訪問看護と介護 19巻2号 (2014年2月)

特集 在宅だからICF(国際生活機能分類)!―「生活を支える」を具現化する

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訪問看護と介護の仕事は、利用者さんの「生活」を支えていくこと。

そうとはわかっていても、「生活」はあまりに幅広く複雑で、捉えどころのないものです。

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 人間は科学の進歩により多くの技術、いわゆる文明を手にすることができた。これらの文明を、どのように活用するかが「文化」であり、真の文化は社会を構成する1人ひとりの人間性を深め、生活を豊かにするはずである。すなわち、医学の社会的適応である「医療」はまさに文化であり、超高齢社会・多死時代を迎えた今、そのあり方そのものが問われている。

 医療の役割はさまざまあるが、患者がそれを受ける場所から分類すれば「外来医療」「入院医療」、そして「在宅医療」がある。これからの時代には、各々の「医療」にそのあり方の変革が求められている。なかでも、病気や障害を抱えながら住み慣れた自宅で生活しながら医療を受ける「在宅医療」の変革と充実が求められている。

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 ICFとは、2001年5月に世界保健機関(WHO)が、その総会において採択した、人間の「生活機能」についての捉え方である。

 ICFの特徴を一言でいえば、「『生きることの全体像』についての『共通言語』」である。この観点は、最良の在宅医療・介護を進めるために不可欠である。本稿では、この点も含め本特集のタイトル「在宅だからICF!」に示されている在宅医療・介護におけるICFの重要性と、サブタイトルの「『生活を支える』を具現化する」が示す「生活」の見方、という2つの観点からICFのポイントを述べていきたい。

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 筆者は現在、脳卒中リハビリテーション看護認定看護師教育課程に携わっており(p.132)、脳卒中患者の急性期・回復期・維持期において、一貫したプロセス管理とセルフケア能力を高めるための計画的な回復支援の実践をめざしています。脳卒中ではさまざまな機能障害により生活が不活発になりがちです。そこで、回復支援に向けた看護を提供するために、本教育課程では、障害に関する新しい概念として生活機能を重視するICF(国際生活機能分類)を学習します。

 研修生のほとんどが初めてICFを学ぶため、筆者自身どのように教えるか模索しているところでした。そこで大川弥生医師(p.131)に依頼し、ICFの勉強会を企画し開催したとき、維持期の看護を学ぶための実習先のひとつである東久留米白十字訪問看護ステーション(常勤換算5.8名)から、訪問看護師の増子栄子さんと中島朋子所長、そしてケアマネジャーさんの3名が参加くださいました。これをきっかけに、1人の訪問看護師がICFに出会い、これを活用することで事例を捉え直し、大きな気づきを得るプロセスに立ち会うことができました。本稿では、その経過と事例を報告することで、訪問看護におけるICF活用の可能性について考えてみたいと思います。

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 当施設は介護老人保健施設として、居宅介護支援事業や通所リハビリテーション、ショートステイなども展開しており、在宅復帰や在宅支援を視野に、多職種で「よくする介護(目標指向的介護*1)」(表1)に取り組んできました。目標指向的介護は、ICFの介護現場での臨床実践です。そうしたなか、スタッフだけでなく本人・家族を含めた共通言語としてICF(国際生活機能分類)を活用する有効性と実用性とを実感しています。

 また、富山県介護福祉士会では2010年から、田中雅子氏(日本介護福祉士会初代会長・現名誉会長)が中心となって、大川弥生医師(p.131)の協力のもと、介護福祉士だけではなく他職種や介護福祉士養成校教員、学生をも対象とする「ICF『よくする介護』についての勉強会」を継続的に行なっています(p.133)。こうしたなかで、ICFに基づく多職種連携の素地が、地域に培われつつあるところです。

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 筆者は、地域包括支援センターの主任ケアマネジャーとして、介護予防を含むケアマネジメントに2006年から取り組んできた。「ケアマネジメント」とは、単にニーズにサービスを結びつけるものではなく、挫折した現状とこれまでの生活や本来の望む暮らしとに、どのように連続性をもたせるかを示すツールと考えている。このような観点を説明するのにICF(国際生活機能分類、2001)の視点は非常に有効であり、京都府では実務研修をはじめとするケアマネジャーに対するさまざまな義務研修にICFの理論を取り入れている。本稿では、その立場から、ICFを活用したケアマネジメントの実践を、事例を通して報告する。

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「今、この人に本当に必要な支援は何なのか?」

「その人の生活全体を支えると言っても、具体的には何をどうすればいいのだろう?」

専門性の異なる4名が、みな同じ問いに直面するなかでICFに出会った。

それを機に、それぞれの「支援」が変わっていった。

高齢化に伴い、誰もが「生活機能低下者」になるおそれのある現在、多職種連携が当たり前な在宅現場で、どう足並みをそろえて、ご本人が望むところの同じ目標に向かい、「生活を支える」を具現化していけばいいのか?

