CANCER BOARD of the BREAST 6巻1号 (2020年5月)

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症例:50歳台 女性主訴:右乳房腫瘤家族歴:姉:乳癌。母:膵癌既往歴:特記すべき事項なし

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「ポイント」・がん免疫療法により癌治療のパラダイムシフトがもたらされた。一方で効果が得られる集団は限定的であり,毒性ならびに医療経済の観点からもバイオマーカーの同定が急務である。・腫瘍浸潤免疫細胞が抗腫瘍活性を発揮するためには,1)Composition,2)Localization,3)Activationが重要な要素となる。・がん免疫療法の効果には全身的な免疫因子が深く関与しており,統合的な解析が不可欠である。

臨床医のための乳腺基礎医学

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19世紀にドイツの病理学者であるLubarschらによって,消化管にいわゆる“Krebs”に類似した病理組織形態所見を呈するが,良性の臨床経過を示す腫瘍が存在することが初めて報告された。この報告が神経内分泌腫瘍が初めて同定された記念すべき第一報となった。その後1907年にOberndorferが,“Krebs/carcinoma”のように顕微鏡下で見えるが,臨床的には良性の経過をたどる腫瘍,すなわち“benign carcinoma”,今でいうところの“がんもどき”であることを明瞭に記載し大きな注目を当時集めた1)。そしてこれらの腫瘍を“Karzinoid/carcinoid”と呼ぶようになり,100年以上この病名が使われるようになった1)。さて,このカルチノイド患者が悪性か良性の経過をたどるかに関しては,その病理組織診断時には一切不明であるという概念が長いあいだ定着してきた。このことから,カルチノイドという病理診断名を受け取った臨床医も患者にどのように対応してよいのか,いわば五里霧中の状態であった。しかし21世紀になり,膵消化管に発生するgastroenteropancreatic neuroendocrine tumor(GEP-NET)と呼ばれる一連の神経内分泌腫瘍患者の臨床予後は従来重要視されてきた病理組織学的分化度や腫瘍細胞の形態所見ではなく,細胞分裂数,Ki-67指標などで規範される腫瘍細胞の細胞増殖動態により規範されることが,筆者も関与したEuropean Neuroendocrine Tumor Society(ENETS)の研究成果で初めて示されるようになった2)3)。その後この分類はWHO 20104),WHO 20175),WHO 20196)で次々に骨子とされ,神経内分泌腫瘍の病型分類で大きな進展となった。基本的には神経内分泌腫瘍全体をneuroendocrine neoplasm(NEN)として総括し,その後,病理形態学的特徴を基にneuroendocrine tumor(NET)とneuroendocrine carcinoma(NEC)と分類する。そしてNETはさらにKi-67 labeling indexなどで得た細胞増殖動態からNET G1,G2,G3と細分化する。この分類は患者の臨床予後の類推に有用であるばかりか,薬物治療を規範する指標になる臨床的にもきわめて重要な分類である。この意味で乳腺疾患に従事する者にとっても重要であると考えられることから,WHO 2019分類のまとめを表1に記す。「KEY WORDS」NEN (neuroendocrine neoplasm),神経内分泌マーカー

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「Q21 WHO分類第5版の改正点について教えてください」WHOの乳腺腫瘍組織分類が7年ぶりに改訂され,2019年12月に第5版が出版されました。作成に参加した154名の病理医のうち13名が日本人で,前回は3名であったことからも,日本の貢献度が多く認められたものと思われます。冊子は356ページあり,前版より100ページ以上厚くなりましたが,全体に写真が大きくなった点と,3段組みから2段組となった点がボリュームに影響しているとも考えられます。前版では浸潤性乳管癌,特殊型の順に記載されていましたが,今回は上皮性腫瘍として良性上皮増殖,腺症,腺腫,上皮-筋上皮性腫瘍,乳頭状腫瘍,非浸潤性小葉性腫瘍,非浸潤性乳管癌,浸潤癌,まれな組織型の順に組み替えられました。「Q22 領域横断的がん取扱い規約について教えてください」私たちが診療を行う際,患者さんへの説明,カルテ記載に加えて,医療チーム内での共通理解,さらには医療機関相互の連携をとるうえで,適切な用語を用いることが重要と思われます。乳癌診療に関わっているあらゆる立場の方が大きな拠り所としているのが,日本乳癌学会が編集,発行している「臨床・病理 乳癌取扱い規約」です。1967年に初版が出版されてから,逐次改定を重ね,2018年5月には第18版が出されました。国際的に用いられているWHOの乳腺腫瘍組織分類(第4版が2012年に発行されたのち,2019年12月に第5版が出版されました。その概要は本誌の別項として解説しています),TNM分類(AJCC/UICC第8版.2016年)との読み替えなど,整合性を重視しており,乳癌の登録にも重要な役割を担っています。

