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要旨 通常の膵頭十二指腸切除術や,縮小手術を追求するうえで欠かせない外科解剖について述べた.Treitz(膵頭部)およびToldt(膵体尾部)の癒合筋膜は通常の膵の受動術を行ったときに,膵臓側についてくる疎生結合織の膜である.膵のアーケイドや静脈など,重要な血管はすべてこの膜と膵実質との間に存在する.①膵頭部の動脈アーケイド,すなわち胃十二指腸動脈と上腸間膜動脈とのアーケイド:前上膵十二指腸動脈(ASPD)が胃十二指腸動脈から分岐後,主乳頭部下方に向かって走行,ここで膵後面に回り前下膵十二指腸動脈(AIPD)に移行する.すなわちAIPDは一般の通念と異なり膵後面を走行する.後下膵十二指腸動脈(PIPD)から胆管右縁を走行し,乳頭部に向かう後上膵十二指腸動脈(PSPD)あるいはPIPDに匹敵する太さの動脈が存在する.これは,“乳頭動脈”と名付けられるべきものである.外科医は手術中にこの動脈を傷つけないようにしなくてはならない,②膵頭部から膵体部に向かう動脈,すなわち胃十二指腸動脈と総肝動脈とのアーケイド:胃十二指腸動脈と後膵動脈とはアーケイドを形成しており,膵の上縁に沿って存在する.このアーケイドの動脈をSuperior-Transpancreatic Artery(上部横行膵動脈,Superior TP)と呼称することを提案する.また胃十二指腸動脈がASPDと右胃大網動脈と分岐するその近傍から分岐し,膵の下縁に沿って走る動脈が存在する.これが横行膵動脈である.すなわち膵前面の上縁,下縁にアーケイドが2つ存在する,③膵頭部の静脈:胃結腸静脈幹(gastrocolic trunk)の解剖については,“Henleの胃結腸静脈幹”と呼ばれており,この共通管は約60%に存在する.この共通管が上腸間膜静脈(SMV)に流入するあたりをHenle's trunk area(Henleの静脈幹領域)といい,ここから回結腸静脈(ileocolic vein)の分岐する部分までをsurgical trunkという.
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