胸部外科 69巻2号 (2016年2月)

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80歳男。狭心症定期検診時の胸部X線像にて右胸部異常陰影を指摘され、当科紹介となった。精査の結果、右肺癌の診断で上葉切除+リンパ節郭清を行った。病理組織学的に原発性肺癌で、術後4日目に敗血症性ショックを呈し、術後5日目の胸腹骨盤CTにて腸管気腫を伴う門脈気腫像が確認された。腹部症状は認めなかったが、術後5日目より禁飲食とし、敗血症性ショックに対し抗菌薬、γグロブリン製剤および強心剤投与を開始し、加えて抗播種性血管内凝固治療も開始した。その後も腹膜刺激症状を認めないため内科的治療を継続し、術後7日目に全身状態は改善し、その後の経過も良好であった。

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78歳女。近医の胸部CTにて右肺Sの結節影を指摘され、当科紹介となった。診断・治療目的に右肺区域切除術を施行し、臨床病期IIIA期の肺癌(低分化腺癌)と診断された。術後11ヵ月に有瘻性膿胸を認め、開窓術を行ったが、第13病日(初回出血9日後)に再び同部位からの出血を認めた。出血部周囲の組織は脆弱であり、縫合による補強止血は困難と判断し、有茎広背筋弁で気管支断端瘻、肺瘻、肺動脈出血部を被覆したが、筋弁は瘻孔部分では生着せず、その後も気管支断端瘻、肺瘻の閉鎖は得られなかった。第34病日(2回目出血の21日後)に3回目の出血をきたしたため、第39病日に金属コイルを用いて肺動脈塞栓術を施行したところ、良好な出血が得られ、気管支断端瘻も消失した。術後23日目に肺瘻、肺動脈出血部に大網被覆術を行い、その後の経過は良好であった。

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58歳男。呼吸困難を主訴に、心エコー所見よりうっ血性心不全の診断にて当院入院となった。心不全加療後の経胸壁心エコーで大動脈四尖弁を指摘され、精査の結果、高度大動脈弁逆流症を伴う大動脈四尖弁が判明し、大動脈弁形成術を施行した。術後経過は良好で、術後8日目に軽快退院した。

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61歳女。遠位弓部下行大動脈人工血管置換術後10.5年目に突然の喀血を生じ、近医の胸部CTにて胸部大動脈瘤破裂と診断され、気管内挿管後に当院搬送となった。搬送時の胸部CT所見より、下行大動脈瘤の肺内穿破と診断し、緊急開胸手術を行った。手術所見では人工血管に3ヶ所の穿孔部位があり、人工血管の約1/2の部位で遮断し、新しい人工血管で置換した。術後約10時間で人工呼吸器から離脱し、経過は比較的順調で術後5週間で独歩退院となり、2年経過した現在も健在である。本症例では、胸部大動脈瘤手術に際して人工血管をラッピングした大動脈瘤壁の石灰化内膜により、遠隔期に人工血管が摩耗して破綻したと考えられた。

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62歳女。1992年8月より全身性エリテマトーデス(SLE)に対してステロイド投与中であった。2012年6月にStanford B型慢性大動脈解離を発症し、当科で経過観察中であったが、2015年3月より体調不良、喉の痛みが出現し、CTにて心嚢液貯留を伴うStanford A型大動脈解離を認め緊急入院となった。既往歴およびCTおよび血液検査所見より、SLEに合併したStanford B型慢性大動脈解離にStanford A型急性大動脈解離を発症したと診断した。Stanford A型急性大動脈解離に対して上行大動脈人工血管置換術を施行し、1ヵ月後にStanford B型慢性大動脈解離に対して胸部大動脈ステントグラフト内挿術を施行した。術後経過は良好で、合併症なく軽快退院した。

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69歳男。発熱を主訴に、近医にて胆管炎疑いおよび敗血症性ショックの診断で緊急入院となった。CTでは肝梗塞を認め、ICU管理下にカテコラミンの持続投与を受け、種々の抗生物質を投与されるも解熱せず、発症17日後に精査目的で当院紹介となった。血液検査・大動脈CT・心エコー・冠状動脈造影所見より、感染性心内膜炎、無症候性心筋虚血と診断し、僧帽弁置換術および冠状動脈バイパス術を施行した。術中にStanford A型急性大動脈解離を発症したが、超低体温循環停止、逆行性持続脳灌流下に上行大動脈人工血管置換術を行い、救命し得た。術後は長期のリハビリテーションを要したが、術後41日目に独歩退院となった。

