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女性を取り巻く社会的環境や価値観の変化に伴い,妊娠・出産年齢が高齢化している。その結果,出産計画を終える前に乳癌を発症する女性が増えてきており,乳癌術後に挙児を希望する患者が少なくない。これまでに得られている後方視的研究によると,乳癌の術後に妊娠しても再発リスクは増加しないことが示唆されているが,後方視的研究にはhealthy mother biasが介在し,信頼性の高いデータとはいえない。また,ホルモン療法中は流産や催奇形性のリスクがあるため避妊が必要となる。さらに近年,最適な術後ホルモン療法の治療期間は5年から10年とされ,それを全うしようとすると,加齢によって妊孕性が低下するため,妊娠・出産の機会を逃す可能性が高い。現在,ヨーロッパのIBCSGと米国のALLIANCEを中心とした世界の臨床試験グループの国際共同研究として,POSITIVE試験(A study evaluating Pregnancy, disease Outcome and Safety of Interrupting endocrine Therapy for premenopausal women with endocrine responsIVE breast cancer who desire pregnancy)を行われている。POSITIVE試験には,生殖年齢,術後ホルモン療法を18ヵ月から30ヵ月終了,かつ挙児希望のある患者が登録され,最大2年間ホルモン療法を中止して「妊活」を行ったときに,乳癌の予後に影響があるかどうかが,前向きに検証される。国内からはJBCRGを通して研究に参加しており,世界中の研究者とともに目標症例数の500人を目指して症例集積を行っている。本研究の成果が得られれば,挙児希望を有する若年女性の,妊娠と出産に関する意思決定に役立つ重要なデータのひとつとなると考えられる。
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