JSES 内視鏡外科 3巻5号 (1998年10月発行)

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特集　総胆管結石に対する腹腔鏡下手術

内視鏡的乳頭切開術と腹腔鏡下胆管切石術の適応松永　浩明 , 宇都宮　成洋 , 高畑　俊一 , 新山　秀昭 , 難波江　俊永 , 横畑　和紀 , 田中　雅夫 3巻5号 , 1998年10月 , pp.356-361

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　総胆管結石の治療における内視鏡的乳頭切開術の役割を，その長期予後の判明と腹腔鏡下手術の普及に鑑み再検討した．内視鏡的乳頭切開術後10年以上の長期経過例（平均167か月）477例（予後判明446例）の解析によると，再発結石は446例中12.6％と高率にみられ，色素石灰石例で15.7％，コレステロール石例で6.3％と前者で高い傾向があったが，有意差はなかった．再発結石はすべて色素石灰石で，上行性胆道感染の関与が疑われた．したがって，特に長期の生命予後が見込まれる症例では，胆嚢由来と思われる胆管結石は内視鏡的乳頭切開術を避け，可能な限り腹腔鏡下切石術によって除去すべきであることが示唆された．

腹腔鏡下経胆嚢管的切石術川辺　昭浩 , 木村　泰三 , 小林　利彦 , 桜町　俊二 , 吉田　雅行 , 数井　暉久 3巻5号 , 1998年10月 , pp.362-366

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　胆嚢胆管結石症に対する腹腔鏡下経胆嚢管的切石術の手技と成績について報告した．経胆嚢管法は，胆管内の結石径が7mm以下で，結石数が3〜4個以下の場合を適応としており，バルーンで拡張した胆嚢管に細径胆道鏡を挿入し，3Frのバスケットカテーテルを用いて除石する．当科では21例を経験し，平均手術時間は202.3分，術後入院日数は8.8日であった．合併症は軽症の無気肺1例のみで，遺残結石はみられなかった．経胆嚢管法は，乳頭を温存しつつ胆嚢胆管結石症を一期的に治療することが可能であり，比較的安全で容易に行える手技である．したがって，胆嚢胆管結石症に対しては第一に試みるべき手技と考えられる．

腹腔鏡下総胆管切開切石術（Tチューブ留置法）森　俊幸 , 波多野　暢彦 , 杉山　政則 , 跡見　裕 3巻5号 , 1998年10月 , pp.367-371

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　腹腔鏡下総胆管切石，Tチューブ留置術は，術中不完全切石が疑われる症例や，内視鏡的除石が行い得ない症例に適応となる．正確な総胆管切開のためにはstay sutureが有用であり，また愛護的切石に努める．Tチューブは，挿入可能な最大径のものを用い，胆管切開部閉鎖は吸収性縫合材料を用いタイトに行う．

Cチューブ留置法—Cチューブ開発の経緯と腹腔鏡下胆管切石術への応用藤村　昌樹 , 平野　正満 , 木下　隆 , 舛田　誠二 , 山本　育男 , 佐藤　功 3巻5号 , 1998年10月 , pp.372-379

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　筆者は1981年，胆道手術におけるTチューブに替わる新しい方法として経胆嚢管チューブ（以下，Cチューブ）を開発した．Cチューブは胆嚢管から総胆管内に留置した細いチューブであるが，胆道系手術後の胆汁ドレナージのみならず，遺残結石の治療にも応用可能である．以後約250例の開腹手術に使用し，Tチューブに比べはるかに有用で合併症もなく，かつQOLを向上させることを明らかとしてきた．1991年から腹腔鏡下総胆管切石術に導入し，Cチューブの材質や腹腔鏡下での留置手技，チューブ固定法などに工夫，改良を加えてきた．本稿では，現在われわれが行っている腹腔鏡下Cチューブ留置法，および本法を用いた腹腔鏡下胆管切石術の手技を，術中写真を用いて詳述する．これまでの経験から，Cチューブ留置法は腹腔鏡下胆管切石術における標準手技となることを確信している．したがって，これまで述べてこなかったCチューブ開発の経緯についても述べ，Cチューブ留置法がより理解され，広く普及することを期待する．

腹腔鏡下胆管切開切石術時の一期的縫合徳村　弘実 , 梅澤　昭子 , 安田　篤 , 小山　淳 , 今岡　洋一 , 大内　明夫 , 山本　協二 , 松代　隆 3巻5号 , 1998年10月 , pp.380-384

