JSES 内視鏡外科 1巻6号 (1996年12月発行)

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特集　腹腔鏡下虫垂炎手術

腹腔鏡下虫垂炎手術—臍に皮切をおく虫垂切除術井上　晴洋 , 竹下　公矢 , 遠藤　光夫 1巻6号 , 1996年12月 , pp.454-457

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　単純な虫垂炎の場合，外科医は必要最小限の皮切で手術を行おうと考える．そこで，究極の方法として「手術瘢痕の無い虫垂切除術」を考案した．それが「臍に皮切をおく虫垂切除術」である．すなわち，臍の内周に皮切をおけば，治癒後，手術瘢痕は臍の模様に吸収され判別ができなくなるわけである．臍の皮切を虫垂の位置に近づけるために，腎盂鉤とリール式牽引器を利用した．臍に皮切をおく虫垂切除術は，これまでに報告が無い．

腹腔鏡下虫垂炎手術—標準手術法と手技上の工夫雨宮　邦彦 , 三木　亮 , 藤本　茂 1巻6号 , 1996年12月 , pp.458-463

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　腹腔鏡下虫垂炎手術は，腹腔鏡下手術共通の利点である低侵襲，小さな皮膚瘢痕など以外にも多くの利点のある手術である．しかし，広く一般的に行われているとは言い難い．緊急手術であり，手術室として，外科医として対応しきれない面があり，また手技の面からも慣れないと敬遠されることがある．われわれは，1991年7月より腹腔鏡下手術を虫垂炎に対する第一選択の手術法としてきた．その経験より，腹腔鏡下虫垂炎手術の標準法となり得ると考える手技と種々の器具を用いての変法，それぞれの方法における工夫，注意点，特徴，欠点などについて報告する．

腹腔鏡下虫垂炎手術—手技と治療成績小関　和士 , 安藤　正 , 真田　毅 , 田中　明彦 , 吉田　和哉 1巻6号 , 1996年12月 , pp.464-469

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　腹腔鏡下虫垂炎手術施行例128例の手技と臨床成績を検討した．腹腔鏡は臍部から，working portは右側腹部と恥骨直上から挿入され，虫垂間膜はクリップで，虫垂断端は二重結紮で処理された．手術時間は開腹法に比し長いものの，高度の虫垂炎にも対応でき，開腹移行は1例のみであった．トロッカー挿入時の副損傷2例と術後に開腹で対処せざるを得なかった腹壁筋層出血1例が経験した主な合併症で，前者はテンティング防止具を作製して解決し，後者は回避可能なものであった．術後創感染は2例に認めた．本法は安全に広く適応可能で，患者にとっても術創や疼痛の点でメリットは大きく，十分に急性虫垂炎に対する標準術式たり得ると考えられた．

腹腔鏡下虫垂炎手術—虫垂炎の診断・治療における位置づけ加納　宣康 , 佐久間　隆 , 笠間　和典 1巻6号 , 1996年12月 , pp.470-474

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　腹腔鏡下虫垂切除術（以下，本法）には，（1）術後の疼痛が少ない，（2）筋力の回復が早く術後の通常生活への復帰が早い，（3）瘢痕が小さい，（4）創部感染の可能性が低い，（5）腹壁ヘルニアの発生がない，（6）術後の癒着が少ない，などのメリットが患者側にある．同時に，（1）腹腔内を広く観察できて診断確定に有用である，（2）腹腔内洗浄を必要とするときも，モニターテレビで汚染部位を直視下に観察しつつ広範に十分な洗浄が的確にできる，（3）テレビモニター下にドレーンを的確な位置に誘導・留置できる，など術者側にとっても多くのメリットがある．しかし，従来法で特に不便を感じていない施設が多い現状では，胆嚢摘出術における腹腔鏡下胆嚢摘出術のごとく，本法が虫垂切除術のgold standardとして定着することは難しい．本法が適応する症例の選択には各施設の事情が反映されるが，従来の開腹下虫垂切除術に比し多くのメリットがある以上，外科医は本法に習熟する必要がある．

