臨床雑誌整形外科 63巻10号 (2012年9月)

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高齢者の転倒の実態を把握するため、3年間に入院した65歳以上の大腿骨近位部骨折306例(男68例、女238例)を対象として、同一検者が質問事項を統一して聞き取りを行った。年齢別分布は男女とも80~84歳が最多で、屋内転倒は高齢になるほど増え、場所別では居間、廊下、台所など障害物の少ない場所での転倒が60.9%を占めた。また、転倒の原因別では、加齢現象や運動不足、各種疾患に由来する内的要因によって転倒したものは、段差、照明、路面の状態や履物などの環境に由来する外的要因によるものより高齢で、日常生活動作能力や歩行能力予後が劣っており、内的要因による転倒に強く影響を及ぼす項目としては転倒場所と認知症が挙げられた。転倒予防対策としてはバリアフリーなどの環境整備だけでなく、運動療法による内的因子への介入も積極的に行うべきであると考えられた。

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Duke Simpson(DS)型装具の内側関節裂隙に相当する部分に120°の角度の着いた圧縮発泡ウレタンパッドを接着した装具を考案し、その効果についてウレタンのないDS装具と比較した。内側型変形性膝関節症102例を封筒法によって、52例にはパッド付きDS装具を、50例にはDS装具単独(パッドなし装具)を無作為に割付けて、1日5時間以上10時間以内、4週間の装具装着を指示した。治療前と4週後の日常生活動作、臨床改善率を評価した結果、両群の治療効果に有意差はなかったが、パッドあり群では超音波診断装置で計測した半月板脱出長と臨床改善率との間に有意な正の相関性を認めた。DS装具単独でも固有知覚を高める効果はあるが、パッドを付けることにより、脱出半月板によるメカニカルストレスを軽減する効果が付加される可能性が示された。

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腰痛の疼痛強度を痛みの言語的表現と運動機能障害に基づき0~7の階級値に分類した腰痛強度尺度(LBPIS)の客観性と診断的意義について検討した。腰痛患者312例(平均年齢49.3歳)について、初診時のLBPIS(医師査定値、患者自己査定値)、VAS値、日整会腰痛評価質問票(JOABPEQ)を比較した結果、LBPISの医師値と患者値は有意な相関を示した。また、LBPISの医師値と患者値はともにVAS値と有意な相関を示したが、患者値のほうがVASとの相関性が高かった。さらに、LBPISの医師値と患者値およびVAS値はJOABPEQの腰椎機能障害と相関性が高く、心理的障害との相関性は低かった。簡便で客観性が高く、先験的・直感的に回答可能なLBPISは、本邦における腰痛強度評価法の標準になり得ると考えられた。

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小児両前腕骨骨幹部骨折における鋼線抜去後の再骨折5例(男児3例、女児2例、受傷時平均年齢8.2歳、平均観察期間12.8ヵ月)について検討した。全例に経皮的髄内釘固定を行い、骨癒合が得られたため術後2~3ヵ月で鋼線を抜去したが、受傷後4~6ヵ月に軽微な外力で再骨折を生じた。感染や関節可動域制限などの合併症は認めず、全例再手術後に骨癒合を得たが、1例はKirschner鋼線が刺入された状態で自転車の転倒により再々骨折をきたした。小児前腕骨骨幹部の治療として経皮的髄内釘固定を選択した際には、抜去後の再骨折を予防するためにKirschner鋼線を長期間留置すること、家族に対して抜去後の再骨折について十分な説明を行うこと、抜去後も外固定を継続することや、スポーツ活動を禁止または制限することなどが必要と考えられた。

