連載 ほんとの出会い・47
女性として平和賞を受けること
岡田 真紀
pp.158
発行日 2010年2月15日
Published Date 2010/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101549
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- 文献概要
アフガニスタンで水路を開き,荒れ果てた大地に緑をもたらしたペシャワール会の医師中村哲さんが若い人たちと対談するのを聞く機会があった。教師志望のある女性が,「人はなぜ生きるのか」というとても大きな問いを中村さんに投げかけた。中村さんは,「自分も若いころはそういうことをよく考えたが,そういう問いはしてはいけないものだと今は思うようになった。人は自分で生きているつもりでいるが,いろいろな人のおかげで生かしてもらっている。どの命もそういう意味でかけがえがなく,大切なもの。人には生きる意味があるかを問う権利はなく,自分が今やりたいこと,しなくてはいけないと思うことをして生きていけばいい」と言われた。そして,アフガニスタンでの大事業も「目の前に倒れている人がいたら助け起こすのと同じで,当たり前のことをしているだけ」とも。
中村さんは戦火のなかでの大規模な土木事業をこのように自然体で続けている。医療行為以前に,飲み水が汚染されている,食べるものがないと,命が脅かされている人のために,井戸を掘り,水路を開き,人がまず生きていける状況を知恵と力をふりしぼってつくりあげる。「平和とは命を守ること」と考えると,「命」からぶれることない中村さんこそノーベル平和賞に値するとつくづく思う。
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