LiSA 27巻1号 (2020年1月)

徹底分析シリーズ 臨床で本当に使えるTEE—こころをどう読むのか

巻頭言 豊田 浩作
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JB-POT認定試験が始まって16年。すでに合格者数は延べ2800人を超え,各種講習会による教育が広まり,書店には多くの専門書が並んでいます。かつては修練を受けた一部の麻酔科医だけのものであった経食道心エコー(TEE)技術が,今や一般的なモニターとして認識されるようになりました。今日も全国の現場で,術者の要求に応えようと若い麻酔科医が懸命にプローブを操り,描出と評価を行うためにモニター画面に集中していることでしょう。

 TEEは技術的に難易度が高く,きれいな描出をして評価ができるようになるまでには,ある程度の訓練が必要です。ただ,きれいな描出と正しい評価はもちろん大切ですが,果たしてそれだけがTEEのゴールなのでしょうか? そのもう一歩先を見てみましょう。TEEによって得られた評価をどのように臨床上の意思決定につなげるのか。そして,いかにしてその内容をチームに簡潔かつ的確に伝え,術者をサポートし,結果として良好なアウトカムと患者の利益につなげるか。TEEの価値は,臨床現場におけるコミュニケーションツールとしての有用性にあるとも考えられます。

 本徹底分析シリーズでは,まずTEEエキスパートが実際にはどのような思考と技術をもって画像描出と評価を行っているかを紹介します。そして現場におけるTEEを用いたコミュニケーション,いわゆるノンテクニカルスキルについて,さらには超音波原理の臨床応用やTEEによる合併症を防ぐ工夫についてなど,今までにはなかった切り口でTEEを再考していきます。

「TEEが手術室内でチームの心をつなげる」。本特集がその一助になればと願っています。

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正確な解剖の理解は経食道心エコー(TEE)を行ううえで必須である。本稿では,心臓と周辺臓器の解剖を解説し,構造物を効率よく描出する方法を紹介する。

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麻酔導入後のカテーテル類挿入時や,人工心肺の導入や離脱時は,経食道心エコー(TEE)が特にその能力を発揮する場面である。実際の麻酔・手術の流れに沿って,TEEによる観察・誘導について供覧する。

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「TEEが非心臓手術での周術期循環動態評価にも有用」というのは周知の事実である。現に,多くの施設において非心臓手術の循環評価に経食道心エコー(TEE)を用いているだろう。しかし実際の現場では,TEEによって得られる情報がどのように循環管理に活用できているだろうか? 左室容量と収縮力を定性的に評価しているだけ,という読者もいるかもしれない。

 本稿では,TEEで得られた情報をどのように周術期循環管理に応用するかについて,循環生理の基礎に立ち返って解説したい。

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超音波画像から得られる情報を活用する状況は,大きく分けると二つのシチュエーションがある。ゆっくりじっくり精査をして,より多くの情報量を得ることが求められる場合と,リアルタイム性や迅速な評価が優先される手術中や急変時心イベントの検索でよりピンポイントの情報量を得ることが求められる場合とである。いずれの場合にも,画像描出のスキルと同じくらい重要なのが,適切なパネル操作や読影である。そのtipsを具体的にまとめる。

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僧帽弁形成術の麻酔をする日は心がウキウキする。それは,的確な経食道心エコーtransesophageal echocardiography(TEE)の評価および麻酔科医と心臓外科医のコミュニケーションスキルが患者アウトカムの向上に直結する術式であり,やりがいもいっそう増すからである。正確なTEE評価ができることも重要だが,それ以上に,その所見を外科医に伝えるスキル,時にはその所見をもとに外科医と一緒に議論するスキルが必要である。

 僧帽弁形成術前に経胸壁心エコー検査しか行わない施設もあるだろう。また,術前ルーチンでTEE検査が施行されている場合でも,検査日から手術まで間があれば,所見が変化していることも少なくない。全身麻酔下でゆっくり観察することで新たな所見が見つかることもあり,全身麻酔導入後のTEE所見は形成術成功への鍵となる。TEEを含めた執刀前評価は外科医にとって,旅に必須の地図である。麻酔科医は,より鮮明で正確な地図を外科医に手渡す役目を担っている。

