精神看護 19巻2号 (2016年3月)

特集1 いいのかなと不安に思いながらやってしまっている 腹部のアセスメントと手技を徹底検証

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今、精神科の医療現場では、患者さんの高齢化に伴い身体疾患を合併した患者さんが増え、身体ケアをする頻度が高まり、必要な身体ケア技術の水準が上がっています。

そこでこの特集では、身体ケアのなかでも便秘などでトラブルが多い「腹部」に焦点を当て、アセスメントと手技の方法を学んでいきたいと思います。

現場から出された質問に、ドクター杉田に答えていただきました。

特集2 日本でできるの?オープンダイアローグ

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いま話題のオープンダイアローグ。

今回の特集テーマは「日本でオープンダイアローグはできるのか?」。やれない理由を列挙するのは簡単ですが、今回は、やるためにはどうすればよいかを見つけていこうとする企画です。

2015年末に、日本で初めてケロプダス病院のスタッフ、カリ・バルタネンさんとミア・クルティさんを招いてのオープンダイアローグセミナーが開催されました(主催:オープンダイアローグネットワークジャパン)。

まず最初に、その講演の目玉を斎藤環氏に解説いただきます。会場参加者とカリさん、ミアさんとの間に交わされた質疑応答も紹介します。

次に、フィンランド・ケロプダス病院で研修を受け、トルニオの街を自分の足で歩いて感じたことを三ツ井直子氏に。そして、フィンランドとの違いを超えて日本でどうすればオープンダイアローグが実践できるかを森川すいめい氏に論じていただきます。

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ケロプダス病院から2人のスタッフを招聘し、開催したセミナー

 2015年11月29日、東大駒場キャンパスでオープンダイアローグセミナーが開催された。今回は発祥の地であるケロプダス病院のスタッフ、カリ・バルタネンさんとミア・クルティさんのお2人が日本で初めて講義をされるということもあり、会場は200人以上の聴衆で埋め尽くされた。

 午前中は主催された石原孝二さんはじめ、筑波大学からは森田展彰さんと大谷保和さんと私、竹端寛さん(山梨学院大学教授)、大熊一夫さん(ジャーナリスト)、片岡豊さん(デンマーク社会研究協会代表)といった、本誌2016年1月号にケロプダス病院見学レポートを寄稿した面々、他にコメンテーターとして下平美智代さん(訪問看護ステーションACT-J・看護師)、森川すいめいさん(世界の医療団・精神科医)、矢原隆行さん(広島国際大学教授)がそれぞれの視点から感想を述べた。

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会場からのQ—フィンランドでは入院患者に対してもオープンダイアローグ的なことが行われているのでしょうか。午前中のディスカッションでは「日本の精神病院ではオープンダイアローグは無理」という意見も出ていましたが。

ミア・クルティ ケロプダス病院では、もともと病棟でオープンダイアローグの取り組みが始まりました。ですから家族や患者とダイアローグを行っていくのは、病棟においても可能です。

カリ・バルタネン 入院していてもダイアローグを通じて治療ミーティングを行うのだと病院全体で合意されているのであれば、できると思います。患者・家族が参加をしてオープンに意思決定を行うのは難しいかもしれませんけれども、オープンダイアローグを行うことは不可能ではないと思います。

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 昨年の秋、スウェーデンと国境を接するフィンランドの西ラップランド、オープンダイアローグが生まれた町トルニオへ、街の空気を肌で感じる旅に出た。

 日本において1か月半をかけてトルニオについての情報収集をするなかで幸運が重なり、ケロプダス病院で行われる2015年度最後の病院研修に参加することができた。旅のメンバーは、世界の医療団理事の森川すいめいさん(精神科医)と、同じく世界の医療団東京プロジェクトのコーディネーターの中村あずささん(社会福祉士)、そしてこの私だ。

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日本で実践するには何が必要か

「どんどんやってみたらいい」

 日本の精神医療やケアのなかで、オープンダイアローグを実践することは可能か?

 答えはYESです。これからその理由と、実践方法のエッセンスを示していきます。

連載

べてる新聞『ぱぴぷぺぽ』・108

連載 向谷地さん、幻覚妄想ってどうやって聞いたらいいんですか?・1【新連載】

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—向谷地さん、幻覚妄想の聞き方を教えてください!