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66歳男。59歳時に他院にて収縮性心膜炎(CP)と診断され、65歳時より下腿浮腫、呼吸困難が出現し、利尿薬、強心薬の投与を受けるも著効せず、外科治療目的に当科転院となった。臨床経過および画像所見より、NYHA分類III度のCPと診断し、術前体液管理目的としてtolvaptanを内服したところ、NYHA分類はII度まで改善したため、CPに対して心膜切除術、心外膜肥厚の部分切除を行った。術後経過は良好で、退院時に心不全症状は認めなかった。

まい・てくにっく

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45歳男。21歳時に修正大血管転位(ccTGA)、心室中隔欠損(VSD)と診断されたが、著明な肺高血圧を認めたため、根治術の適応はないと判断された。44歳時にふらつきを主訴に当院を受診し、心房細動と完全房室ブロックを認めたが、症状が軽度であったため経過観察となった。今回、失神発作を主訴に一時ペースメーカーを留置し、精査入院となり、ccTGA、VSD、三尖弁閉鎖不全、肺高血圧症と診断された。本例は著明な肺高血圧を認めるものの、酸素負荷による肺血管抵抗の著明な低下や閉塞性肺血管病変を認めなかったことから、ccTGAに対する根治術を行う方針とした。三尖弁には機械弁置換術、VSDにはパッチ閉鎖術、恒久的ペースメーカー植え込み術を施行した。術後経過は良好で、第16病日に独歩退院となった。心胸郭比は術前の66.1%から術後1ヵ月で56.7%へ減少し、Pp/Psは術前の0.74から術後3ヵ月で0.38へ低下した。

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68歳男。検診にて心電図異常を指摘され、精査目的に施行された経胸壁心エコー(TTE)で三尖弁前突に腫瘤が確認され、手術目的に当院紹介となった。術前TTE所見では三尖弁前突に付着した振り子状の運動を呈する9.4×8.5mmの円形腫瘍を認め、診断治療目的に腫瘍切除術を行った。病理組織学的に乳頭状線維弾性腫と診断された。術後経過は良好で、術後15日目に自宅退院となった。

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69歳女。全身倦怠感、体重減少を主訴に、近医の胸部CT・PET-CT検査にてサルコイドーシスを疑われ、当院紹介となった。全身精査の結果、高度の大動脈弁閉鎖不全症が判明したため心臓血管外科へ紹介となり、大動脈弁置換術および縦隔リンパ節生検を行う方針となった。術中所見では大動脈四尖弁の診断が確定し、SJMによる弁置換術を行った。術中に摘出したリンパ節の病理組織診断でサルコイドーシスと診断された。術後7日目に同疾患による発熱を生じたため、ステロイド治療を開始したところ速やかに解熱し、術後19日目に自宅退院した。

胸部外科発展の軌跡 パイオニアの原著と足跡を綴る(第2回)

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症例1は78歳男、症例2は70歳男で、いずれも労作時呼吸困難を主訴とした。両例とも胸部聴診所見ではDove-coo雑音が聴取され、精査にて高度の大動脈閉鎖不全症(AR)が判明し、生体弁による大動脈弁置換術を施行した。2例とも術後経過良好で、術後18日目に独歩退院となった。症例1では、心エコー所見で拡張期に大動脈弁右冠尖がLVOT側へ逸脱し、ARジェットにより弁尖が細動をきたしていたことから、この弁尖の細動がdove-coo雑音の音源であると考えられた。症例2では、手術所見で右冠尖の弁葉中腹部に肥厚を認め、これを支点として比較的柔軟な右冠尖弁葉が左室側に逸脱しており、この柔軟な弁尖が振動し、雑音を発生させたと考えられた。

