精神看護 11巻1号 (2008年1月)

特集 地震・火災発生!そのときどうする

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天災・人災が起きると、精神科病院では独特の条件が加わり、さらに困難な事態となります。

 

独特の条件とは……

*患者さんが眠剤を飲んでいると目覚めない場合がある

*保護室が施錠されている

*各扉に鍵がかかっている

*パニック、興奮、あるいは妄想により動けない患者さんがいる

*身体状態が悪く、チューブ類、呼吸器類などをつけている人もいる

*外出、外泊などの把握が煩雑で難しい

などがあります。

 

そこで、「地震・火災など、不測の事態に対して精神科病院が日頃からできること」として参考になる取り組みを紹介していきます。

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形はあったけれど

 私は看護部長として、平成13年3月に下永病院に赴任しました。

 赴任した当時、当院の安全対策としてはすでに医療事故対策委員会(現・医療リスクマネジメント委員会)や防災委員会があり、形としての基盤は存在していました。しかしそれはハード面に頼ったもので、職員のなかには「うちの病院にかぎって大きな火災はないだろう」「スプリンクラーがあるから大丈夫」といった意識がありました。

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 『患者所在確認表』(写真1)は、身近な材料で作れ、閉鎖・開放病棟問わず災害時に活用できる、患者所在に着目した災害対策のツールです。当院では現在、看護部と防災委員会の承認を得て、急性期閉鎖病棟、閉鎖病棟2棟、開放病棟3棟を含めた当院すべての病棟で使用しています。

 今回は、このツールを作製したきっかけや使用方法、閉鎖病棟で使用して得られたメリットについてお話ししていきます。災害での取り返しがつかない問題を最小限に防ぐために、この患者所在確認表が、読者のみなさんの病院での今後の危機管理や災害対策の参考になれば幸いです。

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震度6弱の地震が来た!!(しかも2回……。)

 2003年9月26日、午前4時50分頃と6時8分頃、十勝沖を震源とするマグニチュード8.3、震度6弱の地震が北海道・浦河町を襲った(2回目は余震)。

 べてるの家のグループホーム「フラワーハイツ」に住んでいる松本寛さん(35)は、その日、いつものように自分の部屋で寝ていると、建物が急に大きく揺れはじめたのを感じ、電灯と冷蔵庫が頭上に降ってきたところをなんとか回避した。

FOCUS

精神科とナースコール 加勢 奈美
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 ナースコール(以下、コールと略す)は、患者さんと看護者をつなぐ大切なパイプラインとして重要な役割を果たしています。

 精神科看護において、私たちは、精神状態の落ち着かない患者さんから頻回のコールを受ける事態に遭遇することがあります。そうしたときは対応を繰り返しても患者さんの満足を得られず、もどかしさやどうしたらよいのかわからないというジレンマをかかえ、無力感を味わいます。

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臨地実習では何が学ばれているのか

 ある中堅看護師対象の研修会でカード構造化法を行なったときのことです。もともとカード構造化法とは、授業リフレクション*1の方法の1つで、授業の印象をカードに書き出し、それを二分法で整理しラベルを付けていくことで、自分の授業の構造や学生を見る見方など、自分のもっているさまざまな枠組みを「自分のことば」で確かめていく方法です。ここでは、中堅看護師の皆さんに、多忙な日常のなかでしばし立ち止まり、自分の看護実践を見つめ直すことを通して元気を得てほしいと考えました。そこで、カードの記入にあたって思い浮かべてもらうことにしたのが、「私を育ててくれた患者さんとのかかわり」でした。

 当日は百数十名の参加があったのですが、カード構造化法の結果には、その人が患者とどのようにかかわり、そこで感じたことや気づいたことがさまざまな「ことば」で表現されていました。また、そこにはその人の看護実践の“今”を支える軸となっているもの、すなわち看護観を形づくっているものがはっきりと表れていました。自分自身の大切にしている看護、大切にしたい看護を再確認することができたことで、多くの参加者が明日からまた頑張ってみようという気持ちになってくれたようでした。

