連載 精神科医の家族論・11
祖父母と孫
服部 祥子
pp.154-157
発行日 2010年2月15日
Published Date 2010/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101548
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祖父母から孫へのまなざし~現役卒業という時間のなかで
人は生まれ,子どもの時間を生き,多くの場合成人すると仕事を持ち,家庭にあっては家族,ことに子どもを得てこれを養い,育てるという,いわば人生の現役としての時間を生きる。そして時が流れ,職業人としての終わり,子どもの独立とともに親としての役割の幕引き,が訪れる。現役卒業である。その頃,わが子は社会人となり,親にもなり,かつての自分と同じ現役の時間を生きており,祖父母となった自分は一つ上の世代に身を置く。そこからかつてのわが子と同じ子どもの時間を生きる孫と対面するわけである。親であった時とは違うことは必然であろう。
まず祖父母には長い時間を生きて,良くも悪くも多くの経験を積み重ねてきたという実績がある。かつては大切と思ったものがさしたる意味がなく,不運や不幸を嘆いたりうらんだりしたことがかえって人生をプラスの方向に導いたというような価値観の変転がある。これは長く生きてみたからわかったのである。そこで孫という若い芽や若葉が育つのを眺める際,ついその視点から親の考えを批判したり,やり方に口出ししたり諌めたりしたくなる。かつての自分と同じように未熟なことをしている親に向かって。
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