精神看護 10巻5号 (2007年9月)

特集1 うまくいく「退院支援」にはツボがあった

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全国の精神科病院で一気に退院促進がすすんでいます。

でも、「退院促進って一体どこから手をつけたらいいの?」と迷いやあせりをかかえている人も多いのではないでしょうか。

うまくすすんでいる病院では、「この部分にアプローチするのがポイント」というツボをつかみはじめたようです。

「あれもこれもやらねば退院できない」ではなく、「ここさえ押さえれば」というポイント!

それを教えてもらいました。

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1 カンファレンスで1人1人の入院後をフォローする

 当院では患者さんが入院すると、さまざまなカンファレンスを開きフォローしていきます。

 入院時は「入院時カンファレンス」、落ち着いた頃は「中間カンファレンス」、困難事例や問題が起きたときは「緊急カンファレンス」、退院が近づいたら「退院前カンファレンス」、他に「慢性期の長期在院者のカンファレンス」を実施しています。月に8~16ケースほどを扱い、多い日は1日に3ケースについて話し合うこともあります。

 そこでは優先順位をみながら次のような内容を話し合い、検討していきます。①患者さんについての情報を共有する、②再アセスメントを行なう、③治療・看護方針を確認する、④入院形態を検討する、⑤今後導入するプログラムや社会資源(OT、SST、栄養指導、服薬指導、家族教室、ファミリーサポートセミナー、家族会、デイケア、ナイトケア、外来OT、訪問看護)を検討する、⑥検討課題に関する対策を決める、⑦今後の方針を立てる。

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 十勝は、精神障害者の生活圏として早くから先進的な役割を果たしてきました。当地では、作業所や共同住居などの社会資源を誰が作ろうと、運営主体がどこであろうと、すべて共有的性格のものであり、地域社会の資源であるという考え方が貫かれており、誰もが利用できるオープンシステムであることから、1999年には世界心理社会的リハビリテーション学会によってベストプラクティスにも選ばれています。

 そうした十勝に位置する当院は、精神科慢性期病棟(60床)、精神科急性期病棟(40床)、重度認知症病棟(54床)の3つの病棟に、精神科と認知症のデイケアを併設する精神神経科の病院として、患者さんの地域生活をサポートする一翼を担ってきました。

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1 疾患そのものに対する看護がするどく問われる時代になった

 私は看護師として、精神科デイケアと精神科訪問看護部門の両方を担当しています。

 精神科医療は今、その重心を入院から地域へと大きく変えようとしています。3か月という入院期間を一区切りに患者さんが退院するようになってきた現在、入院だけで治療が完結すると考えることには無理があると思います。病気を認めることができず薬を飲むことにも拒否的で、再燃のリスクが非常に高い患者さんもいます。その意味では地域に戻ってから、症状と生活とにどう折り合いをつけていくかという点で、さまざまな試行錯誤と本格的な治療がはじまるといっても過言ではないでしょう。

 そしてそうした試行錯誤の治療過程につきあうのが、私たちデイケアや訪問看護の看護師です。地域を支える私たちに「疾患そのものにどのように看護を提供していくか」がするどく問われる時代になったということでしょう。

特集2 精神科訪問看護の今

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退院促進を受け、地域ケアの担い手として脚光を浴びる精神科訪問看護。

でも、財政引き締めの影響で、内実はなかなか厳しいものがあるようです。

制度のはざまに落ち込んで、カバーできない困難ケースも……。

 

精神科訪問看護の「今」を報告してもらいました。

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 私は訪問看護ステーションの所長をしている者です。私たちの訪問看護ステーションでは精神疾患をもつ利用者への訪問も行なっています。

 今回、「精神科訪問看護は今、こういう問題に直面している」というレポートを書かせていただきました。それは、読者の皆さんに精神科訪問看護が直面している問題を広く知ってもらい、少しでも現状が改善するきっかけになることを願ってのことです。しかしながら狭い地域で活動する訪問看護ですので、情報提供くださった人たちや患者さんが特定されたり影響が及ぶことが懸念されましたので、検討の末、匿名で書かせていただくことにいたしました。その点をどうかご了承ください。

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訪問看護ステーションを取り巻く現状

 先日、退院促進事業関係者懇談会が厚生労働省で開かれた。暑い午後、多くの参加者が集い、さまざまな形で汗を流した。気持ちのよい、いい汗だった方も多いであろうが、私の汗は、さまざまなことを考えさせられ、そしてこれからもっと考えなくてはならないと思って流す汗だった。