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早期乳癌の予後には,癌に対する免疫応答が関与している。例えば化学療法を施行したTN(estrogen receptor:ER陰性・human epidermal growth factor receptor2:HER2陰性)乳癌やHER2陽性乳癌では,局所における腫瘍浸潤リンパ球(tumor infiltrating lymphocytes:TILs)が治療効果と相関することが示されている1)。また,末梢血の好中球・リンパ球比(neutrophil-to-lymphocyte ratio:NLR)は,有意に予後と相関する2)。一方,転移・再発乳癌における薬物療法や予後に免疫応答がどの程度関与しているのか,この点に関する報告は少ない。TILsやNLRを含めた免疫関連マーカーは,免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)の効果と相関する。さらに近年の研究結果から,免疫関連マーカーは化学療法や抗HER2療法の効果とも関連する可能性が示唆されている。本稿では転移・再発乳癌における免疫関連マーカーのうち,TILsとNLRを中心に効果予測因子としての有用性を検証する。

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転移・再発を来したHER2陽性乳癌に対しては,トラスツズマブとドセタキセルの併用療法にペルツズマブを追加すると無増悪生存期間も全生存期間もハザード比(HR)0.68と延長することがCLEOPATRA試験で示され1),ペルツズマブが実臨床に導入されて久しい。術後補助療法においても化学療法とトラスツズマブの併用にペルツズマブを追加したAPHINITY試験において,無浸潤癌生存期間(IDFS)のHRを0.81と改善し2)適応拡大された。トラスツズマブは,再発・転移を来したHER2乳癌に対して化学療法に追加すると,無増悪生存期間はHR0.51,全生存期間もHR0.80と延長させ3),術後補助療法では無病生存期間をHR0.48,全生存期間をHR0.67と大きく改善した4)。これを見るとトラスツズマブの効果は再発と術後であまり差がないことがわかる。したがって,ペルツズマブの術後補助療法での効果も再発後と同様に大きいものと期待された。ところが,ペルツズマブは術後に用いた場合は,無浸潤癌生存期間のHRが0.81と再発後のCLEOPATRAの結果と比べると見劣りする。しかも,もともとトラスツズマブで予後が改善された集団を対象としているので,絶対的な追加効果は小さい。●本企画「誌上ディベート」は,ディベートテーマに対してあえて一方の見地に立った場合の議論です。問題点をクローズアップすることを目的とし,必ずしも論者自身の確定した意見ではありません。また,特定の薬剤の誹謗をするものではありません。・論点整理/南博信・「すべきである」とする立場から/下井辰徳・「不要である」とする立場から/木澤莉香/尾崎由記範

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HER2陽性乳癌のなかでも,リンパ節転移陽性例の予後は不良とされる。日本乳癌学会『乳癌診療ガイドライン2018年版追補2019』1)においても,「再発リスクの高いHER2陽性浸潤性乳癌に対して術後化学療法を施行する場合,トラスツズマブとペルツズマブを併用することを強く推奨する。〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:強,合意率:93%(13/14)〕」と記載されている。今回,センチネルリンパ節に微小転移を有するHER2陽性乳癌の術後治療にペルツズマブは必要か?というCQに対して,併用すべきであるという立場から,その理由について論じる。●本企画「誌上ディベート」は,ディベートテーマに対してあえて一方の見地に立った場合の議論です。問題点をクローズアップすることを目的とし,必ずしも論者自身の確定した意見ではありません。また,特定の薬剤の誹謗をするものではありません。・論点整理/南博信・「すべきである」とする立場から/下井辰徳・「不要である」とする立場から/木澤莉香/尾崎由記範

