臨牀透析 37巻11号 (2021年10月発行)

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特集　シームレスなCKD 対策に向けての看護実践

CKD ステージ別患者の看護目標概要中原　宣子 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1204-1204

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企画に当たって中原　宣子 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1207-1207

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1．CKD 進展予防からRRT 導入まで（1）看護実践の考え方中村　雅美 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1209-1214

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CKDの概念が導入されて以降，保存期からの看護介入の重要性が浸透してきている．CKD看護実践は，患者がCKDとともに生活し，CKDとともにその人らしく生きていくことを支援することが基盤となる．CKD看護の中核は，患者の「病いの体験」の理解であり，それらを引き出し，CKDを抱えながら生きていく方策を患者とともに考えていく姿勢が求められる．セルフマネジメント支援，意思決定支援など，さまざまなCKDステージの局面で看護が提供されているが，医療と生活の両方に専門性をもつ看護師は，患者と協働的パートナーシップを築き，患者にとってのより良い生活とは何かを常に意識することが必要である．

1．CKD 進展予防からRRT 導入まで（2）看護の役割内田　明子 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1215-1220

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慢性腎臓病の重症化予防，予後・QOLの改善のため，腎臓病療養指導士の養成が始まった．対象職種は看護師・保健師，管理栄養士，薬剤師である．現在1,665名が認定され，うち6割が看護職である．腎臓病療養生活支援の看護師の視点として，①対象である人を生活者としてとらえ，患者の望む暮らしと治療の調和を整えること，②医療の評価者は患者自身で患者の主観的評価が重要であること，③患者には自己決定の権利があり，セルフケアが治療結果を左右するということが挙げられる．腎臓病療養指導士の看護の役割は，前述の看護の視点をベースに，他職種の異なる価値観や視点を尊重した高度なコミュニケーションによって，効果的な活動を推進することである．

1．CKD 進展予防からRRT 導入まで（3）看護体制づくり松木　理浩 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1221-1226

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CKDにおける進展予防から腎代替療法（RRT）導入までの期間では，腎臓専門医への紹介はもとより，それに関わる腎臓専門看護師の介入も重要な役割を示しており，とくにCKD患者の日常生活についての細かな聴取やそれに伴う改善指導では大きな力を発揮している．そのため，腎臓専門看護師の育成とその看護師が活躍できる場をつくらなければならない．また，CKD療養指導には医療チームとしての介入が効果的であるため，看護師はチームの一員としての役割を担う必要がある．

2．CKD 進展予防からRRT 導入までの患者支援（1）非高齢者への看護実践― 成人期にあるCKD 患者に対するシームレスなチームアプローチによる支援能美　亜紀子 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1227-1232

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家庭内でも社会的にも役割が多い成人期の慢性腎臓病（CKD）患者がCKD進展予防の療養生活に加えて，腎代替療法（RRT）も視野に入れることとなった事例を紹介する．入院前から介入する各部門の看護師が患者の思いや価値観を傾聴し，共有し，継続した看護介入を行った．また，医師や栄養士など他の専門職ともエンド・オブ・ライフケアの視点をもってシームレスに情報を共有し，チームアプローチで患者にとって的確な情報提供をしたことで，患者が現状のニーズに合ったRRTを選択でき，生活の再構築につながった．シームレスな看護実践，チームアプローチは成人期におけるCKD患者のセルフマネジメントの変容とRRT選択後の生活の再構築に有用だった．

2．CKD 進展予防からRRT 導入までの患者支援（2）高齢者への看護実践黒田　沙織 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1233-1237

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CKD進展予防において，外来看護師は高齢者の身体的特徴や，生活背景を知ったうえで，本人が地域で生活できるように家族を含めて支援する必要がある．しかし，後期高齢者は，加齢に伴う身体機能変化や新たな疾患の併発や心理・社会的環境の変化などから，容易に療養生活の継続が難しくなる．高齢者の重症化予防や介護予防を担う外来看護師は，院内だけでなく医療と介護を連携し，支援体制をつくることで外来を定期的に受診する高齢者の療養生活を支えることができると考える．

2．CKD 進展予防からRRT 導入までの患者支援（3）超高齢者への看護実践不動寺　美紀 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1238-1243

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腎代替療法選択は，その後の人生に大きな影響を及ぼす．とくに超高齢者にとっては人生の最終段階で，新たな課題に向き合うことになるが，長い人生経験で培われた適応力や強みをもっている．患者との共同意思決定（shared decision making）では，医療者は患者が意思決定に必要な情報を提供し，患者から十分な情報を収集するなかで，患者の人生観や価値観をしっかり聴くことを心掛けたい．

2．CKD 進展予防からRRT 導入までの患者支援（4）患者家族への看護実践中村　理恵 , 山内　美希 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1244-1248

