保健師ジャーナル 64巻4号 (2008年4月)

特集 あなたのまちに地震が来たら?

2度の震災を乗り越えた新潟に学ぶ震災対応

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 いつ,どこで起きてもおかしくない震災。どんな準備をしても万全とは言い難いが,準備をしなければ決して対応できないといわれる。それを身をもって体験したのが,2004年,2007年と3年の間に2度の震災を乗り越えた新潟県だ。復興なったばかりのまちを襲った地震に対して,現場の保健師はどう対応したのか。過去最大規模の派遣保健師を受け入れ,どんな災害支援活動が行われたのだろうか。当事者たちの語りから,震災対応の実際を学び,明らかになった課題を整理する。

 同時に,準備性を高めるための各地の取り組みを紹介し,いま,保健師が自分のまちでできること,しなければならないことを考える。

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新潟県中越沖地震から,被災地での保健活動の課題やポイントを学ぶ。最近の災害支援の状況から,新たな健康課題へのスピーディーな対応が求められるようになっている。また災害後は直接支援に目が行きがちだが,全体調整の役割が非常に重要であることも押さえておきたい。派遣においては,被災地の混乱を踏まえ,流動性のある,自己完結型の活動が望まれる。災害時は,被災自治体としても,派遣チームとしても,みる・つなぐ・動かすという保健師能力の基本が試される。地域特性に合った具体的な取り組みを,平時から心がけることが重要である。

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神戸市は「神戸市災害時保健活動マニュアル」をもとに災害に備えている。マニュアルには災害時保健活動の視点や留意点をまとめるとともに,被災時の受け入れについては事前調整の手順を定め,派遣については,毎年度当初に派遣チーム体制をつくること,必要物品の一覧などを明記している。情報管理,平常時保健活動で心がける点などについても章を割き,日頃からの備えに努めている。また被災体験のない職員が3分の1を占めるなか,マニュアルだけでなく研修によって活動の標準化をはかっている。

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東海地震を想定した静岡県の災害時健康支援体制を紹介する。県所属の保健師の半数以上が被災地派遣を経験し,実践経験を積むとともに,その経験をもとにマニュアルを見直し,充実を重ねている。年3回の防災訓練において保健師派遣シミュレーションを行っている。また県内4つの防災局のうち3か所に保健師・看護師を配置し,体制整備や訓練,研修などを行っている。市町の体制整備は今後の大きな課題であるが,災害は必ず来るものと考え,今後も体制整備に努めていきたい。

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厚労省地域保健対策検討会において,保健所は地域の健康危機管理の拠点と位置付けられた。長野県飯田保健所では,住民の健康を守ることを第一の役割と考え,①Preventive Deathを最小限にすることと,②2次健康被害の予防を行うため,地域特性に応じた体制づくりを行っている。保健所保健師に期待する役割は,①市町村が担えない部分の要支援者対策,②地域の看護職が災害医療に関与するための体制づくり,③二次健康被害予防対策である。課題はあるが,職員がそれぞれの立場で,日常業務の合間をぬって準備を行うことが重要である。

2度の震災を乗り越えた新潟に学ぶ震災対応 新潟県中越沖地震:現地での実際

県庁の役割 坪川 トモ子
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中越沖地震発災から1か月間に新潟県が行った対応を紹介する。被災直後は情報収集が困難だったものの,①市村の被災地活動本部への支援,②避難所での健康管理,③被災地保健所の体制の強化の3点に絞って保健師派遣をすることにし,厚労省や県内保健所・市町村,看護協会などへ向けて適宜派遣要請を行った。また保健所との連絡を密にとり,対策本部への情報提供や改善提案などを行うとともに,被災地保健師・派遣保健師間の情報共有のため,活動報告会を開催した。今後の課題としては,いざというとき動けるための研修・訓練の充実や,スムーズな派遣調整のための関係機関との連携強化,派遣要請指針の策定などが考えられる。

保健所の役割 山田 秀子
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保健所保健師が行った支援について報告する。被災後はさまざまな対応に忙殺されるため,応援保健師などによる保健所の機能強化はたいへん有効であった。派遣調整においては,自己完結型活動の促進を心がけた。時間の経過とともに住民の健康課題や派遣保健師の役割,市職員の心身状態などに変化が訪れ,それに臨機応変に対応することが求められた。3年前より,より早く,多くの対応が必要であったように思う。しかし災害対応は日々の保健師活動の組み合わせと凝縮であり,保健師であるなら対応できると考えている。

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新潟県に隣接し,被災4日後から現地入りした群馬県の派遣体制と活動の実際を報告する。3年前の中越大震災の派遣経験から,保健活動のための公用車やノートパソコンなどを手配し,機動力の確保に努めた。前派遣の際の資料などは大いに有用であった。

 現地へ派遣された保健師の活動は,復興が進むにつれ変化していった。当初は特定避難所での活動が中心であったが,やがて複数の避難所を巡回し,家庭訪問を行うこととなり,最終的には仮設住宅での支援となった。

 今回の活動での経験を活かしマニュアルを充実させるなど,今後へつなげていきたい。

連載 外傷からみつける虐待 サインを見逃さないための6つのレッスン・1【新連載】

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Question

この痕跡は何によるものでしょうか?

 

Point 1 普段は着衣に被われている部位に認められる傷とは?

Point 2 痕跡の形状について,辺縁が明瞭で幾何学的?

Point 3 水疱形成と破裂は何を意味するのか?