向谷地 ふふ、いきなりですね(笑)。……えーとね、私はここ2年ほどの間、3か所の精神科病院に定期的に通って、スタッフと一緒にチームを組んで当事者研究をさせてもらっているんです。そのとき「いちばん大変で手の掛かる治療困難と言われている患者さんを紹介してください」って頼むんですよ。そうしたらある病院に「神様がテレパシーを通して14の罰を自分に下してくる」という人がいたんです。

連載 イイネ!その業務改善・5

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看護部倫理委員会の発足

 当院では、2008年より看護部倫理委員会が発足しました。委員会の目的は「業務を遂行するうえで生じる倫理的問題を表面化させ、利用者の人権を保全し擁護する最善の策を講じる。また、ケアに従事する看護部スタッフの倫理的感受性を養えるよう支援する」としました。

 各病棟から1名の委員が選定され、担当科長1名と精神看護専門看護師(CNS)の1名、計9名で構成されています。

連載 就労移行って何だ?・2

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 東京・新宿にある高層ビルの最上階からの景色は遠く地平線まで広がっている。その景色に抱かれるように、会議室では、障害のある求職者のための就職フェア「BABカンファレンス」が行われていた(BABとはBeyond All Bordersの略。「バブ」と読む)。参加企業は6社。アクセンチュア、キヤノン、東映—。どれも超有名企業。掲げられたポスターもにぎやかで、面接担当者の振る舞いも華やかに見える。

 「めっちゃ、緊張してます……」「練習って言ってたのに!」

連載 こうすればできる当事者研究・2

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1 こんなスタンスを持ってみよう

■仲間と共に「発見」する感覚でいこう

 当事者研究は下記の例のように、ワイワイガヤガヤと仲間と苦労を分かち合いながら、自分に優しい暮らし方を発見していきます。

連載 愛か不安か・4

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無人島の孤独と趣味としての孤独

 ある人が、「わたしは孤独なんです。だから人生が虚しくてたまりません」と訴えるのである。かなり思い詰めた表情で、声にも切迫感がこもり、せめてこのつらさをわかってほしいといった気持ちが伝わってくるのだった。

 この人にとって、孤独は根源的な部分で心を圧迫してくるようであった。苦痛というよりも、自分の存在自体が否定されているかのようなニュアンスが漂っていた。この人は外来通院の患者であったが、「じゃあ、デイケアのメンバーになったらどうですか」と返答すれば済むような話とは思えなかった。

連載 武井麻子のOh!それみ〜よ・4

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世界で最も有名な自閉症者

 「自閉症」という障害が広く一般に知れわたったきっかけといえば、なんといっても映画『レインマン』だろう。だが、この映画が描こうとしたのは自閉症という障害ではなく、重度の自閉症のため長く施設に入所していた兄(ダスティン・ホフマン)と、父の遺産目当てにその存在すら知らなかった兄を施設から連れ出す弟(トム・クルーズ)との関係の変化の物語である。この映画はアカデミー主演男優賞など、数々の賞を受賞した。

 ただ、今回紹介するのはこの映画ではない(いずれ機会があれば、紹介しようと思うが)。自閉症を抱えながら動物学の博士号を取り、現在はコロラド州立大学教授として活躍する実在の女性、テンプル・グランディンである。彼女は最も社会的に成功した自閉症者と言われている。

連載 失恋の話を聞きまくる男たち。桃山商事・11

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別れたいけど、なかなか別れられない—。そんな葛藤に、誰しも一度くらいは苛まれたことがあると思います。「相反する気持ちが五分五分で共存する」という状態は、恋愛ではわりとよく起こり得ることだからです。今回の相談者N子さんも、そんな苦しさをかかえる1人でした。

高校時代からつき合う恋人との関係に悩む彼女は、現在23歳の精神科看護師(この雑誌の愛読者だそうです\(^o^)/)。彼氏は最高学府を卒業した6歳年上のエリート国家公務員で、つき合った当初からN子さんにベタ惚れ。高身長のさわやか男子で、おまけに「今すぐにでも結婚したい」と望んでいる……。そのような彼氏と「別れたいけど、なかなか別れられない」というN子さんの葛藤とは、一体どんなものなのでしょうか。

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現在の認知症診療に欠けている一番大事なもの

 認知症はいま大きな社会問題になっているが、医療現場では認知症のいったい何を治そうとしているのだろうか。

 代表的スタンスとして、認知機能そのものを少しでも改善させようとしたり、治らないまでもなんとか維持しようとしたり、「困った言動」を矯正しようと努力する立場がある。受診に訪れる家族もまた、治るのではないか、記憶や実行機能(料理、仕事など)がよくなるのではないか、機嫌もおさまるのではないか、と思っていることが少なくない。テレビも新聞も雑誌も、「治せる、予防できる」と毎日のように言っている。だから介護が楽になるのではないのかと期待して、家族が本人を連れて外来へやってくる。ところが、認知症をみる医師はこう心の中で思っている。認知症に根治療法はない。BPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia:認知症の行動心理症状)もしょうがない、抗認知症薬と鎮静の薬を出すしかやることがない—悲しいことに、期待と現実とに大きなギャップがある。