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HER2陽性転移・再発乳癌に対する一次治療として,トラスツズマブ+ドセタキセルにペルツズマブを併用することで有意に無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が延長することは,CLEOPATRA試験1)で示されている。そこで,HER2陽性乳癌の術前・術後化学療法においても,化学療法+トラスツズマブにペルツズマブを併用することで,pathological complete response(pCR)率や予後の改善が得られるかを検証する試験が行われてきた。特に,術後治療について検証したAPHINITY試験2)に基づいて,HER2陽性乳癌の術後化学療法におけるペルツズマブの投与が,リンパ節転移を有する「再発リスクが高い患者」を対象に承認された。しかし,センチネルリンパ節微小転移を有するHER2陽性乳癌の扱いについては,現時点ではまだエビデンスは十分とはいえず,議論の余地がある。特に術後治療において,効果の確証が得られていない治療を積極的に行うべきではないということを前提として,「センチネルリンパ節微小転移を有するHER2陽性乳癌の術後治療にペルツズマブは不要である」という立場から論じる。ただし,リンパ節転移における微小転移はN1mi:最大径が0.2mmを超える,および/または細胞数200個を超えるが2.0mm以下と定義し,遊離腫瘍細胞(isolated tumor cell)はN0(i+):転移巣0.2mm未満または腫瘍細胞200個未満と定義する。●本企画「誌上ディベート」は,ディベートテーマに対してあえて一方の見地に立った場合の議論です。問題点をクローズアップすることを目的とし,必ずしも論者自身の確定した意見ではありません。また,特定の薬剤の誹謗をするものではありません。・論点整理/南博信・「すべきである」とする立場から/下井辰徳・「不要である」とする立場から/木澤莉香/尾崎由記範

薬物療法マネージメントのこつ

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乳癌に対する薬物療法中に血小板減少を認める機会は少なくありません。血小板減少は致死的な出血を引き起こす危険性があり,また血球減少の遷延により治療継続,治療強度の維持が困難となりますので対策が重要です。原因としては抗癌剤による血液毒性のほかに,癌骨髄浸潤やDIC,感染症,脾機能亢進などが挙げられます。抗癌剤が原因であることが多いのですが,あくまでも除外診断となるため常にほかの要因について検討しておく必要があります。特にDICは固有の症状を示さないため,初期の症状を見過ごされる局面も経験します。

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近年,治療法開発の臨床試験や日常臨床において,医療者によるアウトカム評価だけではなく患者自身による主観的評価,すなわち patient-reported outcome(PRO)の重要性が特に認識されてきている。このPROは「患者の回答について,臨床医や他の誰の解釈も介さず,患者から直接得られる患者の健康状態に関するすべての報告である」と定義されている。がん領域で例を挙げれば,従来から有害事象評価にはNCI-CTCAEが用いられてきた。しかし,この医療者報告による有害事象は,患者自身による報告と比して過小評価する傾向にあることが問題視されてきたことから,そのPRO版であるPRO-CTCAEは今後重要な役割を果たすことが期待される。PROの収集方法として,従来は紙媒体を利用することが多かったが,近年では電子的に収集する,いわゆる,ePRO(electronic PRO)が利用されるようになった。紙媒体と比して,ePROは原データの信頼性,品質,トレーサビリティ等を容易に確保することができ,今後は本邦でもePROが多く用いられることが予想される。本稿ではePROについて概説する。