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PinnacleカップおよびUltametライナーとS-ROMステムを用いてメタル・オン・メタル人工股関節全置換術(MOM-THA)を行った86関節の治療成績を調査した。対象疾患は変形性股関節症74関節、関節リウマチ11関節、大腿骨頭壊死症1関節で、術後観察期間は平均3年6ヵ月であり、X線学的評価と臨床評価を比較した結果、日整会股関節機能判定基準(JOAスコア)、疼痛、ROM、歩行能力、日常生活動作はいずれも術前より有意に改善していた。また、骨溶解やカップ・ステムの弛みを認めた症例や、ストレスシールディングが3度以上の症例はなく、術後合併症として4関節に脱臼を認めたが、再置換には至らなかった。なお、術後2年以上経過してMRIを行った79関節のうち、無症候性の偽腫瘍が疑われた症例が2関節(2.5%)あり、今後も詳細な経過観察を行う必要があると思われた。

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12歳女。右肩関節痛、発熱を主訴とした。特に誘因なく主訴が出現し、前医受診時の単純X線像で明らかな異常は指摘されなかったが、6日後の紹介受診時には右肩関節周囲の腫脹とCRP上昇がみられ、単純X線像、MRIでは上腕骨頭の下方偏位、右肩関節の亜脱臼と肩関節内の著明な関節液貯留を認めた。化膿性肩関節炎を疑って関節穿刺を行い、培養検査でメチシリン感受性黄色ブドウ球菌を認めたため、全身麻酔下に関節切開排膿術、洗浄、デブリドマン、ドレナージと抗生物質の投与を行った。術後経過は良好で、術後3ヵ月現在、右肩関節の可動域制限はなく、亜脱臼位や感染の再燃は認めていない。本例ではMRIで骨髄内への炎症はみられず、血行性に関節内へ感染が進展したと考えられた。

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42歳男。左手尺側の痛みを主訴とした。コントロール不良の糖尿病患者で、飼いイヌに左手尺側を咬まれて受傷し、4日後に紹介受診した。初診時には左手根部尺側に排膿を伴う開放創があり、手掌から前腕遠位に腫脹と発赤がみられ、単純X線像、CTでは小指球部皮下のガス像を認めた。イヌ咬創によるガス壊疽を疑い、直ちに抗菌薬の点滴投与を開始して小指球部の壊死組織のデブリドマンと創の縫合を行った結果、手指の機能障害を認めることなく治癒した。なお、膿の培養からStreptococcus群とPasteurella multocidaが検出されたが、Clostridiumは検出されなかった。動物咬創によるガス壊疽は極めて稀である。

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62歳男。右股関節痛を主訴とした。交通事故にて救急処置を受けた後、骨盤骨折の手術目的で転院となり、画像所見ではJudet-Letournel分類の右寛骨臼両柱骨折、腸骨翼骨折と内板転位19mmを認めた。保存的治療では治療困難と判断し、右大腿からの直達牽引の後、modified ilioinguinal approachを用いて寛骨臼骨折の整復内固定を施行した。合併症は認めず、転位の残存は1mmと良好な整復が得られ、術後7ヵ月で良好な骨癒合を確認した。本術式は従来のilioinguinal approach、modified Stoppa approachに比べてより良好な整復位の獲得と合併症の低減が期待でき、寛骨臼複合骨折に対する整復内固定術として有用な前方アプローチであると思われた。

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症例1は81歳女で、右大腿部痛を主訴とした。症例2は76歳女で、左大腿部痛を主訴とした。症例1は右人工股関節全置換術(THA)、症例2は左THAの既往があり、各々THAの弛みのため再置換術が行われていたが、屋内で転倒して受傷した。X線像所見より、2例は高度の骨脆弱を伴う大腿骨ステム周囲骨折Vancouver分類typeB1と診断し、同部位に頻回の手術歴があることや手術侵襲を加味して腓骨自家骨移植とロッキングプレートを用いた骨接合術を行った。その結果、周術期および術後1年の経過は概ね良好で、腓骨採取部の愁訴は認めていない。本法はimpaction bone graftや再置換などにも併用可能であり、同種骨プレートが使用できない施設においても、骨脆弱を伴うPPFに対する有効な治療法の一つであると考えられた。

