JSES 内視鏡外科 1巻5号 (1996年10月発行)

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特集　内視鏡下食道手術

胸腔鏡下食道癌手術—胸腔鏡下食道切除術と開胸術式との比較赤石　隆 , 標葉　隆三郎 , 小栗　裕 , 遠藤　義浩 , 宮田　剛 , 菅原　浩 , 西平　哲郎 , 里見　進 1巻5号 , 1996年10月 , pp.378-383

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　胸部食道癌の胸腔鏡下食道切除術（以下，ts）7例と従来の開胸先行，胸部操作，胃管による頸部吻合（以下，open）4例，開腹先行，（頸部操作），胸腔内吻合（以下，th anast）4例の術式を比較検討した．ts群に進行例，縦隔内リンパ節転移が多い傾向があった．いずれも胸腔内操作の時間，胸部の出血量に差はなく，胸腔ドレーンの留置日数はtsがopenより短かった．反回神経麻痺がts群で左右1例ずつ，右横隔神経麻痺が1例あった．切除リンパ節数は，縦隔，腹部ともopen群がほかの群より多かった．合併症と合わせtsに手技上の改善を要する．術後の疼痛はts群がopenに比べ少なく，肺活量の回復はts群が良好であった．

胸腔鏡下食道粘膜下腫瘍手術井上　晴洋 , 出江　洋介 , 永井　鑑 , 河野　辰幸 , 吉野　邦英 , 竹下　公矢 , 遠藤　光夫 1巻5号 , 1996年10月 , pp.384-388

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　食道の粘膜下腫瘍のなかで，最も頻度が高いのが平滑筋腫である．治療方法は，筋腫が粘膜筋板由来か固有筋層由来かで異なり，その診断は超音波内視鏡（特に高周波数のもの）を用いれば可能である．粘膜筋板由来のものにはポリペクトミーを行い，固有筋層由来のものには胸腔鏡下に筋腫核出術を施行している．筋腫核出術に際してわれわれの考案した手技上の工夫として，「バルーン圧出法」がある．すなわち，経口的に挿入した内視鏡の外壁にバルーンを装着し，それを食道内腔で膨らませることにより筋腫を圧出する方法で，きわめて有用な方法である．

腹腔鏡下食道アカラシア手術田中　隆 , 山形　基夫 , 田中　和彦 , 佐藤　博信 , 村山　公 , 大塚　善久 , 岩井　重富 1巻5号 , 1996年10月 , pp.389-395

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　食道アカラシア手術の基本は、下部食道噴門の筋切開と，これによる逆流防止策を講じることである．教室では1958年以降124症例のアカラシアを経験しているが，手術はGirard変法を行い好成績を得ている．この手術はlongmyotomyにより食道通過障害を改善し，前壁横縫合を行い逆流による再狭窄を防止し，さらに胃底部縫着により逆流防止策を補強する方法である．腹腔鏡下手術の適応は現在，紡錘型，フラスコ型，GradeI・IIの比較的早期の症例で，上腹部手術，噴門拡張術の既往のない症例としている．本稿では，手術手技の実際と開腹手術との比較について報告した．

特集　胸腔鏡下縦隔腫瘍摘除術

胸腔鏡による縦隔腫瘍の診断岡林　寛 , 岩崎　昭憲 , 白石　武史 , 安藤　公英 , 川原　克信 , 白日　高歩 1巻5号 , 1996年10月 , pp.396-401

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　縦隔腫瘍の診断と治療に対する胸腔鏡下手術は広く普及してきたが，その適応，手術法などに関し，いまだ十分なコンセンサスが得られていない面もある．本稿では、縦隔疾患の診断面における胸腔鏡の存在に注目して解説した．縦隔疾患の病態，すなわち悪性度はその局在部位や画像診断などの補助診断法でかなり絞り込むことが可能であり，確定診断にいたらなくても切除対象となることが多い．問題となるのは進行胸腺腫，胸腺癌，悪性リンパ腫，胚細胞腫，縦隔型肺癌などである．診断方法として胸腔鏡は応用範囲が広く有用であるが，より侵襲の少ない縦隔鏡なども考慮に入れるべきである．胸腔鏡，縦隔鏡それぞれの長所，短所についても検討した．胸腔鏡下の処置は、トロッカー挿入部を含め術前のプランニングが大切である．

