感染と抗菌薬 22巻3号 (2019年9月)

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 世界的に薬剤耐性菌が増加しており,尿路感染症ではキノロン耐性大腸菌やESBL産生大腸菌の増加が問題となっている。特に複雑性尿路感染症においてその傾向が顕著であったが,最近では単純性尿路感染症からの分離も増加傾向にある。2019年6月に発売が開始されたタゾバクタム/セフトロザンは,特に複雑性尿路感染症から分離されることが多いESBL産生菌や緑膿菌に対する高い抗菌活性を示す。同薬がタゾバクタム/ピペラシリンと並んで,カルバペネム系薬に依存している現状を打開することが期待される。

◉新薬上市後の変化とさらなる治療展望

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 ベダキリンは2005年に報告されたジアリルキノリン系新規抗結核薬である。従来の抗結核薬とは交差耐性を持たず,多剤耐性結核菌にも有効であり,また多くの非結核性抗酸菌にも活性を示す。多剤耐性結核に対して,従来の抗結核薬との併用による臨床試験でプラセボに比して優れた効果を示し,2012年に米国,2018年に日本で承認された。副作用としてはQT延長が問題となる。以後の多剤耐性結核に投与された多くの報告でも,治癒率の向上,優れた忍容性が示されている。今後は非結核性抗酸菌症に対する使用なども期待される。

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 リネゾリド(LZD)に続く第2世代のオキサゾリジノン系薬として,テジゾリド(TZD)リン酸エステルが国内の臨床現場に導入された。LZDと同等以上の高い活性を有し,耐性を選択しにくい薬剤と認識されている。皮膚・軟部組織感染症領域の臨床試験で高い有効性と安全性が確認されており,この領域での日常診療におけるデータの集積が待たれる。近い将来,他領域での臨床応用にも期待が大きい。

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 2018年春に承認されたバロキサビル マルボキシルは,抗インフルエンザ薬の中でもシェアが最も高くなっているが,投与後にI38アミノ酸変異による耐性ウイルスが一過性に出現する。出現頻度は成人で10%弱,小児で20%強であり,それらではインフルエンザ症状軽快に若干の遅延が見られる。家族内感染を起こしている可能性は極めて小さいようであり,また,そこから周囲へ大きく波及する事例は見付かっていない。この変異は,血中のインフルエンザ抗体価が低い例で有意に多く起こっており,ワクチン接種が有用と思われる。

特集2 外来のための性感染症治療の指針

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 性感染症の動向は,我が国においては,感染症法5類としての5疾患(全数把握:梅毒,定点把握:性器クラミジア感染症,性器ヘルペス,尖圭コンジローマ,淋菌感染症)の動向調査結果から知ることができる。ここ5年の特徴は,定点把握疾患に大きな変化はないが,性器クラミジア感染症は20歳代前半の若年世代でやや増加がみられている。一方で,梅毒が増加していることは特筆すべきである。2013~2018年にかけて直線的に増加し,2012年の875例から2018年の7,002例に至り,6年間で8倍に増加した。2019年に入り増加の勢いにやや抑制がみられる。男性尿道炎で原因微生物としてMycoplasma genitaliumが課題である。

◉外来における性感染症治療の基本と実践

①クラミジア感染症 野口 靖之
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 クラミジア子宮頸管炎は,自覚症状が乏しく,無治療のまま放置されると上行感染となり卵管炎や骨盤内感染を引き起こす。クラミジアによる卵管炎は,治療後も卵管狭窄や卵管周囲癒着が後遺症として残存し,異所性妊娠や卵管性不妊症の原因になる。さらに,妊婦が感染すると産道感染により,母子感染を引き起こす。我が国の定点感染による報告では,性器クラミジア感染症の罹患者は,妊娠,出産をひかえた20歳前後に多く,若年女性では早期発見と治療が重要である。

②淋菌感染症 濵砂 良一
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 淋菌(Neisseria gonorrhoeae)は主に男性では尿道炎を,女性では子宮頸管炎を引き起こす。尿道炎の主症状は尿道痛,膿性分泌物で,子宮頸管炎の主症状は膣からの膿性分泌物や陰部の悪臭であるが,女性では無症状であることも多い。咽頭に高い確率で感染することが知られており,性器の感染症であっても咽頭感染にも留意した治療が必要となる。淋菌の薬剤耐性は著しく,ベンジルペニシリン,経口セファロスポリン系薬,ニューキノロン系薬,テトラサイクリン系薬,マクロライド系薬に対する耐性率は高い。第一選択薬はセフトリアキソン1gの(点滴)静注であるが,セフトリアキソン耐性株が出現し,今後,治療が困難となる可能性がある。

③梅毒 石地 尚興
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 近年我が国では梅毒の症例が急増しており,外来において常に念頭に置かなくてはならない疾患となっている。診断は主に血清学的検査でなされるが,その結果の解釈にはある程度の知識が必要である。治療については,我が国の標準となっているペニシリン系薬内服療法のエビデンスが近年示されており,ガイドラインに従った治療を行えばまず問題が無い。さらに,世界の標準である持続型ペニシリン系薬の筋注の導入も検討されている。

④HIV感染症 吉村 幸浩 , 立川 夏夫
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 HIV感染症は最も重要な性感染症の一つである。多剤併用抗レトロウイルス療法によって予後は劇的に改善したが,体内からウイルスを排除することは困難であり,生涯の治療継続が必要である。対象は「すべての感染者」であり,初回治療はインテグラーゼ阻害剤1剤とヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤2剤を組み合わせた3剤併用レジメンが推奨される。治療目標は血中ウイルス量の抑制を維持することであり,これを保つことによって本人の予後改善と周囲への伝播抑制につながる。

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感染と抗菌薬
22巻3号 (2019年9月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1344-0969 ヴァン メディカル

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