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14歳女。左膝痛を主訴とした。特に誘因なく主訴が出現し、受診時には左膝関節の屈曲制限があり、MRIで内側円板状半月板と内側半月板後角部の嚢胞性病変を認めた。半月板嚢腫を伴う内側円板状半月板障害と診断し、内側円板状半月板に対する半月板形成術と、半月板嚢腫に対する関節鏡視下嚢腫部分切除術を行い、屈曲制限と症状は改善した。約9ヵ月後、特に誘因なく右膝痛が出現し、左膝関節と同様の症状とMRI所見を認めたため、半月板嚢胞を伴う内側円板状半月板障害と診断して左膝関節と同様に部分切除と半月板形成術を行った。術後は屈曲制限と症状は改善したが、術後約1年時の両膝関節MRIで両側の内側半月の中節~後節に水平断裂を認めている。

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症例1は18歳女で、歩行不安定を主訴とした。3歳1ヵ月時にRett症候群と診断され、左尖足歩行を認めた。症例2は11歳女児で、歩行困難を主訴とした。3歳2ヵ月時にRett症候群と診断され、可動域(ROM)制限とつかまり立ち時の両側の尖足を認めた。2例はROM訓練や装具療法を継続するも、尖足が悪化したため足関節周囲筋解離術を行い、症例1は術後合併症として原因不明の排尿困難を認めたが、術後9年8ヵ月時点で歩容は安定していた。症例2は術後合併症を認めず、術後4年3ヵ月時点で軽度内反の再発を認めたものの、装具なしで独歩可能となった。

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48歳男。左足関節痛を主訴とした。身長177cm、体重96kg、左アキレス腱断裂の診断で腱縫合術を行い、術後は足関節を自然下垂位とした膝下ギプス固定を行ったが、術後2週を過ぎた頃より左下腿の腫脹とギプスの圧迫感が出現し、続いて呼吸苦を訴えた。ルームエアでの酸素飽和度は95%で、造影CTにて多発肺塞栓と左大腿静脈~膝窩静脈にかけての血栓を認めたため、ヘパリンの点滴静注を開始した結果、2週間の内科治療の後、左下腿の腫脹は速やかに改善した。

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MRI所見の乏しい腰部脊柱管狭窄症の代表例3例を提示し、その病態について検討した。3例は腰痛、両下肢痛・しびれ、間歇破行などの脊柱管狭窄症状を有するが、MRIにおける脊柱管狭窄所見は乏しかった。動的脊柱管狭窄の存在を念頭に置いてミエログラフィーを施行したところ、立位動態ですべりの増強、不安定性、椎間高の減少、側彎、明らかな脊柱管狭窄を認めた。いずれも動的脊柱管狭窄として後方経路腰椎椎体間固定術を行い、症状と歩行障害は改善した。動的脊柱管狭窄は腹臥位、立位など体位の変化の変化によって脊柱管狭窄所見が増強し、背臥位安静のMRIでは脊柱管狭窄所見が乏しくなるため、臨床症状が高度の場合には、単純X線像での不安定性の評価とミエログラフィーによる動的脊柱管狭窄の評価が必要である。

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初診時にLisfranc関節周囲に限局した腫脹と痛みを認めながらも、単純X線像では骨折が不明であった11例のうち、CT検査でLisfranc関節に骨折を認めた9症例(男6例、女3例、受傷時平均年齢35.7歳)について検討した。受傷原因の中で高エネルギー外傷は少なく、多くは階段を踏み外した、走っていて捻ったなど、軽微な外傷で生じており、CT後に再度単純X線像により骨折を診断できたものは1例であった。また、脱臼を伴わないLisfranc関節骨折でも、外固定と免荷を行わなかった症例では、それらを行った症例と比較して腫脹や歩行時痛が遷延していた。単純X線像で不明であってもLisfranc関節周囲に圧痛がある場合には、骨折の存在も念頭に置いてCT検査や外固定・免荷を行う必要があると考えられた。

基本情報

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臨床雑誌整形外科
63巻10号 (2012年9月)
電子版ISSN:2432-9444 印刷版ISSN:0030-5901 南江堂

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