糖尿病診療マスター 4巻4号 (2006年5月発行)

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特集　対論　糖尿病診療

GAD抗体陽性糖尿病は1型糖尿病である―Pros　GAD 抗体は将来的なインスリン治療の予知マーカーとして有用である及川　洋一 , 島田　朗 4巻4号 , 2006年5月 , pp.440-445

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　インスリン非依存状態にあるGAD抗体陽性糖尿病は，発症後数年以内に高頻度にインスリン治療に至ることから，自己免疫機序による膵b細胞傷害の緩徐な進展を成因とする1型糖尿病であることが推察される．

GAD抗体陽性糖尿病は1型糖尿病である―Cons　GAD 抗体の抗体価やそのほかの自己抗体の有無を確認し，臨床経過をよく考えて病因分類を行う𠮷岡　成人 4巻4号 , 2006年5月 , pp.440-445

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　糖尿病は病期と病因の双方から病型を分類することが重要である．

　内因性のインスリン分泌能を評価して，インスリン依存状態，非依存状態と病期を分類することは容易ではあるが，自己抗体の有無のみを参考にして1型糖尿病，2型糖尿病と病因分類を行うことには問題点が多い．

牛乳蛋白摂取は1型糖尿病発症に関与する―Pros　1型糖尿病のハイリスク群には母乳栄養を推奨すべきである菊池　信行 4巻4号 , 2006年5月 , pp.446-451

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　新生児期，乳児期の牛乳蛋白の摂取が1型糖尿病発症の危険因子とする仮説が，病因や発症予防の観点から多くの注目を集めている．統計学な検討では，一定の結論は得られていないが，1型糖尿病発症の一部には牛乳蛋白が関与している可能性が高い．

牛乳蛋白摂取は1型糖尿病発症に関与する―Cons　少なくとも日本人ではエビデンスはない今川　彰久 4巻4号 , 2006年5月 , pp.446-451

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　牛乳蛋白摂取と1型糖尿病発症の関連については，欧米白人でも結論が得られておらず，特に，日本人においては，牛乳蛋白摂取と1型糖尿病発症が関与するというエビデンスは見いだせなかった．

肥満助長は表5（脂肪）よりも表1（炭水化物）である―Pros　食べ過ぎは脂肪でも炭水化物でも肥満を助長する吉田　俊秀 4巻4号 , 2006年5月 , pp.452-458

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　肥満は摂取エネルギー量が消費エネルギー量を上回るとき生じる．脂肪の取りすぎも炭水化物の取りすぎも過食になれば肥満を生じる．

肥満助長は表5（脂肪）よりも表1（炭水化物）である―Cons　減量効果と食行動変容の連関―減量者と非減量者では食事の食べ方が異なる千葉　政一 , 吉松　博信 4巻4号 , 2006年5月 , pp.452-458

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　高脂質食摂取の抑制および野菜類などの食物繊維摂取の促進は肥満症治療に有用だった．一方で，炭水化物の摂取の抑制は比較的困難であり，肥満症治療には寄与しなかった．その原因として日本の食文化の関与が示唆された．

肥満2型糖尿病にインスリンを使用する―Pros　肥満2型糖尿病にインスリン療法は極めて有用な治療法である弘世　貴久 4巻4号 , 2006年5月 , pp.460-467

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　食事や運動療法に加え経口薬治療を用いても，手詰まりになっている血糖コントロール不良の肥満2型糖尿病患者を，いかにして治療するかを理論だけでなく実情に合わせて考えると，インスリン療法は極めて有用な治療法である．

肥満2型糖尿病にインスリンを使用する―Cons　肥満2型糖尿病に安易にインスリン治療を導入することは，長期的な合併症予防の観点から望ましくない小田原　雅人 4巻4号 , 2006年5月 , pp.460-467