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酷暑の東京を飛び立ち香港へ

 酷暑の東京を飛び立ち、2007年8月19日から23日の5日間にわたり、香港で開催された世界精神保健連盟・世界精神保健会議(World Mental Health Congress of the World Federation for Mental Health)に参加してきた。亜熱帯に位置する香港はもっと暑いだろうと覚悟して出かけたが、気温は32度と、体温とほぼ同じ温度の東京に慣れた身体には、悲しいかな、凌ぎやすいとまで感じられたのだった。

 香港は、日本でも人気のある観光スポットなので、訪れたことがある人は多いことと思うが、私たち一行にとっては初めての経験であった。私たち一行というのは、研究室の仲間2人、大学院修了生1人、そして私の老母と大学生の息子に私をあわせた計6人である(ちなみにこの学会では、同伴者の参加もさまざまに優遇されるので、家族を同伴しやすい)。

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 国は、精神科長期入院患者30万人のうち7万人を退院させる施策を打ち出している。

 長期入院患者が退院し地域で生活していくためには、医師・看護師のみの支援では十分ではなく、ケースワーカー、作業療法士などを含めた多職種による支援が必要である。そうした意味で昨今、チームアプローチ(多職種連携による包括的なアプローチ)の必要性は認められてきているが、現実な連携は定着していないのが実情である。

連載 「身体と薬」をめぐる見逃せない情報・1【新連載】

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 すべての抗精神病薬は「中脳辺縁系」における「ドパミン受容体」の遮断作用があり、それによって抗幻覚妄想作用を得ようとしています。実は薬が違っても、ドパミン遮断に関しての効果の差は、至適用量での治療であれば極端な差はないということがわかっています。

 ところが、こと“副作用”については薬の種類によってかなり差があります。それは薬がさまざまな受容体に対してどのようにくっつくかの違いによって生じています。

連載 中井久夫連続講義[補講]・1【新連載】

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2005年11月号~翌年11月号まで計6回にわたって連載し、大きな反響のあった「中井久夫連続講義」。

これを書籍化した『こんなとき私はどうしてきたか』(2007年8月発行)もたいへんに好評です。

「あの名講義をぜひ復活してほしい」というみなさんの声に答えて、今号から「補講」がはじまります。

補講のテーマは境界例(境界性パーソナリティ障害)。

医療者を悩ますといわれるかれらに対して、中井先生はどう接してきたのでしょうか――。

連載 精神看護キーワード事典・22

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『クワイエットルーム~』を観に行けない

 今月号の原稿は、『クワイエットルームへようこそ』という映画を観に行って、その感想を書くはずだった。この映画は大変面白いようで、ネット上のトラックバックを見てもよいコメントが並んでいる。ぜひいきたい。しかし、私は「クワイエットルーム」という単語が怖いのである。この言葉がまとっている空気が怖いのである。

 この名前の部屋が、看護師として初めて勤めた病棟にあった。それもナースステーションのなかに位置していた。具合の悪い患者さんたちが隔離されるための部屋だった。隔離されていても落ち着かない人たちの声を、動きを、そして緊張に満ちた気配を、一晩中すぐ横で感じながら夜勤をしていた。そのときの気持ちは、喩えて言うなら、新生児が泣いたときに自分の授乳が少ないと責められているような感じ(読者の多くにとってはさらにわかりにくい喩えですね)である。患者さんがなかなか落ち着かないのは、攻撃的なのは、妄想的なのは、自分たちのケアが悪いのではないかとつくづく思いながら、病棟の多くの患者さんの訴えを聞き、新しい入院を受け、記録をし、ずっと気配を感じていた。あるときには患者さんが突然ナースステーションのなかで暴れ、PSWとともに殴られて、できたばかりクワイエットルームでしばらく横になって休んだこともある。そのときのPSWの涙や、泣くこともできずに呆然としていた私の気配もそこにある。