いちはやくICFを活用してきた4名が、専門性の別を越えて語り合った。

「在宅」だからこそ、よりいっそう、ICF(国際生活機能分類)は活きてくる!

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 ICF(国際生活機能分類)は、単なる「分類」ではない。単なる「アセスメント(客観的評価)」ツールでもない。私たちは何かを分類したり、評価しようとするとき、あたかも自分自身は第三者であるかのように「対象化」して考える。しかし、「統合モデル」(p.109)であるところのICFは、客観的に観察しているつもりである私たち自身も、その人の「生きることの全体像」(p.107)のなかに含まれ相互作用するものとして捉えるのである。

 ICFの理念は、在宅医療・介護において、1人の人の生活・人生を支えていくうえで有用である。しかし、ICFを単なる分類やアセスメントツールとして用いるならば、その本来の意義を損ないかねない。医学モデル(p.109)に立ってものを考えることが常となっている私たち専門職がICFを真に活用するためには、まず私たち自身の「ものの見方」について自覚しておかなくてはならないのである。本稿では、ICFを誤用しないために、「統合モデル」そして「生きることの全体像」への理解を深めることを試みたい。

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中福祉・中負担、あるいは低福祉・中負担ともいわれる日本。

社会保障制度改革が進むなかで、「負担」は確実に増える見通しだ。

では、「福祉」はどう変わっていくのか?

長らく福祉の現場に身を置いたあと、一転、熊本県知事を務めた潮谷さんは、現場感覚をそのままに福祉行政を推し進めた。

一方、13年間の在宅介護を経て、ALSの母親を自宅で看取った川口さんは、現在、患者さんたちの支援に奔走している。

2人に共通するのは、障害や難病を抱える人たちを支えながら、支え返されてきた確かな感覚だ。

自助・自立が難しい人にとって、生きづらい時代にしてはならない。

2人がめざす「これからの福祉」に必要なものとは?

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 これまで訪問看護師はその必要性がずっと叫ばれていながら、なかなか思うように増えていない。一方で、2020年には後期高齢者数が前期高齢者数を超えるとされ、超高齢社会・多死時代を支え切るための地域医療体制の整備が待ったなしで迫られている。そうした状況のなか、生活習慣病予防と医療費削減をめざした画期的な「ワンコイン健診」事業を手がけるケアプロ株式会社が、経験のないまったくの新卒・新人向けの訪問看護師応援サイトを立ち上げた。その内容とねらいは何なのか。同社代表取締役の川添高志さんに聞いた。

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 北海道の地方中核市において、居宅介護サービス利用者100名を対象に、生活必需品の買物方法に関する実態調査を行なった。有効回答86名のうち70名が、配偶者・同居者・ヘルパー等に買物を依頼していた(複数回答)。自分で買物に行く利用者35名のうち、22名は店まで同行してもらっていた。その他、16名が宅配・配食制度を利用し、12名が店に電話をして配達を頼んでいた。店までの「距離」に加え、「要介護度」および「世帯構成」が買物に大きく影響していることが確認された。買物の頻度は、週2、3回という利用者が多かったが、独居世帯では週に1回以下が多かった。今後、現行の介護保険制度下における利用者の買物方法について、農山村地域や大都市近郊のニュータウン等を含む広範な地域での調査が必要であると思われる。

ほっとらいん ふろむ ほんごう

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 11月16日(土)、東邦大学看護学部(東京都大田区)にて、第3回日本在宅看護学会学術集会が尾﨑章子大会長(同大学同学部教授)のもと開催された。

 大会長講演ではまず、座長を務めた川村佐和子氏(聖隷クリストファー大学大学院教授)より、学会の会員数が増え360名を超えたことが報告された。その後、尾﨑氏が「みんなでつくろう! 在宅看護のエビデンス」というテーマで、「睡眠」の研究について講演を行なった。日本の一般成人の5人に1人が不眠を自覚している点、在宅介護者へのアンケートでも、最もつらいことは「夜眠れないこと」という結果が出ている点を踏まえ、エビデンスに基づく「睡眠教育プログラム」の作成に至るまでの経緯を紹介した。そして、研究職と専門職と住民が一体となってパートナーシップを形成し、手を取り合って地域の問題を解決していかなければならないと締めくくった。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・53

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認知症のある姉のミホさんと、身体的には虚弱な妹のモトさん。お互いを支え合いながら暮らす「ミモザの家」の物語の続きです。

