連載 介護することば 介護するからだ 細馬先生の観察日記・第5回
たどんの思い出
細馬 宏通
1
1滋賀県立大学人間文化学部
pp.1044-1045
発行日 2011年12月15日
Published Date 2011/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688102067
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数年前、滋賀県の高島市で高齢者の回想法の試みに関わったことがある。当時、わたしにとって回想法は初めての経験で、みんなで話し合って昔のことを思い出す、というくらいの漠然としたイメージしかなかった。ところが、実際にやってみると、これは単なることばのやりとりではないことに気づいた。
たとえば、人の配置がそうだ。初回はとにかくたくさんでやりましょうということになり、デイケアに通う方々に集まってもらい、広いホールでやってみた。7、8人のグループを5組ほど作って、それぞれの組が円形に座って話をする。しかし、これはうまくいかなかった。ホールの高い天井に会話が反響して、あちこちからわんわんと声が聞こえる。ただでも耳の遠いお年寄りが多いので、グループでの会話をあきらめて、隣の人とぼそぼそと話し始める人があちこちに現われ始めた。
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