消化器画像 9巻6号 (2007年11月)

特集 PETは肝胆膵領域の画像診断を変えたか?

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■クリニカルPET

 1980年Somらが初めて(大腸)癌においてFDG-PETで高い腫瘍集積がみられることを報告して以来その臨床的役割が明らかになってきた.とりわけ近年のPET装置の性能の向上により全身像の撮像が比較的短時間で可能となり,病期診断や再発,転移診断のための前進検索や癌検診の手段としてPETが果たす役割に期待が寄せられている.本邦では2002年4月よりFDG-PETが種々の癌(大腸癌,膵癌,転移性肝癌など)に関して保険診療が認可された.このため,従来少数の研究施設において研究目的で使用されていたPETが,大きく腫瘍診断の中の重要な診断法(クリニカルPET)として現在注目を浴びている.本稿ではFDG-PETの原理と特徴,その利点と盲点について解説する.

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 FDG-PETを利用したがん検診が全国に広がっているが,肝・胆道・膵領域の癌が見つかる頻度は低い.当院の4年10か月の経験では,10,202件中6例0.06%,発見癌204例の中の2.9%にすぎなかった.6例の内訳は,PET陽性4例(肝臓癌1例,肝内胆管細胞癌1例,膵臓癌2例),PET陰性2例(肝臓癌)であった.PET陽性4例のうち,肝内胆管癌と膵臓癌1例の合計2例は,超音波検査で異常を指摘されておらずPETで拾い上げのできた例であった.また,膵に異常集積を示した自己免疫性膵炎の1例も経験した.

 FDG-PETは偽陰性などの限界があるものの全身の多臓器にわたる検診であり,陽性の場合に悪性度評価や病期診断など付加的な情報が得られる利点がある.FDG-PETが肝・胆・膵領域の悪性腫瘍スクリーニングに与えるインパクトは,多少なりともあると思われる.

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要旨 肝臓癌のFDG-PET診断では転移性肝癌のみが保険適応であり,現状では肝細胞癌や胆管細胞癌などは適応外である.現在日本核医学会では保険収載に向け活動中である.転移性肝癌ではFDG-PETの有用性が広く知られており,術前検査として不可欠のものとなりつつある.肝細胞癌では分化度により検出率が変わる.中~低分化型ではFDG集積が高く,肝外転移診断や早期再発診断に有用だが,高分化型では集積が低いため,存在診断には役立たないものの,分化度を反映するため,予後推測が可能である.また化学療法に対する感受性の術前診断としての有用性も期待されている.胆管細胞癌では肝細胞癌と違いFDG集積が高い傾向にあり,有用である.

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要旨 肝胆膵領域のPET検査の有用性に関して,膵癌の有用性は高く,多くの報告がある.肝癌に関しては転移性肝癌の有用性は高いが,原発性肝癌に関しては偽陰性例が多くあまり有用ではない.胆道癌の診断に関して,従来のCT,MRI,腹部超音波検査などと比較して診断能が高いとの報告が多いが,症例数も多くなくまだ一定の見解は得られていない.現在,わが国では胆道癌は保険適応ではないためあまり行われていない.しかし,他の画像診断では得られない有力な情報を提供することができる.特に従来の画像診断では困難であった壁肥厚タイプの診断に対して有用性が期待できる.さらに,遠隔転移に関しては有用性が高く,治療方針に影響を与えることがしばしばある.

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要旨 膵癌原発巣に対する自験例の検討で,FDG-PET陽性率は85.5%であり,MD-CTやMRI等の形態画像で診断された転移巣のFDG-PET陽性率は59.3%であった.検討例の57.2%に耐糖能異常を認めたがFDG-PET陽性率とは関連せず,またFDG-PET陰性例の間質量や組織型に一定の傾向はなかった.膵癌のFDG-PET診断においては一定の確率で偽陰性が生じる可能性を念頭に置く必要がある.FDG-PETは治療効果判定あるいは再発,転移巣の早期発見にも有用である可能性が示唆された.FDG-PETはMD-CTやMRIといった形態画像,臨床所見とあわせて判断する必要があり,今後は形態を同時に捉えることが可能なPET-CTに期待がもたれる.

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要旨 現在多くの施設におけるPET/CTは単純CTであり,この場合,診断用の造影CTは別に実施する必要がある.一方,われわれはPET/CTの際に造影CTを同時に施行し,造影CTとPETの融合画像により診断している.この方法はPETと造影CTが1回で済むので患者の時間的負担が少ない.

