訪問看護と介護 24巻6号 (2019年6月)

特集 どうあることなのか、意思決定支援—「アドバンス・ケア・プランニング」とか「人生会議」とか

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2018年3月に改訂された「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」では、人生の最終段階で受ける医療・ケアについて、医療および介護従事者が利用者や利用者家族と日頃からくり返し話し合う、いわゆる「アドバンス・ケア・プランニング」を行なう必要性が明文化されました。

在宅療養の現場に登場する専門職は医師、看護師、ケアマネジャー、介護職など多岐にわたりますが、これらの職種がこの「意思決定支援」とも呼ばれる関わりのなかで果たす役割、登場するタイミングは、まったく異なるはず。そのなかで一体、どのような支援が求められているのでしょうか。

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 私は在宅医として福井県福井市を中心に訪問診療を行なっています。2011年に福井県初となる在宅医療専門クリニックを開業し、年齢や疾患を問わず、幅広い方々の自分らしい生き方と向き合い、その実現に向けたお手伝いをしてきました。また、2016年には外来のクリニックも始め、かかりつけ医として、命を脅かすような病気になる以前から、切れ目のない人生への関わりも続けています。

 厚生労働省は去年、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の改訂を行ないました。その検討会に構成員として参加し、現場での実践例を通して意見を述べてきた1人として、アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning:ACP)において重要視されるべきポイントについて、私なりの考えを伝えたいと思います。

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欧米で広がったSDMの基本的な考え方

 欧米では現在「シェアド・ディシジョン・メイキング(Shared Decision Making:以下、SDM)」という言葉が、「インフォームド・コンセント」という言葉に取って代わったかのように広く使用されています。これは、インフォームド・コンセントの基本的な考え方が、医療に関する決断において、当事者である患者が意思決定の主体であることを強くイメージさせること、さらには、実際の手続きにおいても医療専門家側は選択肢を含めた情報の提供者として位置づけられ、「専門家=情報提供者、患者=意思決定主体者」という役割分担が明確になり過ぎていることからくる懸念からの状況であると、私は理解しています。すなわち、患者から見たとき、専門家から自分に対して行なう医療/ケア行為に関するあらゆる選択肢とその内容についての説明が行なわれ、それをすべて当事者として理解したとしても、その後「では、どうしますか?」と選択を医療者から丸投げされても、そこで自分自身にとって最善の決断を生み出すことは困難ではないか、という懸念です。

 私はこの懸念に賛成します。おそらく、患者自身の選好や人生観、あるいは医療/ケアに対する考え方の表明があり、それを医療者側も理解することによって初めて、医療者も患者個々の事情に合わせた選択肢や情報の提供をアレンジすることができるのではないかと思います。

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宮城県大崎市で訪問診療を行なう大蔵暢さん。米国で内科と老年医学の専門医資格を取得したのちに帰国したところ、「8年ぶりの日本の医療現場は、がらりと様子が変わっていた」といいます。つまり、想像以上に高齢者を専門とする医師へのニーズが高まっていたのです。その驚きの帰国から10年。あらゆる現場で高齢者医療を実践し、現在、日本の地域医療を支える立場から見える「意思決定支援」とは。

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 介護支援専門員は、2000年4月の介護保険制度の導入に伴って創設された、各都道府県が管轄する公的資格である。2017年度の賃金構造基本統計調査によると、約7.6万人が従事している。

 介護保険法における介護支援専門員は、「要介護者または要支援者(以下「要介護者等」という)からの相談に応じ、要介護者等がその心身の状況等に応じ適切なサービスを利用できるよう、市区町村、サービス事業者等との連絡調整等を行う者であって、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識および技術を有するものとして介護支援専門員証の交付を受けたもの」と定義されているが、実際に担っている業務は多岐にわたる。

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 私は現在、東京都台東区にあるケアマネジメントセンターやなかで主任介護支援専門員として勤務している。以前、法人内の居宅介護支援事業所に7年間勤務しており、そのころに地域の医師と訪問看護師が立ち上げた「浅草かんわネットワーク研究会」に出会った。同研究会が手弁当で開催する勉強会や事例検討会に参加することで、地域のなかで顔の見える関係づくりが進んだ。

 現在、筆者は同研究会の事務局の一員として活動している。2015年にNPO法人化された同研究会は、台東区の浅草および周辺の専門職だけでなく、一般市民に対しても共通認識を広めることで適正に緩和ケアを提供できるよう、緩和ケアに関する教育、普及、相談、フィールド調査研究、情報収集・提供、広報活動を行ない、さまざまな課題の発見と改善、質の向上を図ることを主旨として活動している。

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言葉によるコミュニケーションが難しい人への支援において、どのようにその意思を探るか、そもそもにして意思はあるのかと、「意思決定」をめぐる事柄が課題となっています。

「意思は個人の内に独立してあるのではなく、人と人との間に立ち上がるもの」。

そう話すのは、重症心身障害児者とその家族のための施設「地域生活支援センター小さなたね」の所長・水野英尚さん。当事者本人を取り巻く状況に目を向け、その考えを実装したプロジェクトに取りかかっているのだそうです。

