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2000年に発足した日本糖尿病療養指導士(CDEJ)は,多くの糖尿病患者さんの療養生活について糖尿病を専門とする医療スタッフでサポートするために誕生した.2006年で6年目を迎えるが,残念なことに臨床現場でCDEJとしての力を十分に出しているスタッフは多いとはいえない.その最大の理由は,多忙な臨床業務のなかで患者さんの療養生活や心理を聞き出しながら,糖尿病治療に関するプロブレムを整理する余裕がないからではないだろうか.特に,入院とは違って,患者さんとの1本勝負である外来でのケアは,“CDEJとしての視点(着目点)”の良し悪しが大きな鍵となる.すなわち,いくら有能であっても,現在の多忙な外来診療の中で,十分な時間をかけて患者ケアを考えることが可能なCDEJは少ない.
そのようなときに刊行された本書は,CDEJのためにまとめられた実践書であり,これを活用することでCDEJとして必要な“着目点”を効率よく押さえることができる画期的な書籍である.決して初めから通し読みしなければならないという教科書ではない.したがって,本書の使用法は実践に則して多岐にわたる.外来患者さんに合わせてチェックシートを短時間で完成させることに用いるのもよいし,スタッフ間の啓発活動の一環として,模擬患者を提示しながらチェックポイントと解説を読みながらディスカッションすることで患者ケアの訓練を行うことも可能である.さらには,糖尿病のクリティカルパスを運用するうえでのバリアンス評価の基準作りや,療養指導計画立案での項目作成に非常に役立つものと考える.つまり,本書は糖尿病療養指導の実践的ケアのエッセンスを非常に効率よく習得できるようまとめ上げられたもので,常に座右に置きたい1冊である.CDEJであっても,またこれからCDEJを目指すコメディカルや,専門病院のスタッフであっても,近くに糖尿病専門医がいない環境下であっても,本書が強い味方になることは間違いない.
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