感染と抗菌薬 21巻3号 (2018年9月)

特集 呼吸器領域の抗菌薬の使い方 - 最新エビデンスから導く基本と応用

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βラクタム系薬には、ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系、モノバクタム系があり、呼吸器感染症(下気道感染症)では前3者を用いるが、そのサブクラスによって特徴が異なるため、十分な知識のもとに抗菌薬を選択すべきである。グラム染色や迅速抗原検査を参考に標的治療を行うべきだが、エンピリックに治療を開始する場合には、重症度、誤嚥のリスク、耐性菌のリスクを考慮して、可能な限り狭域スペクトラムの抗菌薬を選択するように務めるべきである。

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ニューキノロン系薬はβラクタム系薬と異なる作用機序、抗菌活性、薬物動態的特徴を有しており、呼吸器感染症の治療薬として欠かすことのできない抗菌薬である。抗菌活性については、肺炎球菌を含むグラム陽性菌、緑膿菌を含むグラム陰性菌、非定型病原体、抗酸菌と幅広く有効性を示し、組織移行性に優れ、内服薬のバイオアベイラビリティも良好である。一方、耐性化を比較的容易に獲得しやすいことや、結核感染をマスクする点には十分な注意が必要である。

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マクロライド系抗菌薬は、マイコプラズマなどの非定型肺炎に第一選択の薬剤である。その抗菌作用に加え、菌への修飾作用や宿主側への免疫調整作用が知られ、実臨床でもびまん性汎細気管支炎(DPB)を含む好中球性炎症性気道疾患に対するマクロライド少量長期療法が標準治療として行われている。本稿では、マクロライドの抗菌薬としての作用と、さらに抗菌薬以外の免疫調整作用に関して、特に筆者がマウスモデルを用いた検討で得た、マクロライドで誘導される免疫調整性細胞集団の新しい知見も含め紹介したい。

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呼吸器領域におけるMRSA感染症は、日常臨床では主に医療・介護関連肺炎、院内肺炎、人工呼吸器関連肺炎で経験する。しかしながら、MRSAは上気道・下気道に常在しており、細菌学的検査において真の原因菌かどうかについては判断が難しい場合が少なくない。MRSAによる呼吸器感染症に対して使用可能な抗MRSA薬はバンコマイシン、テイコプラニン、リネゾリド、アルベカシンの4剤であるが、リネゾリド以外はTDMが必要である。MRSAが原因でないことが判明したら、抗MRSA薬の中止を検討する。

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百日咳の診断法は、PT-IgAやPT-IgM、またLAMP法により以前より早期にできるようになった。今後は成人の百日せきワクチン導入を検討し、罹患数を減少させることが課題である。また平成30年1月1日より全例報告となり、より正確に罹患数を捉えることが可能になったが、長引く咳の鑑別診断に百日咳も考慮されることが大切であると思われる。

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マイコプラズマ肺炎は2011~12・15~16年に2峰性の大流行があり、1988年以後消失していた流行の4年周期が復活したようにも見える。2010年・2014年にはこれに先駆けて夏から秋にかけて小さな流行が見られていたことから、2018年の動向が注目される。マイコプラズマのマクロライド耐性率は現在着実に減少しつつあり、このような状況においてこそ、耐性の有無を迅速・簡便に検索できる遺伝子診断法は診療上の有用性が高い。難治例に対するステロイドは考慮されるべき治療法であり、その使用基準の確立が望まれる。

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肺結核と鑑別が大切なのは、肺炎と肺非結核性抗酸菌症である。喀痰抗酸菌塗抹陰性は抗酸菌症を完全に否定するものではない。またインターフェロンγ放出試験陰性でも実臨床では結核の可能性が20%以上残る。肺結核は多剤併用化学療法で治癒できる疾患である。しかし薬剤耐性、薬剤副作用、薬剤アドヒアランスの3点が臨床医を悩ませてきた。耐性薬剤を誘導しないように、必ず有効薬を2剤以上投与するのが基本原則である。高齢者結核が増加しており、薬剤副作用と相互作用の対策が重要性を増している。

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慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪は気道の細菌やウイルス感染による気道炎症、喀痰増加、気道平滑筋収縮などで惹起される。安定期管理薬として使用される長時間作用性抗コリン薬あるいは長時間作用性β2刺激薬には増悪予防作用がある。喘息合併例には吸入ステロイド薬が併用される。マクロライド系薬には安定期管理薬を使用している患者の増悪抑制作用が報告され、管理薬の併用でも増悪を予防できない症例ではマクロライド系薬の追加が考慮される。マクロライド系薬の使用に際して、耐性化や消化器症状などの副反応に対する注意が必要である。

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慢性肺アスペルギルス症(CPA)は、既存肺疾患による気管支・肺構造の改変部に定着し、発病する。非結核性抗酸菌(NTM)症はCPAの基礎疾患として高率であり、本邦ではNTM症が増加傾向にあることから、両疾患が合併した症例が認められる。NTM症において本邦で最も高率なMycobacterium avium complex(MAC)症ではCAM、RFP、EB投与が行われるが、RFPはアゾール系抗真菌薬の血中濃度を著しく低下させるため、両疾患を治療する際にはRFPを用いL-AMBかファンギン系抗真菌薬を投与するか、アゾール系抗真菌薬を用いRFPを中止するかの選択を迫られ、その選択の可否は現在明瞭ではない。

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医学の進歩に伴い免疫不全患者の増加がみられるなか、肺カンジダ症の頻度が増加する可能性が指摘されている。肺カンジダ症は、発症様式から(1)経気道感染と、(2)血行性播種に大別されるが、経気道感染による肺カンジダ症は稀である。確定診断のためには気管支鏡検査などによる病理組織学的診断が必要であり、喀痰や気管支肺胞洗浄液などからの検出だけでは肺カンジダ症とは言えない。菌種同定においては、生化学的同定よりも質量分析やPCRによる遺伝子検査により詳細な菌種同定ができるが、薬剤感受性試験検査も治療効果判定に有用である。

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海外渡航歴のある患者の感染症診療においては、渡航した国や地域の最新の疫学情報、帰国後日数の確認が極めて重要である。帰国者の診療で注意を要する呼吸器感染症は、鳥インフルエンザA(H7N9)、中東呼吸器症候群(MERS)、多剤耐性結核などである。特にインフルエンザとMERSは、濃厚接触した医療従事者の発病、院内アウトブレイクのリスクが高く、院内感染対策に細心の注意を要する。海外で感染した結核に関しては、多剤耐性結核菌感染の可能性を念頭に入れて診療にあたる必要がある。

基本情報

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感染と抗菌薬
21巻3号 (2018年9月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1344-0969 ヴァン メディカル

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