実践報告
村田理論を応用したALS療養者のスピリチュアルケア
小泉 亜紀子
1,2
1大阪府立大学大学院看護学研究科在宅看護学分野
2かがやき訪問看護ステーション加美駅前
pp.274-278
発行日 2021年4月15日
Published Date 2021/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688201658
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Ⅰ はじめに
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Later Sclerosis:以下ALS)には、完治を目指す根本的な治療がない。そのため、進行をなるべく遅らせること、病状の進行によって出現するさまざまな症状から患者が受ける苦痛がなるべく最小限になるよう対処すること、の2つが主な治療となる。それらの治療の目標は「患者の生活の質(QOL)を高めること」であり、よってALS治療の全ては緩和ケアであると言える。
緩和ケアを展開する上でスピリチュアルケアが大切であることは言うまでもない。しかし、ALSを代表とする神経難病の最も重要な課題となるのは、即時的で現実的な“生活を支えるケア”である1。そのような背景が影響し、神経難病のスピリチュアルケアに関する研究はごくわずかである。
これまで、ALS療養者の訴えに内包されるスピリチュアルペインの存在に気が付き、それが一般的な終末期がん患者のスピリチュアルペインとは異なる性質を抱えていると感じてはいた。しかし“生活を支えるケア”に翻弄され、そのケアが十分に行えていたとは言い難い。しかし難病の中の難病と言われるALSだからこそ、療養者は時にスピリチュアルペインに苦しむ。
このような状況から、本稿では村田氏の提唱するスピリチュアルケアの理論(村田理論、後述)を応用した、ALS患者のスピリチュアルケアの一場面について報告する。
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