特集　産婦人科における腹腔鏡下手術

卵巣嚢腫に対する腹腔鏡下手術伊熊　健一郎 , 子安　保喜 , 山田　幸生 , 林　輝美 , 脇本　栄子 1巻6号 , 1996年12月 , pp.475-480

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　腹腔鏡下手術を安全・確実に行うためには，装置類や器具・器材の整備は当然であるが，症例の厳正な選択と疾患に応じた術式の選択肢があることや，状況に応じた柔軟な手技・手法で対応することも大切である．良性の嚢胞性の卵巣嚢腫に対する腹腔鏡下手術の方法においても，大きく分けて体腔内法（intra-corporeal method：ICM）と体腔外法（extra-corporeal method：ECM）がある．種々の条件の下に卵巣嚢腫の手術を安全・確実に遂行するためにも，症例と術者の技量に合った術式の選択を行い，その状況に応じた手技・手法で柔軟に手術展開をはかることが必要である．本稿では，主に癒着を伴うチョコレート嚢腫に対するICMとECMとともに，われわれが開発したSAND Balloon Catheter^®の使用法も紹介する．

子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術堤　治 1巻6号 , 1996年12月 , pp.481-486

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　子宮筋腫の根治手術である子宮全摘，保存手術である筋腫核出，いずれも腹腔鏡下により侵襲の少ない手術治療が可能になった．子宮全摘術は腟式操作への依存度により，腹腔鏡下腟式子宮全摘術（LAVH），腹腔鏡下子宮全摘術（LH），全腹腔鏡下子宮全摘術（TLH）と分類できる．腹腔鏡下子宮筋腫核出術は適応が限られるが，腹腔鏡と小開腹による核出術（LAM）は広く適応される．子宮筋腫手術の大半を占める腹腔鏡下手術は，単に開腹を回避するのみでなく，骨盤内の局所を拡大した視野で実施され，電気メスなどの器具を有効に活用することにより安全で侵襲が少ない．最近では，開腹術と同等ないしより安全な手術として，腹腔鏡下子宮全摘術，腹腔鏡下子宮筋腫核出術が実施され始めている．

子宮外妊娠に対する腹腔鏡下手術植村　次雄 , 遠藤　方哉 1巻6号 , 1996年12月 , pp.487-492

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　診断技術の進歩と内視鏡下手術の発展により，子宮外妊娠の腹腔鏡下手術は次第に広く行われつつある．術式としては卵管摘出術と卵管線状切開術であり，術式の決定には患者の状態，卵管周囲の状況，着床部位，卵管腫瘤の大きさ，卵管破裂の有無が参考となる．摘出物中の絨毛の確認，術後のhCGの推移をフォローするとともに，保存手術後の卵管の疎通性の確認も必要である．腹腔鏡下保存手術の利点は，手術侵襲が少ないこと，癒着の軽減から妊孕性保持が期待し得ること，術後の回復が早いため短期入院，早期就業が可能なことである．今後，技術の向上と機器の改良により施行率は上昇し，子宮外妊娠の治療法の主軸をなしていくものと考えられる．

子宮内膜症に対する腹腔鏡下手術奥田　喜代司 1巻6号 , 1996年12月 , pp.493-496

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　1988年から1994年に160例の子宮内膜症患者に行われた腹腔鏡下手術の妊孕性に及ぼす効果を検討した．不妊症例における術後妊娠率は31.9％であり，術前ホルモン療法群（43.5％）は手術のみの群（25.4％）に比べて有意に高かった．Revised-AFS分類の進行期と術後妊娠率とは相関しなかったが，合計スコアが86点以上の例では術後妊娠率はきわめて低かった．また，付属器癒着の程度と術後妊娠率をみると，卵管癒着スコアが3点未満での妊娠率（46.7％）に比べて3点以上（15.2％）では低く，卵巣癒着スコアも10点未満（40％）と10点以上（13.0％）で差がみられた．これらの腹腔鏡下手術での成績は開腹手術における術後妊娠率とほぼ同様のものであった．しかし，腹腔鏡下手術では開腹手術に比べてより非侵襲的であるなどのメリットがあり，今後は腹腔鏡下手術が選択される症例が多くなると思われる．

