訪問看護と介護 22巻8号 (2017年8月)

特集 ケアのプロセスを見える化する

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地域包括ケア時代において、その要として期待される訪問看護師の皆さんが全国各地で活躍しています。しかし、ニーズが高いにもかかわらず、その人数がなかなか増えず、社会全体として、認知度が高いとはまだまだいえないのが現状です。これは、訪問看護師をめざす人だけでなく、利用する側にとっても残念な状況です。

そこには、さまざまな原因があるとしても、「訪問看護とは何か」が明確になっていないことが、極めて大きな要因となっていることはたしかだといえるのではないでしょうか。

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今回は、生産性を高めるための鍵の1つとなる「ケアのプロセスの見える化」に取り組んでいる6名の方々にお集まりいただきました。これまで開発が進められてきた患者状態適応型パス(PCAPS)が、今から2年ほど前から水流聡子教授を中心にした「訪問看護の見える化」を目的とした取り組みにつながりました。見える化をキーワードに、皆さんが抱えていた問題意識や、それぞれの取り組みに至った経緯、成果などを伺います。

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在宅医療の制度化以前

 在宅医療が制度化されて、四半世紀が経ちました。それまでは、医療は医療施設(病院、診療所など)のなかで提供されるものであり、人々は健康に異常を感じると医療施設に行き、外来診療室で医療を受けていました。そして、受ける医療内容が専門性の高い医療環境を必要とする場合には、医療施設に入院して、急に重い症状に見舞われた場合は、24時間365日受け付けている医療施設の救急外来診療室に行くか往診を受けていました。往診は診療報酬上では、緊急対応として外来扱いでした。つまり、それまでは、外来通院困難な状態の人々が恒常的に自宅で療養するということは、制度上では認められていなかったということです。

 現在のような訪問看護は、在宅医療が制度化されるまではありませんでした。類似した看護活動としては、保健師が人々の自宅を訪問し、保健活動を行なっていたことが挙げられます。この活動は、第2次世界大戦(1945年に終結)後に、全国的に医師が不足しており、医師不在の地域では、住民は健康問題が起きると保健師に頼り、保健師は各戸を訪問して看護していました。

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訪問看護師が収集する患者状態に関する情報

 在宅療養中の患者の状態について、訪問看護師が収集する情報は、主治医にとって大変重要なものであり、遠隔で患者状態のアセスメントをする際に利活用される必要があります。また、主治医と訪問看護師の間で共有する患者状態情報は、標準的な観察項目として、共通認識されているべきです。しかし、同じ観察項目をいうときの名称表現が、主治医-訪問看護師間、あるいは同僚の訪問看護師間で異なり、情報が正しく共有されないことがあります。また、観察結果の表現が異なることもあるため、担当する訪問看護師が代わると、患者の観察結果およびケアの連続性が担保できなくなるという困った状況が起こっています。

 つまりこれは、訪問看護師が用いる観察項目の名称と結果表記の標準(共通のものさし)がないということが大きな要因なのです。そこで、本稿では訪問看護で用いる用語の共通化・標準化の必要性、重要性について考えてみたいと思います。

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認知度から訪問看護をみる

 地域包括ケアシステム構築の推進が叫ばれて久しい。病院での医療を終了し、患者が地域で療養しながら自立した生活を営むとき、懸け橋の役割として訪問看護の存在は欠かせない。しかし、訪問看護の認知度については、医療介護関係者以外では、「『在宅医療』という言葉は聞いたことがあるが、どのようなことかわからない」という人が50%を超えているという調査結果もある*1。このことから、一般の医療・介護サービスを受ける人々の半数以上が、訪問看護が地域に存在していることを知らない状況であると思われる。

 病院や診療所の職員のなかでも、訪問看護の効果的な活用方法を十分に知っている者はまだ少ないのではないだろうか。さらに介護支援専門員(以下、ケアマネジャー)であっても、訪問看護の役割と機能を理解して、サービス計画に訪問看護サービスを活用する術を熟知しているとは言いがたいのが現状である。

巻頭インタビュー ケアのヒュッテ・14

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 通所介護施設と、私設図書館を融合させた「フキデチョウ文庫」。街なかに設けられたこの不思議な空間は、今、地域の人々を呼び込み、つながりを紡ぐ場になっている。

連載 地域包括ケアのまちを歩く—コミュニティデザインの視点で読み解くケアのまちづくり・第9回

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地域でまちづくりに取り組む住民を、幸手では“コミュニティデザイナー”と呼ぶ。その第1号の小泉さんの運営するコミュニティカフェ「ぷリズム」は、押し付けない介護予防がコンセプトだ。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・95

