感染と抗菌薬 22巻2号 (2019年6月)

特集 小児における抗菌薬適正使用―最新の考え方からのアプローチ

◉小児における薬剤耐性菌の動向と薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン

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 薬剤耐性菌の蔓延は世界的な問題であり,日本政府も『薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン』を作成した。厚生労働省は,学童期以降を対象とした『抗微生物薬適正使用の手引き第一版』を公開し,抗菌薬の添付文書にこの手引きに準拠して抗菌薬処方を行うよう追記された。国内の抗菌薬処方は90%以上が内服薬で,そのほとんどが外来で処方され,頻用されている年齢,疾患,診療科が徐々に明らかになってきている。未来のある子供たちに有効な抗菌薬を残すためにも,国全体で抗菌薬の適正使用を取り組んでいく必要がある。

◉小児におけるPK-PD理論とTDM―臨床で役立つ投与設計の理論と実践

①ニューキノロン系薬 西 圭史
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 国内において小児に適応を有するニューキノロン系薬は,ノルフロキサシン,トスフロキサシン,シプロフロキサシンである。従来,小児への投与は幼若動物に起こる関節障害のため禁忌とされていたが,前記3抗菌薬においては安全性が報告され投与が可能になった。その反面,治療対象となる細菌がニューキノロン系薬へ耐性化を獲得する時代である。小児感染症の治療において,貴重な抗菌薬にも関わらずTDMは一般的ではないからこそ,必要な状況で適正使用するため,PK-PDを考慮して投与することが必要である。

②カルバペネム系薬 諏訪 淳一
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 カルバペネム系抗菌薬は非常に広域な抗菌スペクトラムを有し,耐性グラム陰性菌感染症の治療薬として,小児科領域でもなくてはならない薬剤である。PK-PD理論では臨床効果の指標としては,24時間のうち薬物血中濃度がMIC以上を保っている時間の割合を示すTime above MIC(%T>MIC)が用いられ,40~50%で最大殺菌作用を示すとされている。MEPMにおいてMIC=2µg/mLの細菌を想定した場合,10~20mg/kg/回8時間毎,0.5時間点滴で投与すると効果が不十分である可能性がある。%T>MICを増やす方法として,小児においても,点滴時間を3時間に延長することの有効性がいくつか報告されている。

③抗MRSA薬 尾上 知佳 , 辻 泰弘
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 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は院内感染の主たる起因菌である。国内において上市されている抗MRSA薬6剤のうち,小児感染症への適応が承認されているのは,アルベカシン,バンコマイシン,テイコプラニンおよびリネゾリドの4剤である。小児における薬物動態の基本的な考え方を述べた後,各抗MRSA薬の投与設計について各論を概説する。

◉新生児における抗菌薬の選び方・使い方

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 新生児の感染症は,症状が非特異的であり,診断基準が確立していない。このため,微々たる非特異的な症状に対して抗菌薬投与が先行し,過剰な抗菌薬投与に繋がりやすい。一方,新生児期の抗菌薬曝露は,それ自体が死亡率の上昇や壊死性腸炎のリスクとなり,将来的な生活習慣病の発症にも関連する。このような新生児独特の背景を理解しながら,非特異的な感染症状に対する遅れのない治療と,抗菌薬の適正使用を両立していく必要がある。そのためにも敬遠されがちな血液培養を適切に採取し,結果に応じて適切に抗菌薬を使用しなければならない。

◉小児における抗菌薬の選び方・使い方―病態・治療・予防の実際

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 小児期感染症の原因として,インフルエンザ菌は最も重要な細菌のひとつである。莢膜株と無莢膜株があり,b型の莢膜を持つHibは髄膜炎など侵襲性感染症の起因菌として頻度が高い。Hibは生命予後にも関わる病原体であるが,ワクチンによる予防が可能であり,生後2ヵ月からのHibワクチン接種を心がける。無莢膜株は呼吸器粘膜の感染症を引き起こすことが多く,年少児ではしばしば中耳炎をきたす。耐性菌は複数種類あるが,疾患の重篤度,薬剤感受性,組織移行などを考慮し,抗菌薬の適正使用を実践したい。

②肺炎球菌感染症 星野 直
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 90種類以上にも及ぶ血清型に分類される肺炎球菌は,侵襲性感染症から局所感染症まで様々な感染症を生じる。治療の主体を成すのはペニシリン系薬であるが,細菌性髄膜炎では初期治療薬の選択や用量・用法が異なるため,注意を要する。本邦では,2000年代前半にかけてペニシリン耐性菌が増加し,治療薬の選択における大きな問題となっていた。しかし,肺炎球菌結合型ワクチンの普及による血清型置換に伴い,感受性は改善傾向にある。肺炎球菌感染症の治療に際しては,このような疫学や薬剤感受性の変化にも着目する必要がある。

③百日咳 齋藤 昭彦
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 百日咳は,百日咳菌による呼吸器感染症であり,ワクチンで予防できる病気である。ワクチン接種が進んでいるにも関わらず,世界全体で患者数が増加しており,重要な再興感染症として位置付けられている。最も大きな問題は,感染した新生児,乳児であり,無呼吸,肺炎,脳症,肺高血圧症などをきたし,予後が悪く,死亡することもある。百日咳に有効な抗菌薬は,マクロライド系薬剤で,カタル症状のある病初期に投与すると症状を軽減するが,いわゆる典型的な咳の出現する痙咳期における抗菌薬の投与は,周囲への伝播を防ぐだけである。最新の国内の疫学データでは,学童での症例が圧倒的に多く,就学前のワクチン接種の普及が急務である。

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 マイコプラズマ肺炎の初期治療としてマクロライド系薬を投与することが推奨されているが,2000年以降マクロライド耐性マイコプラズマが検出された。耐性機序は23SリボソームRNAのドメインVの点変異でマクロライドの作用点の変化により親和性が低下したためである。A2063Gと呼ばれる変異菌が最も多い。

 耐性菌優位の状況は必ずしも恒常的に維持されている現象ではなく,また耐性率には大きな地域差が見られている。耐性菌の主体となっているA2063Gという変異菌を新たに産生させないような抗菌薬の選択が望まれる。

◉小児における抗真菌薬の選び方・使い方

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 本邦での小児科日常診療における真菌感染症は,白癬・爪白癬などの表在性真菌症を除いて,何らかの背景疾患を抱えている児にみられることが多い。その病態は複雑で重症なことが多く,診断が難しい上,原因となる真菌の「固有名詞」まで同定できないことも少なくない。以前は想定・検出された真菌の固有名詞に基づいて,抗真菌薬が決定されることが一般的であったが,現在では真菌においても薬剤耐性化が進んでいるため,薬剤感受性試験を行い,それを基に抗真菌薬を最終決定する必要が出てきている。

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感染と抗菌薬
22巻2号 (2019年6月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1344-0969 ヴァン メディカル

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