手術テクニック

胸腔鏡手術における電気メスの使用法岩崎　昭憲 , 白日　高歩 1巻6号 , 1996年12月 , pp.497-499

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はじめに

　内視鏡手術はその拡大発展により，さまざまな疾患の治療や診断に用いられるようになった．それぞれの疾患において病変の部位や手術時の患者体位が異なり，それに合わせた創意工夫も必要である．一方で標準術式に近い結果が要求され，かつ安全性も同様に重要視されている．電気メスは止血や剥離操作などを行う基本手技で特に重要であり，これらについて述べる．

New lnstruments

サンドイッチディスク万代　恭嗣 1巻6号 , 1996年12月 , pp.500

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　サンドイッチディスク^1）（高砂医科工業社製）は，腹腔鏡補助下手術において，腹壁小切開法と気腹法の随時移行を可能とする新しい器具です．本器具は小切開部腹壁を上下から密着圧迫し気密状態をつくるもので，直径7cmの2枚の円板をその中心で連結し，その間隔を適宜調節できる構造となっています（図1）．腹腔内に装着する遠位側の円板は挿入時には半円状で，腹腔内に挿入後は手元操作で真円に戻し，ネジで上下の円板を近づけて小切開部を閉鎖し，気腹可能な状態とします（図2）．

　本器具の利点としては，小切開法と気腹法が迅速かつ簡便に随時移行可能な点が挙げられます．適宜気腹法に移行することにより，吊り上げ法では不十分となりがちな側方の視野を良好に得ることができ，より安全で確実な手術操作が可能となります．

Conventional lnstruments

OES腹腔・胸腔ビデオスコープ，フジノンフレキシブル電子腹腔鏡北野　正剛 1巻6号 , 1996年12月 , pp.501

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1．OES腹腔・胸腔ビデオスコープ

特徴

●41万画素のCCD

●硬性鏡用カメラヘッドと共通のコントローラー

原著

総胆管結石症に対する腹腔鏡下切石術の検討山本　裕司 , 田中　聡一 , 鹿原　健 , 和田　修幸 , 笠原　彰 , 遠藤　権三郎 , 吉田　悟 , 松本　昭彦 1巻6号 , 1996年12月 , pp.502-507

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　過去4年間に腹腔鏡下の総胆管結石切石術を試みた43例を対象に，その手術術式と適応について検討した．開腹移行例は10例で，このうち7例は急性胆嚢炎併発例であった．21例に経胆嚢管的切石，12例に総胆管切開切石が行われた．経胆嚢管的切石は，手術時間および術後の在院日数が短いことから第一に選択すべき術式と思われるが，結石径が10mm以上，あるいは結石数3個以上の症例では総胆管切開切石が適応と思われた．また，総胆管切開切石後の総胆管一期的縫合では，切石後の胆道造影は不可欠であり，遺残結石がなく，造影剤の十二指腸への流出が良好で，総胆管径が10mm以上の症例に対して適応と思われた．

私の工夫

腹腔鏡下手術における新しい持針器山口　広之 , 七島　篤志 , 柴崎　信一 , 草野　裕幸 , 中越　享 , 綾部　公懿 1巻6号 , 1996年12月 , pp.508-510

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　吊り上げ式腹腔鏡下手術の縫合に用いる新型持針器を試作し，臨床に応用した，通常の開腹手術に用いている持針器の形状に近いため，操作時の違和感がなく丁寧な縫合操作が可能であった．ソフトタイプトロッカーを通して使用することで径12mmのポートでも良好な操作性が得られた．本手技の適応範囲は広いと考えられるが，なかでも総胆管切開時の胆管縫合には有用であると考えられた．

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「JSES　内視鏡外科」第1巻総目次 1巻6号 , 1996年12月

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基本情報

JSES 内視鏡外科
1巻6号
(1996年12月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：1341-7266 日本内視鏡外科学会

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