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~子どもたち1人1人がもっている色~
前回お伝えした芸術療法セッションの続きをお話しします。セッションのなかで先生は、芸術療法の基本的なメソッドについての話を軸に、自閉症児や被虐待児とのエピソードを含めながら、そこで何が起きたのか、材料として何を提供して、何が難しかったのかという話をしてくださいました。自傷行為がある場合や、両親のいずれかに依存症などが認められ、失業などで養育能力が薄い場合には実に難しい。けれど、子どもたちには誰にでも可能性がある。水晶玉の深いヒビを埋めることはできないけれど、芸術や人とのコミュニケーションを介して再び輝きを取り戻すことはできるし、それ以上ヒビを広げないストッパーにもなるのだと、時に感極まって涙を浮かべながらお話ししていました。まずは、子どもたちに自由性の保障と安心感を与えなくてははじまらない、安心感のある関係性づくりがいちばん難しいとのこと。それは非常に納得のいく話でした。そして子どもたちが自分たちの好きな楽器、色や好きな画材を選べるようになるまで、時間と真摯さをかけてかかわるのだ、と。自ら変化していく子どもたちの反応、声や言葉、音、色、形にこちらの感性を傾けていけばよいだけだと。そこで開かれた質問を投げかけていくことで、子どもたち自身も自分を開いた答えを返し、自分の治癒力を高めていくのだと話されていました。
予定を越えた3時間はあっという間に過ぎていました。言葉の難しさはありましたが、やはり伝えたい側の思いと伝える技術の高さ、そして、私の場合は未熟ではありますが、それを受け取る側に認める余裕や準備性があれば、伝えたいことというのは言葉を越えても伝わるのかもしれません。
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