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　1型糖尿病に対して強化インスリン療法を導入することは，合併症予防の点から望ましいことは，1993年に発表されたDCCT（Diabetes Control and Complication Trial）で示されている^1）．しかしながら，2型糖尿病患者に対するインスリン治療については，1型糖尿病患者とはかなり事情が異なる場合が多い．

インスリンポンプの使用―Pros　インスリンポンプは最も有効な血糖コントロールの手段である金重　勝博 , 小林　哲郎 4巻4号 , 2006年5月 , pp.468-474

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　インスリンポンプは最も有効な血糖コントロールの手段として用いられてきた．超速効型，長時間作用型持続インスリンアナログが使用可能な現在でもこれらを用いた頻回注射法に比しその優位性は保たれている．

インスリンポンプの使用―Cons　CSIIの課題―なぜ，わが国でこの治療法が拡がらないか？難波　光義 , 浜口　朋也 4巻4号 , 2006年5月 , pp.468-474

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　劇症1型や不安定型症例など，より重症の1型におけるCSII（Continuous Subcutaneous Insulin Infusion）の優位性はゆるぎないものかもしれない．しかしながら，広く一般の1型症例では，安全面・QOL面・医療経済面・患者指導体制面などにおいて，まだまだ超速効・持効型両インスリンアナログを応用した頻回インスリン注射療法（MDI，multiple daily injection）に劣る点が多い．臨床応用から二十数年を経てなお，未だ医療側・患者側両者のたゆまざる熱意を必要とするインスリン治療である．

インスリンアナログの有用性―Pros　各種インスリンアナログの上手な使い方川村　智行 4巻4号 , 2006年5月 , pp.476-484

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　超速効型と持続性のインスリンアナログの登場は，Basal-Bolusインスリン療法におけるそれぞれのインスリンの役割分担を明確にした．これは，ペン型注射器による頻回注射法の登場に匹敵する考え方の変化である．

インスリンアナログの有用性―Cons　アナログ製剤の特性を熟知して患者さんに最適な製剤を選択する高橋　和眞 , 種田　嘉信 , 小野　利夫 4巻4号 , 2006年5月 , pp.476-484

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　アナログインスリン製剤は本当に「生理的により近い薬物動態により血糖コントロールを改善する」のであろうか？アナログ製剤をより使いこなすには，製剤の特性を熟知して患者さんに最適な製剤を選択することが重要である．

糖尿病診療におけるクリニカルパスの有用性―pros　時間と資源が制限された臨床現場でいかに効率よく治療を行うか小野　百合 4巻4号 , 2006年5月 , pp.486-492

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　糖尿病はパスの最適対象疾患ではない．しかし，限られた時間と資源・スタッフで医療の質の向上，患者・スタッフの満足感を得るためにはパスは今や必須のツールであり，いかにうまくそれを使うかを考える必要がある．

糖尿病診療におけるクリニカルパスの有用性―Cons　患者状態にいかに適応した医療を行うか―医療の標準化と質の確保との両立貴田岡　正史 4巻4号 , 2006年5月 , pp.486-492

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　適正に設定されたクリニカルパスは，その運用を間違わなければ，「医療の標準化」と誤解を恐れずにいえば，「医療の効率化」に大変有用なツールであることは論をまたない．また，十分に配慮されたメカニズム設計を持つクリニカルパスは「本質的医療安全」にも根本的な解決法を提示することが可能である1）．したがって，クリニカルパスそのものが是非の検討の対象になるわけではないことを前提として論議をすすめたい．すなわち，本稿では現在臨床に供されているクリニカルパスそのもの，あるいはその基本的思考過程について問題にしていきたい．

カーボハイドレートカウンティングの有用性―Pros　食事中の炭水化物量推定は食事追加インスリン投与量算出に役立つ雨宮　伸 , 竹内　恭子 , 清水　奈緒子 4巻4号 , 2006年5月 , pp.494-500

