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「がん」はさまざまな遺伝子の異常が積み重なることで発症する,いわば「遺伝子病」であることがわかってきた1)2)。その遺伝子の異常のなかには,がん細胞の生存に重要な特定の遺伝子(ドライバー遺伝子)が存在することが知られるようになり,その特定の遺伝子の異常を標的とした治療薬を用いて個別化治療を行うことを,「がんゲノム医療」と呼ぶ3)−5)(図1)。従来のがん治療は,発症臓器や病理組織分類に基づき,標準治療として医療統計学的に最も有効性が高い抗がん剤が選択されている。これは,randomized clinical trial(RCT)によって患者背景因子によらず,純粋に統計学的有意差をもって治療効果があると判断された治療であることを意味し,公平かつ普遍的な治療として確立してきたものである。一方,がんの分子生物学研究が成熟期を迎え,いくつかの分子がそれぞれの癌種において重要な役割を果たしていることが明らかとなり,抗がん剤の開発はこれまでの殺細胞性抗がん剤から分子標的治療薬の開発にシフトチェンジが行われた。例えば肺癌におけるEGFR変異やALK融合遺伝子,卵巣癌・乳癌におけるBRCA1/2変異などである。すかさず,こうしたドライバー遺伝子異常に対して特異的に効く分子標的治療薬が登場し,その薬剤の投薬の可否を決める検査として,コンパニオン診断(検査)が確立された。そのなかには免疫染色と並んで遺伝子検査も含まれており,例えば肺癌においては現状でEGFR遺伝子変異(遺伝子検査),ALK融合遺伝子(免疫染色と遺伝子検査),ROS融合遺伝子(遺伝子検査),BRAF遺伝子変異(遺伝子検査)と4種類のコンパニオン診断が承認されている。しかし,これらの検査を順番に実施するのは費用および検査の所要時間において非効率的であり,次世代シーケンサーが普及するにつれて,一度に数十から数百の遺伝子を調べる遺伝子パネル検査(がん遺伝子プロファイリング検査)が徐々に臨床現場に実装されるようになってきたのである5)。「KEY WORDS」プレシジョンメディシン,個別化医療,がんゲノム医療,遺伝子パネル検査,次世代シーケンサー
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