訪問看護と介護 22巻6号 (2017年6月)

特集 これからは「クライシス・プラン」をつくっておこう

野村 照幸
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限られた訪問時間。そのなかで、患者・利用者の状態をとらえ、いざというときの工夫・対処の方法を考え、共有しておく。それは決して簡単なものではありません。

そこでご紹介したいのが、「クライシス・プラン」。「良い状態を保つ」「病状の悪化の始まりに気づき、早めに立て直す」「悪化が深刻になったときにスムーズに対処・対応する」方法を検討・共有するうえで、有効なツールになり得るものです。

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「これまでよりもちょっとよい方向へ」を叶えるために

 「病気の話ってしにくいよなぁ」「限られた時間で状態を知るのは難しい」「具合が悪いのはわかるけど、何をどう伝えたらいいんだろう」「入院をくり返さないで、もっと良い状態が続いたらいいのに」「医療機関との連携って難しいなぁ」——。

 訪問看護、そのなかでもとくに精神科訪問看護のなかで、こういったことが頭に浮かぶことがありませんか? もし心当たりがあるなら、ぜひ紹介したいものがあります! それが、今回の特集で扱っている「クライシス・プラン」です。クライシス・プランを導入することで、先ほど書いたような状況を「これまでよりもちょっと良い方向」に変えられる可能性があります。

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 「クライシス・プラン」は、利用者さんが危機的な状況に陥った際にどのような対応をすべきかについて、患者さんや家族と支援者があらかじめ話し合って計画しておくものを指します。とはいえ、そんなふうに説明を受けてもピンと来ない方は多いと思います。そこで本稿では、具体的なケースを通じて、利用者さんとどんなやりとりのなかでプランを作成していき、実際の現場で活用しているのかをご紹介します。

 ここでは、架空の病院内の訪問看護室に所属する“訪問看護師クララ”に登場してもらい、クライシス・プランを活用したケースをエピソード仕立てでいくつか見ていただきましょう。きっと、いろいろな状態の利用者さんにも有効活用できるのだと実感できるのではないかと思います。

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 ここまで、クライシス・プランの活用例を紹介してきました。各ケースでのやりとりを見ると、決して特別な関わり方をしているわけではないとわかります。しかしながら、どういう利用者に対し、どのような点でクライシス・プランをお勧めでき、実際にはどういったやりとりのなかで作成していけばよいのか、「もう少し詳しく知りたい!」という方もいるのではないでしょうか。

 ここで、前項の「こんなケースに使えます、クライシス・プラン」の事例を用いながら、クライシス・プランの作成・導入・運用のプロセスを11のステップに切り分け、必要な考え方や知識を整理していきます。

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海の向こうのクライシス・プランとの位置づけの違い

 クライシス・プランと似たものは、日本以外の国でも活用されています。たとえば、イギリスやアメリカでは、病状が悪くなり、冷静に判断できなくなったときの治療について事前に話し合っておく取り組みが、1980年ごろから始まっています。

 イギリスでは「ジョイント・クライシス・プラン」といって、医療スタッフや支援者、家族などが話し合い、病状悪化につながる状況、病状悪化の注意状態、希望する治療・対応や拒否したい治療・対応などについて話し合って決める取り組みを行なっています。内容は定期的に見直され、病状やサービス利用者や医療スタッフの現状に沿ったものにするべく変更を続けています。

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クライシス・プランについて

1 クライシス・プランとは?

