を抽出し介入を行うことが必要である．また，透析準備期となれば，実質的な主治医が透析を実施する医師へ移行するための連携が重要となる．さらに透析開始後も，血糖・合併症・併存症の管理においては，透析実施機関と糖尿病内科との連携が継続される．本稿では，それぞれのステージでの地域連携の在り方を考察する．

7．糖尿病透析患者の看護・介護のポイント―網膜症のある患者・足病変のある患者小江　奈美子 41巻1号 , 2025年1月 , pp.95-99

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日本透析医学会の報告では，2022年新たに37,039人が透析導入となった．導入患者の原疾患で最も多いのは糖尿病性腎症である．腎代替療法が必要な糖尿病患者の血糖コントロールは重要である．網膜症によって視力障害をきたした場合，日常生活の安全を保つことが第一となる．視力障害の程度を日常生活レベルで把握・確認し，家族や社会的支援を含めた支援体制についても確認や調整が必要となる．糖尿病透析患者の足病変から足を守ることの基本は毎日の足の観察であり，早期発見・早期治療を行うことが重要である．

OPINION

創刊40周年に想う中山　昌明 41巻1号 , 2025年1月 , pp.5-6

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透析食のレシピ

一口サイズで食べやすい　お麩のフレンチトースト風谷合　真紀 41巻1号 , 2025年1月 , pp.100-100

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ケース・スタディ

腹膜透析患者の排液混濁を起こした1例岡本　茉樹 , 清水　泰輔 , 新井田　苑佳 , 森本　浩太 , 小川　智也 , 前嶋　明人 , 長谷川　元 41巻1号 , 2025年1月 , pp.101-106

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症例：50歳代女性　既往歴：特記事項なし　家族歴：特記事項なし　生活歴：喫煙歴なし　アレルギー：エタノール，金属　現病歴：X－12年に右腎サンゴ状結石と左尿管結石，Cr 3.0 mg/dLの腎後性の腎機能障害を指摘されていた．同年に左尿管結石に対して経尿道的レーザー砕石術が施行された．X－9年4月，腎機能障害のため当科紹介．右腎サンゴ状結石に対して当科泌尿器科を紹介し，同年9月に右腎サンゴ状結石に対して経皮的腎結石破砕術および経尿道的尿路結石破砕術を施行した．術後は腎機能障害の改善を認めず，保存期腎不全として外来加療を継続していた．徐々に腎機能障害は進行し，X－1年4月にテンコフカテーテルを挿入し，腹膜透析を導入した．表1に示す条件で，安定して腹膜透析を行っていた．X年2月10日に排液混濁を認め，2月17日受診時にも継続していた．

症例による透析患者の画像診断

感染性肝囊胞に対して超音波内視鏡下ドレナージを施行した維持透析患者の1例日南　凜子 , 野中　枝理子 , 中島　知太郎 , 池田　裕貴 , 山﨑　政虎 , 福田　誠 , 宮園　素明 41巻1号 , 2025年1月 , pp.107-111

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多発性囊胞腎を原疾患とする維持透析患者は，しばしば囊胞感染を合併し，治療に難渋することがある．今回，維持透析患者に合併した感染性肝囊胞に対して超音波内視鏡下ドレナージを行い，治療が奏効した1例を経験したため報告する．

透析患者の薬，どう使い分ける？

経腸栄養剤と透析時静脈栄養（IDPN）治療剤飯田　倫理 , 田中　舞 , 蒲澤　秀門 , 細島　康宏 41巻1号 , 2025年1月 , pp.112-118

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医療の進歩により透析患者の長期生存が可能になったことや，高齢になってから透析導入となる症例が増加していることなどから，慢性透析患者の高齢化が進んでいる．透析患者は尿毒症による食欲不振や慢性炎症状態にあることや，透析排液への栄養素の喪失などから栄養障害をきたしやすい状態にある．ここに高齢化が加わり，慢性透析患者の栄養障害は非常に大きな問題となっている．

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目次 41巻1号 , 2025年1月 , pp.2-3

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ご案内 41巻1号 , 2025年1月 , pp.57-57

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ご案内 41巻1号 , 2025年1月 , pp.94-94

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前号ご案内・次号予告 41巻1号 , 2025年1月 , pp.119-119

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編集後記 41巻1号 , 2025年1月 , pp.120-120

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基本情報

臨牀透析
41巻1号
(2025年1月発行)

電子版ISSN：2433-247X 印刷版ISSN：0910-5808 日本メディカルセンター

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