訪問看護と介護 22巻7号 (2017年7月)

特集 ケアする人もされる人も! 身体介助がラクになる大原則

岡田 慎一郎
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身体介助は日常的に行なわれるものです。しかし、高齢の方、障がいのある方など、動きに制限のある方の介助を、いつでも無理なくスマートに行なうのは、簡単なことではありません。ともすれば、その身体介助の負担から腰や肩、肘を痛めてしまうことも……。どこからか、「身体介助は身体を痛めるものだ」なんて声も聞こえてきます。

岡田慎一郎氏は、自分自身の「身体」に目を向け、相手の身体との関係性を意識することで、そうした状況は変わると指摘します。ケアする人も、される人もぐっと安楽な介助になるというのです。

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「身体介助は身体を痛める」は本当か?

 「身体介助で身体を痛めてしまった」なんて話を聞いたことはありませんか。もしかしたら、読者のあなた自身がそうかもしれません。訪問看護・介護の現場で、年齢、性別、疾病、障害など幅広い利用者に、ベッドや布団、車椅子など、それぞれの住環境のなかで介助をすることによって、身体を痛めてしまう方は少なからず存在しています。

 そこでもし、一緒に介助する人や福祉器具のようなものがあったなら、その負担も軽減ができるのでしょう。しかし、「訪問は原則1人」ということもあるでしょうし、施設であっても人員配置の関係で人手が足りず、「結局1人でやるしかない」という場面もあります。あるいは、福祉用具がそもそもない、あったとしても環境によっては使えないこともあったりと、結局、自分自身にしか頼れないことも現実的には多い実態があります。

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起こす、立たせる、座らせる、体位変換など、身体介助技術にはさまざまあります。個々に「テクニック」といったものが存在していますが、本稿ではそれらのどの身体介助技術にも共通した原理として、「介助者と被介助者との関係の3原則」を解説します。この3原則を身につければ、被介助者がどのような状態であったとしても、あるいは介助する現場がどのような環境であろうと、基本的な技術を応用させながら対応できるようになります。

ただ、この3原則を実践していただく前に、まずは「自分の身体の使い方」に立ち返っていただく必要があります。というのも、自分の身体で合理的な動きができていなければ、この3原則を有機的につなげることができないからです。

そこで、まずは自分の身体の動きを見直す、つまり「介助する身体づくり」について説明し、そのうえで「介助者と被介助との関係の3原則」を解説していく、というステップで本稿を進めていきます。

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身体介助を行なうなかでは、さまざまな疑問や困難に直面します。

岡田氏に、それらをどう考え、対応していくべきかについてアイデアをいただきました。

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 「岡田さんの話す“身体の使い方の工夫”は、本当に現場に落とし込めるのか」。そんな素朴な問いから、この企画が動き出した。

 ご協力いただいたのは、脳幹梗塞の全身性麻痺で身体の動きが制限されている山中敏彦さん。そしてもう1人の協力者が、主介護者である敏彦さんの母・正子さん。敏彦さんには被介護者として、正子さんには介護者の代表として、岡田さんの身体介助を体験していただいた。

 なお、岡田さんと山中さんらは、この日が初対面。敏彦さんに関する情報——疾患や病歴、身体の状態、室内環境——も、事前に岡田さんには伝えていない。つまり岡田さんには、初めて出会う人・行く場所で、機能的な身体の動きを即興で考えてもらうことになる。

 果たして、岡田さんは現場でどのように工夫するのか。文字どおり“身体”を張った、一発勝負の取材がスタート!