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症例

65歳の男性。以前,職場の検診で高血圧を指摘されたが,受診せず。喫煙40本/日でcurrent smoker。ほかに特記すべき既往歴なし。

 家で妻と口論となった時,突然胸背部に痛みを生じ,もうろう状態で近医を受診した。胸部X線撮影で縦隔拡大,心エコーで上行大動脈にフラップを認めたため当院に搬送されたが,搬送中にショックバイタルとなり,手術室に直接入室した。

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合併症は程度の差こそあれ,すべての医療行為において発生し得る。十分な説明と理解にもとづいた同意のもとにその手技が行われるとはいえ,一度“事故”が発生すれば,それは患者の身体のみならず,その患者家族あるいは当事者となった医療者の心にも大きな傷を遺す。

 経食道心エコー(TEE)は,比較的安全な検査と考えられている一方で,少なからず侵襲を伴い,その合併症は軽微なものから重篤なものまで多様である。特に近年,心臓手術や経カテーテル的心臓手術の対象となるのは高齢かつ脆弱性の高い患者であり,TEEによる合併症も場合によっては致死的要因となり得る。だからこそ麻酔科医は危機管理に精通しておくことが重要である。

 本稿では,TEEを扱ううえでの『まさか』に備えて知っておくべきポイントをまとめた。

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関西地方の麻酔科医たちが「症例カンファレンス」を実際に集まってやってみた。

 通常の「症例カンファレンス」は,提示症例に対して各施設が周術期管理計画を原稿で示し,相互のやりとりはない。別の施設で働く麻酔科医が顔を合わせて,提示症例に対して思うことを述べることによって,互いのプランに取り入れられること,足りないことなどがその場で発見できるのではないか。それは読者にとっても新しい発見につながるのではないか。そんな思いで今回の「リアル症例カンファレンスin Osaka」は開催された。

症例カンファレンス

予告編
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次号の症例カンファレンスの提示症例を,一足先に紹介する。

自施設にこのような症例が来たら,どのような麻酔計画を立てるか,事前に考えておいてほしい。

次回,各施設のPLANをお楽しみに!

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はじめに

マラソンブームである。日本全国のマラソン大会の数は小規模のものも入れると1年間に2000〜3000回あるといわれている。週1回ジョギングする日本国民の数は500万人を上回る。マラソンはもはや日本の国技といっても過言ではないだろう。しかし,走った人にはわかるが,フルマラソンは本当にきつい。有酸素運動は健康に良いという情報がある反面,マラソンレース中に心肺停止になる中高齢者のニュースも耳に入ってくる。それでもマラソン人気は静まる気配がない。ヒトはなぜそこまで走るのが好きなのか?麻酔科医・研究者・ランナーである筆者がその謎に迫る。

こどものことをもっと知ろう 第10回

虐待 櫻井 淑男
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症例:生後1か月の男児。右足を動かさなくなったということで救急外来を受診。右大腿骨骨幹部骨折と診断されて緊急手術となった。麻酔科医が術前診察のために小児科病棟を訪れた。

麻酔科医:生後1か月の大腿骨骨折なんてかわいそうですね。うちの子もちょうど1か月なんですよ。この年齢でも骨折するんですね。

小児科医:普通はしないです。生後1か月ですから自分で動けないし,らかの外力がかからないと骨折しませんね。両親の話でははっきりした原因がないんです。したがって,可能性は限られますよね!

麻酔科医:可能性?

連載

THE Editorials
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Anesthesiology

Editorial:

Sun EC, Memtsoudis SG, Mariano ER. Regional anesthesia:a silver bullet, red herring, or neither? Anesthesiology 2019;131:1205-6.

Article:

Hamilton GM, Ramlogan R, Lui A, et al. Peripheral nerve blocks for ambulatory shoulder surgery:a population-based cohort study of outcomes and resource utilization. Anesthesiology 2019;131:1254-63.

