取材レポート
イギリスのリカバリー・カレッジ。「患者」から、回復をデザインする「私」へ
山田 理絵
1
1東京大学大学院総合文化研究科
pp.182-184
発行日 2016年3月15日
Published Date 2016/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200209
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「回復」という語が意味していること
病気から「回復」する体験はどのように語られているのか—この問いについて、医療社会学者のアーサー・W・フランクは、社会に流通する回復の語りの形式のひとつとして、“restitution”の語りがあると指摘した。すなわち、人々にとって「病気から回復した状態」とは、病気の「始まり以前の状態、つまりは「新品になったみたいに調子がいい」状態、あるいは旧状(status quo ante)に復帰すること」*1だと考えられ、その前提のもとに「回復」の物語が語られている状況が強固であるという。
この捉え方は、長い間精神科医療の中でも共有されてきた。つまり精神障害の回復とは、症状が消失し、発症前の生活に戻ることだと考えられてきた。この考え方に基づけば、「原状回復」できない当事者は一生「患者」だということになる。これに対して、「リスティチューション(restitution)」できないと考えられてきた慢性の精神疾患の当事者は、1970年代頃から疑義を申し立ててきた。
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