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　成長過程にある小児でのエネルギー必要量は急速に変化する．多様な食行動への要求も高くなる．食事・間食でカーボハイドレートカウンティングを利用すれば超速効型による食事追加インスリンが容易となる．無用な食事への束縛からの開放と，QOLおよび血糖管理改善が期待される．

カーボハイドレートカウンティングの有用性―Cons　カーボハイドレートカウンティングはインスリン量の決定法としては不十分である丸山　太郎 4巻4号 , 2006年5月 , pp.494-500

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　食後血糖は炭水化物摂取量だけで決定されるわけではないので，カーボハイドレートカウンティングは食前のインスリン量決定法としては不完全である．むしろ，肥満や動脈硬化をもたらしやすいなど問題が大きい．

表2（果物）は食後に摂る―Pros　表2（果物）は食直後に摂る―果物を間食として摂取させていませんか？幣　憲一郎 4巻4号 , 2006年5月 , pp.502-508

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　これまで，果物は食品交換表においても「間食」の位置づけであったが，食後高血糖・食後高脂血症の問題がクローズアップされている今日，食事の一部として摂取し，次食までに血糖が下がる時間を確保することが重要と考えられる．

表2（果物）は食後に摂る―Cons　果物は適量を1日のなかで，血糖の動き，食生活スタイルを考慮して摂る宮本　佳代子 4巻4号 , 2006年5月 , pp.502-508

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　食後血糖値は，食事前の血糖値，食事の量と質，その時の体内での種々のホルモン動向，食後の活動状況などが影響し合って決まってくる．したがって，果物は食べるタイミングだけでなく，食生活全体の中で量とタイミングを考えるのが妥当と思われる．

SNP解析によるテーラーメード医療―Pros　アディポネクチン遺伝子のSNP 解析による2 型糖尿病テーラーメード医療堀越　桃子 , 原　一雄 , 戸辺　一之 , 門脇　孝 4巻4号 , 2006年5月 , pp.510-515

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　肥満や2型糖尿病の発症には遺伝素因が強く関与している．個々人の遺伝素因に合わせた最適なテーラーメード医療を行うには肥満・インスリン抵抗性・インスリン分泌低下を調節している遺伝子に存在する1塩基多型（SNP）の解析が有益である．

SNP解析によるテーラーメード医療―Cons　SNP解析は糖尿病診療の向上につながるか稲垣　暢也 , 山田　祐一郎 4巻4号 , 2006年5月 , pp.510-515

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　糖尿病診療において，診断―病態―治療が一貫していることが重要である．現時点では，特殊な病態を呈する一部の症例でのみ，SNP解析による診断から治療まで繋がっている．

Master Interview

対論：患者と医師―患者と医師は育ち合うもの―澤井繁男先生（作家・関西大学文学部教授）に聞く内潟　安子 4巻4号 , 2006年5月 , pp.432-439

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内潟　雑誌『糖尿病診療マスター』の今月号は，「対論糖尿病診療」を特集します．その冒頭に澤井先生のお話をいただきたいと存じます．

澤井先生の「腎臓放浪記」（平凡社，2005）を読んで，私はたいへん感銘を受けました．先生は二十代で人工透析，三十代腎臓移植，四十代移殖腎の拒絶から人工透析再開，そして五十代で腹膜透析を始められました．ご専門はルネサンス研究でいらっしゃいます．

Editorial

決断するということ―熟慮，行為，認識石井　均 4巻4号 , 2006年5月 , pp.516-517

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彼（本居宣長）の説によれば，「かんがふ（考える）」は，「かむかふ」の音便で，もともと，むかえるという言葉なのである．「かれとこれとを，比校（アヒムカ）へて思ひめぐらす意」と解する．それなら，私が物を考える基本的な形では，「私」と「物」とが「あひむかう」という意になろう．

