日本看護医療学会雑誌 2巻1号 (2000年6月発行)

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総説

看護医療とソーシャルワーク前田　敏雄 2巻1号 , 2000年6月 , pp.1-8

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　本学会理事長石黒彩子教授は、本学会誌第1巻第1号の巻頭言において「わが国は、世界一の長寿国家としてWHOにも認定される誇るべき国家ですが、近年急速に少子・高齢社会に移行しつつあります。社会構造が変化する中で、医療費をはじめとして、在宅ケア、小児の健全な育成などの問題が深刻化しています。特に、ドイツに次いで世界で2番目に開始が計画されている介護保険の運用については種々論議されていますが、大きな医療制度の改革が進展しつつあります。

　医療と福祉サービスにおいてその資源を効率よく活用し、保健サービスも含めたそれぞれの領域をいかに包括的なシステムとして確立していくかが、問題を解決していく上で最も重要な事がらになります。看護職はこの変革において、オーケストラにおけるコンサートマスターのような役割を担うことを期待されているのではないでしょうか。」そして、さらに「来るべき21世紀に向けて船出した日本看護医療学会が、荒波にもまれながら学際的に包括ケアやチームケアのあり方について研究し、お互いの理解を深めて学びあう場として（本学会誌）が発展することを願ってやみません。」と発刊に際しての思いを力強く述べておられます^1）。

　本論文の筆者は福祉学を専攻する者であり、看護や医療技術の学生にはこんにちに至るまで約30年間「社会福祉」の講義を担当させていただきました。そこで、この機会に看護医療と福祉援助の方法であるソーシャルワークとの関連について、共通の視野とソーシャルワークの課題についてここに述べさせていただきたいと思います。

原著

看護婦に求められる資質─一般人、医師、看護婦、看護教師への意識調査を踏まえて河津　芳子 , 任　和子 2巻1号 , 2000年6月 , pp.9-15

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和文抄録

　本論は、変容する社会状況に合わせて変貌しているであろう看護婦への期待を把握するために、一般人54人、医師41人、看護婦48人および看護教師48人に、質問紙法によって調査を行った結果をまとめたものである。看護婦が備えるべき要件として34項目をあげ、それぞれAからDの4段階でその重要性について評価した回答を因子分析し、因子ごとの平均値を算出し各因子の得点とした。その結果、「関係性」、「技能性」、「科学性」、「主体性」、「情緒性」の5因子に分けられ、その順位は全体としては、「技能性」、「情緒性」、「関係性」、「主体性」、「科学性」の順であり、「技能性」が最高位にあげられた。各因子を重視する程度の順位を対象の属性で比較した場合、他の群と順位が明らかに異なっていたのは、医師の群であり、「情緒性」、「関係性」、「技能性」、「主体性」、「科学性」の順になっていた。「科学性」が、いずれの対象群でも低かった。本調査によって、一般人、医師、看護婦、および看護教師が期待する看護婦は、的確な技能を有し、患者や同僚と良好な関係を持つことができる看護婦であり、「技能性」、「情緒性」および「関係性」の因子が「主体性」や「科学性」の因子より重視される傾向にあることがわかった。

足部マッサージと腹式呼吸併用の生理的効果片岡　秋子 , 北川　裕子 , 渡邉　憲子 , 榊原　久孝 2巻1号 , 2000年6月 , pp.17-24

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和文抄録

　本研究は、足裏刺激による足部マッサージに腹式呼吸を加えることによる生理的効果を検討する目的で実施した。被験者は、健康女性12名で、ベット上にあおむけになり、足部マッサージに腹式呼吸をした時としない状態でそれぞれ12分間実施された。その2つのタイプ（足部マッサージに腹式呼吸をした時としない状態）の足部マッサージを実施する前、直後、5分後、10分後の自律神経活動を心拍変動のパワースペクトル解析によって評価した。足部マッサージのみでは、心拍数に減少傾向がみられたが、終了10分後には有意に再増加していた。腹式呼吸を加えた足部マッサージの場合には、心拍数は終了直後、10分後ともに有意な減少を示した。また足部マッサージのみでは、交感神経活動の指標としての低周波成分と高周波成分の比（LF／HF）は終了後有意な増加を示し、副交感神経活動の指標としての高周波成分（HF）は有意な変化を示さなかった｡一方、腹式呼吸を加えた足部マッサージでは、LF／HFは減少傾向を示し、HFは終了後に有意な増加を示した。今回の結果は、腹式呼吸を加えた足部マッサージは、足部マッサージのみの場合より、リラクゼイション効果が大きいことを示した。

4名の新生児から分離されたMRSA株の解析小川　真奈美 , 土井　まつ子 , 仲井　美由紀 , 後藤　紀久 , 熊田　真理子 , 徳野　悦子 , 石山　光枝 2巻1号 , 2000年6月 , pp.25-30

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　小児科病棟の新生児室に入院した4名の新生児からMRSAが繰り返し分離された。本研究では、これらの新生児にMRSAが分離された後、新生児室の環境、及び患児と接触のあった者からMRSAを分離し、パルスフィールド電気泳動法を用いて染色体DNAの制限酵素切断パターンによる菌株の解析を行い、菌株の由来と菌の移行経路について検討した。これらの新生児から分離した株の制限酵素切断パターンは互いによく類似しており、新生児間で菌が移行した可能性が示唆された。

分娩刺激因子が初乳中インターロイキン1に与える影響立岡　弓子 , 北村　キヨミ 2巻1号 , 2000年6月 , pp.31-37

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要約

　85名の母親を対象に、初乳中IL-1α、IL-1β濃度の含有量について明らかにし、その母親の特性との関係について検討をした。分析については酵素免疫測定法を用い、母親の特性は、産科学的因子について情報を得た。初乳中IL-1α、IL-1βの平均濃度は、19.6±12.7pg/ml，53.7±106.6pg/mlであり、基本統計値から母親による大きな個体差を認めた。Cytokineは、刺激により局所的に産生される液性因子であることから、分娩期に母親が受けた刺激因子について関連性を統計学的に分析したところ、IL-1αは分娩所要時間、分娩時出血量、子宮収縮の強度、胎盤実質重量、感染という因子の関連性が挙げられた。これら分娩時の刺激因子により、より高濃度のIL-1αが分泌されるという科学的事実は、入院中の授乳計画に反映され、根拠に基づく看護実践になると考えられる。

調査報告

在宅療養における日記使用の試み飯田　美代子 , 森田　せつ子 , 石黒　彩子 , 大村　いづみ , 杉浦　太一 2巻1号 , 2000年6月 , pp.39-47

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要旨

　21世紀の医療は入院の短縮、在宅療養の増加、健康の自己管理による生活習慣病の予防が必至であり、在宅療養のQOLを図る上で記録は重要な課題と予想される。筆者らは在宅療養者が使用しやすい日記を考案作成し、無料で1,000名に配布した。1ヶ月後に日記の使用状況や有用性等についてアンケートを回収（204名）した結果、以下のような特徴が明らかになった。

　1）回答者は女性が80％を占め、年齢構成では50代から80代が76％を占めた。

　2）日記を使用する目的は自己管理用42％、高齢者の介護用28％が多数を占めた。

　3）日記使用の効用は、体調・病状の把握45％、備忘録22％、排泄の管理22％、連絡17％、食事の管理17％、反省7％、医療処置6％、精神的安定3％であった。

　4）回答時において日記を使用中86％、日記が役立った77％であった。

　5）過去における療養記録あり65％、記録の種類は大学ノート32％であった。

基本情報

日本看護医療学会雑誌
2巻1号
(2000年6月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：1345-2606 日本看護医療学会

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