日本看護医療学会雑誌 2巻2号 (2000年12月)

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要旨

 ヒト尿中には糖蛋白物質であるアルファ-1-ミクログロブリン(α1M)とウリナスタチン(UT)が排泄されている。これら両物質の尿中動態は精神神経疾患によって差異が見られる。即ち、尿中のα1M量とUT量との関係を示す回帰直線の勾配は精神分裂病患者群では健常対照群と変わらないのに対し、痴呆症患者群と大うつ病性障害者群ではそれぞれの対照群より勾配は有意に(p<0.05)急峻である。このことは痴呆症患者群と大うつ病性障害者群での尿中のα1M量とUT量の関係はそれぞれの対照群で認められる関係とは明らかに異なっていることを示している。また、パーキンソン病患者群では尿中のα1M量とUT量との間に相関が見られない。一方、尿中のα1M量とUT量自体には各疾患群と対照群との間に差異は認められない。このように尿中のα1M量とUT量そのものでなく、両物質の関係で検討するとき精神神経疾患群によって違いが見られる。尿サンプルは非侵襲的に得ることができ、この両物質の解析は精神神経疾患での有用な情報をもたらすと思われる。

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【抄録】

 本研究は、有職者の精神的健康と生活行動との関連を明らかにし、精神的健康の維持又は増進のための生活行動スタイルを見出すことを目的としている。精神的健康度の指標として、POMS(気分プロフィール検査)を用いた。生活行動の調査として、家族、日常生活、仕事、自由時間、運動の5つの領域と最近の悩みに関する領域を加え、調査項目を作成した。20歳以上の有職者男性115名、女性71名を対象に調査を行った。

 調査項目とP0MS6尺度についてそれぞれ分散分析を行った。カテゴリー間の平均値の比較をt検定を用いて検討した。また、各生活行動領域の精神的健康への関連の程度を捉えるために重相関係数を用いて検討した。

 その結果、男性においては、精神的健康への影響が最も大きいのは仕事であり、女性では、日常生活であった。しかし、男女共に行動領域のほとんどが、精神的健康と関連していた。最も関連性が高かった項目は、次の通りである。食欲と精神的健康。寝つきがよいことと精神的疲労感が少ないこと。目覚めが良いことと活気(男性)。目覚めがよいこととイライラがない・思考の混乱がないこと(女性)。仕事における精神的刺激と精神的健康(男性)。職場の人間関係と精神的健康。趣味における精神的刺激と抑うつが少ないこと(女性)。自分や家族、仕事の悩みの有無と精神的健康。

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Ⅰ.緒言

 人々の健康に対する意識が高まる中で、生活習慣病予防としての肥満の弊害が強調され、ダイエット方法の情報が氾濫している。一般的に青年期の女性は、肥満を糖尿病や心疾患などの危険因子として捉えるよりも、体型の美的要素を阻害するものとして捉えている。そして、女性の多くが痩せることを強く望み1)、全女性の身体状況は19年前と比較してBMI判定による「やせ」が1.5倍増加し、女性の体型はスリム傾向になっている2)

 また女性の体型がBMI判定で、「普通」と判定されても太っていると評価し、行き過ぎた食事制限(ダイエット)の結果、貧血や月経困難などの身体的異常を招いたり、さらに神経性食欲不振症等を誘発する可能性も強い3)。青年期は生涯にわたる生活習慣の基礎を確立する時期として、また女性にとっては健全な母性の準備期として、自らの健康のみならず次世代への健康に関与する重要な時期でもある4)。ましてや医療人となる対象学生はこの両者の立場にあり、健康実践モデルとしての認識を強く持つ必要があると考えられる。

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Ⅰ.はじめに

 現在、わが国は急速な少子高齢化社会の進行により、医療・福祉は大きな転換が迫られている。高齢者の増加の他に、中高年の生活習慣病の増加も予測されている。医療費は毎年1兆円規模で上昇し、国は医療法改正案や公的介護保険の実施等による医療費抑制政策を進めている1)2)。慢性疾患の入院期間の短縮および在宅療養者の増加により、家庭の保健機能はますます重要になっている。しかし、戦後の高度経済成長と国民皆医療保健制度の確立により、医療の社会化は一般的となり、家庭での受け入れ体制が整っていない状況では、在宅療養には大きな戸惑いと困難を伴うことが考えられる。さらに、地域の連帯性が欠如した現代社会は、療養者本人および家族は孤立し不安感を増大させるものと考えられる。また、大学病院・総合病院の外来においては、診断・治療が最優先され、患者の生活や精神的援助は十分とは言えない状況である。これらの背景を踏まえ、相談事業が多くの病院で試みられ成果が報告されている3)-6)。情報時代の今日は電話相談はもとより、インターネットを利用した新しい相談形態も増加しつつある7)-10)。このような医療看護の流れの中でわれわれは、専門知識・技術を社会に還元し、地域における在宅介護・健康回復の支援とシステムモデルの開発を目指して1999年6月、無料の看護相談外来を開設した。相談方法は面接法を採用した。大学教員による看護相談活動は、教育・研究のためのフィールド活動として位置づけられ、ユニークな試みである。そこで、1年間の活動をまとめ、支援システムモデル開発の視点から活動の成果と今後の課題を明らかにする。