 また画像も造影CTとPETの融合画像のほうが単純CTよりも情報が多く,有用性が高い.特に肝胆膵領域におけるCT検査には造影検査が不可欠であり,造影PET/CTは1回の検査で局所診断から転移診断まで可能な「one-stop shopping」の検査法である.さらにCT Angiograohy とPETを融合させた3次元画像は術前の解剖を知るうえでも有用である.

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要旨 膵癌術後,従来の画像検査で再発診断に迷う症例,腫瘍マーカー上昇を認めるが再発部位がはっきりしない症例を経験することがある.FDG-PETは腫瘍の生物学的活性を観察できること,全身スキャンが一度に可能であることから,再発診断の一助として有用である.特に費用面を考慮すると,FDG-PETを定期的に行うよりも,画像上再発に迷う,もしくは腫瘍マーカー上昇を認める症例に行った場合,その有用性が高い.胆道癌術後に関しても,膵癌術後と同様にFDG-PETは再発診断に有用であると考えられる.肝細胞癌に対しては,肝内再発が多いこと,造影CT,MRIの有用性を考慮すると,その重要性は低いと考えられる.

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要旨 H215O静注動態法,C15O2吸入定常法によるポジトロンCTを用いて,肝局所血流量を動脈・門脈別に測定した.また,C15O 1回吸入定常法により肝局所血液量を測定した.転移性肝癌を内包する肝の非癌部肝局所動脈血流量は増加し,門脈血流量は減少していることが確認された.H215O静注動態法を繰り返して施行することにより,薬物負荷試験が可能であった.アンギオテンシンIIでは腫瘍血流量が保たれ,非癌部肝血流量が減少した.ドーパミンでは肝血流量が増加していることが確認された.FDG-PETにより腫瘍の糖代謝機能と血流量との関係を検討したところ,腫瘍の種類にかかわらず負の相関を示し,腫瘍の種類を超えて普遍的である可能性が示唆された.

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要旨 18F-2-fluoro-2-deoxy-D-glucose(FDG)を用いたPET検査(以下,FDG-PET)は炎症などの良性疾患への集積が認められ,良性と悪性疾患の鑑別に苦慮する症例が存在する.膵疾患においても腫瘤形成性膵炎などへのFDG集積が認められ,正確な診断がなされない症例がある.最近,本院で開発したL-[3-18F]-α-methyltyrosine(FAMT)を用いたPET(以下,FAMT-PET)が,膵臓以外の領域において良性と悪性疾患の鑑別に有用であることが示されている.今回,筆者らが経験したFAMT-PETの膵腫瘤性病変における応用を,ここで紹介する.

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要旨 11C-methionine PETにより部分膵機能評価を正常膵16例,膵頭十二指腸切除例8例,膵体尾部切除例5例,生体部分膵移植ドナー2例について検討した.正常例の膵頭部と膵体尾部において集積度に差はなくSUV15~16であった.膵頭十二指腸切除例では残膵の機能低下がみられ,膵体尾部切除例では残膵の機能亢進がみられた.生体部分膵移植ドナーでは機能亢進および低下する症例がみられ,今後の厳重な膵内外分泌能の経過観察および本検査による評価が必要と考えられた.

Clinical Challenge この画像から何が読めるか?

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患者 65歳,女性.

主訴 なし(膵腫瘤精査目的).

現病歴 検診で蛋白尿を指摘され,腹部超音波検査を受けた.膵に腫瘤を指摘され,当科紹介となった.

既往歴 54歳,高血圧,55歳急性心筋梗塞,60歳糖尿病,高脂血症.

血液検査 Glu 140 mg/dl,TG 190 mg/dl以外末梢血,生化学異常なし,腫瘍マーカー(CEA,CA19―9)異常なし.

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要旨 症例は78歳女性.近医にて腹部USで膵頭部に囊胞性病変を指摘され当科紹介.CT,EUS,MRCPで膵頭部に4×3 cmの多房性囊胞性病変と,内部に3×2 cmの結節状隆起を認めた.ERPでは乳頭開口部は開大し主膵管内に粘液透亮像を認めた.幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的に結節状隆起は腺腫で,囊胞壁の一部に上皮内癌と近傍の間質内に微小浸潤癌を認めた.MUC免疫染色を施行したところ,結節状隆起はMUC5AC陽性,MUC1陰性であったのに対して,微小浸潤癌部はMUC5AC陰性,MUC1陽性であった.本症例は分枝型IPMNの近傍に発生する浸潤癌の初期像を示す貴重な症例と考えられた.