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「がん」はさまざまな遺伝子の異常が積み重なることで発症する,いわば「遺伝子病」であることがわかってきた1)2)。その遺伝子の異常のなかには,がん細胞の生存に重要な特定の遺伝子(ドライバー遺伝子)が存在することが知られるようになり,その特定の遺伝子の異常を標的とした治療薬を用いて個別化治療を行うことを,「がんゲノム医療」と呼ぶ3)−5)(図1)。従来のがん治療は,発症臓器や病理組織分類に基づき,標準治療として医療統計学的に最も有効性が高い抗がん剤が選択されている。これは,randomized clinical trial(RCT)によって患者背景因子によらず,純粋に統計学的有意差をもって治療効果があると判断された治療であることを意味し,公平かつ普遍的な治療として確立してきたものである。一方,がんの分子生物学研究が成熟期を迎え,いくつかの分子がそれぞれの癌種において重要な役割を果たしていることが明らかとなり,抗がん剤の開発はこれまでの殺細胞性抗がん剤から分子標的治療薬の開発にシフトチェンジが行われた。例えば肺癌におけるEGFR変異やALK融合遺伝子,卵巣癌・乳癌におけるBRCA1/2変異などである。すかさず,こうしたドライバー遺伝子異常に対して特異的に効く分子標的治療薬が登場し,その薬剤の投薬の可否を決める検査として,コンパニオン診断(検査)が確立された。そのなかには免疫染色と並んで遺伝子検査も含まれており,例えば肺癌においては現状でEGFR遺伝子変異(遺伝子検査),ALK融合遺伝子(免疫染色と遺伝子検査),ROS融合遺伝子(遺伝子検査),BRAF遺伝子変異(遺伝子検査)と4種類のコンパニオン診断が承認されている。しかし,これらの検査を順番に実施するのは費用および検査の所要時間において非効率的であり,次世代シーケンサーが普及するにつれて,一度に数十から数百の遺伝子を調べる遺伝子パネル検査(がん遺伝子プロファイリング検査)が徐々に臨床現場に実装されるようになってきたのである5)。「KEY WORDS」プレシジョンメディシン,個別化医療,がんゲノム医療,遺伝子パネル検査,次世代シーケンサー

ウイメンズヘルス

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子宮頸癌は日本人女性の罹患する癌としては第11位,婦人科悪性腫瘍内では子宮体癌に続いて2番目に多い1)。罹患年齢が30~40代のAYA(adolescent and young adult)世代とされる若年女性に多く,女性の結婚・出産・就業などライフイベントに大きく影響する(図1)1)。子宮頸癌の約90%以上でヒトパピローマウイルス(human papilloma virus:HPV)感染が確認されている2)。HPVには100種類以上のタイプがあり,子宮頸癌に関与する高リスクタイプは16/18/31/33/35/45/52/58など約15種類で,特に16/18型は子宮頸癌の約70%に関与する3)4)。性交渉により感染し,女性が生涯にHPVに感染する割合は約50%とされるが,約90%は自然排出される。しかし,一部は持続感染しHPVのDNAが子宮頸部細胞のDNAに取り込まれることにより,異形成,上皮内癌を経て浸潤癌へと進む4)5)。原因が明確であるため,予防,検診が確立した珍しい癌である。

Land-Mark papers in Oncology~エポックメイカーとなった論文~

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BRCA(breast cancer susceptibility gene)遺伝子に変異があると,相同組み換えによるDNA二重鎖切断の修復に支障をきたす。一方,Poly(adenosine diphosphate-ribose)polymerase(PARP)はDNAの単鎖切断の修復酵素で,BRCAとPARPの両方の障害により細胞は合成致死に至る。したがって,BRCA遺伝子変異を有する癌にはPARP阻害薬が有効と期待され,BRCA生殖細胞変異を背景としたHER2陰性乳癌を対象として,カペシタビン,エリブリン,ビノレルビンのなかから担当医が選択した化学療法(treatment of physician’s choice:TPC)に対して,PARP阻害薬であるオラパリブの優越性がOlympliAD試験で示された1)

「治療」DCIS overtreatment 四元 大輔
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非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ:DCIS)の治療として手術や放射線治療,内分泌療法が行われてきたが,その多くが予後良好であり,過剰治療の可能性が指摘されていた。DCISに対する手術と放射線治療の意義を評価した2論文を紹介する。

「診断」乳房MRI 五味 直哉
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今回は乳房MRIに関する最初の論文(1986年)を紹介する。1980年代当時,Heywangらは乳腺画像診断の未解決の問題点として,高濃度乳房における早期乳癌の検出,irregular dysplastic tissue, 硬化性腺症,および瘢痕組織と乳癌との鑑別を挙げている。そこで造影MRIを20例のさまざまな乳房病変に用いて,造影剤投与による造影効果と,マンモグラフィ所見とで比較評価が行なわれた。MRは0.35Tの装置が用いられた。結果は乳癌は全例が造影された。Fibrous dysplasiaは造影されず,proliferative dysplasiaでは軽度の造影が認められ(偽陽性),線維腺腫も造影された。このように乳癌は造影MRIで造影されることが示された。Dysplasiaや硬化性腺症など,その形態が乳癌と区別がつきにくい病変の鑑別が造影MRIで改善される可能性が考えられた。