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 先日、牛込神楽坂の区民ホール(東京都新宿区)にて、「新宿地域看護業務連絡会50周年記念行事」が開催されました。新宿地域看護業務連絡会とは、1967年7月から今日まで続く、新宿区内の看護職のつながりです。病院、自治体、看護教育、訪問看護とさまざまな場で働く看護職が所属しています。なんと、それが細々ながら連綿とつながり、今年で半世紀を迎えることになりました。

 50周年を記念した今回のテーマは、「今、看護がつながる〜新宿50年〜」。設立当初のメンバーには鬼籍に入られた方もいるため、「関係者すべて」とはいきませんでしたが、それでも70〜80代の諸先輩方をお招きし、新宿の看護の歴史の歩みをたどることができました。

連載 認知症の人とその家族から学んだこと—「……かもしれない」という、かかわりの歳月のなかで・第5回

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「認知症の人に優しい社会」というイノベーション

 第32回国際アルツハイマー病協会国際会議(以下、ADI)開催において、各国のプレゼンターの多くが述べられた2つのキーワードがある。ひとつは高齢人口の増加、もうひとつは膨らみ続ける認知症ケアの国家予算に関して“何もしない”ことのリスクの問題である。

 黒川清氏(内閣特別顧問、元日本学術会議会長)は、ロボットのPepper君を連れて登壇し、「認知症ケアの費用は、GDPの数%を占めるようになった。しかし、これに含まれない費用の40〜50%は主に家族や働く女性により無償で提供されるものであり、とくに中低所得国では全体の80%に達する。これを何とかしなければならない。加えて、地域ベースの社会的結合という難問がある。これに立ち向かうには、生命科学、情報科学、工学とともにITやAIの技術推進が重要であり、この人材の活用と社会資源としての人の知恵の活用が、認知症当事者とその家族にとっていっそう重要になる」と述べられた。

連載 どう読む!? 在宅医療・看護・介護政策・第20回

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 厚生労働省は、先の通常国会で成立した介護保険法の改正を踏まえ、介護保険事業(支援)計画を策定する際の基本指針の改正案をまとめ、6月21日の社会保障審議会介護保険部会(遠藤久夫部会長)に示した。従来の基本指針を全面的に見直し、自立支援や医療・介護の連携を強調している。

連載 シンソツきらきら・第8回

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 新卒訪問看護師になる人を育てるうえで大切なことは何でしょうか。

 今回は岡山県在住の中務章子さんに、新卒訪問看護師として後押しされたこと、支えられたことについて書いていただきました。中務さんの経験からわかる職場風土の大切さは、新卒訪問看護師を受け入れて育てる方にとっても大切なことだと思います。また、このような風土が業界全体として広がっていけばよいと強く思います。(小瀬)

ほっとらいん ふろむ ほんごう

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ALS患者と家族をとらえたドキュメンタリー

 世界ALSデーの6月21日、映画『ギフト——僕がきみに残せるもの』のジャパンプレミア試写会が、なかのZERO小ホール(東京都中野区)で行なわれた。

 本作は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症した元アメリカン・フットボールのスター選手スティーヴ・グリーソン氏が、息子へ贈るために記録したビデオ日記をもとに構成された記録映画だ。実はグリーソン氏は、2014年頃にSNSで話題となった「アイス・バケツ・チャレンジ」イベントの仕掛け人。そんな彼の前向きに活動を行なう日々の姿だけでなく、悩み、涙し、絶望する姿をも映し出した映画となっている。

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次号予告・編集後記 小池 , 早田
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巻頭のフキデチョウ文庫さんへの取材日、近所の小学生もたくさん訪れていました。子どもらの遊び場にもなっており、後日、録音してきたインタビューの音声を聞くと、脇ではしゃぎ回る声に、フロアを走り回る足音で、沼田さんの声が拾いづらいほど賑やか! あらためて「ただの通所介護施設ではない……!」と思い知ることになりました。そんなこんなありつつも、あの不思議な空間、沼田さんの力の抜けた自然体なスタイルにはすっかり魅了されてしまいました。集まっている人も「力が入りすぎていない」のが、またいい感じです。居心地のよさを明確に言語化できないけれど、訪れたくなるその気持ちはよくわかりました。…小池

じつは、ベテランになるほど、利用者の様子がどうだったのか、そこでどんなことを考え、どんなケアをしてきたかがブラックボックスになることも少なくなく、良くも悪くもその人だけの訪問看護になりがち……。こうした話を聞かされることがたまにあります。やはり、新人からベテランまで皆がいいケアをつなげてほしい。そこで、今特集では、訪問看護を見える化して、誰がやっても質の高いケアはどうしたら実現できるかということを考えたいと思います。まだまだ途上ですから、これから訪問看護をしようと考えている人にも役立つものにするにはどうしたらいいかを一緒に考えていただければうれしいです。…早田

基本情報

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訪問看護と介護
22巻8号 (2017年8月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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