連載 介護することば 介護するからだ 細馬先生の観察日記・第31回

フードコートの晩餐 細馬 宏通
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 私の通っているグループホームでは、(多くのグループホームがそうであるように)年に何度かお出かけの行事があるのだが、そのなかに、「フードコートお食事会」というのがある。ホームから車でしばらく行ったところに、郊外型の巨大なショッピング・モールがある。フラットで広々としたフードコートは、車いすでの移動が楽で、しかも幸いなことに平日の夜はそれほど客がいない。そこに、通常の食事ができる入居者の方々数人にスタッフが十数人、さらに私たち観察隊まで混じって、20人以上の大所帯でモールに繰り出すのである。

 これがなかなかおもしろい体験なのだ。エレベーターホールで待っていると、そばを通りがかった女子高生から「かわいい!」と声が飛ぶ。今日はよそゆきということで、車いすに座っているみなさんにはおそろいの膝かけがかかっている。あまり場所をとらないようにと、たまたま整然と並んでいたのだが、その、ずらりと並んだ車いすのおばあちゃんに膝かけという出で立ちは、離れてみるとなるほど、何かのブランドのCMのように、やけにファッショナブルだ。こういう外見のおもしろさは、そばにいると意外と気づきにくい。外に出て人の目が入るというのは、なかなかいいものだ。遠く2階のほうで携帯で写真を撮る人までいる。「あ、あそこで撮ってはる」と職員さんが言うと、入居者の何人かが上を見上げる。笑いかける他の客に、柔らかい表情を返している。もちろん、さまざまなボランティアの人がホームを訪れているのだし、ホーム外の人と交流する機会はたくさんあるわけだが、こんなふうに広々とした空間で、はるか遠い階上の人と表情を交わす場面というのは、なかなかお目にかかれない。外出は、「視線」のあり方をダイナミックにする。

連載 一器多用・第33回

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 最近、フィットネス関係のセミナーでの講師依頼を受けることが多くなりました。フィットネス業界も少子・高齢化により顧客争奪が激しくなり、今までのように現役世代だけでなく、高齢者にもさまざまなプログラムを提供して呼び込もうとしているそうです。また、次回の介護保険法改正で「要支援」が廃止になることが規定路線となり、自治体を中心とした「介護予防」にも食い込みたいという背景もあるよう。そこで、リハビリや介護技術、介護予防を学ぼうと、理学療法士の私に声がかかるというわけです。

連載 「介護」「看病」は“泣き笑い” ウチの場合はこうなんです!・第35回

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杏里 今回は、同世代の介護仲間のともちゃん(2013年1月号に初登場)に、介護を「卒業」したばかりの今の気持ちを語ってもらいました。

 ともちゃんは、家庭の事情により、20歳代半ばから約9年間(在宅+施設)、ほぼ1人でおばあさまを介護していました。そのおばあさまが去年の秋、天国に旅立ちました。

連載 地域のなかの看取り図・第13回

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 生きている人と、死んでいる人。

 境目ははっきりとあります。なのに、2つの状態の境界に立ったとき、私は足元が揺らいでわけがわからなくなります。

本連載はWebマガジン「かんかん!」http://igs-kankan.com/article/2013/04/000747/index.htmlにて順次無料公開中

読者の声

これからも「あなたと」
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これからも「あなたと」

大須賀三和子 埼玉・東松山医師会訪問看護ステーション

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ニュース―看護と介護のこのひと月

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次号予告・編集後記 杉本 , 多淵
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在宅関係者なら、「生活機能」を重視し、そのプラス面に光を当て、本人の「参加」の目標を最も大切にするICFの理念には、多くがピンとくるはずだ。ICFは、単なるアセスメントツールでも、漠たる考え方でもない。言うなれば、パソコンでいう「OS」だ(あくまで杉本解釈です)。「生活(機能)」は複雑で多岐にわたるため漠然としやすい。また、多職種が所属を越えて関わる在宅では、具体的な課題や目標を齟齬なく共有する難しさがある。でも、脳内パソコンに「ICF」という同じバージョンのOSさえ積んでいれば、3レベル3因子によって生活全体を具体的に捉えやすくなり、多職種で共有するにも話がはやい。ICFをインストールして、みんなで脳内OSをバージョンアップすれば、同じことをするにもきっとスムーズ・確実・はやくなる。…杉本

本号の特別記事のなかで、川添さんが「若い人たちの強みを活かしたい」と話されていたのが印象的でした。やはり、初めのうちは技術や経験は乏しくとも、「訪問看護に携わりたい」という気持ちをもって取り組むことが、いちばん大切なことなのではないでしょうか。JFA(日本サッカー協会)においても、8歳以下の年代では、技術的なことを習得するよりもまず、「いかにサッカーを好きになってもらうか」ということに指導の重きが置かれています。好きだからこそ、続けられる。訪問看護を好きになる人が少しでも増えるよう、小誌も引き続き工夫していきたいと思います。…多淵

基本情報

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訪問看護と介護
19巻2号 (2014年2月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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