 精神科訪問看護の研究をはじめたのが平成7年。それから干支が一巡りした。

 精神科訪問看護は診療報酬改定において、前回までは普及を目指す意味でプラス改定が続いた。他の多くがマイナス改定、つまり診療報酬が減る方向に動いたのに、精神科訪問看護は別格の扱いだった。退院に関する項目で、それまで点数化されていたのは医療機関からの訪問のみ退院後週3回までだったが、退院前の訪問や、複数職種による訪問(医療機関のみ)、退院直後3か月の訪問が週5回まで点数化された。

特集3 障害者自立支援法で正当な「区分判定」を受けるために

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精神障害について、区分判定における一次判定は正確ではない――――

うわさには聞いていたけれど、それを裏づけるデータが出てしまいました。

じゃあどうしたらよいか――――

判定を正当なものに近づけるには「医師意見書」を渾身の力を込めて記入するしかない!

というわけで、ちゃんと効力を発揮するための医師意見書の書き方を教えてもらいました。

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介護保険の障害者版

 皆さんは「障害程度区分判定」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか?「ある」と答えた方は、きっと障害者の地域生活支援にかかわりや関心をもっておられる方だろうと思います。

 平成17年秋、障害者団体の激しい反対のなか、障害者自立支援法という法律ができました。国の具体的な障害者施策の中心となる法律です。「障害程度区分判定」(以下、「区分判定」と略す)は、この法律のなかにある、障害程度を判定するための仕組みです。

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押さえておくべき障害程度区分判定・審査会の「おきて」

 区分判定を審査し、二次判定を行なう審査会には「おきて」があります。「おきて」というと大げさですが、審査にあたって厚労省が決めた約束事です。意見書を書く場合、これを頭に入れておいたほうがよいでしょう。でないと、いくら一生懸命意見書を書いても審査会で問題にされないのですから。

 区分判定でも介護保険同様、審査会で一次判定の区分を変更する際には「理由」が必要です。ですが、以下のような内容では理由とみなされず、区分変更はできないとされていますので注意が必要です。

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 地域で支援するには障害者自立支援法抜きでは語れません。今、この法律ができて地域では、どのようなことが起こっているかをお話ししましょう。

 

地域生活支援センターの存続が危ない

 障害者自立支援法には5つのポイントがあげられています。ポイントの1つ目。「障害者施策の3障害一元化」です。これまでの支援費制度は、知的障害者と身体障害者だけが対象だったのです。それが今度の法律の対象者には精神障害者も入ることになりました。これは非常によい部分です。

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継続は力なり。でもボチボチやるのがいいよね……

 「継続は力なり」とか言いますが、続けるということがいかに大変なことか、つくづく思い知らされます。本誌は隔月刊、2か月に1回の連載でも、徐々に疲れはたまっていくものですね。読者の皆さん、疲れていませんか? そんなときは休みましょうよ。

 喫煙、飲酒など、すでに習慣化したものをやめることもつらいですね。習慣をやめるということは、裏を返せば、断っている状態を「継続すること」です。生活習慣病予防では「動機付け」が重要であり、そして食事や運動などの生活習慣を変えることを支援する「継続支援」が大切です。私の当面の課題はメタボ対策。目標は腹囲85センチ以下、体重は75キロ。しかしやめられないのが、お酒のあとのラーメンです。気がつけば昼食もラーメンだったりする日も……後悔の連続です。

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3人到着

 ひょんなことから、スウェーデンから精神看護を専攻する3人の大学院生を、5週間にわたり研修に迎えることとなった。4月、東京は桜が満開。絶好のお花見日和の頃、3人は日本に到着した。ちょっとおすまし屋で繊細なスザンナ、健康的でお茶目なジェニー、思慮深くはにかみ屋のテレーズの3人である(ちなみにスザンナは腰まで垂れる金髪に明るい大きなブルーの瞳、ジェニーは、フランス映画“ポン・ヌフの恋人たち”でヒロインを演じた女優ジュリエット・ビノッシュにちょっと似ている。テレーズはといえば、理知的で彫りの深い横顔が印象的である―要するに我々とは、容姿が全然異なっていた)(写真1)。

 ひょんなことからと書いたが、そもそもなぜ3人が、私のところに来ることになったかといえば、それは次のような事情による。私たちは、東京女子医科大学看護学部・精神看護学教室で、平成16~18年度にかけて精神科看護倫理に関する研究(科学研究費基盤研究(C)(2)『精神障害者の人権保障のための看護師の意識と技術に関する研究』)に取り組んできた。その研究過程で私たちは、研究の第一段階で行なった質的調査をもとに、尺度を開発し、「精神科看護師が臨床で体験する倫理的問題」について大規模な実態調査を実施した。その調査を実施する際に、同時に使う関連尺度を探していたのであるが、たまたま「精神科看護師の倫理的感受性」を測る尺度(Moral Sensitivity Test)をある学術雑誌*1で見つけ出し、その尺度の使用許諾を得ようと、スウェーデンのストックホルムにあるErsta Skondal University Collegeの教授でありヘルスケア・サイエンス学部の学部長でもあるKim Lutzen博士に私が手紙を書いたのが事のはじまりである。