意思とはどのようなもので、支援者に求められる意思決定支援とは何なのか。あらためて、水野さんの中にある考え、そしてその取り組みの構想について話を聞きました。

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 訪問看護ステーションにおける記録の電子化が、急速に進んでいる。全国訪問看護事業協会の調査では、2018年時点では43.1%の訪問看護ステーション(それ以外の訪問看護事業所を含む、以下同じ)が記録を電子化(紙との併用を含む)しており、2015年の24.6%から急上昇を見せている*1。ちなみに病院の電子カルテ導入率は2017年時点で34.4%だが、2014年には24.5%であった*2。訪問看護ステーションの記録の電子化が急速に進んでいることは明白だ。

 このような時代背景のなかで、厚生労働省老人保健健康増進等事業「訪問看護の情報標準化のための『訪問看護記録書Ⅱ』の記録・共有のあり方に関する調査研究」(一般社団法人Neighborhood Care)が実施された(図1)*3。筆者は厚生労働省標準規格である「看護実践用語標準マスター」の普及推進などに携わっていることもあり、本調査研究の研究組織の委員長を務めていた。

連載 生き場所と死に場所をさがしてる。・第6回

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治療のために病院の処置室で、痛い注射が刺さるのを待っていた。処置室は駐車場が広い郊外のコンビニの店内ほどあり、点滴や輸血を受ける人などが何人かいた。

病院では写真を撮ることができないので、カメラはカバンにしまってある。写真を撮らないヒゲのデブは、ただのヒゲのデブだ。することもなくボーっと過ごしていた。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・117

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 満開にほど近い八分咲きの桜の木の下で撮った1枚の写真。今年の4月初め、大阪府堺市にある「福町庵(ふくまちあん)」で撮影したものです。桜は樹齢が何年になるのかもわからないほどの大樹。昨冬の積雪で折れた枝もあるそうですが、少しの添え木でその折れた枝から細いながらも新芽が伸びているのが見えました。

 福町庵は、2018年10月に完成した、がん患者さんや看取りをしたご遺族の方々がゆっくりと過ごすためのサロンです。堺市で在宅緩和ケア充実診療所「大坪医院」を営むご主人と、この地域で長年、エンドオブライフケアを実践してきた看護師・大坪よし子さんが、自宅を改修して作りました。

連載 訪問看護を伝える 在宅看護実習キーポイント・第2回

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 前回の連載第1回目では、学生の実習記録には「訪問看護師のスゴワザ」が隠されていること、そして実習記録を読み解くことは学生にとってだけでなく、私たち自身の技術向上の機会にもなることをお伝えしました。

 第2回からはさっそく、看護学生の記録を読み解く実践編です。

連載 シンソツきらきら・第30回

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 訪問看護の世界に入り、2年が経ちました。いまだに目の前の利用者さんのことで精一杯の日々です。訪問看護では出会った利用者さんと一緒に人生の時間を積み重ねていくことができます。時間をかけて見ていくなかで、多様な人のつながりが利用者さんの生活にあり、それぞれがいろいろな思いをもっているとわかってきました。初めて受けもったAさんは、ご自身の体を使ってそのことを私に教えてくださいました。これはAさんとの出会いから看取りまでの話です。

連載 ふんばる患者が楽になる まいにちの手帖・第9回

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前回は看る側の目線からしか終末期の方の人生や治療を考えられなかったですが……

自分が治療法のない難病になってみてわかったこと——それは

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目次

今月の5冊

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次号予告・編集後記 米沢 , 小池
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97歳の義理の祖母が肺炎で入院し10日間絶飲食だったので、「施設に帰るなら点滴を抜いて『看取り』です」と言われ、家族は受け入れられずにいました。孫世代の一人が、「『看取り』って言葉ふだんあんまり耳にしないから、急に聞くとキツイね」と言ったとき、感情的には家族と同じつもりの私でしたが、仕事柄その言葉に慣れてしまっていたことに気づかされました。その後、覚悟をもって帰った施設でスプーン1杯から始めたところ、「寿司が食べたい」と話すまでに回復。歌や大笑いも見せてくれているようです。…米沢

当初、今特集は、意思決定支援を「どうやったらいいのか」がまとまるものになると思っていました。しかし、頂戴した原稿を拝読すると、皆さんの原稿は「支援者としてどうあるべきか」を考え、綴ったものが多いと気づきました。つまり、方法論ではなく、支援者の「態度」「振る舞い」のほうに、実践者の方々は重きを置いていたわけです(そんな経緯もあって、今回は「どうあることなのか」というタイトルになっています)。看取り(に限らずですが)に際しては、現場で関わる人々の価値観が問われる以上、ケアの質はその人々次第で大きく様変わりする。その自覚が、意思決定支援の起点にあるべきなのですね。…小池

基本情報

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訪問看護と介護
24巻6号 (2019年6月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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