連載 フランスの芸術療法・音楽療法を探して・2

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~子どもたち1人1人がもっている色~

 前回お伝えした芸術療法セッションの続きをお話しします。セッションのなかで先生は、芸術療法の基本的なメソッドについての話を軸に、自閉症児や被虐待児とのエピソードを含めながら、そこで何が起きたのか、材料として何を提供して、何が難しかったのかという話をしてくださいました。自傷行為がある場合や、両親のいずれかに依存症などが認められ、失業などで養育能力が薄い場合には実に難しい。けれど、子どもたちには誰にでも可能性がある。水晶玉の深いヒビを埋めることはできないけれど、芸術や人とのコミュニケーションを介して再び輝きを取り戻すことはできるし、それ以上ヒビを広げないストッパーにもなるのだと、時に感極まって涙を浮かべながらお話ししていました。まずは、子どもたちに自由性の保障と安心感を与えなくてははじまらない、安心感のある関係性づくりがいちばん難しいとのこと。それは非常に納得のいく話でした。そして子どもたちが自分たちの好きな楽器、色や好きな画材を選べるようになるまで、時間と真摯さをかけてかかわるのだ、と。自ら変化していく子どもたちの反応、声や言葉、音、色、形にこちらの感性を傾けていけばよいだけだと。そこで開かれた質問を投げかけていくことで、子どもたち自身も自分を開いた答えを返し、自分の治癒力を高めていくのだと話されていました。

 予定を越えた3時間はあっという間に過ぎていました。言葉の難しさはありましたが、やはり伝えたい側の思いと伝える技術の高さ、そして、私の場合は未熟ではありますが、それを受け取る側に認める余裕や準備性があれば、伝えたいことというのは言葉を越えても伝わるのかもしれません。

連載 技法=以前・6

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 統合失調症をもつ当事者へのかかわりのなかで、もっともむずかしいのが「病識」の問題である★1

 カール・ヤスパースは、人が自己の体験に対して観察し判断しながら立ち向かうことを疾病意識とし、そのうちの「正しい構えの理想的なもの」を病識と定義した★2。一般の辞書を開くと、広辞苑では「精神的疾患を持つ者が、自分が病気だと自覚すること」と記載されている。特に妄想は一般的に訂正が困難といわれ、いわゆる「病識」の欠如から派生する人間関係のトラブルが、当事者の地域での暮らしを困難にする。それが入院の長期化の一因ともなっている。

連載

べてる新聞『ぱぴぷぺぽ』・59

連載 宮子あずさのサイキア=トリップ・61

我が家のプチ被災 宮子 あずさ
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家が壊れました!

 今年もいよいよ最終ラウンドをまわり、「今年の日本」「今年の我が家」を振り返る時期になって参りました。私たち夫婦にとって最も大きな今年の出来事といえば、うううううう~。なんといっても自宅のリフォームです。

 リフォームといえば、実際の段取りはともかく、思いつくその瞬間はワクワクするイベントのはずですよねえ。ところが私たちの場合は、ある災難がきっかけで、待ったなしの状況からスタートしました。心の準備もなくはじめたリフォームがどれだけ大変だったことか……。そのきっかけは、7月16日、柏崎周辺の地震だったのです。

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1年の計は三日坊主にあり

 あと1月余で1年が経ち、本誌も2008年1月号になる。「1年の計は元旦にあり」というが、たしか今年の正月は「腹囲85センチ以下」という目標を掲げた。しかしその結果は無残なものであった。というのも、正月三箇日は恒例の酒浸り。いや、すでに大晦日から酒浸り。三日坊主どころではなく、三分坊主、三秒坊主……。酒の効用。すぐに忘れてしまう。

 そもそも私は両刀使いで、酒も好きなら甘いものも好き。とりわけ「つぶあん」は大好物だ。ただし普段は「饅頭断ち」をしており、茶菓子類はほとんど食べないようにしている。しかし、酒を飲むと抑制がとれてしまう。まずありえないことだが、酒席で「つぶあん」の大福など出されたら、すぐさまかじりついているのではないだろうか。

基本情報

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精神看護
11巻1号 (2008年1月)
電子版ISSN:1347-8370 印刷版ISSN:1343-2761 医学書院

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