①安定した状態を続ける

②具合の悪くなりはじめに早めに気づいて自分でできることをする、また周りの人に助けてもらう

③具合が悪くなったときの自分でできることをする、また周りの人に助けてもらう、そのために具合の良いときにあらかじめ決めておく計画のことです

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第32回国際アルツハイマー病協会国際会議が4月26〜29日の4日間にわたり、国内外から約4000人を集め、京都市で開催された。そこで、ひと際目を引いたワークショップがあった。日本認知症ワーキンググループによる「認知症とともに生きるわたしたちからの希望のリレー」だ。会場は満席。後方には立ち見が二重三重に押し寄せ、認知症本人の声に耳を傾けた。

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 「もっと上手にコミュニケーションをとれるようになりたい」。看護師であれば誰もが望むことである。看護の現場では、初めて出会う患者・家族の価値観や真のニーズを読み解き、援助関係を発展させて健康問題に協働して取り組むために、あらゆる場面で看護コミュニケーションが用いられる。また、専門的な知識・技術を看護実践に落とし込むとき、医師や福祉・介護職などとの多職種連携においても、効果的なコミュニケーションを介して初めてその成果が表われてくる。しかし、日々の看護場面でコミュニケーションがうまくいかないと感じる看護師は少なくない。コミュニケーションスキルを高めることは看護専門職として生涯にわたって学習すべき重要な課題のひとつといえる。

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カテーテル留置が長期化する在宅の現場

 はじめに、なぜ訪問看護における膀胱留置カテーテルの閉塞に注目したのかをお伝えします。膀胱留置カテーテル(以下、カテーテル)の留置は、できるだけ早期の抜去が原則です。しかし、在宅でのカテーテル留置者は留置理由に、尿閉はもちろん、介護負担の軽減、尿失禁、褥瘡管理などが挙げられ、結果的にカテーテル留置期間が長期化している実態があります。訪問看護ステーションを対象にしたわれわれの調査では、平均カテーテル留置期間は4.3±3.8(0.5〜15.3)年であり、カテーテル抜去の予定がある者はほとんどいませんでした*1

 カテーテル長期留置に伴う主な合併症は、カテーテル関連尿路感染(CAUTI:catheter-associated urinary tract infection)です。尿路感染症は、カテーテル留置自体が原因であるため、カテーテルを30日間留置すると細菌尿がほぼ100%のカテーテル留置者で出現します。よって、カテーテル長期留置者ではCAUTIは必発ですが、無症状で経過するケースが多く、完全な除菌は困難であるために、細菌尿を認めるだけでは治療対象とはならないことが一般的です。ただし、CAUTIは、カテーテル閉塞の発生により急激に重症化し、腎盂腎炎や敗血症などを併発し、訪問看護による緊急対応や救急外来受診・入院などにつながるおそれがあります*2・3(図1)。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・93

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 1人暮らしが半分近くを占める集合住宅の1階で、暮らしの保健室を開いて約6年が経ちました。そこで出会う独居の皆さんの心の奥に潜む心配事は、「たった1人で急に具合が悪くなって倒れてしまって、誰にも発見されずに時間が経ってしまったら……」というものです。

 実際にお風呂のなかで意識を失う事態を恐れ、自宅にお風呂があるのに銭湯へ通ったり、浴槽を使わずシャワーだけで済ましたりする方もいます。可能ならこの場所で住み続けたいと願っているものの、新聞をにぎわす「孤独死(あるいは孤立死)は避けたい」と話し、「ぽっくりと逝きたいけど、その姿の見つかり方が気になる」と語るのです。最期を迎えるにあたっての準備は、早めから知恵を絞っておかねばなりません。日ごろの生活上の知識も知っておく必要があります。

連載 認知症の人とその家族から学んだこと—「……かもしれない」という、かかわりの歳月のなかで・第3回

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認知症対象の電話相談での私のスタンス

 ぼけ老人を抱える家族の会(1980年発足、2005年認知症の人と家族の会に呼称変更。以下、家族の会)が京都に誕生してから今年で37年になる*1。“京都に住む認知症介護家族が集う”という小さな記事に、全国から100名に近い介護家族が馳せ参じ、この日のうちに全国組織「家族の会」が設立された。“わかってもらえる人がそこここにいる”と思う人たちの喜びが一気にヒートアップしたのだ。

