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緒 言
補完代替療法は、西洋医学が及びにくい側面である患者のQuality of Life(QOL)や日常生活動作(Activities of Daily Living,ADL)の向上を補う方法として、 近年医療機関や介護施設などで西洋医学と併用して取り入れられている(今西 他,2007)。補完代替療法であるタクティールマッサージは、1960年代に未熟児に 対する成長発達促進のためのケアとして開発され、日本ではタクティール Ⓡ ケアとして知られている。タッチとマッサージの中間的位置づけにあり、手足や背中などを両手で柔らかく包み 込むように密着感をもって“撫でる”ように触れることを特徴とする技術である(牧野 他,2013)。対象者が着衣のまま実施でき、施術者が特別な道具や熟練を必要とせず、 撫でる圧力と速度の手技を習得すれば容易に実施できる。
タクティールマッサージによる効果は、早産児の成長発達促進(Elmonein et al., 2021)のみならず、認知症高齢者のストレスと攻撃性の緩和(Suzuki et al., 2010)、 脳卒中患者のADLやQOL の向上(Olsson et al., 2004)、糖尿病患者の血糖コントロール(Andersson et al.,2004)やQOLの向上 (Wändell et al., 2012)、健常女性へのリラクセーション効果(鈴木 他,2016)、自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder、ASD)児をもつ母親の不安の軽減(Uehara et al., 2016)、がん患者の全人的苦痛の緩和(渡邊 他,2014)や睡眠の改善(Sakaiet al., 2021)、子どもの睡眠や リラクセーションに対する効果( 北野 他,2020; 北野 他,2021)など様々な年齢や状況にある対象者で報告されている。看護師がその手技を身につけ実施すれば、 疾患を有する対象者の身体状況を適切にアセスメントした上で、より安全・安楽に実施することができると考えられる。その結果、入院・在宅を問わず、様々な状況にある対象者 の症状やストレスの緩和、QOL の向上に活用できると考えられる。
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