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Ⅰ.緒言

 N医療技術短期大学部看護学科では、集中講義、特別講義、特論(卒論に相当)以外は1・2年次で講義を終了し、3年次に臨地実習を集中的に行う教育課程をとってきた。1994年度は2年次の臨床看護総論で、NANDA(North American Nursing Diagnosis Association)1)の“人間の反応”パターンに基づく看護診断についての講義を6時間行い、1995年度からはこの講義を30時間に変更した。我々は、1994年度の小児病棟実習における先天性股関節脱臼患児の受持記録を分析した結果、3年生の診断概念理解や情報収集量および診断根拠の検討が不足している傾向を報告した2)。これを受けて、各論の講義においても看護過程の系統的な教育が必要であると考え、小児の特徴をふまえた看護診断の事例展開を2年次小児臨床看護の講義で解説するようにした。講義終了時に、白血病幼児の事例提示によるレポート課題を課して臨床実習への導入をはかった。第1報では、提出されたレポート内容の分析から学生のアセスメントと看護診断の傾向について報告する。

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和文抄録

 本論文は、多様な使われ方をしている「ケア」という言葉について、日本における使われ方を多面的に検討し、概念の整理を試みるものである。語源の意味を確認し、国語辞典・専門用語辞典の説明、専門家の著述での使われ方について検討してみたところ、「ケア」に込められる意味を次の三つにまとめることができた。

 1)日常的な身の回りの世話をする側面

 2)苦痛や悲しみに耐える患者・家族を支援する側面

 3)病気の体験を通して患者・家族が成長するのを援助する側面

第2回日本看護医療学会学術集会 会長講演

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はじめに

 老年看護は老年者の長い生活歴と加齢に伴う生理的変化を視野にいれて、身体、心理、社会的側面を統合して理解し、QOLをふまえた援助ができることをねらいとしている。

 しかし、最近では核家族化の影響から老年者と接する機会が少なく、本学科においても祖父母と一緒に生活する体験を全く持たない学生が約6割を占め、老化による変化や老年者の生活を具体的にイメージすることが困難になっている。そのため、老年看護学では老年者の理解に重点をおき、老年者の活動を紹介するVTRの視聴や老年疑似体験、さらには老年者との対話、祖父母のライフヒストリーの聴取など教育方法に様々な工夫をしているのが現状である。

 老年者を理解する教育方法の一つとして、「老年期を生きることを理解するシミュレーションゲーム」がある。このゲームは前川1)らによって開発され、その有効性が報告されたのが最初(1992)で、その後佐藤2〜7)らを中心に種々の角度から教育効果について報告されている。このゲームは、老年期を理解し老年者への対応の心構えについて学習を動機づけることを目的として、身体に疑似体験装具をつけたり、出来事カードを引くことにより老年者の生活を疑似体験する。また、ゲームの進行につれて老化が進み、大切なものを失ったり自己イメージが変わったりしていく過程を体験するように工夫されている。

 今回、老年者の加齢に伴う変化について実感し、心情的に老いの理解を深め老年者への対応の心構えをつくることを目的として「シミュレーションゲーム」を実施したので、その実際を紹介し、教育効果としてこの体験から得られる学習内容の範囲や体験前後の老年者のイメージ、老年者に対する態度の育成について分析した結果を述べることとする。

第2回日本看護医療学会学術集会 シンポジウム

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 本年、平成12年4月から介護保険が当初から様々の課題を背負ってスタートし、6ヶ月を経た。ケアーマネージャーの新しい資格試験制度も昨年から始まり医療界においても福祉との連携に現実的に直面している。患者、あるいはクライエントを中心に医療、福祉を始め各々の専門職が自立してその役割を十分に発揮するためにチームケア、あるいはチームでサービスすることである。何よりもサービスを受ける側に選択権があることがキーポイントというしくみである。看護職の役割とその責任、実践能力がまさに問われてくるといえよう。

 4名のシンポジストは、保健婦として行政の立場、病院の中での看護職の立場、医師の立場、そしてケア・サービスの受け手である患者(クライエント)・家族の立場からは実際に痴呆の義母を介護している主婦の方である。参加者の熱心な傾聴の中で発展的実践につなげるべく課題に取り組んでいただいた。

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《はじめに》

 2000年4月に介護保険がスタートし、半年が経過しようとしています。

 高浜市では、もう既に次の課題である介護予防に着手しておりますので、その点を含めて<行政の立場から考える看護職の今後の役割>について、述べさせていただきます。

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《はじめに》

 私はアルツハイマー型痴呆の義母を6年余り介護しています。義母は84歳、私は48歳です。我家の介護は一つの例でしかありませんが、家族の立場から感じたことをお話させていただきます。

老年医学の動向 三浦 久幸
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はじめに

 日本は急速に高齢社会を迎え、いまや65歳以上の高齢者の占める割合が全人口の17%近くになっている。2025年には高齢者の割合が3人に1人になるという人類がかつて経験したことのない大きな問題に直面している。このような状況の中、老年医学の課題は表1のように多岐にわたっている。

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はじめに

 わが国は、21世紀を目前にひかえ4人に1人が高齢者となり、75歳以上の後期高齢者が7人に1人という「超高齢者社会の到来」という、世界に例を見ないスピードで高齢化が進行している。我々リハビリテーション科病棟においても介護を要する高齢者が増加し、障害をもった高齢者の「ADL自立支援」と「QOLへの取り組み」は看護最大の目標である。

 高齢者は加齢に伴う機能低下が存在し、種々の疾患の罹患率も高い。例えば脳血管障害においては機能障害を残し、それに伴う能力低下により要介護状態になりやすい。また在宅においては、介護者や環境面の影響があり介護度がより重度になりやすい。ことに介護者も高齢者であるという現実もある。

 そこで、我々病棟看護婦は、高齢者の能力低下においては心身機能の維持向上のみならず、介護者、家族にとって望ましい状態で退院するためにはどのような援助が必要か、あるいは退院が可能であるかという視点で看護を行う事が重要である。

基本情報

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日本看護医療学会雑誌
2巻2号 (2000年12月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1345-2606 日本看護医療学会

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