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慢性腎臓病（CKD）治療の目的は，末期腎臓病と心血管疾患の発症・進展抑制にある．そのためには集学的治療が必須となり，薬物療法とともに多職種による生活指導・栄養指導・服薬指導などのチーム医療が重要である．高齢化社会にともない，患者を支える家族への支援はこれからさらに必要とされていく．CKD保存期から腎代替療法（RRT）導入まで患者の意思決定プロセスにおいて医療者と患者が相互関係を保ち，情報を共有しながら進めていく共同意思決定（SDM）を実践し，患者や家族の希望に沿った治療選択ができるよう支援することが重要である．

2．CKD 進展予防からRRT 導入までの患者支援（5）糖尿病患者への看護実践今井　早良 , 中田　由紀 , 長谷川　友紀 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1249-1254

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本邦の透析導入の原因疾患第1位は糖尿病性腎症であり，CKD進展予防には糖尿病患者への早期介入が重要である．糖尿病性腎症を合併する糖尿病患者に対し，当センターでは医師や管理栄養士と協働し「糖尿病生活相談外来」「透析予防外来」「腎不全・PD外来」の各外来において，CKD進展予防を目的に看護を展開している．そのなかで，看護師は常に患者に寄り添い，身近な支援者として患者の療養行動を支援している．残存腎機能が低下し腎代替療法の選択を余儀なくされる患者に対しては，心理的支援と共に，患者が主体的に治療法を選択できるよう支援することも重要である．

2．CKD 進展予防からRRT 導入までの患者支援（6）CKD 対策における自己効力理論を用いた看護介入鈴木　幹子 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1255-1260

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透析導入の患者の自己管理不足の原因を探り，バンデューラの自己効力感の概念を用いて，不得手に焦点を当て動機付けをした．入院時・退院時・退院3週間後の面談，体重増加率にセルフ・エフィカシー尺度（SE）を用いてセルフケア能力を分析した．結果，不得手項目だけでなく全体の自己効力感が向上し行動変容に繫げることができた．入院中から自宅でも継続可能な具体的方法を習慣化することで，実行できる達成感が自己効力感を高め，自己管理意欲を引き出せた．しかし退院後は自己管理の必要性は理解できていたが，継続が困難となった．退院後も自己管理意欲を持続できるように，維持透析施設と連携し，継続した支援が必要である．

3．CKD 進展予防に向けての保健師の活動加澤　佳奈 , 要田　弥生 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1261-1266

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CKD進展予防を目指した保健師活動として，まず地域住民全体の健康課題を把握したうえで，その課題の特徴や優先順位などに応じた保健事業を展開していくことが鍵である．さらに，保健事業を効果的に実施するために保健師は，CKD患者への直接的支援，シームレスで継続的な医療サービス提供体制の構築のための支援といった2方向へのアプローチを実施している．本稿では，CKD進展予防に向けて保健師活動を展開するうえでの考え方，活動の実際について紹介する．

4．CKD 進展予防からRRT 導入までの看護実践（1）外来教育徳元　しのぶ 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1267-1272

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慢性腎臓病（CKD）の治療は，薬物療法や食事・運動など生活習慣に及び，患者の自己管理や行動変容を求められる．末期腎不全になれば，生命維持のために腎代替療法（RRT）を選択することとなり，意思決定の場面が必要となる．この長期的な治療のなかでは，患者が病気に向き合い適応できることが要であり，その基盤には医療者との信頼関係が影響する．日々の外来において，どのように患者に介入し支援しているか，取組みについて紹介し，CKD看護について考えを述べる．

4．CKD 進展予防からRRT 導入までの看護実践（2）教育入院片村　幸代 , 櫻井　律子 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1273-1280

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CKD教育入院は短期間で教育入院パスなどで進められているが，疾患の特徴を考えて，長期的な視野をもって患者・家族の支援をすることが重要となる．教育入院後も外来での継続的な切れ目のないケアを多職種で連携し，情報共有を密に行う．また，変化する病気に対する患者・家族の思い，日常生活に対する思い，療法選択に対する思いなどに十分時間をかけて関わることが必要である．

5．CKD 進展予防に向けての訪問看護活動―在宅療養高齢者への確実な投薬を支援する仕組み住友　明美 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1281-1284

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在宅療養高齢者は，薬の飲み忘れや，不確実なインスリン自己注射が多い．そこで，当ステーションでは，糖尿病の病状安定を促しCKD進展を防ぐために，①確実な服薬とインスリン自己注射を促す工夫，②病院内の専門スタッフとの連携，③在宅を支援する多職種との連携といった三つの取組みを行っている．

6．市民公開講座の開催における看護師の役割―CKD の啓発活動とその効果鈴木　智恵 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1285-1289