胸腔鏡下前・中縦隔腫瘍摘出術大森　一光 , 北村　一雄 , 並木　義夫 , 村松　高 , 長坂　不二夫 , 羽賀　直樹 , 古賀　守 , 四万村　三恵 , 瀬在　幸安 1巻5号 , 1996年10月 , pp.402-406

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　前・中縦隔は縦隔腫瘍の好発部位であり，胸腺腫，奇形腫，嚢胞性疾患などが発生する．縦隔腫瘍で最も頻度の高い胸腺腫は、たとえI期でも術前には病期の確定が困難であり，また再発例が報告されていることより胸腔鏡下手術の適応はない．リンパ性腫瘍，未熟奇形腫，胚細胞性腫瘍も診断的胸腔鏡手術の適応はあるが，摘出術としての適応はない．胸腔鏡手術の適応は、気管支性嚢胞や心膜嚢胞，胸腺嚢胞などの先天性嚢胞や成熟奇形腫などの良性縦隔腫瘍が良い適応である．手術操作も剥離が主体であり，手技的にも容易で，従来の開胸操作に比べて利点の多い手術である．

胸腔鏡下後縦隔腫瘍切除術乾　健二 , 人見　滋樹 1巻5号 , 1996年10月 , pp.407-411

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　一般に後縦隔腫瘍は開胸術により切除されてきた．後縦隔腫瘍の大部分は，良性で無症状であり，偶然発見されることが多く，切除は比較的容易である．このような点から，より侵襲の少ない術式が望まれていた．最近のビデオ胸腔鏡の導入および関連機器の発達・普及により，多くの胸腔内疾患に対する胸腔鏡下の検査・治療が急速に普及したが，胸腔鏡下後縦隔腫瘍切除術もその1つである．本稿では、後縦隔腫瘍に対する胸腔鏡下切除術の適応と成績について解説する．

胸腔鏡下胸腺摘出術—頸部襟状切開を併用した胸腔鏡下拡大胸腺摘出術安藤　陽夫 , 青江　基 , 伊達　洋至 , 清水　信義 1巻5号 , 1996年10月 , pp.412-417

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　縦隔領域の胸腔鏡下手術は、良性の縦隔腫瘍が最も良い手術適応であり，現時点では胸腺腫など悪性腫瘍への適応はないと考えられている．今後，胸腺腫などへ胸腔鏡下手術の適応を拡大していくためには，胸腔鏡下の胸腺摘出術や拡大胸腺摘出術の手技の工夫と習熟が必要である．そこでわれわれは，頸部襟状切開を併用して胸腔鏡下に拡大胸腺摘出術を行う方法を考案し，胸腺腫を合併しない重症筋無力症に対して施行している．この手術は手術時間が長くかかるが，手術侵襲が軽く，術後疼痛が軽微であり，手術創も小さく目立たず，有用な方法と思われる．合併症として乳糜胸を認めた症例もあるが，この手技の確立と改良により適応の拡大が期待できる．

手術テクニック

腹腔鏡下脾臓摘出術における術中体位橋爪　誠 , 御江　慎一郎 , 津川　康治 , 杉町　圭蔵 1巻5号 , 1996年10月 , pp.418-419

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はじめに

　脾臓は，左横隔膜下に存在し，胃，膵臓，大腸，腎臓などに囲まれるため，体位を如何に工夫するかが脾摘を合併症なく安全に行うコツといえる．本稿では，脾摘における体位の考え方について述べる．

