訪問看護と介護 20巻2号 (2015年2月)

特集 訪問看護の意思決定支援—いつ何をどう行なうことなのか

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「最期は自宅で? 病院で?」「胃ろうはつけるの? つけないの?」

治療選択はもちろん、さまざまな局面で、本人そして家族に「意思決定」が求められるようになっています。

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 訪問看護ステーションれもんは、2011年5月「あなたにビタミンのエッセンスをお届けします」というキャッチフレーズのもと、筆者を含む看護師3名と保健師1名でスタートした。今年で4年目を迎える。スタッフは現在、事務員を含めて10名である。

 そのうち3名は60歳以上の“元師長”という人材である。その1人は地域の民生委員でもあり、昨年契約したグループホーム2ユニットへの訪問看護を担当し、念願の看取りもできた。もう1人は、管理経験を活かし、マニュアルや資料作成なども担当。また、もう1人は、滋賀県看護連盟の副会長で、開設前から訪問看護を勉強したいと入職、公認会計士と連携して経理を担当するほか、訪問看護政策について市議らと話し合う機会もある。

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 「非がん疾患」の予後予測は難しく、さらに高齢者は「老衰」という避けられない自然経過に加えて、心不全・脳梗塞後遺症・認知症などのさまざまな慢性疾患を抱えていることも多く、その死にゆく過程には多様性が見られる。治療の可能性も最後まで残されており、「終末期」を定義づけることは難しい。そのため、その人が今、生命の軌跡のどこにいてどこに向かうのかを判断できず、本人と家族に対して「最期をどこでどう過ごしたいか」を(1)問いかける、(2)選択肢を示す、(3)決める、(4)実現を支える、という意思決定のチャンスを失わせている。

 さらに、本人が在宅を望んでも、治療効果や予後が不明確な状況のなかで、家族は葛藤する。両者の意向に不一致が生じた場合の多くは、家族の意向が優先されて入院となる。残念ながら治療の効果が得られず、そのまま病院で亡くなることもある。長い人生を積み重ねた高齢者が最後の望みを叶えられず、無念のうちに人生の幕を閉じていくことを、訪問看護師として多く経験してきた。本人の最後の望みを叶えるためにも、本人だけでなく「家族」の意思決定支援は不可欠である。

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 私のキャリアは、病院助産師から始まりました。正常な妊娠・出産であれば自立して関われる助産師から看護師にキャリアチェンジしたことで、大きなとまどいがありました。なぜ看護行為を行なうのに医師の指示が必要なのか、なぜ医師と患者さんの意見が違うとき患者側に立つと「チームを乱す」と言われるのかなど、アイデンティティの揺らぎに直面したのです。

 看護師とは何を求められている職業なのか。その答えを“病院の外”で探る活動を始めました。まず2000年に、患者支援団体NPO法人「楽患ねっと」を設立。患者さんの本音を多数聞いていくなかで、中立的な立場で患者の意思決定をサポートする役割が必要だと気づき、2003年「医療コーディネーター」として開業しました。また2010年には、東京都足立区で、緩和ケアを中心とする訪問看護ステーションを開所。現在のスタッフは看護師9名(常勤4名)で、利用者数は50名、延べ訪問件数は約300件/月です(2014年12月現在)。繰り返しゆっくりと関わることができる訪問看護は、患者の意思決定にも深く関われる職種であると実感しています。

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 当社では、保険内の通常の訪問看護(在宅看護研究センター付属訪問看護ステーション)に加え、自費部門として短時間・長時間の付き添い看護、外出や外泊、旅行などの付き添い看護まで、既成概念に捉われない幅広い看護活動を行なっています。

 私がその一員として訪問看護師を始めて、1年半が過ぎようとしています。看護師11名(常勤3名)で、緩和ケアをはじめ、高齢者から小児まで幅広く医療保険・介護保険で対応しています。2014年11月現在、利用者数は保険・自費合わせて53名、延べ訪問件数は326件/月、介護保険と医療保険の利用比率はほぼ半々です。私は当社に常勤しながら、研究担当として所属しています。それ以前は、都内総合病院で卒後約5年間働いていました。

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 当院は、東京都中野区にある機能強化型在宅療養支援診療所です。医師は非常勤を含め9名、看護師3名、医療相談員(以下、SW)2名、理学療法士(以下、PT)2名、医療事務・クラーク、ドライバーが勤務しています。

