連載 精神科の患者さんの感動・驚愕・奇跡の一言・1【新連載】
エピソード:「桜の花が咲きましたね」「病院は俺のカネを搾取してきた」
山下 隆之
pp.150-153
発行日 2021年3月15日
Published Date 2021/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200862
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最初のエピソードは、私が看護師になって間もない1990年代のことです。まずは当時の病院の状況を簡単に説明します。
当時の精神科病院の役割は、社会の価値や法律の狭間で、患者さんが、病院という社会の中で意義ある人生を送れるように支援することであったと思います。そのため、患者さんの楽しみとして、春はお花見、夏は盆踊り大会、秋は運動会、冬はクリスマス会などの病院内行事が1年を通してありました。特に長期入院患者さんにとって病院は社会そのものでした。社会との接点は看護師とテレビと新聞しかなく、いつもそばにいる看護師はとても大きな存在であったと思います。そのような時代、今思えば、いろいろな思いがあったであろう患者さんは、病院の中で一生を終えることを暗黙の了解として受け入れざるを得なかったと思います。
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