訪問看護と介護 24巻5号 (2019年5月)

特集 「願い」を問う、つなぐ、叶える—訪問看護はどのように意思決定を支援し、実現するか

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「意思決定支援」という言葉は広く知られ、使われるところになりました。そのようななかで、病院と地域などの働く場所の違い、職種の違いにより、「使う人によってその実践のイメージが異なる」と感じられる場面が増えているようです。

では、訪問看護の現場で行なわれる意思決定支援とは、どのようなものなのでしょうか。本特集では、そんな問いを現場の訪問看護師さんに投げかけ、自身の「意思決定支援」の考えに影響を与えた印象的な事例をふり返っていただきました。

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 私が所属する南区医師会訪問看護ステーション(機能強化型2)は開設24年で、現在は看護師17人、理学療法士1人、作業療法士2人、事務職員3人で運営している。併設事業所には居宅介護支援事業所、南区在宅医療連携拠点事業南区在宅医療相談室がある。対象地域は下町の高齢者が多い地域で、現在の利用者は医療保険50人(うち小児13人、精神障害者12人)、介護保険84人(2019年3月末時点)。開設準備から管理者、訪問看護師として地域に密着した実践を心がけてきた経験から、訪問看護の意思決定支援について考えていきたい。

 意思決定支援というと、人生の最終段階における医療やケアに対するものであるかのようにイメージしがちであるが、人々は生活するうえではさまざまな意思決定を重ねて生きており、訪問看護はそのすべてに対して関わる可能性がある。つまり、そもそもにして訪問看護は、利用者の生活全般に対する意思の尊重を基盤とした活動であり、利用者の意思決定能力への配慮や早期からの継続支援により、人生の最終段階の意思決定支援につながるものであると考えられる。

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 筆者は約6年半の病棟勤務を経て、1995年から訪問看護に従事している。2007年に開設された当ステーション(東京都東久留米市)は現在、看護師12人(常勤7人)、理学療法士・作業療法士ともに非常勤で1人ずつ、ケアマネジャー2人、社会福祉士、事務職の計19人が在籍し、機能強化型訪問看護療養費1を算定している。疾患別ではがん末期の方がいちばん多く、年間の在宅看取り数は40件以上あり、また緩和ケア病棟との連携も多い。乳児から超高齢者まですべての年齢、がん末期をはじめ難病、精神、小児とすべての疾患の方、認知症グループホームなどの施設にも訪問させていただいている。

 訪問看護事業のほか、市から「東久留米市在宅療養相談窓口」と「東久留米市認知症初期集中支援チーム」の2事業、また「東京都訪問看護教育ステーション」事業を東京都から受託し運営。また、約10年前からNPO法人緩和ケアサポートグループとの協働開催で、ステーションの一部のスペースを市民に開放し、「ふらっとカフェ」「ふらっと相談室」などを開催している。

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 病院併設型訪問看護ステーション、病院地域連携室勤務を経て、2013年5月に「いかなる健康状態・年齢にかかわらず、看護を必要とする方々の生活の場に赴いて、看護を提供する。」という理念のもと、訪問看護ステーションひなたを京都市に開設しました。現在は看護師10人、理学療法士2人、事務職員1人という体制で運営しています。

 地域連携室に勤務していたため、地域の開業医や居宅介護支援事業所とは顔見知りの関係だったこともあり、利用者は順調に増え、現在は約120人に訪問しています。0歳の18トリソミーの小児から100歳の高齢者、認知症・精神疾患・ターミナルなど、さまざまな利用者に対し、「その人らしい生活」を支えるために訪問看護を行なっています。

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 株式会社まちナースは、千葉県八千代市で、訪問看護ステーション「まちのナースステーション八千代」と看護小規模多機能型居宅介護「まちのナースステーション八千代 むすんでひらいて」(以下、むすんでひらいて)を運営しています。

 また、コミュニティカフェ「まちこカフェ」では毎週水曜日にさまざまなワークショップを行ない、コミュニティFM放送局であるふくろうFM(https://296.fm/)では、筆者(福田)がパーソナリティを務める『はい、まちのナースステーション八千代です』(第2・4火曜日14:00〜14:30)という番組をもっています。

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 日本は、少子高齢化社会を迎え、「施設から在宅へ」の大きな流れのなか、日常生活、圏域単位での地域包括ケアシステム、つまり在宅を支える医療、看護、介護、生活支援などの包括的な支援のもと、地域での生活の継続や住み慣れた地域で最期まで暮らし続けることのできる社会をめざしている。土台となる考え方は、治らない疾病や障害を抱えても、「本人の選択と本人、家族の心がまえ」、いわゆる本人の意思決定をどう支えるかが重要であるとうたわれている。それを支えるためには、小児から高齢者までの在宅療養者にしっかりと向き合い、支えることのできる訪問看護の果たす役割は大きい。

 筆者は、長く訪問看護に携わってきた。その時々で、本人が希望しても家族の意向が優先され、自宅での療養生活が叶わず入院して人生の最期を迎えたり、母親の不安が強く、自宅で家族とともに生活することが困難になり施設入所になった障がい児に関わったりと、もっと私たちができたことがあったのではないかとふり返り、反省することも多い。

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6人の訪問看護師へのインタビューと緻密な分析により、その実践に迫った書籍『在宅無限大——訪問看護師がみた生と死』。