New lnstruments

ピクシーマイクロエンドスコープ，タッカー万代　恭嗣 1巻5号 , 1996年10月 , pp.420

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1．ピクシーマイクロエンドスコープ

　一般に腹腔鏡下外科手術に使用される腹腔鏡は，直径10mmと稀に5mmの小径タイプが使用されている．ピクシーマイクロスコープは直径わずか1.75mmで，内筒の抜ける気腹針（オリジン社）を通して使用することができる．

　本器具は直径1.75mmの手術器具を使用することで，患者の外傷を最小限に抑える次世代のminimallyinvasive surgery（MIS）を目指した，needle surgery用のスコープである．用途としては，①産婦人科医，救命救急医，および一般外科医による直視下での診断および治療，②外来患者の局部麻酔による内視鏡下の診察と治療，③手術室，救急室，集中治療室などでの直視下での診断，などが考えられる．

Conventional lnstruments

エンドリトラクトⅡ，エンドフレックス北野　正剛 1巻5号 , 1996年10月 , pp.421

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1．エンドリトラクトⅡ

特徴

●アトラウマティックな5本指

●先端部を45°まで角度をつけることが可能

症例報告

妊婦に対する腹壁吊り上げ法による腹腔鏡下胆嚢摘出術の1例隅　健次 , 湯ノ谷　誠二 , 伊山　明宏 , 宮崎　耕治 , 久次　武晴 1巻5号 , 1996年10月 , pp.422-425

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　今回われわれは、29歳の妊娠中の有症状胆嚢結石患者に対し，硬膜外麻酔下に腹壁吊り上げ法を用いた腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した．腹腔鏡下胆嚢摘出術を炭酸ガス気腹法で行った場合，血中PaCO₂の上昇，炭酸ガス塞栓，臓器血流の低下，腹腔内の圧迫など妊娠の経過に悪影響を及ぼす恐れのある合併症が時に認められる．しかし，腹壁吊り上げ法を用いた場合，これらの合併症はほとんどみられないと思われた．麻酔法では、硬膜外麻酔のほうが全身麻酔と比較し，より母体や胎児への影響が少ないと思われた．硬膜外麻酔下における腹壁吊り上げ法を用いた腹腔鏡下胆嚢摘出術は，妊娠中の胆石症患者に安全に行うことができ，かつ最も低侵襲な術式であることが示唆された．

透析患者における腹腔鏡下胆嚢摘出術北山　佳弘 , 金　昌雄 , 岡本　英三 1巻5号 , 1996年10月 , pp.426-429

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　腹腔鏡下胆嚢摘出術（以下，LC）を施行した慢性腎不全による透析患者8例，保存期腎不全患者1例を経験したので報告する．腹腔鏡下胆嚢摘出術は，気腹法を用いた従来の方法に則して施行した．いずれの患者も術中，術後を通じて合併症を認めなかった．血液透析患者の場合，透析のサイクルを変更することなく手術が可能で，一般患者と変わらず退院が可能であった．腹膜透析患者の場合，開腹術を施行すると術後の腹腔内癒着のため腹膜透析が困難となるのに対し，LCでは術後の腹膜透析の再開が可能であった．透析の継続や早期退院といったquality of lifeの面からも，腹腔鏡下胆嚢摘出術は有用な術式であると思われた．

私の工夫

早期直腸癌手術に有用なrectal expanderの使用経験柿添　三郎 , 柿添　圭嗣 , 柿添　由美子 1巻5号 , 1996年10月 , pp.430-433

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　早期直腸癌症例に対し，われわれが考案，開発したrectal expanderを用いてテレビモニター下に腫瘍切除を行った．Saddle blockにても良好な視野を確保でき，手術時間は115分，出血に対しては縫合することにより止血できた．切除標本の病理診断は高分化腺癌で，深達度はsm₁，脈管侵襲は明らかでなかった．切除は固有筋層上部までなされていた．早期直腸癌に対してrectal expanderは，テレビモニターを用いることによって十分な視野を提供し，saddle block下にても安全に腫瘍切除が行うことができ有用と考えられた．

基本情報

JSES 内視鏡外科
1巻5号
(1996年10月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：1341-7266 日本内視鏡外科学会

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