考えるという事．小林秀雄「考えるヒント」（新潮社）

Case Record

血液透析導入前後に左右の硝子体手術を行い，良好な視力を回復し得た2型糖尿病の1例田中　瑞保 , 太田　陽子 , 佐藤　賢 , 石井　晶子 , 中神　朋子 , 戸田　淳子 , 北野　滋彦 , 岩本　安彦 4巻4号 , 2006年5月 , pp.519-522

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Case　12年来の糖尿病歴を持つ55歳の男性

　経過中，血糖コントロールが不良のまま治療を自己中断し，2002年に通院を再開した際には既に糖尿病の3大合併症を認めていた．2003年，血清クレアチニン2.9 mg/dLと慢性腎不全の状態となり，同年中に血清クレアチニン5.55 mg/dLまで上昇した．このとき，糖尿病網膜症も福田分類B4 pm，B5 pmと進行し入院．左硝子体手術および左前腕内シャント作成術が施行された．しかし退院後に右硝子体出血が出現．保存的治療にて視力は改善せず，血清クレアチニンも8 mg/dL以上となったため再入院．血液透析を導入するとともに，右硝子体出血に対し右硝子体手術と白内障手術を施行した．その後の経過は順調で，術後，網膜症は次第に鎮静化し良好な視力の改善が得られた．

Caseの教訓：罹病期間の長い糖尿病患者はいくつもの合併症を抱えている．進行した糖尿病網膜症による視力低下の改善には，厳重な内科管理と眼科医との連携が必要である．

これだけはマスターしよう！糖尿病臨床研修ガイド　第3回

血糖コントロール―食事療法と運動療法中神　朋子 4巻4号 , 2006年5月 , pp.523-528

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今回は，血糖コントロールの要となる食事療法と運動療法について，研修医が知っておかなくてはならないポイントを述べたい．食事療法は糖尿病の治療の基本であり，糖尿病の病型を問わず，すべての糖尿病患者が行うべき治療である．食事療法を十分に行わなければ，運動療法や薬物療法の効果をあげることはできない．

糖尿病患者に対するロービジョンケア　第3回

ロービジョンエイド高橋　広 4巻4号 , 2006年5月 , pp.531-535

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糖尿病患者の多くは働き盛りの中高年者です．その見にくさのため，仕事や家事などで困惑しています．例えば，新聞や書類の字を読めない，段差が見えにくく，人ごみ多い道は苦手で，通勤に支障が生じています．また，時計が見えにくいので時間がわからないし，会合など席での食事が負担になっているなど，多くの場面で問題があります．しかし，これらを見やすく，より楽に，安全に行うのには視覚障害者用補助具，ロービジョンエイドが役立ちます．

まず，眼鏡や拡大鏡（以下ルーペ）など光学的補助具はすぐに思いつくでしょう．しかし，それだけで見にくさが改善される場合は少ないのが現実です．がんばって見にくい状態で字などを見ようとし続けると，余計に眼が疲れ，日常生活上ストレスを感じてしまいます．そこで視覚障害者用の様々な補助具や工夫が必要です．とくにコントラストをよくすることは視覚障害者には有効で，これは高齢者でも役立ちます（Box 1）．

チームでBrush Up 糖尿病診療

長期コントロール不良患者へのアプローチ舩田　仁美 4巻4号 , 2006年5月 , pp.536

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Case　危機感と知識の確認

　53歳男性，2型糖尿病，高血圧症，身長166 cm，体重78 kg，BMI 28.3，罹病期間14年．合併症は神経障害なし，腎症3期A，網膜症A2．本人の問題点は飲酒と昼の外食と話され準備期である．目標のstep upが見受けられないことや，体重や検査データの改善も見られずセルフケア行動は停滞している状態であり，HbA1Cは8.0～9.8％とコントロール不良の状態が続いている．服薬コンプライアンスも低い状態である．