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「身体運用」に並々ならぬ関心を向ける2人がいる。

元ラグビー日本代表選手で、現在は「身体論」「スポーツ教育学」を専門とする平尾剛氏、そして、今回の特集を監修した岡田慎一郎氏である。この両者が深遠なる「身体」をテーマに対談。「身体の動きの質」をめぐる誤解と、身体に着目すると何が変わるのかを提示し、自らの身体の動きを変える方法まで語り合った。

巻頭 地域包括ケアのまちを歩く—コミュニティデザインの視点で読み解くケアのまちづくり・第8回

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 人をケアするのは誰だろう。 医療や介護・福祉の専門職? 行政? それとも……。

 住民同士が身近な人をケアし合い、どんな人でも社会に貢献したりつながったりしていることを感じられる居場所がある。そんな“ケアする社会”を実現しようとしているのが、埼玉県幸手市および北葛飾郡杉戸町で展開される地域包括ケア「幸手モデル」だ。まちづくりに関わる住民を“コミュニティデザイナー”と呼び、その活動を在宅医療連携拠点「菜のはな」が下支えしている。

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 以前、岡田慎一郎先生の「身体介助術」のニューヨークでの講演会に参加させていただいたことがあります。実践指導を通じて教えてくださった多くの技を一生懸命覚えて帰ったつもりでしたが、いざ実生活で活かそうというとき「あれ? この場合はどう動くんだったっけ?」と思い出せなかったことがあり、とても残念な思いをしていました。そのようなとき、DVDとWeb動画付きの本書が発売されたことを知り、早速手に取りました。

 本書はタイトルどおり“シンプル”な身体介助術の本です。基礎編と38事例の実践編で構成され、「相手との関係の3原則」を軸に、具体的な動き方をDVDとWeb動画で確認しながら読み進むことができます。非常にわかりやすく、覚えやすく、もし忘れてもすぐに動画で再確認できるので安心です! そして、ほかの多くの介助技術の書籍との違いは、驚くほどシンプルで一貫性のある点だと思います。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・94

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 今年4月28日、内閣府から発表された資料のなかに「医療提供状況の地域差」という統計がありました。そこには「胃ろう造設術」および「胃ろうより流動食点滴注入、入院」の都道府県別の件数が掲載されており、そのトップがいずれも沖縄県であることに多くの人が驚きました。私はそれらのグラフを見て、訪問看護事業所の数がなかなか伸ばせていない都道府県と重なるのではないか、と妙に気になりました。

連載 認知症の人とその家族から学んだこと—「……かもしれない」という、かかわりの歳月のなかで・第4回

自立支援に思うこと 中島 紀惠子
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「古い文化」を変えるには、新しいフレームワークを築くことから

 〈認知症〉と〈非認知症〉を区別することから始まる疾病観を変える必要については、先の号でも述べたが、私にとってそれは、人口学的見地にもとづく将来的課題や医学診断上の問題にとどまる話ではない。むしろ、この病がもたらす何かしらの出来事によって理不尽な難題に遭遇している人々を目の前にして、私または私たち医療者(でなくとも、プロを自任する者)が「患者」とよぶことの居心地の悪さの正体を明らかにしたいという思いのほうが大きい。

 「患者」という言葉に、人間性を支える徳性や平等性といったものが切り取られ、かつスティグマを纏(まと)っているような微妙なニュアンスを感ずる。定かではないが、この感覚の“なぜ”がきちんと書かれている論文は極めて少ないのではなかろうか。

連載 訪問看護実践と成果のつながりを可視化するために—日本語版オマハシステムの開発に向けて・第14回

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私がオマハシステム国際学会に参加することになったきっかけ

 私は現在、大学において、看護管理学を教える立場にあります。看護管理の対象は医療サービスの利用者やその家族、また看護師にとどまらず、その組織・集団の構成員であるさまざまな背景をもった職種、そして連携や取引を行なっている他の施設スタッフや業者などにまで広がります。そして、その対象にwell-beingをもたらすことが求められています。人と人との関係性をとりもつ対話についてはとても関心があったので、大学院では臨床心理学を学び、そうした関係性を基盤に多職種と目標を共有しながら、看護実践活動を行なうことが大切だと考えていました。

 そうしたなか、昨年の7月に一般社団法人オマハシステムジャパンが設立され、その設立を記念して、オマハシステム開発のリーダーであるカレン・マーティン氏が来日されるというニュースを代表の長江弘子先生から伺いました。これが私とオマハシステムとの出会いです。看護管理学を専門とする身としては、共通の記録ツールをもち、チームで共有していくというコンセプトの重要性は日々感じていました。言語化が難しい看護ケアを、看護職のみならず、多職種で使えるシステムのなかで「見える化」し、介入・評価をするのがオマハシステムだと知り、これは具体的にどういうものなのかを学ぶことができればうれしいと思いました。