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慢性腎臓病（CKD）は早期に対処すれば，重症化を抑制することも可能であるが，初期は自覚症状がない．進行するほど病態は複雑化し，ステージに合わせた食事・薬剤・運動・日常生活などの管理が重要である．十分で安全な治療を実施するには，多職種が各々の役割を果たし，職種間で協力・連携する必要がある．世界的にCKD啓発活動は行われている．しかしCKDが定義されてから約15年と新しい概念であり，一般市民の知名度は低く，啓発活動は急務である．2018年，厚生労働省は腎疾患対策に対して，10年間の検討の結果，①普及啓発，②地域における医療提供体制の整備，③診療水準の向上，④人材育成，⑤研究開発の推進，であると5本柱を提示している．

【特集コラム】CKD 進展予防の効果的な介入―文献レビューから見えること小坂　志保 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1290-1292

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本コラムでは，保存期CKD患者の重症化予防のために看護師や多職種がどのように介入することが望ましいのかを探るため，文献レビューを行った．検索ワードは，chronic kidney disease（NOT dialysis），nursing interventionとし，過去10年以内のRCT（randomized control trial）を中心として検索を行った．42件がヒットし，そのなかから有用と思われた9件について文献レビューを行った．そして，最後に今後どのようにCKD看護に携わっていけばよいかを示す．看護師が保存期CKD患者に対して行った介入のアウトカムとしては，腎機能の維持・改善のみならず，入院率，死亡率，新規末期腎不全（end stage renal disease；ESRD），身体活動量，血圧測定値，知識，QOL（quality of life），自己効力感（セルフエフィカシー）など多岐にわたった．

OPINION

鏡の中でアリスは歌う風間　順一郎 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1205-1206

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ケース・スタディ

透析で除水に難渋した重症心不全の1 例藪下　紗耶香 , 阿佐美　匡彦 , 塚田　弘之 , 古瀬　智 , 田中　旬 , 青木　二郎 , 田邊　健吾 , 三瀬　直文 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1293-1298

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症例：84歳，男性　既往歴：末期腎不全，不安定狭心症，下行結腸癌，腹壁瘢痕ヘルニア，高血圧症，脂質異常症，高尿酸血症　家族歴：父；肺癌　生活歴：喫煙歴；30本/day×44年，飲酒歴；機会飲酒　現病歴：腎硬化症を原疾患とする末期腎不全で4年前から血液透析中の84歳，男性．不安定狭心症に対して過去に複数回の経皮的冠動脈形成術（percutaneous coronary intervention；PCI）施行歴があり，当院循環器内科に通院していた．2年前から労作時呼吸困難を自覚，心エコーで中等度の僧帽弁閉鎖不全症（mitral regurgitation；MR）が指摘されていた．NHYA（New York Heart Association functional classification）分類Ⅱ〜Ⅲの症状が持続しており，精査目的に入院した．

話題・論点

新型コロナウイルス感染症―病院クラスターと透析室の対応笠井　健司 , 後藤　博一 , 柏木　秀幸 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1299-1304

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当院は2020年12月17日の一般病棟入院患者および職員からの新型コロナウイルス感染者発生から，2021年1月30日の院内感染の終息宣言に至るまでに患者78人，職員（委託業者を含む）76人，合わせて154人（静岡県の発表，退院後に陽性が判明した患者を含む）の集団感染，クラスターを経験した．報道によれば当院のクラスターは現在までのところ県内最大といわれている．本稿では当院で経験したクラスター終息に向けての取り組みを報告する．

CKD 患者に推奨されるワクチン接種

おたふくかぜ・三種混合ワクチン藤倉　知行 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1305-1308

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流行性耳下腺炎（おたふくかぜ；以下，ムンプス）は，Mumps orthorubulavirusによる小児の代表的な感染症である．ムンプスは，毎年地域的な流行が周期的に発生し，わが国でも3〜5年周期の流行がみられていた．1989年に，麻しんワクチンの定期接種時に，麻しん・ムンプス・風しん混合（MMR）ワクチンの選択が可能となったことから接種率が上昇し，発症報告数は一時的に減少した．しかし，MMRワクチンに含まれていたムンプスワクチン株による無菌性髄膜炎の発生が社会問題となり，1993年にMMRワクチンの接種は中止され，以降はムンプス単味ワクチンによる任意接種となった．結果，ムンプスワクチン接種率は再び低迷し，ムンプスは4〜5年ごとの全国流行を繰り返した．国立感染症研究所の調査によると，近年のワクチン接種率は30％程度であり，国内血清銀行保管血清を用いた抗体保有率は70％程度で，流行を抑制するために必要な集団免疫率には到達していない．成人の正確な発症状況は不明であるが，6歳未満の患者割合が減少し，10歳以上の患者割合が増加傾向にあり，一定数の成人発症があると推測される．

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目次 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1202-1203

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次号予告・頻出略語一覧 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1310-1310

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編集後記 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1311-1311

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奥付 37巻11号 , 2021年10月 , pp.1312-1312

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基本情報

臨牀透析
37巻11号
(2021年10月発行)

電子版ISSN：2433-247X 印刷版ISSN：0910-5808 日本メディカルセンター

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