特集 訪問看護の意思決定支援—いつ何をどう行なうことなのか
—【事例報告❷】—「最期の場所」を決める最終的な意思決定支援とは—本人・家族の意思が対立した非がん疾患の事例から/どう生ききるかを共に考える“ACP的看護”を意識的に
藤田 愛
1
,
宇都宮 宏子
2,3
1医療法人社団慈恵会北須磨訪問看護・リハビリセンター
2在宅ケア移行支援研究所
3宇都宮宏子オフィス
pp.106-112
発行日 2015年2月15日
Published Date 2015/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688200097
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「非がん疾患」の予後予測は難しく、さらに高齢者は「老衰」という避けられない自然経過に加えて、心不全・脳梗塞後遺症・認知症などのさまざまな慢性疾患を抱えていることも多く、その死にゆく過程には多様性が見られる。治療の可能性も最後まで残されており、「終末期」を定義づけることは難しい。そのため、その人が今、生命の軌跡のどこにいてどこに向かうのかを判断できず、本人と家族に対して「最期をどこでどう過ごしたいか」を❶問いかける、❷選択肢を示す、❸決める、❹実現を支える、という意思決定のチャンスを失わせている。
さらに、本人が在宅を望んでも、治療効果や予後が不明確な状況のなかで、家族は葛藤する。両者の意向に不一致が生じた場合の多くは、家族の意向が優先されて入院となる。残念ながら治療の効果が得られず、そのまま病院で亡くなることもある。長い人生を積み重ねた高齢者が最後の望みを叶えられず、無念のうちに人生の幕を閉じていくことを、訪問看護師として多く経験してきた。本人の最後の望みを叶えるためにも、本人だけでなく「家族」の意思決定支援は不可欠である。
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