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要旨 患者は60歳代,男性.上腹部痛を契機に膵体尾部腫瘤が発見され,CEA,CA19―9は上昇していた.画像上,膵体尾部に接し主膵管と交通のない,径10 cm大,類球形でcyst in cystを呈する多房性囊胞性腫瘤を認めた.US上,①少量デブリ部分,②充満デブリ部分,③充実性隆起部分の3成分より構成されていた.膵粘液性囊胞腫瘍の診断にて手術を施行されたが,組織学的にはリンパ上皮囊胞であった.USと一致して,①非粘性,②泥状,③粘土状の3つの性状が異なる角化変性物を認めた.角化変性物が非粘性→泥状→粘土状になるにつれ,エコー輝度,CT値,MRIT1強調像での信号が上昇し,T2強調像での信号が低下した.

技術講座 超音波内視鏡ガイド下穿刺術(EUS-FNA)―私のコツ

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■はじめに

 わが国において普及が遅れていたEUS-FNAであるが,最近では学会場でも以前より聴衆が集まるようになり,普及の兆しがみえてきたのが実感される.そうした中でのタイムリーな企画であるが,連載も第5回目となるとさすがに“ネタ切れ”となり,同じようなことを繰り返し書いてしまうのではないかとの懸念が頭をよぎったため,本稿を執筆するにあたって,まずは第1~4回までの連載に目を通してみた.

 手技の実際については確かに類似点が多いものの,それでも各先生がそれぞれの施設の状況に合わせてアレンジをし,自らの経験をもとに細かなところまで工夫を加えておられるのがよく伝わり,たいへん興味深く拝読した.また,適応や問題点とその方策についても,少しずつではあるものの意見の相違がみられ,それらを改めて考え直してみることにより,筆者自身の施設を取りまく状況や戦略的な特徴を整理することもできた.

 本稿ではこうした他施設との相違点を特に意識しながら,EUS-FNAの“私のコツとポリシー”について紹介してみたい.

 参考までに,筆者は2002~2003年にハンブルク大学エッペンドルフ病院(Nib Soehendra教授)でこの手技を学んでいるため,連載第3回執筆の良沢昭銘先生は筆者の兄弟子にあたり,そもそもEUSについては14年前に連載第1回執筆の山雄健次先生から教わっている.

講座 Q&Aで綴る画像診断学再考(第6回)

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 Q君はK大学の後期研修医.病棟では色々な患者さんを受け持って毎日何かと忙しい.さっきから沈痛な面もちで放射線科のレポートを眺めてる.

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 本書は,J. C. B. Grant教授により1943年に出版された“Grant's Atlas of Anatomy”の第11版の日本語訳である.

 本書の最大の特長は,古典的な解剖図のすばらしさにある.この図譜の多くの解剖図は,カナダのトロント大学の解剖学博物館に展示してある解剖標本を落ち着いた色彩で,美しく,正確に描いたものである.十数年前,トロント大学を訪れた際に,解剖学博物館に立ち寄ってみた.そこには,Grant教授が作った,複雑な構造をわかりやすく解剖した標本が展示してあり,それを学生たちがスケッチしている光景を見ることができた.このように,本書の主要な解剖図は実物を忠実に再現してあり,したがってわかりやすく,実習室で解剖しながら,あるいは遺体のない時でも,予習や復習に役立つのである.

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編集後記 下瀬川 徹
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 今から10年ほど前,ヒトの膵臓の外分泌機能を患者さんに苦痛を与えずに正確に測定できないか検討したことがある.それまで最も信頼されていた外分泌検査法は十二指腸ゾンデ法であり,患者さんにとっては苦痛の大きい,手間と時間がかる割に,客観性も今ひとつな検査法であった.そこで目を付けたのがPETである.消化酵素を作るため膵臓は生体内で最も蛋白合成が盛んな臓器である.11Cでメチオニンをラベルし,膵での取り込みを経時的にPET画像から定量し,同時に採取した十二指腸液の膵液成分と比較した.

 当時,PET装置は全国的にも限られた箇所にしかなく,ポジトロン核種のラベルも特殊な技術だった.この領域では先端を行っていた秋田脳研を訪れ,何とか共同研究にこぎつけた.まだ,盛岡と秋田間の高速道路が開通しておらず,仙台と秋田を車で片道4時間かけて何度も往復した.今回,大月論文で引用して頂いており,懐かしく思い出した.

基本情報

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消化器画像
9巻6号 (2007年11月)
電子版ISSN:1882-1227 印刷版ISSN:1344-3399 医学書院

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