連載 トラウマインフォームドな精神保健医療福祉のパラダイムシフト・4
足の爪を切ろう—トラウマインフォームドケアとしての身体のケア
熊倉 陽介
1,2
1東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野
2ことぶき共同診療所
pp.168-173
発行日 2021年3月15日
Published Date 2021/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200865
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カオスな喫茶店:コロナ特集地獄と不気味な音楽と呪いのメール
外来を終えて、ルノアールの椅子にどかっと座りました。「ブレンド」とぶっきらぼうに注文を伝え、マスクをいったん外しておしぼりで顔をすみずみまでピカピカに磨いてから、MacBookを開きます。大量のメールが届いています。臨床業務をしている間には全くメールを返せない肉体労働者であるにもかかわらず、たとえ常勤職としてデスクワークだけに集中していても読みきれないのではないかと感じるほど、毎日たくさんのメールが飛んできます。特定の誰かが悪いわけではなく、プロジェクトやメーリングリストがあまりにも多過ぎるのです。コントロール不能で不条理な世界に対してふつふつとほとばしる怒りを嚙み殺しながら、死にものぐるいでキーボードを叩いて打ち返していきます。スマホから返信できそうなメールは移動中にひたすらポチポチ返しているので、添付ファイルがついていたりしてパソコンに向き合わないと処理できない迷惑なメールばかりが残っています。
「連載用の原稿をお願いします。いつものごとく、時間がなくなってまいりました。読ませていただくのをお待ちします」
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