連載 どう読む!? 在宅医療・看護・介護政策・第19回

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 厚生労働省は、地域医療構想による2025年の必要病床数と病床機能報告制度にもとづく現在の病床数を4つの医療機能ごとに比較分析し、5月10日の「地域医療構想に関するワーキンググループ」(尾形裕也座長、以下WG)に報告した。それによると、多くの構想区域で将来急性期病床が過剰になる一方、回復期病床が不足する見込みであることがわかった。

連載 シンソツきらきら・第7回

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 新年度も数か月が経ち、全国で新卒訪問看護師が初めて単独訪問を行なったり、それに向けて一生懸命がんばったりしているころでしょうか。また今後、新卒訪問看護師になりたい学生さんや迎え入れたいステーションは、次年度に向けて準備を始めるころかと思います。その過程のなかで、新卒の方も、学生さんも、ステーションの管理者・教育者の方も、それぞれに新卒訪問看護師の1年後の姿に期待や不安が入り混じった気持ちをおもちだと思います。

 今回は、ちょうど新卒訪問看護師として1年が経った平尾佳奈さんに、今思うことを振り返り、綴っていただきました。成功体験や失敗体験をくり返しながら、どんな想いで訪問看護を行なっているのか。新卒訪看1年目が終わった姿をイメージしながら、お読みいただければ幸いです。(小瀬)

ほっとらいん ふろむ ほんごう

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 2017年5月18日(木)、東京都中央区でBuurtzorg Services Japan株式会社主催、オランダ王国大使館、一般財団法人オレンジクロス後援の「訪問看護事業セミナー」が開催された。世界的にも注目されるビュートゾルフのノウハウを学ぼうとする参加者で会場はあふれた。

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 新卒で訪問看護ステーションに就職する看護師は増えているが、訪問看護ステーション側が自前で教育者や教材などを用意することは難しい。そこで、そのような教育資源(人・物・金・情報)の限られたステーションを支援する事業として、聖路加国際大学教育センターがはじめたのが「オーダーメイドで学ぶ訪問看護」事業である。同事業の企画の一環として「すぐに必要な看護技術と考え方」と題された研修会が、4月に開催された。

 同研修会は、本年度より訪問看護師として従事する新任者が「すぐに必要で基本的な看護技術について慣れ、習慣的に観察するポイントを理解すること、そして、技術のみにとらわれずに利用者に必要なことを探求していく訪問看護の姿勢を学ぶこと」を狙いに開催されたもの。

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いろんなかたちの保健室

中川征士 訪問看護ステーションひゅっぐりー/暮らしの保健室さくらい

今月の5冊

Information 学会・研究会情報

バックナンバーのご案内

次号予告・編集後記 小池 , 横田
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過去に4回、ギックリ腰になったことがあります。「バイト中、荷物を持ち上げて」「スクワットをして」「ピンポン球を拾おうとして」「寝床から起き上がろうとして」……。あの痛烈な衝撃のせいか、ギックリ腰になったときのシチュエーションも不思議と記憶に残っているものです。ふり返ると、どうやら全ケースで「腹から身体を曲げていた」ことがよくなかったよう。私にとっても学び多き号となりました◎そんな今号の製作中、岡田さんの身体介助には驚かされました。人を持ち上げるという力強いはずの動きにも、どこか静けさがあるような気さえするのです。一連の所作に、小手先の技術ではない、「身体の工夫」の深みを垣間見ました。…小池

特集の撮影を行なっている際、祖父に起立介助を拒否されたことを思い出しました。よかれと思ってやったのに「やめぇ!」と言われ、ひどく落ち込んだことを覚えています。しかし、今回、身体介助を体験することで、被介助者の視点に気づくことができました。祖父も脇腹を絞められて痛かったのだろうか……。◎岡田さんの介助はとても安心感があり、自然と身体を委ねることができました。今度は、そういう介助を行なえるように、「身体づくり」から見直したいと思います。…横田

基本情報

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訪問看護と介護
22巻7号 (2017年7月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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