 在籍患者数は平均160名/日前後で、訪問診療以外に、訪問看護・訪問リハビリも行なっています。院長が神経内科専門医であるためか、筋萎縮性側索硬化症(以下、ALS)やパーキンソン病、多系統萎縮症などの「神経難病」の患者が多く、ほかに認知症、心疾患、悪性腫瘍などの診療にも携わっています。

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英・マギーズキャンサーケアリングセンター(以下、マギーズセンター)は、専門職やボランティアスタッフが相談支援などを行なう、がん患者支援施設。乳がんで早世した英国人、マギー・ジェンクスさんの「患者が自分を取り戻す居場所を」という遺志に基づき、病院の外—地域の中—にあるのが特徴です。

「意思決定支援」もその役割のひとつ。現在、英国(15か所)以外には、香港に1か所あります。同センターを日本にもつくろう!と、昨年9月「マギーズ東京プロジェクト」が本格始動しました。

折しも、マギーズセンター・エディンバラのアンドリューさんが、第55回日本肺癌学会学術集会(中川和彦大会長)に招かれたのを機に、本座談会が実現。病院の中だからできること、病院の外だからこそできること、互いを補完する「意思決定支援」へのヒントをいただきました。

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 筆者は、1996年から個人依頼にもとづく医療コーディネーションを開始した。医療コーディネーションとは、医療サービスを提供する側(医療者)と受ける側(患者・家族・関係者)の間に立って、患者の価値観を尊重した治療や療養場所などさまざまな選択をめぐる「立場の違い」から生まれる溝を埋める、いわば“橋渡し”をすることである。

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選びたくても選べない環境

——筋萎縮性捜索硬化症(以下、ALS)の患者さんでも、「胃ろうをつけない」という意思決定をする人が増えていると聞きます。

 「なんとなく胃ろうはよくない」という雰囲気が専門職にも広がっていて、胃ろうをつけたせいで、きわめて悪い状態でただ生かされているだけ、という報道も目につきます。でも、胃ろうをつけたからこそ生き延びて、今も楽しく過ごしているという姿は、残念なことにほとんど伝えられていませんよね。

 胃ろうなどの医療処置が患者さんの尊厳を損なっているというのですが、尊厳を損なっているのは「胃ろう」ではなくて、胃ろうをつけてもその人らしく生きられる「支援」が行われていないことではないかと考えます。

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「(自分は)不幸な子をもつ不幸な親」と絶望した。長男・徹之さんが、知的障害がある重度の自閉症で超多動児だったからだ。しかし今は、むしろ「変化に富んだ幸せな人生」と言う。

障害が不幸なのは、“生きる場”が狭まれ、「知らない」がゆえの同情や差別・偏見のためと、洋子さんは「地域」に飛び出し、気づけば、徹之さんが「主体的」に生きられる場を実現してきた。

そして今、徹之さんは、川崎市の公務員。「公務員」だから素晴らしいのではない。徹之さんが自らの意思で公務員になることを選んで実現し、生きいき働きながら、自分らしく地域に暮らしているからだ。

「40年間私がやってきたことは、意思決定支援に尽きます」と洋子さん。後年、認知症の両親の介護もした洋子さんは、自閉症でも認知症でも、どんなに重い障害でも、人としての意思はあるし、支援さえあれば自己決定できると確信している。では、その支援の方法とは? 自閉症でも認知症でも自己決定を可能にする地域とは?

「成年後見制度」の課題も指摘する洋子さんに、日本も障害者権利条約を批准し、「意思決定支援」が明文化された障害者総合支援法が施行された昨年の末に聞いた。

訪問ほっとらいん

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 THP(トータルヘルスプランナー)の教育は、2007年4月から名古屋大学大学院で始まりました。この目的は、病院内の退院調整、在宅医療の多職種連携のキーパーソンとなる人材育成です。とくに在宅医療において、最期まで自宅で患者の希望する豊かな生活を送るためには欠かせない存在だと考えています。そこで翌年、筆者が所属する小笠原内科・小笠原訪問看護ステーションでは、独自の「在宅版THP」を設けています。

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 障害者基本法や児童福祉法の改正により、重症心身障害児に対して身近な地域で療育が保障されることが基本方針として示された。しかし、医療的ケアを必要とする超重症児・準超重症児の場合、通所先が極めて限定的な状況が続いている。