訪問看護師の語りに身を寄せた本書は、その豊かな実践のあり様をつかみだしています。

著者は、看護の専門家ではなく、現象学者の村上靖彦さんです。

村上さんはなぜ訪問看護師にたどり着いたのか。

そして、訪問看護の現場で何を見たのか。

「これまで看護の教科書が取りこぼしてきたものを記述している」と、本書を評する山本則子さんが、村上さんがまなざしの先に捉えたものを探ります。

レポート こちら現場からお届けします!・第5回

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 午前2時。「家に帰ろう」と、目覚めた私は歩きだした。自宅の玄関前まで着いたとき、いつも肩からぶら下げているカバンがないことに気づく。財布やスマホ、すべてのものがない。寝ぼけた頭で思い出そうとするが、記憶も、ない。

 この夜、酒を飲んでいた。一緒にいた同僚と別れてからの行動をふり返るが、きちんと思い出すことができない。幸い、仕事用携帯電話はズボンのベルトとストラップでつないでいたので手元にあった。自分のスマホを呼び出すが、「電源が入っていない」という。ややパニックになりつつ、目覚めた場所まで走る。その途中で気づく。「カバンに仕事用iPadも入っていた!」

連載 訪問看護を伝える 在宅看護実習キーポイント・第1回【新連載】

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実践の意図、学生に伝わってる?

 皆さんは、在宅看護学実習に来る学生さんの「実習記録」を読んだことがありますか?

 私は、現場の一訪問看護師から大学教員になって、初めて学生さんの実習記録を見る機会がありました。目に留まったのは、「五感を使って理解する」や「(在宅でのケアは)ある程度の妥協は仕方ない」という文章。学生の素直な気持ちが書かれていて興味深いと感じながらも、果たして「訪問看護師が行なうケアの意味って、学生にちゃんと伝わっているのかな?」と思いました。

連載 生き場所と死に場所をさがしてる。・第5回

運ではなく、たまたまだ 幡野 広志
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3月1日に36歳の誕生日を迎えた。たまたまなんだけど、誕生日に写真集を出版することができた。

写真家として一つの区切りができて、本当にうれしい。出版と同時に東京の青山と京都で写真展もやった。病人になったけど健康な写真家っぽいことをしていて、たまに自分でも病人であることを忘れてしまうときがある。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・116

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 地方都市の大家族の中で育ったので、お葬式や法事と呼ばれるものに幼いころから列席した経験があります。鮮明に覚えているのは、16歳のときの実父の死に際してのもので、私にとって看護の道への入り口にもなりました。

連載 認知症の人とその家族から学んだこと—「……かもしれない」という、かかわりの歳月のなかで・第25回

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虐待の連鎖を断つ

 つい先頃、某グループホームの夜勤専従の契約職員(男性)が入居者の高齢女性に暴力をふるい逮捕されたニュースが、生々しい暴行シーンの映像と一緒に報道された。映像は、母親の身体のいくつもの大アザに不審を抱いた家族が、小型カメラを設置して撮ったものだそうだ。

 報道によると、この施設では夜間から早朝までの間、主におむつ交換や寝具・寝衣交換の作業をする職員を1階に1人、2階に2人雇い入れて、24時間介護体制を標榜していた。1階と2階の夜間の担当者同士が話し合う機会はなかったという。そうであれば、日勤と夜間の担当者が居住者の状態を伝え合うという至極当たり前のルールはもとより、それ以前の職員間の交流さえ冷え冷えとしていたことであろう。

連載 シンソツきらきら・第29回

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 最近は、新卒訪問看護師の育成について取り組みを始めている都道府県が増えてきました。各都道府県看護協会によっては、新卒訪問看護師の育成プログラムをそれぞれに開発するところも増えてきています。今後、新卒を育てたい、新卒から訪問看護にチャレンジしたいという方は、そのような情報をご覧いただくとよいかもしれません。また、きらきら訪問ナース研究会においては2019年度も育成者養成講座を開講予定とのことです。(小瀬)

連載 ふんばる患者が楽になる まいにちの手帖・第8回

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看護学生の時の実習でお見かけした終末期の患者さんに感じた気持ち……

それは多くの医療従事者が一度は感じることではないだろうか——

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目次

今月の5冊

Information 学会・研究会情報

バックナンバー・年間購読のご案内

FAX購読申込書

次号予告・編集後記 米沢 , 小池
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手詰まりにも見える状況を一変させる、訪問看護師ならではの意思決定支援事例の数々(今月号特集)に、“コミュニケーション技術”などいう言葉では到底表現しきれない、力の存在を確信しました。締め切りが迫るなか、雑誌担当としては「早く読まなきゃ」な状況にもかかわらず、「願い」を取り巻く物語の深さにいちいち立ち止まってしまい、とてもとても時間がかかりました(小池さん、ごめん)。…米沢

事例はなるべく事細かに書いてほしい、と皆さんに頼みました。というのは、意思決定やその実現をめざしたケアは「自分が行なったことを羅列する」ように記述すると、リアリティがごっそりとなくなってしまうように感じていたからです。感覚的な判断でしたが(!)、本号対談や村上靖彦さん著『在宅無限大』を通し、その必要性が自分のなかでようやく整理されてきました。看護師と患者・家族の相互作用のなかで生まれる実践、その最たるものが意思決定支援で、やり取りの詳細まで書かないとそれを表現できないんだ、と。……読み応えありますが、それでもこの分量でないと浮き彫りにならないものが出ているので、ぜひご覧いただきたく。…小池

基本情報

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訪問看護と介護
24巻5号 (2019年5月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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