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まずはおさらいから

 皆さん、こんにちは。久里浜医療センターの佐久間です。2015年11月号特集に引き続き、動機づけ面接法(Motivational Interviewing:以下MI)の話を進めます。今回はより具体的な、MIのノウハウをお話ししたいと思います。

 まず、前回のおさらいをしてみましょう。アルコール依存症はなぜ自分をダメにしてしまうような(自己破壊的な)飲酒を繰り返すのかをお伝えしました。楽しいから飲むと言うより、つらさ、苦しさから逃れたいというのが主な理由でしたね。そして自分の問題がまったくわかっていない人はほとんどいない、たいていの依存症者は心のどこかである程度は問題を認めている、ということも記しました。どこかで問題を認めているからこそ人に言われたくない、問題がわかっているからこそ人に言われると腹が立つ、そんな気持ちが「否認」という、頑固で攻撃的な否定の態度として現れるのでしたね。

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プロが撮ってくれたことを機に

 2012年、写真家の大西暢夫さんが当院に来て病棟の日常風景写真を撮影してくれました。その一部が『精神科看護』(2012年11月号)に掲載されたのですが、雑誌に載らなかったたくさんの写真がどれも魅力的なので、もっとみんなに見てもらいたいと思い、院内写真展を始めました。それが「ココ今ニティ」の始まりです(ココ今ニティの「ココ」はここの場、ここにいる人たち。「今」は病院のある今池町の今、いま現在の今。「ニティ」はコミュニティの語呂合わせです)。

 写真に写っている長期入院中の当事者たちと、看護師をはじめとした多職種スタッフ、そして写真家の大西さんをメンバーとする「ココ今ニティメンバーズ」はそれ以来4年間、院内はもちろん、他の精神病院や大学のオープンキャンパスなどでも写真展を開催してきました。毎回どんな写真展にするかをみんなで考え、みんなで写真を選び、作り上げてきました。

書論

岩崎航さんとのあれこれ 齋藤 陽道
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キンキンのビー玉の眼と出会う

 岩崎航さんとの出会いは『点滴ポール 生き抜くという旗印』の写真を撮影してほしいとナナロク社の代表である村井光男さんより依頼を受けたことから始まった。そして撮影日、仙台に向かうはやぶさの中で、岩崎さんの家に向かうタクシーの中で、どんなふうに撮影をするかをぐるぐる考えていたことを思い出す。

 前もっていただいていた岩崎さんの自費出版『青の航』はパラパラッとひとめくりするくらいで、しっかりと読み込むことはしていなかった。というのも、筋ジストロフィーという難病をかかえているということは聞いていたのだけれど、その人のことを何も知らないままに障害名だけを知ったうえで作品を読んでしまうことは危ないことだと常々思っていたからだった。

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「回復」という語が意味していること

 病気から「回復」する体験はどのように語られているのか—この問いについて、医療社会学者のアーサー・W・フランクは、社会に流通する回復の語りの形式のひとつとして、“restitution”の語りがあると指摘した。すなわち、人々にとって「病気から回復した状態」とは、病気の「始まり以前の状態、つまりは「新品になったみたいに調子がいい」状態、あるいは旧状(status quo ante)に復帰すること」*1だと考えられ、その前提のもとに「回復」の物語が語られている状況が強固であるという。

 この捉え方は、長い間精神科医療の中でも共有されてきた。つまり精神障害の回復とは、症状が消失し、発症前の生活に戻ることだと考えられてきた。この考え方に基づけば、「原状回復」できない当事者は一生「患者」だということになる。これに対して、「リスティチューション(restitution)」できないと考えられてきた慢性の精神疾患の当事者は、1970年代頃から疑義を申し立ててきた。

映画紹介コーナー

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 障害者だろうと健常者だろうと、この映画はたぶん、見た人のなかに存在する“無意識の壁”に突き刺さる。

 創立から25年、障害者プロレス集団「ドッグレッグス」のスター選手・サンボ慎太郎の日常を5年にわたって追ったドキュメントには、“障害者の姿”ではなく、1人の人間が普通に生きる様が描かれる。

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次号予告・編集後記

基本情報

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精神看護
19巻2号 (2016年3月)
電子版ISSN:1347-8370 印刷版ISSN:1343-2761 医学書院

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