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　一期的縫合を，Tチューブを入れずに胆管切開部を縫合閉鎖することと定義し，胆管ドレナージ（BD）の有無で分け，論じた．腹腔鏡下胆管切石術156例中，一期的縫合は49例で，BD40例（Cチューブ36例，経皮経肝ドレナージ4例），非BD9例であった．適応は，腹腔鏡下胆管切石術のうち経胆嚢管法ができない症例に胆管切開を行う．胆管切開後，一期的縫合は結石が多数でなく完全切石を得たときに行う．その中でCチューブ追加はビリルビンカルシウム石例と胆管に胆泥や粘液が残存する症例を，非BDはコレステロール胆石，黒色石例を適応とすべきである．一期的縫合は，適応の遵守，完全切石，縫合技術が3原則で，成功したときは経胆嚢管法とほぼ同等の成果が得られた．

内視鏡的乳頭バルーン拡張術による総胆管結石の治療小松　裕 , 伊佐山　浩通 , 山形　道子 , 多田　稔 , 吉田　晴彦 , 白鳥　康史 , 川邊　隆夫 , 小俣　政男 3巻5号 , 1998年10月 , pp.385-390

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　内視鏡的乳頭バルーン拡張術（endoscopic papillary balloon dilation：EPBD）による総胆管結石治療について概説した．EPBDは乳頭機能を温存できる可能性があり，ESTに比べより非侵襲的な治療法である．われわれの326例の経験では，手技にともなう出血は皆無であり，術後膵炎の頻度も従来指摘されていたほどは高くないことも明らかになってきた．一方，巨大結石例などでは結石完全除去に要する手技回数が多くなり，結石除去のみに関していえばESTよりも熟練を要すといった問題点ももっている．長期予後を含め，今後さらなる検討が必要であるが，さらに安全な総胆管結石に対する治療手技としての確立が期待される．

手術テクニック

癒着例における腹腔鏡下子宮全摘術奥田　喜代司 3巻5号 , 1998年10月 , pp.391-393

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はじめに

　産婦人科手術の中でも，子宮筋腫などに対する子宮全摘術は最も頻度の高い手術の1つである．従来より子宮全摘術には腟式子宮全摘術（腟式）と腹式子宮全摘術（腹式）があり，腟式は腹式に比べて術後の回腹が早く，合併症も少ない．しかし，腟式子宮全摘術は腹式に比べて，手術適応が厳しく，熟練を必要とするためにその施行頻度は低かった．近年，腹腔鏡下手術の発展により腹腔鏡下子宮全摘術が可能となり，腟式の適応外とされてきた腹腔内癒着例や卵巣嚢腫合併例などに対しても開腹を避け得るようになった．すなわち，子宮全摘術における低侵襲手術の適応症例が8割前後まで拡大できるようになった．

　本稿では子宮全摘術における腹腔鏡下子宮全摘術の位置，特に癒着例における本手術の“コツ”と限界を述べてみたい．

基本手技シリーズ・5

トロッカーの挿入部位—胸腔鏡下手術の場合河野　匡 , 髙本　眞一 3巻5号 , 1998年10月 , pp.394-397

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　胸腔鏡下手術において，肺，縦隔，横隔膜，胸壁などの臓器にアプローチする場合，肋骨や胸腔の形状に規定される制限があるため，手術操作を容易なものにするためには，適切な位置にトロッカーを挿入することが必須である．トロッカーの位置が不適切であると手術操作の著しい制限が生じ，不十分な術野になってしまう．ここでは，典型的な病変部位とそれに応じたトロッカーの位置を解説する．

症例報告

胸腔鏡下胸部交感神経節焼灼術の経験—単一レゼクトスコープを用いて秋山　博彦 , 小泉　潔 , 三上　厳 , 福島　光浩 , 窪倉　浩俊 , 田中　茂夫 3巻5号 , 1998年10月 , pp.398-402

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　胸腔鏡による胸部交感神経節切除術（焼灼術）は，従来の背部胸膜外法，腋窩経胸膜法および鎖骨上胸膜外法に比べ非常に低侵襲であり，きわめて有用な方法である．当科においてレゼクトスコープを用い5例8側に対し胸腔鏡下胸部交感神経節焼灼術を施行した．対象は手掌多汗症3例6側，Buerger病2例2側で，手掌多汗症の3例6側は単一孔にて焼灼を行い，Buerger病2例のうち1例は胸腔内全面癒着がありミニ開胸を併用，他の1例は初期の症例で2個の操作孔（two puncture法）を用いて焼灼を施行した．全症例において術中，術後の手術に関する合併症は認めなかった．また，術後疼痛は全例軽度であり，自覚症状の改善も全例にて認められた．ホルネル症候群の合併は1例もなかった．胸腔鏡下手術の進歩により，胸腔鏡下胸部交感神経節焼灼術は低侵襲で確実性のある手技として，きわめて社会的貢献度の高い手段と考えられた．