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 2007年6月9~10日に、神奈川県相模原市の北里大学看護学部において、日本精神保健看護学会第17回学術集会が開催された。初日は、この春、北里大学名誉教授になられた池田明子先生の特別講演と、口演演題44題で、会場も10群に分かれての発表だった。2日目の午前は、「私の看護を支えるもの」というテーマでのシンポジウムがあり、午後は9つの分科会が開催された。ここで私が報告するのはその分科会の1つ、「当事者・家族、大いに語る」についてである。その場では話題提供者からの体験談と、参加者からの質疑などで、約2時間を分かち合うことができた。

 

「当事者・家族の語り」の分科会を選ぶ

 分科会の話題提供者は、統合失調症患者本人である尾山篤史氏、統合失調症患者の父親であるミスターX氏、看護師兼相談支援専門員である廣川昌好氏、そしてこの分科会の世話人である元精神看護学教員の小林信氏の4人である。

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何が授業で、何がそうでないか

 皆さんは「調べ学習」という学習形態をご存じでしょうか。“調べて、まとめて、発表する”という3つの段階からなるこの学習形態は、私が授業研究を通して20年来かかわってきた初等・中等教育の世界では、古くは「調べて、まとめて、提出させる」という形で、社会科や理科などの教科学習に取り入れられてきたものです。現在では、子どもたちの主体的な学びを促進し、問題解決能力や情報活用能力を育てる目的で「発表する」ことにも力点がおかれ、総合的学習の時間などに行なわれることが多いのですが、ややもすると“調べて、まとめて、発表する”という3つの段階が形だけのものになりがちです。何のために、なぜ調べるのかといった“問い”が十分に子どもたちのなかに生まれる前に、教師から課題やテーマが与えられてしまうことが少なくないためでしょう。自分自身にとって問題意識が十分でない子どもにとっては、調べることよりもプレゼンテーションツールを駆使したまとめの活動や、内容よりも発表の仕方に動機づけられてしまうのも無理からぬことかもしれません。

 なぜ、このようなことをお話ししたかというと、実は私がこれまでに立ち会う機会のあった看護教育の講義には、あたかも形骸化した「調べ学習」の発表会のように見えてしまうものが驚くほど多かったからです。もちろん、それは講義のなかに学生による「調べ学習」を取り入れているという意味ではありません。授業者が、自分の担当する領域・テーマ・素材などについて“調べて”、プリントや資料などに“まとめて”、講義の時間に“発表する”というものです。

連載

べてる新聞『ぱぴぷぺぽ』・57

連載 あるある小事典

連載 技法=以前・4

「信じる」ということ 向谷地 生良
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1 「信じるという作業」の取り戻し

 自称、統合失調症爆発タイプのA君(25歳)は、「向谷地さん、暇なのでちょっと寄っていいですか」と言って電話をくれた後、大学の研究室にひょっこりと顔を出してくれる。

 彼とのつきあいも、ちょうど5年目になる。統合失調症をかかえ爆発を繰り返しながら自宅にひきこもる息子に手を焼いた両親が、わざわざ浦河まで相談にやってきた。それが知り合ったきっかけである。

連載 宮子あずさのサイキア=トリップ・59

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「家で何か起こると大変なので」

 最近緩和ケア病棟で、しみじみ「自分(あるいは近しい家族)がこの状況だったらどうするだろうなぁ」と考えさせられる場面がありました。その患者さんは頭頸部のがんで、頸動脈近くまで浸潤し、さらに創部が皮膚の表面まで露出しています。常にじわじわと出血し、その量がしばしば増えては、「今度こそ大出血か」と本人も周囲も緊張するのでした。

 緩和ケア病棟に来るに際して、彼とその家族は、「今度大出血しても輸血は一切しない」という決断をして入ってきていました。行なっている治療としては、創部の圧迫と包帯交換のみ。その包帯交換も彼がイニシアチブをとっており、自宅で家族が手伝う程度でも十分可能に見えました。

基本情報

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精神看護
10巻5号 (2007年9月)
電子版ISSN:1347-8370 印刷版ISSN:1343-2761 医学書院

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