 同じころ、私は、認知症の人やその家族がどこにいて、どんな苦しみをもち、どのような助けを求めているのか、分かち合いたいのに顔が見えないもどかしさを覚えていた。ところが、この集いに千葉県から5〜6人の介護家族が参加していたと、早川一光先生から連絡が入り、「何とかしてやってください」の声に背中を押されて、この人たちのお宅に出向き、幾度か目には自宅持ち回りの小さな集いができた。一方で私は、電話相談の準備と「家族の会」千葉県支部づくりに取り組んでいた。当時、私が勤めていた千葉大学の大学院生だった永田久美子さんの尽力で、学部生の研究会もできた。これで、学生たちのサポートも期待できる。こうして1980年10月4日、研究室で“24時間対応”の電話相談はスタートした。同月25日には「家族の会」千葉県支部の第1回例会も開催できた。ここから私の猪突猛進の日々が始まった。

連載 訪問看護実践と成果のつながりを可視化するために—日本語版オマハシステムの開発に向けて・第13回

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 前回に引き続き、実際に訪問看護ステーションのなかで、オマハシステムを導入している事例を報告したいと思います。

連載 どう読む!? 在宅医療・看護・介護政策・第18回

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 厚生労働省の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」(座長=渋谷健司・東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授)の報告書が4月6日に公表された。報告書は、医療を取り巻く環境が大きく変化するなかで、医療を提供する側が疲弊することなく本来のプロフェッショナリズムを守り、環境の変化に対応していくためのビジョンが必要であるとし、その方策として、医師の業務を他の職種が分担するタスク・シフティング/タスク・シェアリングやICTの活用などを提案している。また、医師の需給に関して、本来医師が行なうべき業務に注力できる環境整備を進めることで、医師数を増やす必要がない環境をつくることが重要としている。

連載 シンソツきらきら・第6回

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 「新卒訪問看護師になりたいので、お話を聞かせてください」。今年の3月、新卒訪問看護師になりたいという気持ちを明言して、就職に関する情報収集にこられる学生さんがたくさんいらっしゃいました。「新卒訪問看護師なんてありえない」、そんなイメージも薄れ始め、今後の新卒訪問看護師のキャリア普及にとても期待が膨らみます。

 一方で、学生さんの「新卒訪問看護師になりたい」を実現するためには、複数の課題が存在することも事実です。新卒訪問看護師を進路として選ぶうえでの課題(図)とは、❶新卒採用をしている事業所が非常に少なく就職情報がない、❷周囲からの反対意見、❸就職後の成長イメージがもちにくい、❹一般的でないキャリア選択への不安、❺家族からの心配、などです。これらの課題により、新卒訪問看護師になることを諦めざるを得ない方もいるのが現状です。そのようななか、新卒訪問看護師になった方の話を聞くと、在宅看護への強い想い、恩師や訪問看護師さんからの後押し、先輩新卒訪問看護師との出会い、ご家族からの応援など、自らの進路を動機づけ、勇気づけるようなエピソードがあることに気づきます。

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今月の5冊

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次号予告・編集後記 小池 , 横田
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今号をつくる過程で、野村さんにならい(p466)、自分の「安定しているとき」「注意状態」「要注意状態」を考えてみました。安定しているときは「雑談する余裕がある」ようですし、「何にでも前向き」です。一方、注意状態だと「集中力が散漫」になって「企画が浮かばない」なんてことがある。要注意状態ともなると「早朝覚醒」や「イライラ」があるかもしれません。なるほど。“あえて型にはめて考える”からこそ、普段の生活をふり返り、自分を客観視しやすくなるのですね。……そういえば、先々の企画って埋まっていなかったような? 何か対処を!…小池

長時間、原稿とにらめっこしていると、思わぬミスをしていることがあります。疲れてくると、同じように読んでいるつもりでも、内容が頭に入っていない……。仕事の質を保つためには、自分自身の状態を自覚することが必要であることを痛感します。本号の編集作業のなかで、実際にクライシス・プランをつくってみたところ、集中力が切れたときの行動パターンに気づきました。そんなときは、ひと呼吸をいれて自分の体調を整える。今号も仕事のクライシスを乗り越えられそうです(?)…横田

基本情報

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訪問看護と介護
22巻6号 (2017年6月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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