連載 ニュースウォーク・121

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 お年寄りの呼称が「老人」から「高齢者」に変わったのは,介護保険制度が導入される前夜ともいうべき1990年代半ばだったと記憶している。

 いつの時代にも「四支動かず,百節皆いたみ,身体はなはだ重く…」(万葉歌人,山上憶良の詩文)と,介助が必要な人はいる。一方で年を取っても元気な人も。介護保険を前に「老人」は福祉を受ける,介護が必要な弱者というイメージが強いとして,国や地方自治体が次々と「高齢者」に切り替えたのである。

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 「保健師の2007年問題」が取り上げられてから1年が過ぎた。

 定年などの区切りを機に職を辞した保健師(あの人)たち。保健師として過ごした日々を,彼女たちは何を思って働き,何をみつめ,そして退職したいま,何を思って暮らしているのだろうか。かつて,看護師の象徴がナースキャップであったころ,保健師のそれは「訪問カバン」だった。保健師(あの人)たちも訪問カバンを肩に,一歩,一歩,踏みしめて地域と人々をみつめ続けていた。

連載 保健師のための経営学 シゴトの進め方の技術を学ぼう・4

情報収集のコツ 栗岡 住子
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 従来から保健師は,地区の特性や住民の生活の場で地道に把握した情報や,保健サービスをとおして気づいたことをもとに,その地区に合ったサービスを提供してきました。また,良い事業計画を企画するためには,住民のニーズを的確に把握して,行政としてのミッションを十分に反映させることが必要です。つまり,事業立案の第1歩は情報収集だといえます。

 今回は,経営や社会学分野で使われる社会調査の手法を紹介しながら,情報収集するときの視点やコツについて,考えていきたいと思います。

連載 看護系大学・研究所からのメッセージ・40

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■History & Now

――どういう機関なのでしょう?

 地域看護の教員は,着任後数年以内のニューフェイス,個性派揃いです。岡山大学の看護教育は,1920年に岡山医学専門学校附属医院内に看護婦養成所を設置したことに始まり,1951年に岡山大学医学部看護学校と改称,1986年10月に3学科1専攻の岡山大学医療技術短期大学部,1998年10月にそれを改組し医学部内に3専攻の保健学科を設置しました。2003年4月に修士課程(現博士前期課程),2005年4月に博士後期課程を設置し,2007年4月より1専攻3分野の岡山大学大学院保健学研究科として部局化しています。

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焼津市立総合病院の地域医療連携室で働く保健師は,日頃の医療相談から,高齢者の緊急入院は嚥下障害に起因することが多いことに気づいた。そこで,病院や福祉施設の専門職を中心に,産官民の協働による「おいしい!プロジェクト」を結成。「口から食べること」の学習会を開催し嚥下食の普及啓発に取り組んでいる。“嚥下”に焦点を当てた,“おいしい”を支えるまちづくりに注目!

 

 急性期の総合病院は医療制度改革の煽りをうけ,どこも厳しい経営事情に直面している。公立病院はとくに「経営改善」という課題と「地域住民の安心と安全を守る」という役割,「老いても障害をもっても住み慣れた地域で暮らすことを保障する」という市民の大きな期待がある。

 筆者は医療相談担当として要介護高齢者の退院支援(相談)に関わり,「要介護状態の高齢者の救急入院は“食べること”に起因するものが多い」ことに気づいた。具体的には「食欲低下」「嚥下障害」「誤嚥」「誤嚥性肺炎」「窒息」,さらに「食べられない」ことによる「脱水」「発熱」「けいれん」などである。そしてこれらは在宅からも施設からも同じように多く,たとえ入院中回復しても,退院先で「嚥下」「摂食」「口腔の清潔」の機能を維持することはとても難しい現実があることがわかった。

 本稿では,「口から食べられる幸せ,感じよう!」をテーマに,病院の専門職を中心として生まれた産官民による「おいしい!プロジェクト」の活動について報告する。

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迅速検査を導入すれば,集団健診でも「健診実施・階層化・初回面接」を1日で提供できる。所要時間は2時間程度になったが,受診者の「その日のうちに結果がわかる」ことへの満足度は高かった。健診当日に初回面接まで実施できれば,当然,保健指導実施率は参酌標準を大きく超える!

活動報告

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はじめに

 子どもに関わる経験のないまま親となり,社会的孤立状態に置かれ,育児に対する不安を訴える母親が増加している。また,生育歴や家族基盤の問題などから育児困難を感じ,虐待に至る危険性をもつ母親もいる。三鷹市では,このような母親を支援する3つのグループ活動を実施し,虐待予防を念頭に置いた母子保健活動の推進に努めており,本稿にて報告する。

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編集後記 和田 , 栗原
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●いま,「下町」がアツイ(らしい)。書店に行くと,“下町散策マップ”の類いが多々見られます。都心では再開発が乱立している東京ですが,残された古き良きまちが日本人の心を捉えているようです。なかでも「谷根千」は専門誌が創刊されたほど人気の下町散歩コースの1つ。「谷中」「根津」「千駄木」の頭文字をとった谷根千ですが,歩いてみて驚くのは外国人が多いこと。古き良き日本を再評価しようという日本人と,日本を初めて知ろうという外国人観光客が交差するアンビバレントな異空間。観光地になれば,下町も下町でなくなくなってしまう悲運に,何ともいえない寂寞を覚えました。

 谷根千からも近く,弊社がある「本郷」も下町の1つ。古くは,樋口一葉,宮沢賢治,石川啄木など文人が居を構え,明治時代からの老舗店が現在も存在します。通りや坂の名前に当時の名残があり,散歩してみると思わぬ発見に出会えます。

基本情報

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保健師ジャーナル
64巻4号 (2008年4月)
電子版ISSN:1882-1413 印刷版ISSN:1348-8333 医学書院

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