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43歳女。幼少時よりWilliams症候群の経過観察中で、40歳時より心房細動(Af)が出現し、電気的除細動を行うも改善せず、warfarin内服を開始した。その後も心不全で入退院を繰り返し、今回、手術目的に当科紹介となった。初診時、心尖部に収縮期の逆流性雑音を聴取し、精査の結果、巨大左房を呈する僧帽弁閉鎖不全症(MR)と診断し、僧帽弁置換術およびmaze手術、左房縫縮術を行った。術後経過は良好で、術後約3週間で軽快退院し、退院後2年の胸部X線ではCTRの正常化が確認された。

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80歳男。労作時の息切れを主訴に、心エコーにて巨大右房内腫瘤を指摘され、当科紹介となった。経胸壁心エコー・胸腹部造影CTでは、右房と右室の間に87×42mmの巨大な腫瘤を認め、MRI所見より粘液腫が疑われたため、腫瘍摘出術を施行した。病理組織学的に右房粘液腫と診断された。腫瘍摘出時に一過性肺高血圧症を呈し、術後の肺血流シンチグラフィーで多発性肺動脈塞栓症と診断されたが、集中治療にて症状は改善し、術後11日目に退院となった。

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82歳男。食後の上腹部痛と黒色便を主訴に、近医の上部消化管内視鏡検査にて進行胃癌4型を指摘され、手術目的に当科紹介となった。術前検査より、幽門下リンパ節転移を伴う進行胃癌と診断し、胃全摘術および脾温存D2(+14v)-10郭清を行う予定とした。本例は右胃大網動脈を用いた冠状動脈バイパス術後に発症した進行胃癌であり、根治性確保のためにRGEAグラフト切離は必須であった。術前検査でグラフトは良好に開存していたものの、術中のRGEAグラフト遮断時に心電図上ST低下を認めたことから、RGEAは心筋血流維持に寄与していると考え、RGEAグラフトをいったん切離後、脾動脈への再吻合を行った。術後経過は良好で第8病日に退院した。病理組織学的診断は低分化型腺癌(病期IIIC期)で、現在tegafur-gimeracil-oteracil合剤内服による補助化学療法中である。

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65歳男。頭蓋内血管周囲細胞腫(HPC)切除術後2年4ヵ月の胸部X線像で異常陰影を指摘され、CTにて左第6肋骨の腫瘍性病変を認め、切除目的に当院紹介となった。胸部CTでは、左第6肋骨に3cm大の境界明瞭な腫瘤を認め、胸部MRIにて腫瘍は拡散強調像で著明な高信号を示した。FDG-PETでは第6肋骨のみにFDG集積像がみられた。診断治療目的で胸腔鏡下に腫瘍を完全切除し、腹壁欠損部はGORE-TEX Soft Tissue Patchを用いて再建した。病理組織学的にHPCの肋骨転移と診断された。術後経過良好で術後13日目に退院となったが、術後9ヵ月に頸椎、左第3肋骨、右腸骨に再発を認め、他院にて放射線治療が行われた。

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50歳男。首都高速道路下で作業中に、作業用リフトの横柵と道路桁に頸部を挟まれ受傷し、当院救急搬送となった。来院時、呼吸困難、四肢麻痺を認め、身体所見および画像所見より気管損傷、頸髄損傷と診断し、気管支鏡ガイド下に気管内挿管を行った。気管内挿管後にシーソー呼吸は消失し、胸部CTにて頸部気管構造の破綻が確認された。呼吸状態は安定していたため、頸髄損傷の評価を優先とし、入院3日目に気管形成術を施行した。手術所見では気管の完全断裂を認め、破断した第3、4気管軟骨を切除し、縦走する裂創は縫合修復した。さらに第2、第5軟骨輪の間で端々吻合し、正中部に気管切開用チューブを留置して終了した。術後経過は良好であったが、正中位固定の両側半回神経麻痺のためスピーチカニューレの変更はできず、受傷2ヵ月後にリハビリテーション目的に他院へ転院となった。臨床経過や手術所見より、本症例では鈍的外傷による非開放性頸部気管完全断裂と最終診断した。

基本情報

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胸部外科
69巻2号 (2016年2月)
電子版ISSN:2432-9436 印刷版ISSN:0021-5252 南江堂

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