腹腔鏡下に切除した胃glomus腫瘍の1例高木　融 , 山崎　達之 , 土田　明彦 , 鈴木　和信 , 青木　達哉 , 小栁　泰久 3巻5号 , 1998年10月 , pp.403-407

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　患者は51歳，男性．1995年12月，検診の胃透視検査にて異常を指摘され，1996年5月29日に精査目的にて入院となった．胃透視検査ならびに胃内視鏡検査では，胃前庭部大彎に径3cmの表面平滑な隆起性病変を認めた．超音波内視鏡検査では，第4層に連続した内部エコー不均一な低エコーの腫瘤を認めた．胃粘膜下腫瘍の診断にて腹腔鏡下胃部分切除術を施行した．切除標本では，腫瘤は1.5×1.5×1.1cm，充実性で，割面は淡褐色で血管に富んでいた．病理組織学的には胃glomus腫瘍と診断された．本症例は，腹腔鏡下に切除された初めての報告である．われわれの症例を報告するとともに，本邦で報告された71例について文献的考察を加えた．

胸腔鏡により治癒し得た肺癌術後乳糜胸の1例神崎　正人 , 大貫　恭正 , 兼安　秀人 , 松本　卓子 , 吉田　珠子 , 新田　澄郎 3巻5号 , 1998年10月 , pp.408-412

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　症例は56歳，女性．右下葉肺腺癌にて右下葉切除術および縦隔リンパ節郭清を施行した．術後経口摂取を開始したところ淡黄乳白色胸水が増加し，肺癌術後乳糜胸と診断した．治療はまず，中心静脈栄養と中鎖脂肪食による保存的治療を行った．しかし，胸水は減少せず，術後6日目に胸腔鏡下手術を行った．術中，気管前分岐部リンパ節近位，上大静脈後方に拡張したリンパ管を認め，胸腔鏡下に縦隔リンパ管結紮術を施行した．保存的治療で効果がなければ早期の胸腔鏡下手術は検討の余地があると考えられ，今回良好な結果を得たので報告する．

腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術後の腹膜閉鎖間隙に虫垂嵌入を認めた1例渡辺　透 , 中田　浩一 , 佐々木　正寿 , 金平　永二 3巻5号 , 1998年10月 , pp.413-415

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　腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術後の虫垂の嵌入をきたした症例を経験した．症例は66歳，男性．右鼠径ヘルニアに対して腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術（経腹膜的アプローチ）後，1年6か月目に左側の鼠径ヘルニアを認め来院，腹腔鏡下手術を再度施行した．手術時，虫垂が前回手術時の腹膜欠損部に嵌入していた．嵌入虫垂を剥離し，右トロッカーより体外に誘導し虫垂切除を行った．再度トロッカーを挿入し，左鼠径ヘルニア修復術を行った．本症例は腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術において稀な併発症と考えられたので報告した．

腹腔鏡補助下手術を施行した腸重積合併虫垂粘液嚢腫の1例永川　裕一 , 山本　啓一郎 , 勝又　健次 , 小栁　泰久 , 青木　達哉 , 土田　明彦 3巻5号 , 1998年10月 , pp.416-420

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　虫垂粘液嚢腫は比較的稀な疾患であり，術前診断は困難とされている．今回われわれは，腹腔鏡にて本症および同病変による腸重積を診断し，腹腔鏡補助下回盲部切除術を行った1例を経験した．症例は67歳，女性．主訴は右下腹部痛．種々の検査にて本症を疑い，腹腔鏡にて観察したところ，虫垂は嚢胞状に腫大し，根部は上行結腸に陥入していた．以上にて本症による腸重積と診断し，腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した．病理組織学的診断はsimple mucoceleであった．本症に対して腹腔鏡下手術が行われた報告はこれまでなく，腹腔鏡下手術が有用である疾患の1つと思われたので，若干の文献的考察を加え報告する．

基本情報

JSES 内視鏡外科
3巻5号
(1998年10月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：1341-7266 日本内視鏡外科学会

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