抜け殻も時には大切野々宮　修 4巻4号 , 2006年5月 , pp.537

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Case　内服したか自信がない

　患者：78歳，男性．身長167 cm，体重70 kg，BMI 25.1．

　2型糖尿病．

　現病歴：60歳時，健診にて尿糖を指摘され当院受診し，自己中断なく通院，加療中．

　過去に，当院にて教育入院歴一度あり．

　既往歴：73歳，脳梗塞．

　大手企業に勤めていたため，まじめで，几帳面な一面もある．

　ここ1年でHbA1C 7％台から10％台へ悪化したため血糖コントロール目的で入院となった．

食べることがこわくなった患者へのアプローチ森川　久恵 4巻4号 , 2006年5月 , pp.538

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Case　“病気”に対する恐怖心があおられ，十分な食事量を摂取することができなくなった

　55歳，女性，2型糖尿病．

　BMI 21.5，HbA1C 6.8％（栄養指導開始時）．

　初めて糖尿病を指摘され，外来教育コースを受講．食事療法のみ（指示エネルギー1,600 kcal）で治療を開始．自ら希望して毎月1回外来個人栄養指導を継続的に受けている．

New Books

ビッグファーマ―製薬会社の真実内潟　安子 4巻4号 , 2006年5月 , pp.529

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　よし岡成人先生編集の「糖尿病療養指導士のための糖尿病外来ケア・チェックシート」という新しい本が2月に医学書院から出版された．余白も多くとってあり，手に取って早速ぱらぱらめくってみようという気になる．章と章の間に，よし岡先生のちょっとした思いが「CDEガーデン」というコーナーとして載っている．これがまたおもしろい．

　そのなかに，「糖尿病診療はメーカー主導？」というのがあった．イミシンなことが書かれてある．

糖尿病療養指導士のための糖尿病外来ケア・チェックシート朝倉　俊成 4巻4号 , 2006年5月 , pp.530

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　2000年に発足した日本糖尿病療養指導士（CDEJ）は，多くの糖尿病患者さんの療養生活について糖尿病を専門とする医療スタッフでサポートするために誕生した．2006年で6年目を迎えるが，残念なことに臨床現場でCDEJとしての力を十分に出しているスタッフは多いとはいえない．その最大の理由は，多忙な臨床業務のなかで患者さんの療養生活や心理を聞き出しながら，糖尿病治療に関するプロブレムを整理する余裕がないからではないだろうか．特に，入院とは違って，患者さんとの1本勝負である外来でのケアは，“CDEJとしての視点（着目点）”の良し悪しが大きな鍵となる．すなわち，いくら有能であっても，現在の多忙な外来診療の中で，十分な時間をかけて患者ケアを考えることが可能なCDEJは少ない．

　そのようなときに刊行された本書は，CDEJのためにまとめられた実践書であり，これを活用することでCDEJとして必要な“着目点”を効率よく押さえることができる画期的な書籍である．決して初めから通し読みしなければならないという教科書ではない．したがって，本書の使用法は実践に則して多岐にわたる．外来患者さんに合わせてチェックシートを短時間で完成させることに用いるのもよいし，スタッフ間の啓発活動の一環として，模擬患者を提示しながらチェックポイントと解説を読みながらディスカッションすることで患者ケアの訓練を行うことも可能である．さらには，糖尿病のクリティカルパスを運用するうえでのバリアンス評価の基準作りや，療養指導計画立案での項目作成に非常に役立つものと考える．つまり，本書は糖尿病療養指導の実践的ケアのエッセンスを非常に効率よく習得できるようまとめ上げられたもので，常に座右に置きたい1冊である．CDEJであっても，またこれからCDEJを目指すコメディカルや，専門病院のスタッフであっても，近くに糖尿病専門医がいない環境下であっても，本書が強い味方になることは間違いない．

基本情報

糖尿病診療マスター
4巻4号
(2006年5月発行)

電子版ISSN：1347-8389 印刷版ISSN：1347-8176 医学書院

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