 児童福祉法の改正に伴い、介護保険法上の制度として始まった療養通所介護事業所でも、障害児通所支援の実施が可能になったが、児童指導員等の確保や障害児の発達支援に関する知識・技術不足が課題となり、2013年1月時点で6か所の実施にとどまっている。そこで、地域の中核的な療育機関である「児童発達支援センター」から専門的支援方法のノウハウ提供や人員派遣を受けながら、療養通所介護事業所で障害児通所支援等を実施する方法を提言する。

連載 これって、急変?Part2 なんとなく変への対処法・第2回

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本日の目標

(1)「SBAR(エスバー)」に基づき、必要な情報を全部、明確・簡潔・適時に伝えられる

(2)「2チャレンジ・ルール」で伝わるまで伝える

(3)在宅ならではのコミュニケーション環境に配慮できる

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・65

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 看護・介護を提供していく過程で、最期までできるだけ穏やかに、自然なかたちでと願いながらケアを続けていくと、最期に至る過程がそれなりに予測できるようになります。ベテランの訪問看護師にとっては当然のようなこの知恵を集めて、「臨死期が近づいているサイン」を何らかのかたちで示せたらと思うこのごろです。

 「ここまできたらお別れが近い」、と感じ始めるのは、しかるべき評価基準をもっていて、そのスケールがピピっと反応するからなのか? このあたりをはっきり示さないと、匠の背中を見せての技の伝承と同じになり、多くの人に活かせません。個別性の強い在宅ケアですが、ある一定のサインはある。そこをどう見逃さずにケアに活かすかが、ポイントと思います。

連載 介護することば 介護するからだ 細馬先生の観察日記・第43回

スリッパ 細馬 宏通
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 あちこちの施設にお邪魔すると、たいてい玄関でスリッパに履き替えることになる。私はスリッパが苦手で、すぐに脱げかけたり、つまずきかけたりする。出先でも、せっかく用意してもらったスリッパを、いつの間にか脱いで裸足になっていたりする。上履きをいつも鞄に入れて持ち歩けばいいのだが、毎日使うわけでもないし、なんだかたいそうなので、つい忘れてしまう。

連載 一器多用・第45回

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 身体介助技術については「伝達研修が難しい」という悩みを、講習会でよく耳にします。せっかくよい技術を身につけても、それを職場に持ち帰ってスタッフに浸透させることができない、伝えることが難しい、というのです。

連載 「介護」「看病」は“泣き笑い” ウチの場合はこうなんです!・第47回

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杏里 寒い日が続いているけど、風邪やインフルエンザは大丈夫?

母さん 私と父さんの対策はバッチリよ。かかりつけのクリニックへ早々に行って、2人でインフルエンザの予防接種を受けたわ。

読者の声

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精神障害のある人にも「当たり前の生活」を

大類トミコ 山形県・看護師、NPO法人「ゆきやなぎ」理事

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ニュース—看護と介護のこのひと月

INFORMATION 学会・研究会情報

今月の11冊

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バックナンバーのご案内

次号予告・編集後記 杉本 , 栗原
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あまりに奥の深い「意思決定支援」。つまり、それは何をすることなの? 本特集は、そんな素朴な問いから企画しました。巻頭を含め、宝物のような原稿が集まったと思う。それぞれディテールは違うし、耳に痛い指摘もあります。でも、共通してすべてが指し示すのは、「エンパワメント」と「人間性を回復すること、保つこと」。「人間性って?」と問われると困るのですが、何を選ぶにせよ、最期までその人が“目の光”を失わずにいられるほうへと共に歩むことが意思決定支援なのだと思いました。だとすれば、「訪問看護」のすべては意思決定支援なのかもしれません。そんなすごい仕事をしている看護師さんたちにこそ目の輝きを失わないでいてほしい。それが、私の数少ない明確な意思です。その光は、私の目にも光を灯してくれています。…杉本

京都のACP看護研究会(p.108)にお邪魔してきました。「もしものとき」について話すのは、とても怖いもの。とくに医療者からそのような話を切り出されたらご本人やご家族は動揺してあたりまえ、だから丁寧に寄り添うことが欠かせない、ということを日本におけるACPの第一人者である木澤義之先生が話されていました。予後予測や今後の選択肢など、医療者から伝えられる重要なことはとても多いですが、ご自分の人生をふりかえって、その締めくくりを考えるプロセスの主人公は、やはりご本人であり、ご家族です。その伴走者となるみなさんの実践の深さに感動しつつ、自分自身もまた一市民として、自分や家族の「もしものとき」について考えたり話したりする時間をもっともたなければと思いました。…栗原

基本情報

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訪問看護と介護
20巻2号 (2015年2月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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