感染と抗菌薬 22巻4号 (2019年12月)

特集 高齢者の呼吸器感染症治療―症例が示すマネジメントの最前線

◉肺炎

①肺炎球菌 青柳 哲史
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 肺炎は本邦の死亡原因の第5位で,肺炎球菌は市中肺炎の主要な病原微生物である。肺炎球菌は肺炎など局所感染以外に,菌血症や髄膜炎など侵襲性感染症を引き起こす。特にインフルエンザ感染後の肺炎球菌による二次性細菌性肺炎は,侵襲性感染症を合併し予後が悪い。肺炎球菌による感染症の第一選択薬はペニシリン系抗菌薬であるが,二次性細菌性肺炎などで重度の呼吸不全を伴う例に対し,抗菌薬以外の十分に確立された治療法はない。社会の高齢化が進む中,肺炎および肺炎球菌感染症を考える上では肺炎球菌ワクチンなど予防が重要となる。

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 MRSAを含む黄色ブドウ球菌は肺炎の原因菌のひとつであるが,鼻咽頭の常在菌でもあることから “定着菌” として喀痰から分離され,治療を要しないことも多い。一方で,黄色ブドウ球菌はインフルエンザ後の二次性細菌性肺炎では原因菌になりやすいほか,空洞や膿瘍形成を伴う肺炎では鑑別として考慮する必要がある。MRSA肺炎の治療薬として,バンコマイシンのほかに,テイコプラニン,リネゾリドが第一選択薬として位置付けられており,その特徴を理解して使い分けることが重要である。

③インフルエンザ菌 川波 敏則
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 インフルエンザ菌による成人(特に高齢者)感染症は,ほとんどが非侵襲性かつ無莢膜型によるものが多い。インフルエンザ菌は,市中発症肺炎の主な原因菌であり,慢性気道感染症においても慢性安定期に下気道に定着し,増悪期の原因菌として重要である。通常は気管支肺炎を呈するが,肺膿瘍や膿胸の合併も稀であり,比較的予後良好である。しかし,全国調査において臨床株の約4割がβ-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性(BLNAR)を有することが報告され,第一・第二世代セフェム系薬が無効であり問題となっている。

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 レジオネラは集中治療室で治療が必要な重症肺炎と認識されているが,軽症例も多数存在する。しかし,適切な抗菌薬が選択されなかった場合,急速に進行して死に至る症例があるため初期抗菌薬選択が重要となる。このため日本のレジオネラの現状と対策を検討する目的から,日本化学療法学会は2006年に「レジオネラ治療評価委員会」を発足し,日本のレジオネラ肺炎の解析を継続して実施している。これまでに臨床的特徴や抗菌薬感受性,治療評価,診断スコア・モデルの作成など,多くの成績を発表している。

⑤緑膿菌 青木 信将 , 菊地 利明
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 緑膿菌は院内肺炎の起炎菌として重要であるが,市中肺炎においても基礎疾患を有する例で注意が必要である。多数の病原因子の産生や耐性化傾向のために難治性となることが多く,アンチバイオグラムや感受性結果をもととした個別治療を検討する必要がある。

◉インフルエンザ

インフルエンザ 藤倉 雄二
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 インフルエンザは自然軽快傾向を示す一過性の疾患であるが,ときに肺炎を合併し,重篤な転帰をとることがある。インフルエンザはそれ自体ウイルス性肺炎を合併することもある一方,ウイルス感染後に二次的に細菌性肺炎を合併することもあるため,様々な病態を形成し,画像所見もそれに応じて多彩なパターンを示す。治療として抗インフルエンザ薬を適正かつ積極的に使用するのはもちろんのこと,合併する病態を考慮した治療を計画することも重要である。

◉肺結核

肺結核 山末 まり , 小宮 幸作
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 日本の新規登録結核患者数は経年的に減少しているが,75歳以上の後期高齢者では平均寿命の延長もあるためか増加している。高齢者の肺結核は,特異的な症状を訴えることが少ない。また,空洞を形成しにくく,一般細菌による肺炎の合併や既存の肺病変による修飾が加わり,典型的な所見に乏しいとされている。また,併存症のために標準治療が行いにくいことや,抗結核薬による副作用が生じやすいことから,治療の継続が困難であることが多い。現在の新規登録結核患者のほとんどが高齢者であることを鑑みると,高齢者における肺結核の特徴および治療法について熟知する必要がある。

◉肺真菌症

①カンジダ 平山 達朗 , 宮崎 泰可
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 呼吸器感染症における肺カンジダ症は,経気道感染によるものではなく血行性の播種性カンジダ症の部分症であり,その多くは敗血症性肺塞栓症として経験される。経気道的にカンジダが侵入し炎症を惹起する,いわゆるカンジダ肺炎はほとんど存在せず,日常診療で考慮するべき病態ではない。したがって,呼吸器検体からカンジダ属が分離されても診断的意義は極めて低く,治療適応はない。通常,肺カンジダ症は,血液からのカンジダ属の分離と胸部画像所見をもとに臨床診断され,カンジダ血症に準じた治療を行う。

②アスペルギルス 渡辺 哲 , 亀井 克彦
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 肺アスペルギルス症には侵襲性肺アスペルギルス症,慢性肺アスペルギルス症のほか,アレルギー疾患としてのアレルギー性気管支肺アスペルギルス症がある。症状は非特異的なものが多く,また用いられている血清検査の性能は十分とは言えない。治療開始の遅れは致命率の低下をきたすため,臨床現場では総合的判断で治療が開始されている症例も多くみられる。治療期間は数ヵ月以上に及ぶことがしばしばである。侵襲性肺アスペルギルス症,慢性肺アスペルギルス症では外科的切除術の併用も検討することが望ましい。

③ニューモシスチス 田坂 定智
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 ニューモシスチスは真菌の一種であり,細胞性免疫が障害された患者に肺炎を起こす。ニューモシスチス肺炎はAIDSの指標疾患として最も頻度が多いが,近年HIV感染のない患者での発症例が増加している。ニューモシスチスは培養が困難なため,鏡検により菌体を確認することで確定診断を行うが,高分解能CTの所見や血清β-D-グルカン値の上昇,PCR法によるDNAの検出などをもって治療に踏み切ることも多い。治療はST合剤が第一選択薬だが,副作用が多く,ペンタミジンやアトバコンを用いることもある。

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目次

Breakthrough真菌症 木村 宗芳
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感染と抗菌薬
22巻4号 (2019年12月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1344-0969 ヴァン メディカル

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