■日帰り肩手術の麻酔と術後鎮痛法

肩関節脱臼などに対する肩関節形成術や回旋筋腱板修復手術に対しては,全身麻酔が基本に行われ,腕神経叢ブロックを追加している施設も多いであろう。筆者の施設でも,腕神経叢ブロックを実施することはあるが,その場合でも術後鎮痛のために経静脈的自己調節鎮痛法(IV-PCA)を使用している。これは,手術当日夜や翌日の痛みが強いため整形外科医からの要望によるものである。

 区域麻酔を行った場合は,行わなかった場合に比べて術後痛のコントロールが良好なことが示されている。しかし,長期間の予後となると,区域麻酔の効果は明らかにはなっていない。区域麻酔を積極的に使用することで,術中のオピオイド投与量が減少し,さらには術後のオピオイドの使用量が減少することもメリットとして想定されている。しかし,術後オピオイド依存性や,オピオイドクライシス回避に有効かどうかは証明されていない。

連載 blockstories超音波ガイド下末梢神経ブロック実践49症例 その後

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新しい神経ブロック手技が続々登場している中でも特に注目されているのがerector spinae plane block(ESPB)である。胸椎横突起の外側部を狙って局所麻酔薬を投与するだけで,背部,側胸部はもちろん,腹側正中部にも効くという魔法のようなブロック。本当にそんな効果が得られるのか,現在までの知見をまとめる。

—髙橋トレーナーが解決!—オペ室でのびのびストレッチ

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【登場人物】

髙橋勇気:麻酔科医特有のカラダの悩みをストレッチで解決する名トレーナー

森重彩恵:麻酔科1年目。真面目に努力を重ねるコツコツタイプ

宮坂清之:麻酔科10年目。静かに温かく見守る麻酔科リーダー

(※登場人物のプロフィールは実際の状況とは異なります)

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私は今,米国中西部に位置するインディアナ州のインディアナ大学麻酔科のレジデントとして臨床留学中です。インディアナ州の人種構成は白人が80%と,共和党が強い州ですが,医療者の人種は実に多様です。州都であるインディアナポリスは,カーレースのインディ500が世界的に有名です。

 全米最大級の当プログラムは,3学年で80名前後のレジデントが,車で10分圏内に集約された五つの大きな病院をローテートしながらトレーニングを積んでいます。各病院には手術室が20室以上あり,最大のICUの病床数は100床以上と,まだまだ全体像が掴めません。病院内をきょろきょろしていると“you lost?”と必ず声をかけてくれる人がいるのも,米国中西部ならではのフレンドリーな文化を感じます。

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こんにちは!ワイン安部です。

新年明けましておめでとうございます。

今年は東京オリンピックがあります。オリンピックで活躍した選手の国のワインに注目してみても面白そうですね!

さて,今回は「冬におススメの赤ワイン」ニューワールド編です。

クラシック音楽談義 ゆるりと音楽の話をしませんか 第9回

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去勢手術の記録は残っていない

法王は,カストラートを作るための去勢手術を禁止していました。それにもかかわらず,去勢手術はイタリア中の床屋で施行されていたと言われています。衛生状態は劣悪で,手術による死亡率は10〜80%と記録によってまちまちです。

 病気に対して同様の精巣切除術をした記録が残っています。ちなみに,万が一摘発された場合に備えて,カストラートの去勢手術にも病名がついていました。さらに当時は,てんかんやらい病,痛風,ヘルニアに対しても精巣切除術を施行していた,というのだから驚きです。

Tomochen風独記

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引き続き,ドイツ小児心臓センターDeutsches Kinderherzzentrum(DKHZ)の循環器ICU(K1)病棟での業務について紹介します。

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Euroanaesthesia2019に参加して 塚本 真規
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Euroanaesthesia 2019は,6月1〜3日に,オーストリアの首都ウィーンで開催されました(写真1)。ウィーンでの開催は2005年以来です。ウィーンは,オーストリア東部のドナウ川のほとりに位置しています。かつてはハプスブルク家のオーストリア帝国の首都であり,ベートーベンやモーツァルトらの音楽家も活躍したことでも有名です。シュテファン寺院や旧市街を含む地区は,「ウィーン歴史地区」の名称でユネスコの世界遺産に登録されており,街を歩くだけでも欧州の歴史の重みが感じられ,その異国情緒は日頃の勤務を忘れさせるものになりました。

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基本情報

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LiSA
27巻1号 (2020年1月)
電子版ISSN:1883-5511 印刷版ISSN:1340-8836 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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