用語解説

Residual cancer burden 山岸 陽二
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Residual cancer burden (RCB) は,術前薬物療法施行後の切除標本の病理学的検索によって残存腫瘍量の程度を大まかに測定するもので,予後不良症例を予測するノモグラムとして米国MD Anderson Cancer CenterのSymmansらによって提唱された1)。実際の測定は,①原発腫瘍床の最大径 (d₁) と直行腫瘍径 (d₂),②原発腫瘍床における浸潤癌の細胞密度 (finv),③転移リンパ節個数 (LN),および④リンパ節転移の最大径 (dmet),の4項目について行い,以下の式で算出する。dprim=√ ̄ ̄d₁d₂RCB係数=1.4×(finv dprim)0.17+[4×(1-0.75LN)×dmet0.17

BIA-ALCL 津川 浩一郎
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乳房インプラント関連未分化大細胞リンパ腫(breast implant-associated anaplastic large cell lymphoma:BIA-ALCL)はT細胞性非ホジキンリンパ腫のひとつで,乳房インプラント周囲に形成される被膜組織から発生する悪性腫瘍である。乳房インプラント挿入者約2,207〜3,345人に1人の頻度で,インプラント挿入から平均9年(0.08~27年)で発生するといわれている。主にテクスチャードタイプ(表面がザラザラ)のインプラント使用例で発生しており,2019年,本邦でも第1例目の発生例が報告されている。製造販売元であるアラガン社が,テクスチャードタイプ・インプラントとエキスパンダーを,米国FDAの要請で2019年7月25日未明(日本時間)に自主回収・販売停止を決めた。

The review of clinical study

JBCRG-M05(PRECIOUS) 山本 豊
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HER2陽性転移再発乳癌に対する1次治療はペルツズマブ+トラスツズマブ+タキサンの使用が推奨されている。ペルツズマブのトラスツズマブへの追加効果は無増悪生存期間(progression-free survival:PFS),奏効率の改善にとどまらず,全生存期間(overall survival:OS)を有意に延長し,しかも忍容性が高いという画期的な治療法である。しかしながら,ペルツズマブの再投与のエビデンスはない。一方,本邦の保険上,転移・再発乳癌におけるペルツズマブの使用に制限はなく,どのラインでも,何度でも使用可能な状況である。このため,日常臨床の現場ではエビデンスに基づかず,ペルツズマブ増悪後の再投与が行われている現状があった。このため,ペルツズマブの再投与が真に有用であるかどうかを検証するために本試験が企画された。

POSITIVE試験 清水 千佳子
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女性を取り巻く社会的環境や価値観の変化に伴い,妊娠・出産年齢が高齢化している。その結果,出産計画を終える前に乳癌を発症する女性が増えてきており,乳癌術後に挙児を希望する患者が少なくない。これまでに得られている後方視的研究によると,乳癌の術後に妊娠しても再発リスクは増加しないことが示唆されているが,後方視的研究にはhealthy mother biasが介在し,信頼性の高いデータとはいえない。また,ホルモン療法中は流産や催奇形性のリスクがあるため避妊が必要となる。さらに近年,最適な術後ホルモン療法の治療期間は5年から10年とされ,それを全うしようとすると,加齢によって妊孕性が低下するため,妊娠・出産の機会を逃す可能性が高い。現在,ヨーロッパのIBCSGと米国のALLIANCEを中心とした世界の臨床試験グループの国際共同研究として,POSITIVE試験(A study evaluating Pregnancy, disease Outcome and Safety of Interrupting endocrine Therapy for premenopausal women with endocrine responsIVE breast cancer who desire pregnancy)を行われている。POSITIVE試験には,生殖年齢,術後ホルモン療法を18ヵ月から30ヵ月終了,かつ挙児希望のある患者が登録され,最大2年間ホルモン療法を中止して「妊活」を行ったときに,乳癌の予後に影響があるかどうかが,前向きに検証される。国内からはJBCRGを通して研究に参加しており,世界中の研究者とともに目標症例数の500人を目指して症例集積を行っている。本研究の成果が得られれば,挙児希望を有する若年女性の,妊娠と出産に関する意思決定に役立つ重要なデータのひとつとなると考えられる。

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目次

奥付

基本情報

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CANCER BOARD of the BREAST
6巻1号 (2020年5月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:2189-356X メディカルレビュー社

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