- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
19世紀にドイツの病理学者であるLubarschらによって,消化管にいわゆる“Krebs”に類似した病理組織形態所見を呈するが,良性の臨床経過を示す腫瘍が存在することが初めて報告された。この報告が神経内分泌腫瘍が初めて同定された記念すべき第一報となった。その後1907年にOberndorferが,“Krebs/carcinoma”のように顕微鏡下で見えるが,臨床的には良性の経過をたどる腫瘍,すなわち“benign carcinoma”,今でいうところの“がんもどき”であることを明瞭に記載し大きな注目を当時集めた1)。そしてこれらの腫瘍を“Karzinoid/carcinoid”と呼ぶようになり,100年以上この病名が使われるようになった1)。さて,このカルチノイド患者が悪性か良性の経過をたどるかに関しては,その病理組織診断時には一切不明であるという概念が長いあいだ定着してきた。このことから,カルチノイドという病理診断名を受け取った臨床医も患者にどのように対応してよいのか,いわば五里霧中の状態であった。しかし21世紀になり,膵消化管に発生するgastroenteropancreatic neuroendocrine tumor(GEP-NET)と呼ばれる一連の神経内分泌腫瘍患者の臨床予後は従来重要視されてきた病理組織学的分化度や腫瘍細胞の形態所見ではなく,細胞分裂数,Ki-67指標などで規範される腫瘍細胞の細胞増殖動態により規範されることが,筆者も関与したEuropean Neuroendocrine Tumor Society(ENETS)の研究成果で初めて示されるようになった2)3)。その後この分類はWHO 20104),WHO 20175),WHO 20196)で次々に骨子とされ,神経内分泌腫瘍の病型分類で大きな進展となった。基本的には神経内分泌腫瘍全体をneuroendocrine neoplasm(NEN)として総括し,その後,病理形態学的特徴を基にneuroendocrine tumor(NET)とneuroendocrine carcinoma(NEC)と分類する。そしてNETはさらにKi-67 labeling indexなどで得た細胞増殖動態からNET G1,G2,G3と細分化する。この分類は患者の臨床予後の類推に有用であるばかりか,薬物治療を規範する指標になる臨床的にもきわめて重要な分類である。この意味で乳腺疾患に従事する者にとっても重要であると考えられることから,WHO 2019分類のまとめを表1に記す。「KEY WORDS」NEN (neuroendocrine neoplasm),神経内分泌マーカー
Medical Review Co., Ltd. All rights reserved.